定期料金を支払って期間限定でサービスや商品を利用できるサブスクリプションは、私たちの生活にもはや欠かせないものとなっています。また、サブスクリプション市場は今後も成長を続けると予想されており、適切な決済手段が利用できることは、サブスクリプションビジネスを成功させる上で重要な要素となります。
本記事では、決済手段の種類の説明をはじめ、サブスクリプションビジネスに適した決済手段、それらについて考慮すべき重要なポイントなどを解説していきます。
本記事の内容
- サブスクリプションの決済手段
- サブスクリプションサービスを提供している企業・業界
- ユーザー目線でのサブスクリプション決済の長所と短所
- ビジネスオーナー目線でのサブスクリプション決済の長所と短所
- サブスクリプションサービスの決済手段を選択する際の考慮事項
- サブスクリプションの決済手段を導入する際の考慮事項
- 適切な決済手段の選択
サブスクの支払い方法
顧客が希望する支払い方法に対応していないと、サブスクサービスの利用を断念される可能性があります。サービスに適した支払い方法を導入することは、サブスクリプションビジネスの成功に不可欠です。それでは、どのような支払い方法を用意すべきか、詳しく見ていきましょう。
クレジットカード
クレジットカードは EC サイトで最も利用されている支払い方法であり、サブスクビジネスでも必須の支払い手段です。
1 回限りの支払い方法と違い毎月自動的に請求が行われるため、サービスのキャンセルを心配する必要がなく、その手軽さから多くのユーザーに好まれています。また、クレジットカード会社が提供するキャッシュバックやポイント還元などのキャンペーンを活用するため、支払いをクレジットカードに集中させる消費者も少なくありません。
事業者側にとっても、クレジットカード決済は、決済日に自動で請求処理が可能なため、管理の手間を大幅に軽減できます。このように、クレジットカードはユーザーと事業者双方にとって利便性の高いサブスクの支払い方法と言えるでしょう。
デビットカード
多くのサブスクリプションサービスでは、デビットカードも利用可能です。VISA デビットや Mastercard デビットなど、国際ブランドが付いたカードであれば、使用できる場合が多いです。ただし、発行銀行によっては利用制限がかかるなど、使用できないケースもあるため、注意が必要です。
また、セキュリティの面で不安を感じる消費者も一定数存在し、特にオンラインでの使用を控えるユーザーもいます。そのため、クレジットカードやデビットカード以外の支払い方法を用意することが重要です。
キャリア決済
携帯電話の料金と一緒に支払いができるキャリア決済は、日本では、NTT ドコモ、ソフトバンク、auなど、主要な携帯キャリアが提供しています。
クレジットカードを持っていない未成年を中心に利用されるため、サブスクの対象が若年層の場合にキャリア決済の導入は不可欠と言えるでしょう。
ID 決済
ID 決済とは、あらかじめ登録された外部サービスの ID やアカウントを使って支払いを行う方法です。PayPay、Amazon Pay、楽天 Pay などがこれに該当します。顧客は EC サイトでクレジットカード情報や氏名などを入力する手間を省くことができます。
ただし、キャッシュレス決済の利用が増えている一方で、オンラインでのサブスク支払いに対応していない場合もあるため、導入時には利用可能な範囲を確認することが重要です。
口座振替
口座振替はユーザーの銀行口座をあらかじめ登録し、毎月、自動的に引き落としが行われる支払い方法です。一度登録すれば毎月の支払い手続きを行う必要がなく、手数料もかかりません。この方法は、都度課金が発生するサブスク型の支払いと非常に相性が良いとされています。。
コンビニ決済
コンビニ決済はオンラインでのクレジットカード利用に抵抗がある人や、特定の携帯キャリアを利用していないユーザーに人気のある支払い方法で、日本では非常に広く利用されています。しかし、都度課金が発生するようなサブスクの支払い方法には不向きなため、コンビニ決済に対応していないサブスクサービスも多く見られます。
後払い決済
購入した商品やサービスを先に受け取り、後日銀行やコンビニなどで代金を支払う仕組みの支払い方法です。クレジットカードを使用せず現金払いができるメリットがありますが、支払い期限が短く利用可能額に制限があるというデメリットもあります。
また、コンビニ決済と同様、サブスクリプションの支払い方法に対応していない場合が多いことを理解する必要があります。
ギフトカード
日本国内のサブスクリプションの支払いにギフトカードが利用できる場合があります。例として、Apple ギフトカードを Apple ID にチャージして支払いを行ったり、Amazon ギフトカードを使用して Prime 会員費用を支払うことができます。
ただし、サブスクサービスの利用時は残高が十分にあるか定期的な確認が必要になります。残高不足で支払いがうまくいかない事態を避けるためには、別の支払い方法を登録するか、チャージ可能なギフトカードに変更するなどの対策が必要です。
プリペイドカード
あらかじめチャージした分だけ使えるカードです。クレジットカードのように登録することでサブスク支払いができる場合が多くあります。クレジットカードや銀行口座の登録を避けたい消費者にとって、プリペイドカードは便利な決済手段になります。しかし、継続的な自動引き落としに対応していないサービスも多いため、利便性に欠けることもあります。
サブスクサービスを提供している企業や業種
サブスク向けの決済方法は次のようなビジネスによく利用されています。
動画・音楽ストリーミングサービス
Netflix、Amazon Prime、Spotify のように、定額料金を払うことで、映画、ドラマ、アニメなどの映像コンテンツや、音楽のストリーミングサービスを受けられます。月額料金も比較的低価格に抑えれているため、利用しやすいのが特徴です。
消費者は、トライアルやブラックフライデーなど、無料サービスや大きく割引を受けられる時期を利用し、賢く使い分けをしている印象があります。
クリエイティブクラウド
Photoshop や Illustrator などで有名な Adobe Creative Cloud や Canva など、デザイン関連のクリエイティブツールは初心者からプロまで幅広く利用されています。無料トライアルの期間を設けている場合も多く、はじめにツールを使いこなせるかどうか試すことができるため、初心者でもサブスクに登録しやすくなっています。
スポーツジム
スポーツジムは健康志向の人を中心に広く利用されていますが、ほとんどのフィットネスジムで月額制のプランを提供しています。近年では、自宅でトレーニングが行えるオンラインフィットネスのサブスクサービスも増加しており、ジムに通わずともトレーニングが可能になっています。
ユーザー側のサブスク支払いのメリット・デメリット
サブスク支払いにはメリットも多くありますが、一方でデメリットもあります。導入前にメリットとデメリットを正しく理解しておきましょう。
まずは、ユーザー側のメリットとデメリットを解説します。
メリット
- いつでも解約可能 - 必要なくなった時点で解約することができる。たとえば、スポーツのシーズン中だけ動画サービスを利用したり、初期の無料トライアルのみ試したりと柔軟な使い方が可能。
- 家計管理がしやすい - 定額制で月々の支払い額が一定のため、予算計画が立てやすくなる。
- 最新のサービスを利用できる - コンテンツは定期的に更新されるため、常に新しいコンテンツやサービスを利用することができる。
デメリット
- 支払い方法が限定的 - サービスにより、希望する支払い方法がない可能性がある。
- 使用せずとも料金は発生 - サービスをほぼ利用しなくても費用は通常通り発生する。
- 複数のサブスクを契約しがち - サブスクの費用は低く抑えられていることが多いため、複数のサブスクを契約してしまう。
事業者側のサブスク支払いのメリット・デメリット
つづいて、事業者側のメリットとデメリットを見ていきましょう。
メリット
- キャッシュフローの安定性 - 定期的な収益が見込めるため、事業運営の資金繰りが安定する。
- LTV の向上 - 長期的な顧客関係を育めれば、LTV (顧客生涯価値) を最大化できる。
- 支払い遅延の減少 - 期日に入金を見込めるため、支払いのタイムラグが減少する。
デメリット
- 導入時のコスト - 決済システムの導入時に初期投資が必要になる。
- 支払い失敗リスク - カードの期限切れや残高不足による支払い失敗のリスクが伴う。
- 解約のリスク - 簡単に解約可能なため、解約されない努力を常に行う必要がある。
サブスクの支払い方法を選定する際のポイント
サブスクの支払いは定期的、かつ長期利用を想定しています。選ぶ際のポイントを解説します。
クレジットカード以外の支払い方法
クレジットカードを持っていない若い世代や、クレジットカードは持っていても使用したくない消費者への対応を考えましょう。そのような消費者はクレジットカード以外でどの支払い方法を希望するでしょうか。世代により、選択する支払い方法は大きく異なることが予想されます。自社のサービスや商品がどの世代に向けたものかを考慮し、どの決済方法を選択すべきかを判断します。たとえば、自社の商品が若年層をターゲットしている場合は、クレジットカードを持たない学生向けに、キャリア決済や ID 決済のオプションがあればよりよいと言えるでしょう。
自動化に対応しているかどうか
サブスクの請求は、継続的に行われます。サービスへの登録者数が多くなればなるほど、決済の手間やミスを減らすために、それにまつわる業務はできるだけ自動化するのが得策です。
決済代行サービス
支払い方法が多い場合、各決済サービスと直接契約するのは手間も時間もかかり、決して効率がよいとは言えません。そんな時、決済代行業者を利用すれば、企業の代わりに決済会社と契約手続きを行ってくれるため、大幅に手間を減らすことができます。
ただし、決済代行業者で自社が希望する決済手段を取り扱っていなければ意味がありません。また、手数料や料金形態も自社の売上高や今後の成長に見合ったものかどうかの確認が必要です。また、顧客の決済データの保護など、取引の安全性が保証されているかどうかにも注意を払う必要があります。
サブスクリプションの決済手段を導入する際の考慮事項
ここでは、サブスクリプションの決済手段を導入する際の注意点をご紹介します。
サブスクリプション管理に重点を置く
通常、サブスクリプションの支払いサイクルは顧客ごとに異なり、支払い日についても皆が同じ日になるというわけではありません。そのため、請求サイクルは柔軟に対応することが重要です。企業は、顧客のサブスクリプションプランの更新や変更に迅速に対応できることが求められます。また、支払いが失敗した場合に自動で再試行するバックアップシステムも用意しておく必要があります。
さらに、ビジネスオーナーが定期的かつ円滑に請求を行うためにはサブスクリプション管理機能が不可欠です。利用するソリューションを決定する前に、使用可能な管理機能を確認してください。
地域に応じた決済手段を導入する
顧客が信頼する決済手段は、それぞれの地域で異なります。例えば、日本ではコンビニエンスストアでの現金払いがとても利用されています。また、クレジットカードを持っていない若者は、キャリア決済を利用することが多いです。他の国ではこれらの決済手段は一般的でなく、国によっては利用すらできません。
このように、決済手段には日本独自のものもあったりするので、海外進出を検討している企業は、事業を行う地域でどの決済手段が利用できるかを確認しておくとよいでしょう。
セキュリティ対策を講じる
選択した決済手段のセキュリティは、会社に対する顧客の信頼に直接影響します。データ漏洩や不正アクセスのリスクを最小限に抑えるには、決済手段の安全性を確保することが重要です。
たとえば、Secure Sockets Layer (SSL) と Transport Layer Security (TLS) を実装して、すべての通信を暗号化するなどの手段を取ることができるでしょう。ウェブサイトを作成する際も、必ず HTTP ではなく HTTPS を使用するようにしてください。
また、サイトが国際基準である PCI データセキュリティ基準 (PCI DSS) に準拠しているかどうかも確かめる必要があります。さらにセキュリティを強化したい場合は、3Dセキュア、AI ベースの不正検知システム、カード情報のトークン化などのシステムを実装してみてください。
自社に合ったサブスクの決済方法の選択
サブスクにはさまざまな決済方法がありますが、成功の鍵は自社に適した決済手段を選ぶことです。顧客の満足度を高めるためには、決済方法の選択肢が多い方が望ましいでしょう。
多数の決済方法を導入する際は、個別に契約するよりも、決済代行サービスを利用する方が、手間や経費の削減につながります。特にサブスクリプションビジネスを拡大する際には、決済代行サービスが提供する管理機能やセキュリティ対策が十分であるかを確認することが重要です。
Stripe はサブスクリプションの支払いを含むオンライン決済を提供する決済代行会社です。プロダクトのひとつである、Stripe Billing は、自動課金や継続課金、顧客管理、多様な支払い方法をサポートし、サブスクリプションビジネスに不可欠な機能を備えています。また、グローバル展開を見据えた多通貨決済にも対応しており、国際的なビジネスにも適しています。さらに、PCI DSS にも準拠しており、高いセキュリティ基準を満たしているため、安心して利用できます。
サブスクリプションビジネスの拡大を目指すなら、Stripe の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。