ステーブルコイン (stablecoin) は、価値の安定を目指して設計された暗号資産の一種です。近年、暗号資産市場だけでなく、デジタル決済や資金移動の手段としても注目されています。
一方で、ステーブルコインの仕組みや種類、実際の利用方法については十分に理解されていない部分も多く、日本ではまだ一般的な決済手段として広く普及しているとは言えません。
本記事では、ステーブルコインの仕組みや種類を整理した上で、日本で導入する場合のメリットとリスクについて分かりやすく解説します。
目次
- ステーブルコインとは
- ステーブルコインの最新動向
- ステーブルコインの種類と仕組み
- ステーブルコインの主な用途
- ステーブルコインを導入するメリット
- ステーブルコインを導入するリスク
- ステーブルコインの将来性
- Stripe によるサポート
ステーブルコインとは?
ステーブルコインとは、価格の変動を抑えることを目的として設計された暗号資産です。一般的な暗号資産は市場の需要と供給により価格が大きく変動しますが、ステーブルコインは特定の資産の価値と連動するように調整されています。たとえば、米ドル に連動するステーブルコインの場合、1 コインがおおむね 1 ドル前後の価格で取引されるように設定されています。
企業にとって重要なのは、投資対象としての側面ではなく、決済手段としてどのように活用できるかという点です。ステーブルコインはブロックチェーン上で発行・移転されるため、銀行の営業時間にかかわらず、いつでも送金が可能になります。また、国境を越えた資金移動にも対応しやすいという特徴があります。
一方で、ステーブルコインは、従来の決済手段とは異なり、発行元の信用度、法的な位置づけ、会計・税務上の取り扱いなど、独自の課題を抱えていることについても理解する必要があります。
ステーブルコインの最新動向
ステーブルコインは、価格を法定通貨に連動させたデジタル資産として、決済や資金移動への活用が期待されています。一方で、金融システムへの影響や利用者保護の観点から、規制の整備も並行して進められています。
ここでは、日本と海外における主な動向を見ていきます。
日本: 2025 年 10 月 JPYC の発行スタート
日本では、2025 年に資金決済法が改正され、ステーブルコインの法的位置づけが明確化されました。これにより、銀行、信託会社、資金移動業者などが、ステーブルコインを電子決済手段として発行できる仕組みが整い始めています。
日本円に連動するステーブルコインとして、JPYC があります。JPYC は日本円と 1 対 1 で価値が連動するように設計されており、日本国内で利用できる新たなデジタル決済手段のひとつとして注目されています。
ただし、JPYC は一般的な暗号資産として発行されているものではなく、日本の資金決済法第 2 条第 5 項に基づく仕組みで提供されている点に注意が必要です。
世界: 各国で進む法整備
ステーブルコインは国境を超えて利用される可能性があるため、世界各国でも規制や制度整備が進められています。
たとえば、アメリカでは 2025 年に GENIUS Act が成立し、ステーブルコインの裏付け資産や発行元に関する規制が整備されました。
また、欧州では、暗号資産市場規則 (MiCA: Markets in Crypto Assets Regulation) が導入され、暗号資産やステーブルコインの発行・運用に関する包括的な規制が設けられています。
さらに、香港では、ステーブルコインの発行を認める制度が進められており、2026 年 3 月には最初の発行ライセンスが交付される予定です。この制度では、発行元に対して裏付け資産の保有やリスク管理が求められています。
ステーブルコインの種類と仕組み
ステーブルコインは、価値を安定させる仕組みによっていくつかの種類に分類されます。主な種類は次のとおりです。
- 法定通貨担保型
- 暗号資産担保型
- アルゴリズム型
法定通貨担保型
法定通貨担保型は、米ドルなどの法定通貨を裏付け資産 (準備資産) として保有することで価格の安定を保つ仕組みです。発行されたステーブルコインに対して、発行元が預金や国債などの形で裏付け資産を保有することで、1 コイン = 1 ドルのように価値を維持しています。
代表的な例としては、USDT (テザー) や USDC (USD コイン) などがあります。現在流通しているステーブルコインの多くはこのタイプです。
暗号資産担保型
暗号資産担保型は、ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産を担保として預け入れることで発行されるステーブルコインです。価格変動の大きい暗号資産を担保にするため、一般的には発行額よりも多くの担保を預ける過剰担保の仕組みが採用されています。
代表的な例として、米ドルに連動している DAI (ダイ) があります。DAI は ブロックチェーン上で取引が成立する分散型金融 DeFi (ディーファイ) のサービスで広く利用されています。
アルゴリズム型
アルゴリズム型は、担保資産を持たず、プログラムによって供給量を調整することで価格の安定を目指す仕組みです。価格が目標とする値からずれた場合に、トークンの供給量を増減させることで価格を調整します。
たとえば、目標とする価格が 1 ドルの場合は、次のように調整が行われます。
- 価格が 1 ドルを上回った場合、トークンの供給量を増やすことで価格を下げる
- 価格が 1 ドルを下回った場合、トークンの供給量を減らすことで価格を上げる
過去には、UST (テラ USD) などがこの仕組みを採用していました。ただし、2022 年には価格維持に失敗して大きく価値が下落した事例もあり、アルゴリズム型には構造的なリスクがあることも指摘されています。
このように、ステーブルコインは価格を維持する仕組みによって種類が分かれており、それぞれ安定性やリスクの特性が異なります。
ステーブルコインの主な用途
ステーブルコインは、価格を法定通貨に連動させるように設計されているため、暗号資産の中でも比較的価格変動が小さいという特徴があります。そのため、投資目的だけでなく、決済や資金移動などさまざまな用途で利用されています。
主なステーブルコインの一覧とその主な用途は次のとおりです。
|
ステーブルコイン |
種類 |
主な用途 |
|---|---|---|
|
USDT |
法定通貨担保型 |
暗号資産取引、送金 |
|
USDC |
法定通貨担保型 |
決済、送金、DeFi |
|
TUSD |
法定通貨担保型 |
暗号資産取引、送金 |
|
DAI |
暗号資産担保型 |
DeFi、送金 |
|
UST |
アルゴリズム型 |
DeFi、暗号資産取引 (過去の価格維持失敗例) |
|
JPYC |
円連動型 |
日本国内の Web 3 決済 |
決済手段としての利用
ステーブルコインは価格の安定性から、デジタル決済手段としての利用が拡大しています。特に、ブロックチェーン技術を活用するオンラインサービスやデジタルプラットフォームでの活用が見られます。
送金
ステーブルコインは、国内送金や企業・個人間の送金はもちろんのこと、海外販売や越境 EC のような国際的な資金移動の手段にも利用できます。従来の国際送金が銀行や決済ネットワークを経由するため時間と手数料を要するのに対し、ステーブルコインはブロックチェーンを介した直接送金により、比較的短時間での資金移動を可能にします。
暗号資産取引や DeFi での利用
ステーブルコインは、価格が安定しているため、暗号資産取引や DeFi サービスにおいて重要な役割を果たしています。
暗号資産の取引においては、価格変動の激しい暗号資産間で直接取引する際の安定した基準通貨として利用されます。ステーブルコインを介することで、取引の基準を安定させることができます。
また、DeFi サービスでは、暗号資産の貸し借りや流動性提供など、価格の安定性が求められる場面で活用されています。
ステーブルコインを導入するメリット
ステーブルコインを企業が決済手段として導入した場合、次のようなメリットが考えられます。
- 資金移動の効率化 - ブロックチェーン上で送金できるため、国境を越えた資金移動をスムーズに行えます。
- 決済コストの削減 - 従来の決済ネットワークを経由しないため、コストの削減につなげられます。
- 新しいユーザー層へのリーチ - 従来の決済手段を利用できないユーザーにリーチできる可能性が広がります。
- 24 時間 365 日決済が可能 - ブロックチェーン上で取引が処理されるため、銀行の営業時間に縛られることなく、いつでも決済や送金を行うことができます。
ステーブルコインを導入するリスク
ステーブルコインは新しい決済手段として注目されていますが、導入にあたってはいくつかのリスクや課題も存在します。
- 法規制の変化 - ステーブルコインに関する制度は国や地域により異なります。また、今後も規制内容が変更される可能性があることに注意が必要です。
- 価格安定性のリスク - ステーブルコインは価格を安定させる仕組みを持っていますが、その方法は種類によって異なり、すべてが同じレベルで安定しているわけではありません。仕組みがうまく機能しない場合、価格が大きく変動するリスクがあることも理解しておく必要があります。
- 発行元の信用リスク - 多くのステーブルコインは準備資産によって価値を維持しています。そのため、準備資産の管理体制や透明性が十分でない場合、発行元に対する信用リスクが生じる可能性があります。
ステーブルコインの将来性
ステーブルコインは、今後、次のような位置づけのデジタル通貨として利用されていくと考えられます。
法整備の進展
ステーブルコインに関する法制度は、今後整備が進む見込みです。発行元の規制や準備資産の管理、利用者保護などについてルールを整える動きが広がっており、より明確な制度の下でのステーブルコインの利用が想定されます。
中央銀行デジタル通貨 (CBDC) との関係
各国の中央銀行は、中央銀行デジタル通貨 (CBDC: Central Bank Digital Currency) の研究や実証実験を進めています。ステーブルコインと CBDC はいずれもデジタル通貨という点で共通していますが、発行主体や目的が異なります。今後は、民間が発行するステーブルコインと中央銀行が発行する CBDC が、それぞれの役割を持ちながら共存していくと推測されます。
Stripe によるサポート
Stripe Payments は、スタートアップからグローバル企業まで、あらゆるビジネスがオンライン、対面、世界各地で決済を処理できるようにする統合型のグローバル決済ソリューションです。ステーブルコインによる支払いを世界中で受け付け、Stripe 残高に法定通貨として入金できます。
Stripe Payments の特徴
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決済パフォーマンスの向上: ノーコードの不正利用対策やオーソリ率改善のための高度な機能など、カスタマイズ可能で設定が簡単な決済ツールで収益を増加させます。
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この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。