アメリカの売上税とエコノミックネクサスの概要

このガイドでは、アメリカ内の顧客に販売を行う企業を対象に、エコノミックネクサスの基本事項について説明します。

最終更新日: 2023 年 3 月 22 日

  1. はじめに
  2. エコノミックネクサスとは
  3. エコノミックネクサス法を遵守しなかった場合、どのような影響があるのか
  4. 売上税に関する法規制を遵守するには
    1. 1. どの州でネクサスが生じるかを把握する
    2. 2. 該当の管轄区域を確認し、税率を把握する
    3. 3. 税を申告して納付する
  5. Stripe にできること

今日、オンラインビジネスの販売網は、アメリカのさまざまな州だけでなく、アメリカ以外の国にも広がっています。実際、Stripe を導入しているスタートアップの 80% 以上が、20 を超える州や国で販売を行っています。オンラインでの顧客開拓はかつてないほど容易になりましたが、販売地域が広がることで、状況が複雑化する可能性があります。

売上税がその一例です。アメリカ内の顧客に販売を行っている場合、取引量や販売活動が定められた基準値に達している州では、その州における売上税の法律を遵守する必要があります。基準値、税法、適用される税率は、州や商品によって異なります。つまり、商品が売れれば売れるほど、そして販売地域が広がれば広がるほど、税務業務が煩雑化することになります。

このガイドでは、アメリカ内の顧客に販売を行う企業を対象に、エコノミックネクサスの基本事項について説明します。具体的には、定められた基準値に達している管轄地域を特定する方法、販売する商品と販売地域に合わせて適切な税率を算出する方法、税金の申告と納税方法について見ていきます。また、Stripe Tax を利用した税務コンプライアンスの遵守についてもご紹介します。

欧州の顧客に販売を行う際の税金の詳細については、EU の VAT および VAT OSS の概要をご覧ください。

エコノミックネクサスとは

エコノミックネクサスとは、アメリカの州に拠点を置く企業が、拠点外の州において取引量や販売活動が一定のレベルに達した際に、売上税の徴収義務が発生することを指しています。アメリカでは、売上税は基本的に州ごとに規定されており、州によって法律や規則は異なります。インターネットビジネスが発達する前は、特定の場所でエコノミックネクサスが生じているかどうかを判断するのは簡単でした。州内に店舗やオフィス、倉庫があったり、あるいは従業員を雇用していたり、一時的に展示会で販売していたりすれば、その州で売上税の徴収義務が発生しました。

この方法は、EC ストアが台頭するまでは問題ありませんでした。しかし、インターネット経済の発展に伴って、オンライン小売業者は地元企業よりも有利な立場を得ました。オンライン小売業者には事実上、売上税の徴収と納税の義務がなかったためです。加えて、各州は最大で年間 330 億ドルもの課税対象所得からの税収を失っていました。

2018 年、最高裁判所はサウスダコタ州とウェイフェア社の係争において、これまでの見解を覆しました。この判決により、州は州内に実店舗のない企業や営業担当者を置いていない企業に対しても売上税の徴収義務を課せるようになりました。その判決以降、「経済的な」拠点がある、すなわち取引量や販売活動が一定のレベルに達した場合、該当する州との間にネクサスが発生する (つながりがある) とみなされるようになりました。もちろん、物理的な拠点がある州でも売上税の登録は必要です。

エコノミックネクサス法を遵守しなかった場合、どのような影響があるのか

ビジネスオーナーは、未徴収の税金に加えて罰金や利息を支払うような事態にならないよう、売上税のネクサスとそれに伴う義務を理解しておく必要があります。たとえ該当期間中に売上税の納税義務が発生しなかったとしても、徴収登録をしているすべての州で税務申告をしなければなりません。

顧客から売上税を徴収する必要があったのにもかかわらず、徴収しなかった場合、納付期限を過ぎた売上税に加えて、納付すべき売上税の平均 30% に相当する利息と罰金を自費で支払うことになります。

売上税に関する法規制を遵守するには

エコノミックネクサスを遵守するプロセスは複数に分かれており、自社と顧客の正確な所在地、売上高、販売商品によって異なります。ここでは、アメリカにおいて企業が税法を遵守するための重要な 3 つのステップをご紹介します。

1. どの州でネクサスが生じるかを把握する

2021 年 5 月時点で、アメリカのすべての州に何らかの形でエコノミックネクサス法があります。通常は、取引または売上が一定の基準値を超えたときにエコノミックネクサスが生じます。多くの場合、そのような基準値は過去 12 カ月の企業活動に基づいており、州に納税登録を行う要件や期限もさまざまです。

この画像は、エコノミックネクサス法を制定しているアメリカの州を表しています。

ほとんどの州では、エコノミックネクサスの基準値として、過去 12 カ月の売上高が 10 万ドルまたは取引件数が 200 件という値が設定されています。ただし例外もあり、たとえば、テキサス州とカリフォルニア州では基準値を 50 万ドルとしています。

売上税のネクサスの基準値に達した場合、どのような手続きが必要か

現地の管轄区域においてエコノミックネクサスの基準値に達した場合、売上税を管轄する州機関のウェブサイトから徴収のための登録を行う必要があります。該当する管轄区域にまだ登録をしていないのであれば、徴収は行うべきではありません。登録要件は各州によって異なります。たとえばテキサス州では、州外の企業はエコノミックネクサスの基準値に達してから 4 カ月目の第 1 日までに登録する必要があります。ロードアイランド州では、エコノミックネクサスの基準値に達した翌年の 1 月 1 日までに売上税の登録をし、徴収を行い、納税を開始します。

販売しているのが、物理的な商品なのか、デジタル商品なのか、サービスとしてのソフトウェア (SaaS) 商品なのかによっても、各税法で課税対象になるかどうかが変わります。デジタル商品の例としては、電子書籍、オンラインコース、音楽ファイル、ウェブサイトのメンバーシップなどがあります。こうした商品の扱いは特に複雑です。すべての州がデジタル商品を課税対象としているわけではありません。課税対象とする管轄区域では、何がデジタル商品にあたるかについて独自の定義を設けています。

SaaS 商品はデジタル商品に含まれるものの、ダウンロードが必要ないこともあるため、課税対象にあたるかどうかは判断が分かれます。たとえば、コネチカット州では SaaS 商品の売上は 100% 課税対象ですが、カリフォルニア州では課税対象外です。また、テキサス州では SaaS 商品の販売価格の 80% が課税対象ですが、ダウンロードが必要なソフトウェアは全額課税されます。

2. 該当の管轄区域を確認し、税率を把握する

アメリカには 11,000 の税務管轄区域があり、それぞれに異なる規則があります。たとえば、アラバマ州だけでも 900 を超える税務管轄区域があり、テキサス州では 1,900 を超えます。残念ながら、税務管轄区域が少ない州において手続きの複雑さが軽減されるとは限りません。行政手続きや執行に大きな違いが生じることがあるためです。正確な税務申告を行うためには、各州や管轄区域を個別に調査する必要があります。

税率は販売するものや場所によって異なり、頻繁に変更されます。2021 年には、アメリカだけでも 600 件以上の税率変更が予定されていました。具体的には、バージニア州では一部の銃用保管庫への売上税が免除され、シカゴ市ではワインとボトル入り飲料水の EC ストアでの販売に対して課税が始まりました。

起点ベースと仕向地ベースの売上税率

エコノミックネクサスの基準値に達している場合、売上税の徴収には起点ベースと仕向地ベースの 2 つの考え方があることを理解しておくことが重要です。

起点ベースを採用している州にビジネスの拠点がある場合、その州の州税と地方税で売上税率が決まります。

一方で、仕向地ベースの州の場合、買い手の所在地 (または発送先住所) で売上税率を計算します。

簡易化された売上税および使用税協定 (SSUTA) は、企業が管轄区域を超えて納税義務を管理できるように設立された組織で、24 の州が参加しています。しかし、多くの州が参加していないため、州をまたぐ統一されたシステムが構築されているわけではありません。引き続き、各州が独自に設けているガイドラインには細心の注意を払う必要があります。

3. 税を申告して納付する

売上税の管理を管轄する州機関のウェブサイトにアクセスして、税の申告方法と、さらに重要な申告期間に関する詳細情報を確認します。申告期間は州によって異なり、また、申告頻度も企業の所在地や納税額によって大きく変わります。

テネシー州では、月々の納税額が 200 ドル以下の場合、売上税の申告は 1 年に 1 回です。しかし、納税額が 200 ドルを超えると、翌月の 20 日までに月次で申告する必要があります。たとえば、1 月の売上税は 2 月 20 日までに申告します。一方で、ニューヨーク州の税務財務局では、州内で販売を行う各企業の売上高に応じて、申告頻度 (月次、四半期、年次) を定めています。

Stripe にできること

Stripe Tax を使用すると、税務コンプライアンスの複雑さが軽減され、ビジネスの成長という本来の目的に集中できます。Stripe Tax は、アメリカの全州および 30 カ国以上で、物品とデジタル商品・サービスの両方に対する売上税、VAT、物品サービス税 (GST) の計算と徴収を自動的に行います。Stripe Tax は、Stripe に組み込まれているため、すぐに使用を開始できます。サードパーティーとの連携やプラグインは不要です。

売上税への対応を自動化するツールとして、Stripe Tax は以下のことを実現できます。

  • どこに登録すべきか、いつ税金を徴収するかを把握: Stripe で処理した取引に基づいて、どこで税金を徴収する必要があるかを把握し、ほんの数秒で新しい州や国での税金徴収を開始できます。既存の Stripe の実装にコードを 1 行追加するだけです。または、ボタンをクリックするだけで、Invoicing などの Stripe のノーコードプロダクトに税金徴収を追加できます。
  • 税金を自動的に徴収: 販売商品や販売場所にかかわらず、Stripe Tax が常に正しい税額を計算して徴収します。多数の商品およびサービスに対応し、税金に関する規則や税率を常時監視して情報を更新します。
  • 申告と納付が簡単に: Stripe は、申告場所ごとに項目別のレポートと税金サマリーを生成します。ご自身で、あるいは会計士または Stripe の申告パートナーを通じて簡単に税金を申告および納付できるように支援します。

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