イギリスの決済スキーム: CHAPS、Bacs、Faster Payments の選び方

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成長中のスタートアップからグローバル企業まで、あらゆるビジネスに対応できる決済ソリューションを利用して、オンライン決済、対面支払いなど、世界中のあらゆる場所で決済を受け付けます。

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  1. はじめに
  2. イギリスの主要な決済スキーム
    1. Bacs
    2. CHAPS
    3. Faster Payments
  3. イギリスの各決済スキームの特徴
    1. スピードと決済にかかる時間
    2. 利用可能な日時
    3. 取引限度額
    4. 手数料
    5. ユーザー体験と接続の容易さ
  4. CHAPS と Faster Payments のどちらを使用すべきか
    1. CHAPS
    2. Faster Payments
  5. 決済にかかる時間と限度額がもたらす影響
    1. 中小企業 (SME)
    2. Eコマースとプラットフォーム
    3. 大企業

イギリス国内での資金移動は一見簡単そうですが、資金の経路選定はお客様に重大な影響をもたらす可能性があります。お客様が選択する手段は、タイミング、費用、リスク、キャッシュフローを左右します。Bacs、CHAPS、Faster Payments をご利用の際には、その時々でどの決済手段が理にかなっているか、そしてそれはなぜなのかを知る必要があります。お客様が自信を持って選択を下すために知っておくべきことについてご説明します。

この記事の内容

  • イギリスの主要な決済スキーム
  • イギリスの各決済スキームの特徴
  • CHAPS と Faster Payments のどちらを使用すべきか
  • 決済にかかる時間と限度額がもたらす影響

イギリスの主要な決済スキーム

イギリスの国内決済インフラは、三大スキームを中心に構築されています。それぞれのインフラには、次のように独自の強みと制約、最適なユースケースがあります。

  • Bacs は、給与振込や口座振替といった少額の支払いを大量に実行するための標準的手段です。バッチ処理の効率とコスト管理を重視しています。

  • CHAPS は、決済を確実に実行しなければならない大口の当日送金に使用されます。高額の資金を時間厳守で確実に届けます。

  • 100 万ポンド未満のリアルタイム送金に最適な決済スキーム Faster Payment は、24 時間年中無休で利用できます。スピードと利便性に優れ、少額の支払いを即時に実行します。

事業者は、キャッシュフローの管理、資金の引き出し、代金回収のための基本ツールとして、これら 3 つのスキームを活用しています。 それぞれのスキームの特徴を詳しく見てみることにしましょう。

Bacs

3 つのスキームの中で最も古い歴史を持つ Backs は、今なおイギリス国内で毎年数十億件にのぼる支払いを支えています。Bacs は次のような取引を処理します。

  • ダイレクトクレジット (給与、サプライヤーへの支払い、福利厚生によく利用されます)

  • 口座振替 (顧客から継続支払いを受ける際に利用されます)

Bacs の処理サイクルは常に 3 日です。1 日目に支払いリクエストが出され、2 日目に支払いが処理され、3 日目に資金が受取人の口座に移ります。1 取引あたりの手数料はごく少額で、大量のバッチ処理に対応します。

Bacsは、急ぎではない予測可能な定期的支払いに最適です。雇用主が給与を支給する、サービスプロバイダーが月額料金を徴収するなど、即時性よりも取り扱い手数料のほうが重視される商取引に最適です。

CHAPS

CHAPS (Clearing House Automated Payment Systemの頭文字) は、イギリスの高額当日決済システムです。イングランド銀行のリアルタイム即時決済システムを介して運用される CHAPS は、他のスキームには金額が大きすぎる決済や急ぎの決済を処理する目的で構築されました。取引額に上限はなく、資金は当該営業日中に決済されます。営業時間内のみ利用可能で、通常は送金の都度、高額の手数料がかかります。

CHAPS による決済は取り消しがきかず、リアルタイムで処理されます。これは不動産代金の決済、大口の企業決済、納付期限が迫っている納税、高額な資金移動や銀行間送金に適しています。手数料が高額である上に平日しか利用できないため、ほとんどの事業者は、取引金額が大きい場合や急いでいる場合のみ CHAPS を選択します。

Faster Payments

Faster Paymentsは、イギリスの 24 時間年中無休リアルタイム決済ネットワークです。通常、決済は数秒で処理されます。週末や祝日を含め、365日いつでも利用できます。

このスキームには、1 決済につき 100 万ポンドの限度額が設けられています (上限をこれより低く設定している銀行もあります)。利用手数料はかなり割安で、通常 Bacs よりは高いものの、CHAPS よりも低額です。

今では、日々のビジネスや個人取引に Faster Payments が当たり前のように使われるようになりました。請負業者への支払いから、顧客への返金、口座間の資金移動まで、多くの送金に使われています。また、銀行口座からの直接決済など、多くのオープンバンキングユースケースの基盤となるインフラストラクチャも提供しています。

イギリスの各決済スキームの特徴

イギリスの三大決済スキームは、スピード、手数料、限度額、利用可能な日時が異なります。それぞれの決済スキームは、特定の種類の取引に合わせて設計されています。ここで比較してみることにしましょう。

スピードと決済にかかる時間

Bacs の処理サイクルは常に 3 営業日です。

CHAPS は、当該営業日中 (通常、数時間以内) に決済を処理します。

Faster Payments は通常、数秒以内に決済を処理します。

利用可能な日時

Bacs と CHAPS が利用できるのは、イギリス国内の営業時間中のみです。金曜日の営業終了後に CHAPS で送金しても、資金は月曜日の朝まで動きません。また、どちらも銀行休業日は利用できません。

Faster Payments は、週末も平日も昼夜を問わず常時稼動しています。イギリスで唯一、24 時間年中無休で利用できる送金方法です。

取引限度額

CHAPS は公式な取引限度額を設けていません。必要であれば、何百万ポンドでも送金することができます。

各銀行は Bacs での送金に独自の上限 (通常は 5 万ポンドから 25 万ポンド) を設定しています。

Faster Payments はスキーム全体で取引 1 件につき 100 万ポンドの上限を設けていますが、銀行は独自の限度額をこれより低く設定する場合があります。大口ユーザーや信頼度の高いユーザーは、Faster Payments でこれを上回る限度額を認められることがありますが、一定額を超える取引には CHAPS のほうがよく使われます。

手数料

手数料が一番割安なのは Bacs です。給与振込、口座振替、サプライヤーへの支払いといった大量送金シナリオに最適です。

三大スキームの中で最も手数料が割高なのは CHAPS です。銀行は一般に送金の都度、高額の手数料を課します。

Faster Payments は割安な送金方法です。手数料は通常、Bacsより若干高めです。ビジネス用銀行口座に紐づけできます。

ユーザー体験と接続の容易さ

事業者は、銀行、Bacs 承認ビューローまたは決済サービスプロバイダー (PSP) を通じて Bacs ネットワークにアクセスすることができます。たとえば、Stripe は、決済手段として Bacs ダイレクトデビットを提供しています。

CHAPS では通常、手動での設定または銀行の内部プロセス (セキュリティチェックや口頭での確認など) が必要です。

事業者は、銀行または PSP の Pay by Bankを介して Faster Payments を利用することができます。特別な設定は必要ありません。

CHAPS と Faster Payments のどちらを使用すべきか

CHAPS と Faster Payments はどちらもスピード重視で設計されていますが、念頭に置かれているニーズは異なります。どちらを選択すべきかは、送金の金額とどれだけ急いでいるかによって決まります。ここでは、ケースバイケースでどちらのスキームを使用すべきかについて説明します。

CHAPS

  • 支払い金額が、Faster Payments がスキーム全体で設けている 100 万ポンドの限度額を超えている場合。たとえば、サプライヤーに 200 万ポンドを送金する場合は、CHAPS を使ってください。

  • 急ぎの場合。銀行の締め切り時間より前に送金が完了している限り、CHAPS は当日決済を保証します。したがって、不動産の代金決済、多額の納税、資金移動といった急ぎの決済に最適です。

  • 取り消し不能の決済が必要な場合。CHAPS で一旦支払いが決済されると取り消しはできません。これは金額が大きい場合の決定的な利点です。

  • 事業者の営業時間がイギリスの標準的な営業時間である場合。CHAPS は夜間、週末、祝日には動きません。その日の締め切りに間に合わなければ、翌営業日まで支払いは処理されません。

Faster Payments

  • 金額が限度額以下で急ぎの場合。日常的な支払いは、ほとんどが数秒で完了します。

  • 銀行の営業時間外に送金したい場合。Faster Payments は、週末、祝日、営業時間外を含め、いつでも利用できます。

  • コスト重視の場合。Faster Payments の手数料は CHAPS より割安です。1 週間に 10 件以上の送金を実行し、当日に確定する必要がないのであれば、手数料の差は考慮に値します。

  • ユーザー体験を重視する場合。Faster Payments では、イギリスのオンラインバンキンググポータルから直接送金を開始できます。

実際には、多くの事業者がルールを定めています。たとえば、100 万ポンド未満は自動的に Faster Payments で送金し、Faster Payments で対応できない金額については CHAPS を利用するといったルールです。社員が支払いの経路を正しく選定し、遅延や不要な手数料が生じないようにするために、これらのルールを財務システムに直接組み込んでいる事業者もいます。

決済にかかる時間と限度額がもたらす影響

決済にかかる時間と取引限度額は、キャッシュフローから顧客体験まで、あらゆることに影響する可能性があります。その影響は、事業者の規模、業種、支払いプロセスの設定によって異なりますが、これらの要因は、あらゆる面で日々の意思決定を形成します。

決済にかかる時間は流動性に直接影響します。決済にかかる時間が短いほど、短期借入を行ったり、準備金を留保したりする必要性は小さくなります。一方、スキームの限度額は、大抵の場合、国外向け支払いの妨げになります。高額取引をどのように組み立てるか、自動送金を利用できるどうか、あるいは手動での送金が必要かどうかは、そのスキームの限度額に左右されます。

決済にかかる時間と取引金額に関する要件は、事業者の規模やタイプによって異なります。 ここでは、一般にこれらの要因が、決済に関する各種事業者の決定にどう影響するかについて説明します。

中小企業 (SME)

Faster Payments の決済にかかる時間と限度額は、中小企業に適していると思われます。

Faster Payments は即時に決済を処理します。つまり、中小企業は即日資金を受け取って支出に充てることができます。Bacs の場合は 3 日間待たなければならないため、当座貸越や業務の遅れが発生するおそれがあります。

また、Faster Payments を利用すれば、中小企業側もリアルタイムで対応することができます。土曜の夜に請負業者への支払いを行わなければならない場合でも、振り込みは数秒で完了します。少人数のチームが速やかに動き、支払いを常時実行することができます。銀行取引に遅れが生じることはありません。

1 回の取引で多額の資金を日常的に移動させることがない中小企業にとって、100 万ポンドの限度額は障害になりませんが、特に口座を新しく開設したばかリの場合や、ビジネスと言える段階にないような場合は、銀行内部で定められた限度額を超えてしまう可能性があります。緊急の支払いが発生したときに立往生しないように、前もって確認しておくことをお勧めします。

Eコマースとプラットフォーム

Eコマースの事業者とプラットフォームは、Faster Payments の処理時間が短いことを重視しているので、一般に限度額に悩まされることはありません。

オンラインビジネスは、Faster Payments で支払いを受け取れば、注文確定からフルフィルメントまでを速やかに進めることができます。顧客が即日配送や即時返金を希望する場合、これは特に重要なことです。入金に関して言えば、プラットフォームやマーケットプレイスが Faster Payments を使って売り手に代金を支払うケースが多く見受けられます。資金を速やかな受け取りは、売り手の定着率を高めると考えられます。

ここで限度額が問題になることはほとんどありません。大半の E コマース決済は、Faster Payments の限度額を大きく下回ります。また、プラットフォームレベルの支払いは、必要に応じて複数の支払いに分割することが可能です。

大企業

大企業は、これら 3 つのスキームすべてを利用しますが、その使い方は戦略的です。

Bacs は、給与振り込み、ベンダーへの一括支払い、口座振替といった大量の反復的取引に現在も活用されています。企業が前もって計画を立てる限り、3 日がかりというサイクルは障害になりません。スピードや金額が重視される場面では、Faster Payments と CHAPS が使われます。サプライヤーへの急ぎの支払い、クライアントへの返金、1 日の締めの送金はいずれも迅速な処理を必要とします。

一般に、大企業は銀行との直接的連携が強く、正式な決済コントロールを行っているため、支払いを分割する、CHAPS による取引を事前に計画する、大きなバッチの経路を動的に選定するといった方法で、スキームの制約を回避することができますが、それでも限度額は問題です。ある企業が 100 件の支払いを一括で実行したものの、あと 2 件が Faster Payments の限度額を超えてしまうという場合は、CHAPS で別途処理しなければなりません。財務チームは、多くの場合、円滑な処理のために企業資源計画 (ERP) や財務システムにしきい値ルールを組み込んでいます。

この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。

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