デジタルプラットフォームは、近代では消費者の生活に密着しており、消費者から収集されたデータを分析、活用することで、経済的価値が生み出されています。
一方で、デジタル技術を用いた取引の透明性や公正性についての懸念も見られ、日本では、デジタルプラットフォームを巡る市場の規制の整備が行われています。
本記事では、基本的な構造や構築手順、日本での規制や具体例など、デジタルプラットフォームとは何かをわかりやすく解説します。
目次
- デジタルプラットフォームとは
- デジタルプラットフォームの特徴
- デジタルプラットフォームの種類
- デジタルプラットフォームの具体例
- デジタルプラットフォームを選ぶ際のポイント
- デジタルプラットフォームの構築手順
- デジタルプラットフォームの問題点
- デジタルプラットフォーム取引透明化法とは
- デジタルプラットフォームの社会的役割と今後の展開
デジタルプラットフォームとは
デジタルプラットフォームとは、インターネット上で企業や個人が他の企業や個人とつながりを持つことができるオンラインの基盤のことです。デジタルプラットフォームでは、様々なサービスや情報の共有や、商品の売買取引が行われています。オンラインショッピングサイト、ソーシャルメディア、クラウドサービスなどはデジタルプラットフォームの一例です。これらは、私たちの日常に浸透しており、生活の中で欠かせない存在となっています。
なお、類似した概念に、マーケットプレイスもあります。2027年までに世界のオンライン販売の 59% がオンラインマーケットプレイスで行われると予想されており、多くの取引がプラットフォームで処理されています。マーケットプレイスの特徴については関連記事でご覧いただけます。
デジタルプラットフォームの特徴
デジタルプラットフォームは、それぞれ違ったニーズに応えるために設計されており、用途や目的によって異なる特徴を備えています。
利用者が増えるほど便利になる
デジタルプラットフォームは、利用者が増えるにつれ、コミュニティやサービスの価値が高まる仕組みになっています。
たとえば、SNS は、登録者数が多い方がネットワーク内での交流がさかんになります。人数が多い方が必然的にユーザーの投稿や活動が頻繁に行われるようになり、新規ユーザーを自然と惹きつけることができるようになります。
異なる利用者グループをつなぐ
複数の異なる利用者グループをつなぐ役割を果たします。
例として、YouTube では、クリエイターと視聴者をつなぐことで、双方のニーズを満たす場を提供しています。
データを使ってサービスを強化
ユーザーの属性、行動、嗜好などを分析し、ニーズに合わせサービス内容をカスタマイズできるため、効率的な運営を展開することができます。
たとえば、Amazon で買い物をする際に、過去の購入や検索履歴からパーソナライズ化されたおすすめ商品の提案をよく目にします。これは、消費者の買い物体験を向上させる方法のひとつです。
デジタルプラットフォームの種類
様々なデジタルプラットフォームがありますが、それぞれ目的別に特化した機能を持ち合わせています。
以下は、日々の生活に浸透しているプラットフォームの代表的な種類です。
コミュニケーションプラットフォーム
ビデオ通話、電子メール、チャット、プロジェクト管理ツールなど、メッセージのやりとりや情報の共有に用いるツールがこのタイプに当てはまります。
代表的なものに Zoom、Microsoft Teams、Asana、LINE、X などがあります。
取引プラットフォーム
商品やサービスの購入や販売、取引の仲介をするプラットフォームです。
Amazon、eBay、メルカリなどがこのタイプです。
コンテンツ&メディアプラットフォーム
エンターテイメントや情報共有を可能にするプラットフォームで、コンテンツの作成や配信を提供します。
YouTube、Netflix、Spotify など動画配信や音楽配信プラットフォームなどが該当します。
クラウドサービス
データやアプリケーションの管理、保存、処理などをオンラインで提供します。
代表例として、Amazon Web Services (AWS) 、Google Cloud Platform、Microsoft Azure、Dropboxなどがあります。
デジタルプラットフォームの具体例
ビジネスの効率化や日常に密着したデジタルプラットフォームですが、具体的にどのように活用されているのでしょうか。各プラットフォームの役割と活用方法をご紹介します。
日立のクラウド Hitachi Cloud
主に企業向けの高度なクラウドインフラ、データセンターサービス、ソフトウェアなどを提供し、大規模なデジタル変革をサポートします。
セキュリティとコンプライアンスを最優先に考慮しており、金融業界や政府機関など、高度なセキュリティ基準を必要とする業界に対応することができます。
国土交通データプラットフォーム
日本の国土交通省が提供する交通データ、都市インフラデータ、災害データなどを検索できるプラットフォームです。これらのデータは、住民の安全を守り、災害時には住民を効率よくサポートできるよう管理されています。また、自治体との連携を強化することで、地域ごとの課題解決や持続可能な社会の実現に向けた取り組みを行っています。
クラウドワークス
仕事を依頼したい企業や個人とフリーランサーをオンラインでつなげるフリーランスマーケットプレイスです。
プラットフォーム内には、メッセージ機能やタスク管理機能が組み込まれており、依頼者とフリーランスの直接の連絡手段が確保されています。また、契約書の作成や、料金の設定、支払い処理なども管理することができます。
Stripe は、オンライン決済のインフラを構築、提供するための決済代行業者として広く利用されています。Stripe プロダクトのひとつである Connect は、EC モールやフリーランスサービスプラットフォームなど、売り手 (加盟店) と購入者を結びつけるマーケットプレイス向けに設計された決済ツールです。複数の取引先との資金移動を効率的に管理することができ、売上の分配、手数料の徴収、国際的な取引対応など、多くの機能を提供しています。
デジタルプラットフォームを選ぶ際のポイント
デジタルプラットフォームを選ぶ際には、どのような点に注意して選ぶべきでしょうか。
セキュリティの高さ
多くのプラットフォームは、個人情報や機密情報を取り扱うことが多いため、セキュリティ対策は非常に重要です。
データの暗号化、アクセス制御、バックアップ、2段階認証など、複数の強固なセキュリティ対策がされているか確認することが必要です。
信頼性に関わる重要な点です。セキュリティについては必ず確認しましょう。
機能性と利便性
目的にあった機能を備えているかどうか確認します。
たとえば、EC サイトであれば、決済システムや商品管理の機能に卓越したプラットフォーム、複数のチームでの共同作業が重要な場合は、コミュニケーションに特化したプラットフォームを選ぶようにすると良いでしょう。
統合性と API の活用
現在使用しているツールやシステムと統合できなければ、優れたプラットフォームでも導入は控えた方が良い場合もあります。
すでに使っているツールやシステムと連携できるかどうか、API を活用できるかどうかなど、事前に確認を行いましょう。
デジタルプラットフォームの構築手順
デジタルプラットフォームの構築は、段階的に進める必要があります。効率的なプラットフォームを開発するために、計画的に行いましょう。
目的を明確にする
企業間の取引、企業と消費者をつなぐ取引プラットフォーム、顧客同士の交流を促進するなど、プラットフォームを構築するビジョンを明確にします。
また、ターゲットユーザーを明確にし、顧客の属性や競合の分析などを行い、利用者の価値提供の仕組みを考え、どのように収益を生むかを考えます。
機能と技術の選定
構築するプラットフォームのタイプにより、必要な機能は異なってきます。ビジネスモデルに合わせて、主要機能のリストを作成しましょう。
必要機能に合わせて使用するプログラミング言語、データベース、フレームワーク、クラウドサービスなどの技術を選びます。
プロトタイプの開発とテスト
リスクを最小化するために、基本的な機能を実装した小規模なプロトタイプ (試作モデル) を開発します。
ユーザーテストを実施し、操作性や機能、設計がうまく実装されているかを確認します。
ユーザーからのフィードバックやバグを元に、プロトタイプを改良し、必要であれば、テストを繰り返し行います。
フルスケール開発
プロトタイプが評価基準を満たしたら、残りの機能を追加した最終的なプラットフォームを構築します。
システムのスケーラビリティやデザインを改良して、多くのユーザー数に対応できるよう、直感的に使用できるデザインを取り入れます。
デジタルプラットフォームの問題点
デジタルプラットフォームには、いくつかの問題点もあるため、よく理解した上で適切な対策を講じる必要があります。
個人・機密情報の保護
オンライン環境では、個人や企業のデータが広範囲に渡り扱われるため、対策を取らずに情報が流出してしまうと、顧客の個人情報に直接的な被害を与え、企業には法的責任が課せられる可能性があります。それだけでなく、企業に対する信頼性と運営に大きな影響を与え、事業の継続が難しくなる場合もあります。
一部企業による市場の独占化
巨大企業によるデジタルプラットフォームが市場を支配し、新規企業の参入が難しい状態になると、利用者は現在あるプラットフォームに依存せざるをえなくなり、消費者や中小企業に不利益をもたらすリスクが高まります。
システム連携の複雑化
API やプロトコルが統一されていないと、事業者が複数のプラットフォームを利用する場合、統合がスムーズに行かない場合があります。国際規格に対応したプラットフォームを利用するなどの方策が求められます。
デジタルプラットフォーム取引透明化法とは
近年、デジタル技術を用いた取引が活発化しており、デジタルプラットフォームが重要な役割を持つようになりました。一方で、取引の透明性や公正性についての懸念が見られています。
そこで、デジタルプラットフォームを巡る市場の健全な発展に向けて、デジタルプラットフォームにおける取引の透明性と公正性の向上に関する法律が令和 2 年 (西暦 2020 年) 5 月 27 日に成立され、同年 6 月 3 日に公布されました。
特に取引の透明性や公正性を高める必要性が高いプラットフォームを提供していると行政に判断された事業者は「特定デジタルプラットフォーム提供者」と指定され、規律の対象となっています。
経済産業省によると、特定デジタルプラットフォーム提供者は、取引条件等の情報の開示及び自主的な手続・体制の整備を行い、実施した措置や事業の概要について、毎年度、自己評価を付した報告書を提出しなければいけない決まりとなっています。
デジタルプラットフォームの社会的役割と今後の展開
デジタルプラットフォームは、情報の収集や共有、ビジネス取引を効率化する重要な役割を果たしています。
今後は、更なるグローバル化の展開とデジタル技術の進歩が考えられ、ビジネスや社会に新たな価値を生み出すでしょう。
デジタルプラットフォームは、これからも更に大きな影響力を持つようになると考えられます。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。