即時決済とは、ある銀行口座から別の銀行口座に資金をほぼ即座に、通常は数秒から数分以内に移動する取引のことです。これらの決済は、アメリカの Real-Time Payments (RTP) やイギリスの Faster Payments などのリアルタイム決済ネットワークを使用します。従来の送金は数時間または数日かかり、平日にのみ利用できるものが多いのに対し、即時決済は週末や祝日を含め 24 時間年中無休で処理されます。
2024 年の時点では即時決済を受け取ったアメリカの金融機関はごく少数でしたが、2028 年までにその導入率は 70%〜80% に跳ね上がると予想されています。以下では、即時決済の仕組み、注意すべき課題と、企業がこのような入金を顧客向けに導入する方法について説明します。
この記事の内容
- 即時決済の処理方法
- 即時決済がビジネスにもたらすメリット
- 即時決済を扱う際の課題
- 顧客向けに即時決済を導入する方法
即時決済の処理方法
即時決済は、取引の決済と売上処理を数秒以内に行うリアルタイム決済ネットワークを介して行われます。通常は次のような処理が発生します。
開始: 送金者 (個人または企業) が、銀行または決済サービスプロバイダーを通じた支払いを承認します。
検証: 銀行は十分な資金があるかを確認し、取引の詳細を検証します。
リアルタイム処理: 支払いリクエストが、RTP や Faster Payments などのリアルタイム決済ネットワークを介して送信されます。
売上処理: 受取人の銀行が即座に資金を受け取り、受取人の口座残高を更新します。
確認: 送金者と受取人の両方で、支払いが完了したことをすぐに確認できます。
即時決済がビジネスにもたらすメリット
即時決済によって、企業の資金の扱い方が変わります。キャッシュフローから顧客の期待まで、あらゆるものに効果をもたらします。たとえば、次のような効果があります。
キャッシュフローがリアルタイムで発生する: 支払いが処理されるまで何日も待つことなく、即座に支払いを受けることができます。つまり、キャッシュフローのギャップが小さくなり、ベンダーへの支払いが早まって、短期的な費用を賄うために融資に頼らずに済むようになります。そのため、利益率の低い企業や大量の取引を処理する企業にとって大きな効果がもたらされる可能性があります。
支払いが予測しやすい: 従来の多くの銀行振込では、一括処理と売上処理の遅延を考慮して計画を立てる必要があります。即時決済ではこのような不透明さが解消されるため、遅延に備えたバッファーを用意しておく必要がなく、収益管理とキャッシュフロー予測がしやすくなります。
決済を追跡する手間が減る: 請求書や予定支払いを利用している企業は、銀行の締め切り時間や長い処理期間に対処する必要がなくなります。これは、B2B 取引やギグワークなどの業界で特に役立ちます。
リスクと不正利用の見方が変わる: 即時決済は確定された最終的な決済になるため、企業は取引の差戻しを心配する必要がなくなります。その一方で、これは、決済が完了する前に不正利用防止策を講じる必要があるという意味でもあります。
顧客はあらゆるもののスピードアップを期待している: リアルタイムの返金や請求書の即時支払いに慣れると、処理に時間がかかることが時代遅れに感じられます。即時入金を提供する企業は、マーケットプレイス、金融サービス、ギグプラットフォームなどどのような業種であっても、競合他社とは一線を画した存在になれます。
即時決済を扱う際の課題
即時決済によって多くの問題が解決されるものの、トレードオフも伴います。スピーディーで確定された最終的な決済であるということは、効率化になる一方で、企業が予測しておかなくてはならないリスクも生じます。多額の国際決済やリスクの高い送金など、取引によっては、時間がかかる従来型のオプションのほうが依然として最善の選択肢である可能性があります。
ここでは、即時決済の取り扱いを開始する際に考慮すべき点をご紹介します。
すべての決済は確定された最終的なものである: 決済が行われると、それで完了です。クレジットカードや一部の Automated Clearing House (ACH) 送金とは異なり、簡単にミスを取り消すことができる方法はありません。違う相手に送金した場合は、回収が難しくなる可能性があります。
エラーを修正できる時間が短い: 従来の決済では遅延が設けられており、財務チームは資金移動が行われる前にミスや不正利用の可能性を発見する機会がありました。即時決済では、そのようなバッファーがなくなります。企業は承認プロセスを見直したり、より厳格な管理を導入したりする必要があるかもしれません。
決済で技術的な問題が発生しやすい: 即時決済といえども、問題はあるものです。銀行や決済ネットワークのサービスが停止したり、取引が審査対象になったりする可能性があります。また、まれではあるものの、やはり遅延が発生することもあります。
これらのネットワークと連携していない銀行もある: 導入率が上昇しているものの、すべての銀行が即時決済に対応しているわけではありません。顧客の銀行がこのようなネットワークと連携していない場合、即時決済で送金や入金をすることはできません。
決済の取引限度額がある: 多くの即時決済ネットワークでは、一度に送金できる金額に上限を設けています。給与やサプライヤーへの高額な支払いで多額の送金を行う必要がある場合は、やはり従来の送金を選ばざるを得ない可能性があります。
クロスボーダー決済が利用できないことがある: ほとんどの即時決済システムは、特定の国や地域内でのみ機能します。国際送金はいまだに時間のかかる旧式のシステムに頼っています。
コストがふくれ上がる: 即時決済は一般的にカード処理よりも手数料が低額ですが、企業によっては、即時決済を使用するために決済システムのアップグレードが必要になるかもしれません。初期費用に見合ったメリットが得られるかどうかを検討する必要があります。
顧客向けに即時決済を導入する方法
リアルタイムの銀行振込に対応している Stripe などのペイメントプロバイダーを利用すると、顧客向けに即時決済を導入できます。また、Stripe は銀行口座の所有権を確認し、リスクスコアリングモデルを用いて不審な取引を処理前に発見することによって、不正利用の低減にも貢献します。
次の手順で利用を開始できます。
Stripe Connect または Stripe Payments を設定する: Stripe ダッシュボードを使用して、最小限の開発作業で即時決済を有効にすることができます。
Stripe のアプリケーション・プログラミング・インターフェイス (API) を使用してカスタム連携を行う: 即時決済をプラットフォームに深く埋め込む場合は、リアルタイムの銀行振込を安全に処理する Stripe の API を使用できます。
Stripe ダッシュボードで取引をモニタリングする: リアルタイムの追跡機能と自動照合機能によって、銀行決済を完全に把握できます。
顧客から即時決済を受け付けるために、企業はさまざまな決済ソリューションを提供できます。たとえば、イギリスに拠点を置く企業は顧客が Pay by Bank を利用して即時決済を行えるようにすることができます。また、多くの地域の企業は iDEAL や Swish などを利用した即時決済に対応可能です。
アメリカに拠点を置く企業は、Stripe のスピーディーな決済機能である Link を利用できます。そうすると、顧客は即時の銀行支払いを使って、アメリカの銀行口座から直接売上を送金し、ほぼ即座に決済できるようになります。
ギグプラットフォーム、マーケットプレイス、EC ストアの販売者など、顧客やベンダーにスピーディーに送金する必要がある企業は、Instant Payouts for Stripe Connect を利用して銀行口座に直接送金でき、通常は 30 分以内に決済されます。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。