イタリアで事業を展開したい外国企業には、現地事業部門 (駐在員事務所など) を設立したり、支店を設立したり、イタリアに新会社を設立したりと、複数の選択肢があります。支店や新会社を直接設立すると、他の居住企業と同じ税務要件の対象となりますが、現地事業部門はイタリアでは収入を生み出さないため、イタリアでの課税の対象にはなりません。ただし、現地の事業部門がこの税制の対象となるためには、付随的な活動 (つまり、事業の情報収集、商品やグッズの購買など、コアビジネスのサポートとして機能し、不可欠な部分ではないもの) のみを行っていることが重要です。その他の活動を行っている場合は、恒久的施設として分類され、その後、イタリアの法人所得税の対象となります。

しかし、恒久的施設とはいったい何なのでしょうか？この記事では、恒久的施設の概念、存在するさまざまなタイプ、およびそれらの税務上の影響を詳しく説明します。

この記事の内容

• イタリアの恒久的施設とは
  
• 恒久的施設の種類
  
• イタリアで恒久的施設を開設する方法
  
• イタリアの恒久的施設の納税義務
  

イタリアの恒久的施設とは

外国企業がイタリアで (付随的ではない) 継続的な事業活動を行うためには、イタリアの恒久的施設と見なされる必要があります。

恒久的施設とは、非居住企業がイタリアでの主要な活動のすべてまたは一部を行う、固定された事業所です。恒久的施設の定義は、連結所得税法第 162 条で概説されています。この法律は後に 2018 年予算法 2017 年 12 月 27 日法律第 205 号によって改正されました。

2018 年予算法の主な変更点は次のとおりです。
- 「個人恒久的施設」の定義の更新
- 細分化対策ルールの導入
- 恒久的施設に該当しない事例
- イタリアの恒久的施設は、「領土内に物理的に存在していなくても、国家の領土における重大かつ継続的な経済的存在」として認識することも可能である、という新しい規定。

恒久的施設と課税については、イタリアの法律は関連する国際条約、特に以下の条約に準拠しています。

• 経済協力開発機構と G20 (OECD/G20) が推進する、税源浸食と利益移転 (BEPS) プロジェクト。BEPS プロジェクトは、多国籍企業が規制の枠組みの違いを利用し、高税率の国から税負担の少ない国や税負担がない国に課税ベースをシフトしようとする戦略に、対抗することを目的としています。
  
• 二重課税防止の OECD モデル租税条約
  
• 租税条約に関する措置の実施についての多数国間条約は、課税ベースの浸食や利益の移転を防止することを目的としています。
  

恒久的施設の種類

イタリアの法律は、イタリアには 3 タイプの異なる恒久的施設があると定義しています。

物理的に存在する物質的恒久的施設

物理的に存在する物質的な恒久的施設は、非居住企業がイタリアで事業の全部または一部を行う、固定された場所で構成する必要があります。イタリアの恒久的施設の例は、TUIR の第 162 条 (2) に記載されています。それらは次のとおりです。

• 本部
  
• 支社
  
• オフィス
  
• ワークショップ
  
• 研究所
  
• 鉱山、鉱床、採石場、その他の天然資源の採掘現場
  
• イタリアの領土における重大かつ継続的な経済的存在 (明白な物理的存在はなし)
  
• 3 カ月以上続く建設現場や組立現場
  
• イタリアにおける重大かつ継続的な経済的存在 (明白な物理的存在はなし)
  

ただし、以下のケースでは恒久的施設となりません (第 162 条第 4 項)。

a.設備は、事業に属する商品またはグッズの保管、展示、または配送のみに使用されている
b.事業が所有する商品またはグッズは、保管、陳列、配送のみを目的として保管されている
c.事業が所有する商品またはグッズは、別の事業による処理のみを目的として保管されている
d.固定事業所は、商品やグッズの購買や、事業を代表して情報を収集するためだけに使用されている
e.固定事業所は、事業を代表して他の活動を行うためだけに使用されている
f.固定事業所は、上記 (a) から (e) に掲げる活動の複合的な追求のためだけに使用されている

物理的存在を伴わない物質的恒久的施設

イタリアで「重大なデジタルプレゼンス」を持つ企業に対処するため、2018 年の予算法で TUIR に改正が導入されました。TUIR 第 162 条のパラグラフ f-bis は、「恒久的施設」という用語について、「国家の領域内における重大かつ継続的な経済的存在であり、領土自体に物理的に存在しない方式で構成される場合」も含まれると述べています。これは、恒久的施設の概念はイタリアの固定された事業所にとどまらず、今や無形の存在とも結びついているということを意味します。この新しい定義は、電子商取引に課税することで、法律をデジタル経済に適応させるために導入されました。

恒久的施設の有無を判断するには、特定の市場での直接販売の量、その市場の登録ユーザー数、イタリアでのサーバーの存在など、客観的な基準を使用する必要があります。

個人の恒久的施設

イタリアで事業を行う非居住企業は、自然人が代理として行動する場合、個人の恒久的施設と見なされます。代理人は、企業自体により実質的に変更されていない契約を、定期的に締結する (またはそのための措置を講じる) 必要があります。これらの契約は、以下の説明のいずれかと一致する必要があります。

• 主たる事業者の名義で作成されたもの
  
• 事業者による商品またはサービスの供給に関連すること
  
• 所有権の譲渡を伴う、または事業者が所有または使用する資産を使用する権利を付与するもの
  

代理人が準備または補助的な活動のみを行う場合、その会社は個人の恒久的施設とは見なされません。また、非居住企業を代表して行動する代理人が独立した代表者として行動し、通常の業務の一環として企業のために行動する場合も、恒久的施設は存在しないとされます。ただし、代理人が 1 つ以上の密接に関連する企業を代表して独占的またはほぼ独占的に行動する場合、代理人は独立しているとは見なされません。

細分化対策ルール

TUIR 第 162 条第 5 項は、非居住企業が単一の活動を人為的に複数の関連事業体に細分化することを防ぐことを目的とした規定を導入しました。細分化された事業体は、個別に検討した場合、独立した税務上の意義を獲得するための基準を満たさない可能性があり、したがって恒久的施設とはみなされません。

イタリアで恒久的施設を開設する方法

外国企業がイタリアに恒久的施設を開設するために取らなければならない手順は、次のとおりです。

• イタリアに事務所を設立する決議に関する正式な記録を提出します。
  
• イタリアでの法定代理人を任命します。
  
• 認証されたメールアドレス (Posta Elettronica Certificata または PEC) を申請します。
  
• 会社の議事録と細則を公証人に提出します。
  
• イタリア商業登記所に会社を登録します。
  
• Agenzia delle Entrate に納税者番号と付加価値税 (VAT) 番号を申請します。
  
• 従業員がいる場合は、イタリア国立労働災害保険研究所 (INAIL) に登録します。
  
• 会社が要件を満たしている場合は、イタリア国立社会保障研究所 (INPS) に登録します。
  

イタリアの恒久的施設の納税義務

イタリアでは、恒久的施設は外国の親会社とは別の税務主体と見なされ、独立した課税の対象となります。恒久的施設はイタリアの居住者と見なされるため、法人所得税 (IRES) および生産活動に対する地域税 (IRAP) を支払う必要があります。どちらの税金も、居住企業に適用される会計原則を使用して作成された財務諸表に基づいて計算されます。

したがって、イタリアの恒久的施設は、販売取引の電子請求書を発行し、受け取る請求書を登録する必要があります。また資本会社 (società di capitali または SC) 所得フォームを使用して、年次所得税申告書を提出する必要もあります。

恒久的施設は、イタリアおよび親会社の居住国で独立した課税対象企業と見なされるため、二重課税が発生する可能性があります。ただし、これは二重課税の回避に関する条約を適用することで、軽減または除外できます。

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