課題
ホスピタリティ産業では不正利用は珍しいことではありません。予約金額が高額であることから、盗難カード情報を使用しようとする不正利用者のターゲットになりやすく、また、返金ポリシーが厳格であるため、顧客が正当な請求に対して不審請求を申し立てることもよくあります。さらに、旅行者がさまざまな国を訪れ、多くのクロスボーダー取引が発生することから、取引の正当性を確認するのは簡単ではありません。Oasis Hotels もこうした問題に直面していました。同社が抱える決済と不正利用に関する問題は深刻であり、海外のゲストへのサービス提供を妨げる可能性がありました。
カンクンに拠点を置く同社では、取引における不正利用の申し立て率が 6% と高く、業界基準を大きく上回っていました。不正利用がもたらすものは、売上の損失にとどまりません。スタッフは不審請求の申し立てや照合に手動で対応しなければならないため、事務作業に多くのリソースを割り当てる必要がありました。さらに、Oasis が使用していた決済システムでは、不正利用パターンを十分に把握できないという問題が状況を一層複雑にしていました。
国際決済への対応にも課題がありました。Oasis のデジタルメディアディレクターである Fernando Pereira Martín 氏は次のように述べています。「銀行の決済ゲートウェイは支払いの拒否率が高く、特に国際決済の場合は顕著でした。顧客からは、決済ゲートウェイ経由では支払いができなかったことを理由に、別の決済手段での支払いを求める問い合わせが絶えませんでした」
ゲストはヨーロッパ、北米、アジア各国から高額な前払いをするため、同社は、ゲストに馴染みがあり、信頼できる決済手段を導入する必要がありました。当時使用していたシステムは決済オプションが乏しく、ゲストはまったく予約ができなかったり、手間のかかる決済プロセスに嫌気がさして途中で予約をやめたりすることもありました。
高い不正利用率、不十分な不正防止ツール、国際決済における支払い成功率の低さ、面倒な決済手続き、それに伴うカスタマーサービスの負担。こうした課題が重なり、事業の成長を支えるには、より高度な決済システムと不正防止ツールが必要であるとの判断に至りました。
解決策
Oasis Hotels は 2023 年、信頼性、高度な不正防止ツール、導入のしやすさで定評があった Stripe を決済パートナーとして選択。最優先事項は、Radar for Teams を使用して不正利用の問題に取り組むことでした。
Radar for Teams は、Radar の機械学習を活用した不正防止技術にカスタムルール、調整可能なリスク閾値、高度な分析機能を組み合わせたもので、これにより Oasis は独自の不正パターンを分析できるようになりました。さらに、Radar のダッシュボードインターフェイスと、不正利用の傾向の根本原因を簡単に特定できる分析機能により、技術スタッフだけでなく他のスタッフも不審請求の申し立て率を押し上げる要因を特定することが可能になりました。
Oasis は、Stripe のチームと密接に連携して、自社固有の脆弱性に対応するカスタムの不正利用ルールを開発しました。多くの不正取引において、予約名と決済に使用されたカード名が一致しないことが判明したことを受け、自動的に名前を比較して、名前が一致しない場合には 3D セキュア認証を適用するカスタムルールを実装。決済処理を開始する前の確認プロセスを強化しました。
このほか、取引に関連する不正利用リスクを示す Radar のリスクスコア (スコアが高いほど、リスクが高い) を利用しました。Radar for Teams のカスタムルールケイパビリティを使用すると、ユーザーは特定のカード番号や IP アドレスに関連する不審請求の申し立て件数などの変数を特定できます。Oasis はこのケイパビリティを取り入れて 3DS を使用し、過去の取引で不審請求の申し立てを繰り返してきたカード保有者を自動的にブロックするルールを実装できました。
不正防止の基盤を強化した同社は、次に Stripe の最適化された決済プロダクトを導入して決済体験全体の刷新に乗り出しました。Pereira 氏と社内チームは Stripe Elements を採用して、自社サイトで完結する決済体験を構築。カゴ落ちや売上の取りこぼしにつながるリダイレクトをなくすようにしました。Elements の埋め込み可能な UI コンポーネントを使用することで、Oasis は決済手段に Google Pay と Apple Pay を追加し、さらに顧客の決済情報を自動入力して決済時間を短縮する Link も導入しました。
結果
Radar for Teams で不審請求の申し立て率が 6 カ月後に 90% 減少
Radar for Teams のカスタムルールや最適化機能を活用したことで、Oasis の不審請求の申し立て率は 90% 減少し、6% から 1% 未満にまで改善。さらに「Radar for Teams のおかげで、管理部門スタッフの週当たりの作業時間が著しく減少しました。不審請求の申し立てと返金の管理、照合作業を効率的に実行できるようになりました」(Pereira 氏)
Radar for Teams のカスタムの 3D セキュア認証で不正利用を大幅削減
Oasis は、Radar for Teams から得られるインサイトを活用して不正利用の主要因に対応し、不正利用率を大幅に削減することに成功しました。Pereira 氏は次のように述べています。「これは、当社にとって画期的な出来事でした。社内チームがパターンを分析したところ、多くの不正取引には、予約名とカード名が一致していないことが判明したのです。こうしたケースに 3D セキュアルールを実行したことで、不審請求の申し立て率が著しく改善しました」
決済体験の効率化でサービスが向上
Stripe の最適化された決済プロダクトを導入した結果、予約にかかる手間が大幅に削減されました。自社サイトで完結する決済フローを提供することで、リダイレクトが不要になり、カゴ落ちを削減し、より使いやすい予約プロセスを構築することができました。Oasis の E コマースプラットフォームとコールセンターを連携させることで、予約の手間が大幅に減り、スタッフはカスタマーサービスの向上に集中できるようになりました。
Link による安全かつスピーディーな決済が Oasis の予約全体に占める割合は 33%
Link による決済は現在、Oasis の全取引額の約 3 分の 1 を占めています。追加の不正防止対策として、取引完了前にワンタイムコードを使って顧客の身元と支払い詳細を確認する認証プロセスを実行することで、不正な予約を防ぎ、チャージバックのリスクを抑制しています。
決済オプションの拡充で海外成長を促進
Google Pay と Apple Pay に対応した結果、海外の顧客は予約料金を簡単に支払えるようになりました。海外の顧客は Oasis のビジネスに重要であるため、今後数年で地域固有の決済手段の導入をさらに進めていく方針です。
Stripe の導入プロセスはわかりやすく、シンプルでした。当社が行った変更は非常に効果的でした。その効果を実感できるのは、Stripe ダッシュボードで ROI を数値として確認できるからです。