中小企業投資促進税制とは?対象者・対象ソフトウェアについて

  1. はじめに
  2. 中小企業投資促進税制とは?
    1. 中小企業投資促進税制の対象者
    2. 中小企業投資促進税制の対象ソフトウェア
    3. 場合によって適用対象または対象外となる例
    4. 中小企業投資促進税の上限
  3. 中小企業経営強化税制とは?
    1. 中小企業経営強化税制の対象者
    2. 中小企業経営強化税制の上限
  4. 税務申告に際して

今日、業務の効率化と生産性をアップさせるために、ソフトウェアを導入したり新たな設備を設置したりすることは多くの日本の企業にとって必要不可欠と言えます。この記事では、中小企業投資促進税制の対象者及び対象ソフトウェアや控除額の上限について説明し、さらに中小企業経営強化税制についても紹介します。

目次

  • 中小企業投資促進税制とは?
  • 中小企業経営強化税制とは?
  • 税務申告に際して

中小企業投資促進税制とは?

中小企業投資促進税制とは、青色申告書を提出する中小企業者などが令和 7 年 (2025 年) 3 月 31 日までの期間内に、対象となる機械装置やソフトウェアを設置・導入した場合に、取得価額の 30% の特別償却または、7% の税額控除 (※) のいずれかを選択し、適用できる税制です。今日、業務の改善・向上のためにDXが推奨され、中小企業においてもさまざまなソフトウェアが積極的に導入される中、中小企業にとってこれらの設備投資は多大な負担にもなり得ます。そこで、日本政府による令和 5 年度 (2023 年) の税制改正により、もともと 2023 年 3 月だった中小企業投資税制の期限が 2025 年 3 月末まで延長されたことで、中小企業の生産性や機能向上と経済の活発化が期待されています。

また、この記事で紹介する情報は 2023 年の税制改正の内容をもとにしたものです。この制度は、これまで何度か改正され、内容や期限が変更されました。今後も改正が予想されるので、最新の情報は国税庁及び中小企業庁のホームページの更新情報をご確認ください。

※税額控除の対象者は、特別償却の対象者と詳細が異なります。詳しくは以下の『中小企業投資促進税制の対象者』と『中小企業投資促進税制の対象ソフトウェア』にて説明します。

中小企業投資促進税制の対象者

まず、中小企業投資促進税制の対象者の定義としては、前述の青色申告書を提出する法人、すなわち中小企業、個人事業主となり、大きく分けて以下の要件に当てはまります。

  • 法人: 資本金額または出資金額が 1 億円以下
  • 法人: 資本金・出資金がなく、常時使用する従業員が 1,000 人以下(農業協同組合や商店街振興組合等も含む)
  • 個人事業主: 従業員が 1,000 人以下

これらの中小企業のうち、7% の税額控除を適用できるのは資本金 3,000 万円以下の中小企業と個人事業主に限定されます。また、30% の特別償却対象の条件は、資本金額もしくは出資金額が 1 億円以下の法人となります。

資本金が 3,000 万円を超える中小企業の場合、特別償却のみ利用可能で、 税額控除の対象外となり、一方、資本金 3,000 万円以下に該当する中小企業や個人事業主の場合は、特別償却か税額控除のいずれかを選択することが可能です。

なお、適用対象となる指定事業については多種多様で、国税庁の『指定事業』にて詳細を確認できます。

注意点としては、国税庁ホームページの『適用対象法人』によると、上記の対象者に当てはまる場合でも、「資本金もしくは出資金が 1 億円を超える法人」あるいは「資本金もしくは出資金を有せず常時使用する従業員が 1,000 人を超える法人」のように、大規模法人によって一定の比率以上の発行済み株式や出資を所有されている中小企業に該当すると、適用の対象外となります。

  • 発行済み株式 (または出資) の総数 (または総額) の 2 分の 1 以上を大規模法人に所有されている
  • 発行済み株式 (または出資) の総数 (または総額) の 3 分の 2 以上を 2 社以上の大規模法人に所有されている

中小企業投資促進税制の対象ソフトウェア

次に対象ソフトウェアについては、取得価額が 1 つ 70 万円以上、もしくは当該事業年度に使用し始めた複数の合計額が 70 万円以上で、資金管理システムなどの業務上使用するソフトウェアが対象となります。対象ソフトウェアの主な項目は以下のとおりです。なお、この制度を活用するには、期限内に対象設備やソフトウェアを取得し指定事業の用に供することが必要です。

  • ワープロソフト
  • 表計算ソフト
  • 経理ソフト
  • 給与ソフト
  • イラストソフト
  • 画像ソフト
  • CADソフト (図面設計・製図作成に使用するソフト)

注: 開発研究目的のソフトウェアは対象外で、この他、複写して販売するための原本も対象外となります。さらに、サーバー用オペレーティングシステム、サーバー用仮想化ソフトウェア、データベース管理ソフトウェア、連携ソフトウェア、不正アクセス防御ソフトウェアのうち、国際標準化機構 (ISO) 及び国際電気標準会議 (IEC)規格 15408 に基づく評価・認証がないものは対象外となります。詳しくは租税特別措置法施行規則第 5 条の 8 (所得税)、第 20 条の 3 (法人税) をご参照ください。なお、上記規格に該当するか否かについては、直接ソフトウェアメーカーにお問い合わせください。

場合によって適用対象または対象外となる例

ここまでで、対象者と対象ソフトウェアについて詳しく説明しました。

中小企業投資促進税制は、さまざまな指定事業や対象ソフトウェアにおいて活用できる制度ですが、場合によって税制の適用対象または対象外となることもあります。

例えば、「電気業」に分類される太陽光発電事業は、対象となる指定事業に含まれていないため、対象外となります。しかし、工場の屋根などに太陽光発電装置を設置し、発電した電力を工場で業務上で使用、製品の製造をする場合などは「事業に供している」ため、中小企業投資促進税制の対象となります。一方、事業者が業務に接点のない自宅に太陽光発電装置を設置し、家庭用として使用する場合などは「事業に供していない」ため、対象外です。

中小企業投資促進税の上限

  • 償却限度額
    償却限度額は、機械装置やソフトウェアを導入し使用を開始した年度において、取得価額の 30% 相当額の特別償却限度額を普通償却 (減価償却費として費用計上) の限度額に加えた金額となります。また、特別償却は減価償却費とは別で経費の計上を行えます。

  • 税額控除限度額
    税額控除限度額は、取得価額の 7%相当額です。税額控除は、機械装置やソフトウェアを導入し使用を開始した年度の課税所得に対する法人税を計算した後に、法人税額から直接控除できます。

中小企業経営強化税制とは?

中小企業経営強化税制も、中小企業投資促進税制と同様に、中小企業等の業務効率化や生産性アップを目的とし、設備やソフトウェアを導入した際に税制優遇を受けることができます。

中小企業投資促進税制との共通点は以下のとおりです。

  • 指定期間: 令和 7 年 (2025 年) 3 月 31 日まで (2024 年 3 月現在)
  • 制度に対する中小企業の定義
  • 適用対象の指定事業
  • 対象ソフトウェア (ただし、複数の総額ではなくソフトウェア取得価額の単価が 70 万円以上で販売開始時期が 5 年以内であること)
  • 場合によって対象または対象外となり得る太陽光発電の税制適用条件

中小企業経営強化税制の対象者

この制度の適用対象法人は、中小企業者 (農業協同組合等もしくは商店街振興組合を含む) で、青色申告書を提出するもののうち、中小企業等経営強化法に規定する経営力向上計画の認定を受ける必要があります。

詳しくは中小企業庁の『経営力向上支援』ページにて、経営力向上計画に関する手引き、本計画の申請様式類、経営力向上設備等に係る生産性向上要件証明書 (工業会等による証明書について) などをご参照ください。また、中小企業庁のホームページでは、経営力向上計画の申請方法について紹介している他、各書式のダウンロードが可能となっています。

中小企業経営強化税制の上限

中小企業投資促進税制による 30% の特別償却または 7% の税額控除に比べ、事前の認定が必要となる中小企業経営強化税制では、即時償却 (取得価額の全額を償却) が可能、税額控除が10% と、節税内容及び上限が異なります(資本金 3,000 万円超え 1 億円以下の法人は 7%)。

注意点として、税額控除額は、中小企業投資促進税制、中小企業経営強化税制の控除税額の合計で、その事業年度の法人税額又は所得税額 (個人事業主の場合) の 20% が上限となります。税額控除の限度額を超える金額については、翌事業年度に繰り越すことができます。また、特別償却は、限度額まで償却費を計上しなかった場合、その償却不足額を翌事業年度に繰り越すことができます。

その他の中小企業強化税制に関する細かな不明点については、中小企業庁 Q&A ページにて確認することができます。

税務申告に際して

税目が法人税となる中小企業投資促進税制の制度を利用するには、税務申告に際し法人税申告書別表等以下の書類が必要となります。

  • 税額控除の場合: 別表 (中小企業者等が機械等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書)
  • 特別償却の場合: 特別償却の付表 (中小企業者等または中小連結法人が取得した機械等の特別償却の償却限度額の計算に関する付表)
  • 適用額明細書

なお、中小企業投資促進税制の場合、税務申告以外の手続きはありません。一方、中小企業経営強化税制の場合、経営力向上計画の認定が必須であることから、経営力向上設備やソフトウェアを取得する計画の際には、生産性向上要件証明書となる「工業会等による証明書」または「経済産業局による確認書」の取得が必要となります。また、前述のとおり経営力向上計画の認定を受けた事業者のみが税制措置の対象となることから、工業会証明書等の発行を受け次第、計画申請の手続きを進めることが大切です。詳しくは中小企業庁の支援措置活用の手引きを参照してください。

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