ヨーロッパの顧客に商品やサービスを販売するすべての企業は、ヨーロッパに拠点を置いていない場合でも、付加価値税 (VAT) を回収する必要があります。欧州委員会は VAT の回収と支払いを簡素化する取り組みを行ってきましたが、企業が VAT の複雑さから完全に解放されたわけではないため、コンプライアンスを維持するのは難しい場合があります。たとえば、企業が (顧客に直接ではなく) EU 内の別の企業に販売する場合、販売されるものや両方の企業の所在地によっては、VAT を回収する必要がない場合があります。また、VAT の対象となるすべての販売について、税務当局は顧客の住所を確認するための追加データを収集することを義務付けています。
このガイドでは、EU 内の顧客に販売するビジネスを対象に、VAT および VAT ワンストップショップ (VAT OSS) の基本事項をお届けします。VAT の徴収時期と登録方法、VAT の計算方法と徴収方法、VAT の申告方法、さらに、Stripe Tax を利用した税法への準拠についてもご紹介します。
EU 付加価値税 (VAT) とは
付加価値税 (VAT) は、EU で販売されるすべてのデジタルおよび物理的な商品またはサービスに適用される消費税 (間接税) です。生産から POS までのサプライチェーン全体で、製品に価値が付加されるたびに請求されます。
実際に VAT が課される例を紹介します。
ある宝石商が高級 E-コマースの小売業者にネックレスを 23% の VAT 税率で 1,000 ユーロで販売します。小売業者はネックレス自体の費用に加えて、230 ユーロの VAT を宝石商に支払います。マークアップを追加した後、小売業者はネックレスをオンラインで 1,500 ユーロで出品します。決済時、顧客はさらに 23% の VAT を支払い、小売業者は 345 ユーロを回収します。最終的な取引が完了すると、小売業者は宝石商に支払った 230 ユーロの VAT を回収し、差額のみを税務当局に送金します。345 ユーロ − 230 ユーロ = 115 ユーロ。
商品に VAT が追加される一連の流れ
ヨーロッパの VAT 法に準拠することの重要性
非 EU の販売業者を含め、EU で物理的またはデジタルな商品やサービスを販売する企業は、現地の規制や法律に従って VAT を回収する必要があります。登録が遅れたり、まったく登録しなかったりすると、複利が加算されるだけでなく、多額の罰金やペナルティが科される可能性があります。たとえばオーストリアでは、VAT が支払われていない場合でも、企業が故意に VAT の登録を怠った場合、最大 5,000 ユーロの罰金が科される可能性があります。
VAT はアメリカで導入されている?
アメリカ合衆国では付加価値税は導入されていません。代わりに、州および地方政府が売上税を回収する責任を負っています。多くの企業は、売上税の規則や規制を確実に遵守するために特別な措置を講じる必要があります。アメリカの顧客に販売する際の税金の詳細については、アメリカの売上税とエコノミックネクサスのガイドをご覧ください。
ヨーロッパの付加価値税 (EU VAT) に準拠する方法
ヨーロッパの VAT 規則は、売り手の所在地、販売する商品、顧客の拠点、顧客が企業か個人かによって変わります。規制は国によって異なりますが、EU 内で販売する場合、VAT 規則に準拠する手順は常に次のようになります。
1. VAT と VAT OSS に登録する
各国の VAT 登録
EU では、VAT の登録と徴収のしきい値は、企業が拠点を置く国によって異なります。
たとえば、スペインでは登録のしきい値はありません。一方、アイルランドの企業には 2 種類の VAT しきい値があり、商品を販売する地元企業の場合は 85,000 ユーロ、サービスを販売する地元企業の場合は 42,500 ユーロです。このような国内登録のしきい値は、国内の企業にのみ適用されます。ヨーロッパ外に拠点を置く企業や、ヨーロッパ内で越境販売する企業は、初回の販売を行う前に登録が必要です。
1 つの EU 加盟国に拠点を置き、他の EU 加盟国の個人に物理的な商品やデジタル製品を販売する EU 企業には、1 つの免除が適用されます。これらの企業対消費者 (B2C) の販売において、企業は顧客の現地の税率ではなく、拠点国の税率で VAT を徴収します。EU 域内の年間の B2C 売上高が 1 万ユーロを超えると、販売先の税率が適用されます。EU の個人に販売を行う EU 外の企業には、同等の免除はありません。
VAT に登録すると、VAT 識別番号が割り当てられます。この番号は 4 桁から 15 桁で、2 文字の国コード (ベルギーの場合は BE、キプロスの場合は CY など) で始まり、その後に 2 文字から 13 文字が続きます。企業は、売上請求書に自社の VAT ID 番号を記載します。別の VAT 登録事業者に販売する場合は顧客の VAT ID 番号を収集する必要があります。
ヨーロッパの企業の場合の VAT OSS 登録 (連合スキーム)
複数の EU 加盟国の個人に販売 (B2C 販売) を行うヨーロッパの企業は、VAT One Stop Shop (VAT OSS) の Union スキームに登録できます。このプログラムは、EU 域内の複数の国にまたがる VAT の徴収と支払いのプロセスを簡素化するために作成されました。
VAT OSS に登録すると、商品やサービスをリモートで販売する各 EU 加盟国での登録が不要になります。EU 加盟国に拠点を置いている場合は、自国の VAT OSS ポータルで登録できます。徴収した VAT はすべて自国の税務当局に納付し、税務当局がこの VAT 収入を他の EU 加盟国に分配します。言い換えるならば、EU 全域に対して販売している場合、27 カ国それぞれ登録して申告するのではなく、1 カ国の VAT OSS に登録し、VAT OSS の納税申告書を一度で済ませることができるということです。
ヨーロッパ以外の企業の場合の VAT OSS 登録 (非連合スキーム)
EU に拠点を置いていない、EU の個人にデジタル製品を販売するすべての企業 (ブレグジット後のイギリス企業を含む) は、選択したヨーロッパの国の VAT OSS の non-Union スキームに登録できます。通常、EU 外の企業は、顧客の多くが拠点を置く国で登録するか、最も使いやすい登録ポータルを持つ国で登録することを選択します。EU 外の企業が VAT OSS に登録すると、EU で始まる形式の一意の VAT ID 番号が割り当てられます。
輸入ワンストップショップ (IOSS) への登録
EU の企業も EU 域外の企業も、EU の消費者に商品を販売していて、その商品が 150 ユーロを超えない範囲で委託販売輸入されている場合、IOSS に登録できます。IOSS スキームでは、売り手は販売時に購入者の国の VAT を請求することができます。このため、商品が EU に到着したときに国境で VAT が課されることはありません。EU 域外の企業はヨーロッパのどの国でも IOSS に登録できますが、EU の企業は法人を設立した国で登録する必要があります。IOSS の登録は任意です。EU 域外の売り手の場合、IOSS を利用するために仲介業者の任命を求められることがよくあります。
2. VAT を計算する
取引に課される VAT を計算するには、顧客のステータス (企業か個人か)、VAT を徴収する国、正しい VAT 率の 3 点を判断する必要があります。
顧客が企業 (B2B) か個人 (B2C) かを判断する
VAT を計算する前に、顧客が企業か個人かを判断する必要があります。これは、VAT を請求する必要があるかどうかを判断する重要なステップです。
顧客が有効な VAT ID 番号を提供した場合、その顧客を企業と見なすことができます。税金の不正利用を防止するために VAT ID 番号を検証する必要があり、これは VAT Information Exchange System (VIES) を通じて行うことができます。
ヨーロッパの企業が別の EU 加盟国の企業に販売している場合、たいていは VAT の請求は不要です。このような企業間 (B2B) 販売では、リバースチャージ方式 (買い手が売り手を通さずに政府に直接 VAT を納付する)、または VAT 率ゼロ (売り手は VAT を納付する必要がない) のいずれかが適用されます。
EU のビジネスが、EU 内で販売される物品とデジタルサービスの正しい VAT 率を判断する方法
VAT を徴収する国を判断する
クロスボーダー取引では、どの国が VAT を徴収すべきかを判断することが重要です。税金を徴収すべき国を判断するルールは非常に複雑で、サービスのタイプ、顧客の概要、商品の発送元の国、商品の発送先の国など、多くの要素によって決まります。
VAT 率を判断する
VAT 税率は EU 加盟国によって異なり、17% から 27% までの幅がありますが、すべて EU が義務付けている最低税率の 15% を上回っています。スイスは EU 加盟国ではなく、標準 VAT 税率は 8.1% と、近隣諸国よりもはるかに低くなっています。
ヨーロッパ各国で異なる VAT 率
各国が標準の VAT 税率を設定していることに加え、ほとんどの国では特定のカテゴリの商品やサービスに対して軽減税率や免除も設けられています。VAT 税率の多様性を考慮すると、現地の法律に従って販売する商品を分類できることが重要です。
デジタル商品の VAT 率
EU 法によると、デジタル商品とは以下の条件を満たすものを指します。
- 物品ではない。
- 商品がオンラインで提供される。
- 商品の提供時に人間の介在が最小限である。
- テクノロジーがなければ存在し得ない商品。
電子書籍、ゲーム、音楽、ソフトウェア、SaaS、ウェブサイトのホスティングなど多くの商品やサービスがこのカテゴリーに該当します。一般にデジタル商品は標準の VAT 率の対象となりますが、例外が適用されることもあります。たとえば、電子書籍の VAT 率は、オーストリアでは 10%、スペインでは 4% と低く設定されています。
物品の VAT 率
物品の VAT 率は、欧州委員会のウェブサイトで確認できます。取引によっては軽減税率、特別税率、または税率ゼロの対象となります。たとえばアイルランドでは、子供用のオムツや装飾のないロウソクなどの商品は非課税で販売されます。また、クロアチアでは、一部の食品の VAT 率が低く設定されています。
3. 買い手の所在地の証拠を収集する
買い手の所在地によって税率が大きく異なるため、政府から、買い手がデジタル商品を購入した時点で所在していた場所を確認する記録が求められます。通常は、デジタル商品を販売するたびに、顧客の住所を確認する証拠を 2 つ保管する必要があります。
この補足資料によって、企業や個人が間違った税率で請求や支払いをして脱税を犯す可能性が限定されます。顧客の居住地を確認し、正しい税率で請求と支払いが行われるようにするために、次のうち 2 つを収集して保管する必要があります。
- 銀行の所在地
- IP アドレス
- 請求書住所
- カード発行国
ただし、例外があります。デジタル商品の売上が年間 100,000 ユーロ未満の場合、必要な顧客情報は上記のうち 1 つのみです。これらの記録は、EU 法に従って 10 年間保管してください。
法人顧客に販売する場合は、VAT を請求しない場合でも VAT の請求書を発行する必要があります。販売側の企業は、自社の事業情報、販売価格と適用された VAT 率、買い手の名前と住所、VAT ID 番号などの記録を、当該国の規制当局が定めた期間にわたって保管する必要があります。
4. VAT 申告書を提出する
VAT 申告書の提出は、法令を遵守するために重要な手続きです。納付する VAT や還付を受ける VAT がない場合でも、期限内に申告書を提出する必要があります。顧客に請求した金額 (売上 VAT) とサプライヤーに支払った VAT 額 (仕入れ VAT) という 2 種類の VAT の申告が必要です。また、請求した VAT から支払った VAT を差し引く必要もあります。たとえば、宝石商から購入したネックレスを販売する小売業者の場合、宝石商に支払った 23% のVAT (230 ユーロ) の還付を受けることができます。申告書を提出する際には、最終顧客が支払った VAT (345 ユーロ) と最初に支払った VAT (230 ユーロ) の差額となる 115 ユーロのみを納付します。
申告書の書式と申告頻度は国によって異なります。申告頻度は年間売上高によっても異なります。たとえば、ドイツでは、標準の申告頻度は四半期ごとですが、前年の納税額が 7,500 ユーロを超えた売り手は毎月の申告、前年の納税額が 1,000 ユーロ未満の売り手は年に 1 回の申告が必要です。
OSS 登録を選択した場合は、登録国で四半期ごとに OSS 申告書を提出する必要があります。この申告書に加えて、国内の VAT 申告書を提出する必要があればそれも合わせて提出が必要です。OSS 申告書には、すべての EU 加盟国の顧客に対する OSS 対象の売上額と、それぞれの VAT 額を記載します。VAT OSS の登録国ですべての VAT を納付すると、その国の税務当局が申告者に代わって VAT 収入を他の国に配分します。
正しい金額の VAT を申告しないと、税金の徴収と納付が求められていたすべての国で追徴金と罰則が科せられる可能性があります。たとえば、ポルトガルでは、VAT を正しく申告しなかった場合、最大 3,750 ユーロの罰金が科せられることがあります。ドイツでは、VAT の申告が遅れると、VAT 額の最大 10% の罰金が科せられ、上限は 25,000 ユーロです。
Stripe Tax でできること
Stripe は、マーケットプレイスがオーバーヘッドを減らし、成長する機会を増やしながら、強力なグローバル決済サービスおよび金融サービスのビジネスを構築および拡大できるよう支援します。Stripe Tax は、グローバルな税務コンプライアンスの複雑さが軽減されるよう設計されているため、その分、ユーザーはビジネスの拡大に専念できます。これを使用すると、アメリカのすべての州と 100 カ国以上で、物理的およびデジタルの商品とサービスの両方に対する売上税、VAT、GST が自動的に計算され、徴収されます。Stripe Tax は Stripe にネイティブに組み込まれているため、サードパーティとの連携やプラグインを必要とせず、すぐに使い始めることができます。
Stripe Tax は、次のような場面でお客様のビジネスを支援します。
- 税金を登録して徴収する必要がある場所を理解する: Stripe の取引に基づいて税金を徴収する必要がある場所を確認します。登録後は、新しい州や国での税金の徴収を数秒で有効にできます。既存の Stripe のシステムにコードを 1 行追加するだけで開始できます。また、Invoicing などの Stripe のノーコードプロダクトには、ボタンをクリックするだけで税金徴収を追加できます。
- 税務登録: アメリカで事業を行っている場合は、Stripe に税務登録の管理をお任せください。申請の詳細を事前入力するシンプルなプロセスにより、時間を節約し、現地の法令遵守を簡素化できます。アメリカ国外に事業拠点を置いている場合は、Stripe は、Taxually と提携して現地の税務当局への登録を支援します。
- 税金の自動徴収: Stripe Tax により、納付すべき税額が計算され、徴収されます。数百種類の製品とサービスをサポートしており、税制や税率の変更にも常に最新の状態で対応しています。
- 申告と納付を簡素化: Stripe の信頼できるグローバルパートナーを利用すると、Stripe の取引データとシームレスに連携するメリットを活用できます。これによりユーザーは、申告の管理をパートナーに任せて、ビジネスの成長に専念できます。
Stripe Tax についてもっと知る。