アメリカでの会社設立を考えているドイツ人には、幅広い法人形態のオプションがあります。その一つが有限責任事業組合 (LLP) です。これは特に国際的な業務を行う法律事務所や税務コンサルタントに適しています。
この記事では、LLP とは何か、有限責任会社 (LLC) や株式会社と何が違うのかをご説明します。また、ドイツで LLP に相当するもの、アメリカで LLP を設立する方法についてもご説明します。
目次
- アメリカの LLP とは
- 有限責任事業組合 (LLP)、有限責任会社 (LLC)、株式会社の違いは何ですか?
- ドイツの法律事務所はどのような法的形態を採用していますか?
- ドイツで LLPに相当するものは何ですか?
- LLP を設立するには
- Stripe Atlas でできること
アメリカの LLP とは
有限責任事業組合 (LLP) は、アメリカやイギリスの法律に基づいて設立された組合形態です。有限責任会社(LLC)と同様に、LLP は組合の特性と 株式会社の利点 を兼ね備えています。LLP の特徴は責任が制限されていることです。一般的に、個人のパートナーが責任を負うのは、その人自身の不正行為や義務に対してのみで、他のパートナーの行動については責任を負いません。しかしながら、州ごとにいくつかの違いがあります。
法人形態としてLLP が選ばれるのは、建築事務所、法律事務所、税理士、会計監査人といった 個人事業者 です。実際、アメリカのいくつかの州では、LLP がフリーランスの専門職向けの法人形態と明確に定められているため、これらの業界で広く用いられています。
ドイツの個人または企業も、一定の条件下でアメリカで LLP を設立することができます。LLP は完全に対等なパートナーとして事業を経営したい創業者にとって非常に魅力的な形態です。すべてのパートナーが事業を直接経営することができ、LLP の収益と損失もすべてのパートナーの間で比例配分されます。税務上、アメリカの LLP は透明課税の対象とみなされ、収益は会社レベルではなく個人のパートナーレベルで課税されます。パートナーはドイツでも納税義務を負う場合があります。そのため、LLP の設立時には信頼できる税務アドバイスを受けることが重要です。
有限責任事業組合 (LLP)、有限責任会社 (LLC)、株式会社の違いは何ですか?
アメリカで会社を設立する場合、LLP、LLC、そして一般的な 株式会社 など、様々な法人形態 があります。株式会社は通常その名称に “Inc.” または “Incorporated” が含まれています。これら 3 つの法人形態の主な違いは、責任の取り扱い、意思決定方法、利益課税などです。
LLP では責任は各パートナーの義務に限定されており、柔軟かつ共同で経営することが可能です。利益は個々のパートナーの所得として課税されます。
それに対して、LLC では責任が限定されるほか、税制面でもより柔軟です。LLC は透明課税されるパートナーシップとして扱うことも、また希望すれば法人として扱うこともできます。事業の経営方法についても自由があります。パートナーが経営することも、外部の経営者が経営することも可能です。さらに、LLC は特定の職業に限定されないため、幅広いビジネスモデルに適用することが可能です。
株式会社はもっと形式化された会社形態です。特に C 株式会社は独立した法人格として組織され、自らの義務に責任を負い、法人税 を法人レベルで支払う義務があります。さらに、株主に支払われる配当金は個人レベルで課税されます。S 株式会社はパススルーで課税されますが、C 株式会社は二重課税となります。株式会社が特に適しているのは、大規模な資本を必要とする高成長企業です。
法的形態 |
最適な用途 |
責任 |
経営 |
課税 |
---|---|---|---|---|
LLP |
パートナーシップ、フリーランサー |
自己の不正行為についてのみ責任を負う |
完全に対等なパートナー |
透明課税 (利益はパートナーに帰属して課税される) |
LLC |
個人、小規模企業、パートナーシップ |
個人責任なし |
柔軟な運営方法 (株主または経営陣が管理) |
透明課税型か法人課税型かを選択する |
C 法人 |
成長企業 |
個人責任なし |
組織化されている (取締役会と役員がある) |
二重課税 (会社利益と配当の両方に課税) |
ドイツの法律事務所はどのような法的形態を採用していますか?
ドイツには約 64,000 社の法律相談所 があります。その 4 分の 3 以上が 個人事業主 (Einzelunternehmen) ですが、法律事務所の法人形態は他にもあります。
LLP は国際的な業務を行う法律事務所に適した法人形態です。国内業務に注力する小規模の法律事務所は、民法上の組合 (GbR) として合併し、法律事務所(Sozietät) を設立することがよくあります。この形態では、すべてのパートナーが事務所の債務について個人的に、無制限に、かつ連帯して責任を負います。
もう 1 つの法人形態として、登録制パートナーシップ (Partnergesellschaft, or PartG) があります。PartG の場合、フリーランスの専門家が事業資産と個人資産に対して責任を負います。ただし、その責任は規定することができ、問題となる業務に関与していなかった場合には、パートナーの個人資産は手つかずのまま残すことができます。この法人形態の特殊な形として、限定専門職責任付き PartG (PartG mbB) があります。これは個人の責任がないという点で、従来の PartG と異なります。
有限責任会社 (GmbH)、公開有限責任会社 (AG) のような株式会社も、特に大規模な法律事務所の場合、法人形態の選択肢となり得ます。ドイツでは弁護士はフリーランスの専門職とみなされるため、株式会社の設立が認められるのは、すべてのオーナーとマネージングダイレクターが該当する専門資格を持っている場合に限られます。GmbH の利点は、会社資産に対する責任に限定されるため、関係者個人のリスクが軽減されることです。
ドイツで LLP に相当するものは何ですか?
アメリカの LLP に最も近いのは、ドイツでは PartG です。どちらもフリーランサーの組合に適しています。組合員はパートナーのミスに対して責任を負いません。PartG の方はさらに一歩進んで、業務上の責任も会社の資産に限定しています。
ドイツ連邦法曹協会 (BRAK) の数値によると、ドイツの法律事務所の大半が PartG mbB を採用しています。ドイツで登録されている 5000 を超える専門家団体のうち、約 3,300 団体が PartG mbB として業務を行っています。
LLP を設立するには
アメリカでは州によって会社設立の要件が大きく異なります。そのため、アメリカで LLP を設立するドイツ人は、設立を希望する州の申し込み条件を理解する必要があります。ただし LLP 設立のプロセスは一般的に次のようになっています。
希望する州を選び、会社名を確認する
まず、法人を設立したい州を選択し、適切な会社名を選びます。既に使用されている名称は使えず、また商標権を侵害するものであってはなりません。さらに、「LLP」という表記が含まれている必要があります。
パートナーシップ契約書の作成
パートナーシップ契約書には、LLP を運営する上での主要な細則が含まれます。具体的には、議決権、新規パートナーの選定、業務分担、利益配分、責任規定などが定められます。通常、この契約書を公的機関に提出する必要はありませんが、書面で明確にしておくことが強く推奨されます。
会社設立書類の提出
会社設立に必要な書類をすべて作成します。その中には、内部組織や個人パートナーの権利と義務を規定するパートナーシップ契約書や定款が含まれます。さらに、事業の詳細やメンバーに関する情報も記載します。作成した書類を該当する州当局 (通常は州務長官) に「有限責任事業組合設立証明書」として提出します。
登録代理人の選任
LLPは、「登録代理人」と呼ばれる正式な担当者を任命する必要があります。登録代理人に任命された個人または会社は、LLP に代わって法的文書や公的機関からの通知を受け取ります。登録代理人は LLP が登録されている州に居住している必要があります。
雇用者番号 (EIN) の申請
LLP が事業を開始するには、EIN を取得する必要があります。EIN は、アメリカの税務署に無料で申請することができます。事業用銀行口座の開設、確定申告、従業員の雇用などに EIN が必要になります。
事業用銀行口座の開設
EIN を取得したら、LLP 用に 事業用銀行口座 を開設することができます。これにより、帳簿の記載が容易になり、個人資産と混同されることによって LLP の責任保護が損なわれるのを防ぐことができます。
専門職登録とビザの確認
会社を設立しようとする州で働くために必要な専門職登録を有しているか確認しましょう。ドイツに居住しながらアメリカで業務を行う場合や、会社設立のために渡米する場合でも、適切なビザが必要です。
ドイツの税制の確認
ドイツに関連する LLP の場合、税務上いくつかの問題が生じます。LLP はドイツで株式会社として扱われるのか、それともパートナーシップとして扱われるのか。その会社はドイツに恒久的施設として認定されるのか。二重課税防止条約は適用されるのか。責任リスクや不利な税務上の影響を回避するためには、事前に税務アドバイザーに相談してこれらの問題を明らかにしておくことが重要です。
Stripe Atlas でできること
Stripe Atlas は、貴社の法務基盤を構築し、世界中どこからでも 2 営業日以内に資金調達、銀行口座開設、決済を受け付けることができます。
Atlas を利用して 7 万 5,000 以上の法人が設立されました。その中には、Y Combinator、a16z、General Catalyst などの一流投資家が支援するスタートアップも含まれます。あなたも今すぐ参加しましょう。
Atlas への申し込み
Atlas での会社設立のお申し込みは 10 分もかかりません。会社形態を選択し、会社名が使用可能かどうかを即座に確認し、共同創業者を最大 4 名まで追加します。また、株式の分割方法を決定し、将来の投資家や従業員のために株式のプールを確保し、役員を任命し、すべての書類に電子署名をします。共同創業者にも電子署名を促すメールが届きます。
EINが到着する前に決済を受け付け、銀行取引を行う
会社設立後、Atlas は EIN を申請します。アメリカの社会保障番号、住所、携帯電話番号をお持ちの創業者は、IRS の簡易手続きを利用できます。その他の方々は、より時間のかかる通常の手続きを行います。また、Atlas では EIN の取得前決済や銀行取引が可能ですので、EIN 到着前に決済受付や取引を行うことができます。
創業者株式のキャッシュレス購入
創業者は、現金の代わりに知的財産 (著作権や特許など) を使って初期株式を購入することができ、購入証明は Atlas ダッシュボードに保管されます。この機能を利用するには、知的財産の評価額が 100 ドル以下である必要があります。それ以上の知的財産を所有している場合は、手続きを進める前に弁護士にご相談ください。
自動 83(b) 課税選択申請
創業者は 83(b) 課税選択を申請し、個人所得税を軽減することができます。創業者がアメリカ人であっても、アメリカ人でなくても、Atlas が配達証明付き書留郵便をもって申請を代行します。署名された 83(b) 選択と申請証明は、Stripe ダッシュボードで直接受け取ることができます。
世界クラスの企業法務文書
Atlas は、会社経営に必要なすべての 法務文書を提供します。Atlas の C corp 文書は、世界有数のベンチャーキャピタル法律事務所である Cooley と共同で作成されています。これらの文書は、すぐに資金調達ができ、会社が法的に保護されるように設計されており、所有権構造、株式分配、税務コンプライアンスをカバーしています。
Stripe Payments を 1 年間無料でご利用いただけるほか、5 万ドルのパートナークレジットと割引もご利用いただけます。
Atlas はトップクラスのパートナーと提携し、創業者限定の割引やクレジットを提供しています。AWS、Carta、Perplexity などの業界最大手による、エンジニアリング、税務、財務、法令遵守、オペレーションに不可欠なツールの割引が含まれます。また、初年度はデラウェア州の登録エージェントを無料で提供します。さらに、Atlas ユーザーであれば、10 万ドルまでの支払い手続きは 1 年間無料になるなど、Stripe の特典をご利用いただけます。
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この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。