プラットフォームビジネスは、商品やサービス、情報などの提供者 (事業者) と、これらを利用する人とを結びつける基盤 (プラットフォーム) を提供するビジネスモデルです。
近年、AI 事業の活発化や 2020 年以降のコロナ禍による生活の変化に伴い、さまざまな業種でデジタルプラットフォーム、すなわちサービスの提供と利用を目的とする「場」のオンライン化が加速しています。日本においても、プラットフォームビジネスは注目されており、画期的なサービスが生み出されています。
本記事ではプラットフォームビジネスの基礎知識として、種類やメリットのほか、注意点、日本での事例や今後の動向などを踏まえて解説します。
目次
- プラットフォームビジネスとは
- プラットフォームビジネスの種類と成功事例
- プラットフォームのビジネスモデル
- プラットフォームビジネスのメリット
- プラットフォームビジネスの注意点
- 自社プラットフォームを成功させるポイント
- プラットフォームビジネス市場は今後どうなる
プラットフォームビジネスとは
プラットフォーム (Platform) とは、もともと「土台」や「乗降口」を指す言葉です。日本語でも電車の乗降口をプラットフォームと呼ぶように、提供されるサービスを人々が利用する「場」を表します。
冒頭でも解説したように、プラットフォームビジネスとは、企業や個人事業主側などの売り手側と、商品やサービスの利用者側 (消費者) をつなぐインターネット上の「場」を提供するビジネスモデルのことです。つまり、プラットフォームの運営事業者は、自社で商品を開発したり販売するのではなく、あくまでプラットフォームそのものをサービスとして提供します。
たとえば、情報交換や動画配信などを行うソーシャルメディアや、商品の販売や購入ができるマーケットプレイスがプラットフォームビジネスに含まれます。
このように、プラットフォーム運営事業者は、自社プラットフォームに膨大な数のビジネスや利用者を集め、両者の間で行われる取引やコミュニケーションなどの相互作用を高めることで、ビジネスを成長させています。代表的なプラットフォームビジネスには、Amazon、Uber、Airbnb などがあり、これらのプラットフォームは、多くの利用者とビジネスをつなぐ役割を果たし、市場に大きな影響を与えています。
なお、プラットフォームビジネスについては、商品やサービスの提供企業や広告主から利用手数料などを回収することで収益を得られる点が特徴です (業種によっては、消費者側に手数料が発生するケースもあります)。

プラットフォームビジネスの種類と成功事例
プラットフォームビジネスの種類は、大きく分けて以下の 4 つがあります。
仲介型プラットフォーム
仲介型は、その名のとおり、商品やサービスを提供する側と利用する側とを仲介する役割を果たしています。プラットフォームに登録している販売者と購入者は、プラットフォームをとおしてスムーズに取引が行われるようになっています。B2B や B2C だけでなく、C2C のビジネスとしても大きな成果を上げているプラットフォームビジネスと言えるでしょう。
成功事例: メルカリ、Uber Eats、Airbnb、ランサーズ
OS 型プラットフォーム
OS 型は、第三者が開発した他社製のシステムやアプリなどを提供するプラットフォームを指します。また、システムやアプリを作動させる「土台」としての役割を果たす OS 自体も含まれます。OS 型では、これらのアプリやシステムなどの提供者から手数料を回収します。
成功事例: Android と Google Play、iOS と App Store
コンテンツ型プラットフォーム
コンテンツ型は、映画や音楽などのデジタルコンテンツを利用者に提供するプラットフォームです。投稿記事や画像、動画などが蓄積されることで成り立つ SNS もコンテンツ型に分類されます。コロナ禍を機に、コンテンツ型プラットフォームによるサービスが普及し、多数の利用者が集まる分、競合の多い業種でもあります。
成功事例: U-Next、LINE
ソリューション型プラットフォーム
ソリューション型は、特定の機能を持つデジタルツールやアプリ、システム、ソフトウェアなどを提供し、これらを導入する利用者から利用料金を得るプラットフォームです。いずれも業務を簡便化させたり、ビジネス上のさまざまな活動を長期的にサポートする目的としての役割が強いことが特徴的です。スマート農業を後押しする IoT 技術もソリューション型プラットフォームになります。
成功事例: 楽天ペイや PayPay などの決済システム、inaho 株式会社のアグリテック
プラットフォームのビジネスモデル
プラットフォームビジネスは、以下のように 4 つのビジネスモデルに分けられます。
手数料課金型
手数料課金型の場合、利用するプラン、利用量や頻度、取引金額に応じて手数料が発生します。手数料課金型のビジネスモデルは、フリマアプリなどの仲介型プラットフォームでよく用いられています。通常、「手数料は取引額の 3%」のように、一律で割合が決められていることが多いため、取引額が高額になればなるほど手数料も高くなります。一方、取引金額の大きさごとに、手数料の割合が異なるケースもあります。
フリーミアム型
フリーミアムは、「フリー (無料)」と「プレミアム (割増料金)」を合体させた造語です。フリーミアム型では、無料プランと有料プランに分けてプラットフォームが提供されます。基本的なサービスや機能は無料で提供されますが、より高度なサービスが必要な場合に有料プランに切り替えることで、さらに充実したサービスを受けられる仕組みとなっています。
フリーミアム型ビジネスモデルの一例としては、ニュースサイトが挙げられます。ニュースサイトに掲載される記事は、ある程度まで無料で閲覧できますが、最後まで読むことができないケースがよくあります。この場合、有料会員として登録することで、気になる記事を全ページ閲覧できるようになります。
月額課金型 (サブスクリプション)
月額課金型では、一定の月額利用料金を徴収するビジネスモデルで、サブスクリプション、または略してサブスクと一般的に呼ばれています。動画や音楽、書籍などのコンテンツ配信サービスで採用されていることが多く、登録すると数に関係なくさまざまなコンテンツの視聴が可能です。サブスクは通常、毎月の定額料金のみを支払うため出費額がわかりやすく、月によって請求金額が変動する心配もありません。そのため、比較的気軽に利用できるサブスクサービスの市場規模は近年拡大傾向にあります。
従量課金型
従量課金型は、サービスや機能を利用した回数分だけ料金を徴収するビジネスモデルで、リカーリングと呼ばれることもあります。言い換えると、利用が一切なければ料金は発生しないため、利用者にとっては無駄なコストが出ないことがメリットですが、事業者にとっては、利益が安定せず、売上を予測しづらい点がデメリットです。たとえば、クラウドストレージの場合は、保存データの容量に応じて料金が加算される仕組みとなります。また、従量課金型には、有料会員となることで利用が可能となるケースもあります。
プラットフォームビジネスのメリット
ここでは、プラットフォームビジネスのメリットについて解説します。
初期費用が比較的かからず手間が少ない
プラットフォームは、サイトを構築できればビジネスを開始することができます。また、自社で商品やサービスを用意するわけではないため、実店舗のように、土地やビル、倉庫などの物理的なスペースを確保する必要がありません。したがって、商品やサービスの開発に対するコストや手間がかからず、初期費用が安く済むことがメリットといえます。
ユーザー数が増えるほど品質や利便性の向上につながる
プラットフォーム上に参入企業や店舗が増えるほど、それを目当てに消費者が集中しやすくなります。消費者が増えると、売り手側同士の競争もより激しくなるため、商品やサービスの品質と利便性の向上にもつながります。また、こうしてサービスの質が向上するほどに、顧客ロイヤルティや信頼度が高まり、さらに顧客が増えるという循環的な作用が働きます。
したがって、売り手側と買い手側双方の相互作用によって、プラットフォーム全体が活発化すれば、大幅な収益アップにつながります。
ビッグデータの活用ができる
先ほど解説したように、プラットフォーム上には、企業や個人事業主側といった商品やサービスの提供者と、それらを利用する消費者など、多くのプラットフォームユーザーが一箇所に集まっています。そのため、年齢や性別のような属性や行動パターンに関する膨大かつ多様なデータが蓄積されます。
たとえば、「どんなサービスに大きなニーズがあるか」、「購入状況や行動パターンはどういった傾向にあるか」など、データを細かく分析できるため、マーケティング戦略を立てやすく、今後の UX の向上に活かすことができます。このほか、データを参考にすることで、既存のプラットフォームとはまた違った、新たなビジネスモデルを生み出すヒントが得られる可能性もあります。
プラットフォームビジネスの注意点
プラットフォームビジネスにはいくつかのメリットがある一方で、以下のような注意点についてもしっかりと理解しておく必要があります。
初期段階は集客コストがかかる
先ほど、メリットとして「ユーザー数が増えるほど品質や利便性の向上につながる」点について解説しました。これはつまり、利用者がいなければ、価値が生み出せないということになります。したがって、最初のうちは集客にあたる時間とコストを必要とし、軌道に乗るまでは、収益化できないリスクがあります。
ある程度のユーザー数が集まるまでにかかる時間をできるだけ見越して、初期段階の運用資金を十分に準備しておくようにしましょう。
参入が後発になるほど難易度が高い
自社がプラットフォーマーとして事業への参入を検討する際、既に同業他社が圧倒的シェアを持ち、業界で中心的なプラットフォームを展開している場合、新規参入はハードルが高くなります。たとえば、マーケットプレイスについては、既に数多くの大手企業が参入しています。そのため、既存のマーケットプレイスとの差別化ができなければ、ビジネスを大きく成長させることは難しいと考えられます。
後発で参入する際は、自社だからこそ提供できる付加価値を提供できるよう、入念な分析と戦略を立てておくことが大切といえるでしょう。
法規制に関して十分な確認と注意が必要
プラットフォームビジネスの開始にあたっては、ビジネスに関わる法規制について、十分に注意する必要があります。
たとえば、フリマアプリにおいて、販売者が利益目的でアプリを用いる際には、プラットフォームの運営事業者は「古物商許可申請」の提出を求め、個人情報を収集しなければならない場合があります。このほか、プラットフォームビジネスに関する法規制には、「独占禁止法」や「特定商取引法」などが挙げられます。
このように、業種によっては許認可やさまざまな事前の手続きが必要なため、知らないうちに法に反していたということのないよう、「自社のプラットフォームに関連する法規制がないかどうか」、また「どのように対策をとるべきか」、必ず確認しておきましょう。
自社プラットフォームを成功させるポイント
プラットフォームを成功させるためには、具体的にどのようなポイントをおさえておけばよいか、ここでは以下の 4 つについて解説します。これらのポイントは、日本のプラットフォームビジネスにおいて、企業の独創性や組織レジリエンスを高めるために考慮すべき重要な要素といえるでしょう。
市場とターゲットを決めて差別化を図る
どのようなビジネスにも同じことがいえますが、ビジネスを成長に導くには、競合他社と自社とを差別化できるかどうかが鍵となります。そのため、参入する市場とターゲットとなる顧客層を定めたうえで、自社ならではの付加価値を提供するための戦略を立てるようにしましょう。たとえば、競合他社のプラットフォームではカバーし切れていない分野や、他社が抱える顧客の不満などを自社プラットフォームの機能で補えるようにすると成果が出るかもしれません。
年代別の消費者の動向を把握する
業種にもよりますが、日本のプラットフォーム市場には、あらゆる年齢層の利用者がいるため、各年代に応じたアプローチが求められます。たとえば、若年層の場合、最新技術やトレンド情報など時代の変化に敏感で、モバイル端末を用いた SNS の動画視聴や購買活動が活発です。一方、高齢層はサービスの安全性を重視し、シンプルでわかりやすいものを優先する傾向にあります。そのため、高齢層の場合は、信頼のおける、使い慣れたプラットフォームが好まれています。
より多くの利用者から支援してもらえるプラットフォームを提供するには、年代別に異なる人々の習慣や嗜好に応じた、柔軟的なアプローチができることが大切といえます。
キャッシュポイントを明確にしておく
プラットフォームビジネスで利益を出すには、自社にとってどのようなビジネスモデルが収益化に適しているかを、事前に理解しておきましょう。つまり、どんな仕組みで、どのタイミングで収益が生まれるかなどを明確化することが大切です。
主なキャッシュポイントとしては、先ほど『プラットフォームのビジネスモデル』で紹介した販売手数料や月額利用料などが挙げられますが、自社のプラットフォームの規模や特徴に合ったキャッシュポイントを選ぶとよいでしょう。なお、ビジネスを収益化させるためには、1 つに限らず、複数のビジネスモデルを併せて取り入れることも可能です。
利便性に優れた決済インフラサービスを導入する
どのようなプラットフォームにおいても、決済システムを導入することは欠かせません。そのため、プラットフォームビジネスを立ち上げる場合、利用者側の利便性を考慮し、オンラインビジネスに特化した決済サービスプロバイダー (PSP) を利用したり、決済インフラサービスを導入することも忘れないようにしましょう。
決済システムを自社で構築する場合、費用だけでなく、時間と手間がかかる大変な作業となってしまいます。そこで、自社の決済ニーズにマッチしたシステムを導入すれば、スムーズにビジネスを開始することができるでしょう。また、プラットフォームの開設や運用、管理など充実したサポート体制が整っているサービスであれば、より心強いといえます。
Stripe は、さまざまな決済手段の導入をはじめとし、情報処理や収益管理など、決済業務の効率化を後押しするツールや機能を幅広く提供しています。たとえば、プラットフォームビジネスを検討中の事業者の方の場合、オンライン決済に柔軟に対応可能な Stripe Payments を導入すると、自社システムの開発を行うことなく、事業スタイルに合った決済環境を整えることができます。
プラットフォームビジネス市場は今後どうなる
今回はプラットフォームビジネスの種類やビジネスモデル、メリット、注意点などを踏まえた基礎知識について解説しました。
オンラインプラットフォームは今日において、1 つの巨大なコミュニティーや経済圏の形成を可能にするビジネスとして注目を集める存在です。したがって、マーケットプレイスやサブスクなどのプラットフォームをはじめとするオンラインビジネスは、今後もますます成長していくと考えられています。特に日本の消費者の場合は、商品やサービスに対する強いこだわりや高い期待が、プラットフォーム市場におけるサービスの向上にも貢献しています。
単に「場」を提供するだけでは、プラットフォームビジネスを大きく成長させ、成功に導くことはできません。そのため、プラットフォーム運営事業者は、サービスの提供者と消費者の双方のニーズに合う、プラットフォームとしての充実した機能やサービスの提供を目指すことが大切といえるでしょう。
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