越境 EC における日本の消費税は?還付の条件を解説

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  1. はじめに
  2. 越境 EC とは
  3. 越境 EC の商品は免税対象
    1. 輸出免税
    2. 消費税還付
  4. 越境 EC で消費税還付を受けるための条件
    1. 消費税課税事業者である
    2. 原則課税方式 (本則課税) を選択している
    3. 期限までに税金還付申請書類を提出する
  5. 越境 EC における消費税還付に関する注意点
    1. 消費税還付の条件を満たす必要がある
    2. 申請に必要な書類は大切に保存しておく
    3. 還付金を受け取るまでに時間がかかる
  6. 越境 EC 事業者が知っておくべき関税と付加価値税 (VAT)
    1. 関税
    2. 付加価値税 (VAT)
  7. 越境 EC ビジネスで適切に消費税を処理するために

消費税は、日本国内で購入および消費される商品やサービスに対して発生する税金です。そのため、日本に居住する消費者は、日々の生活の中で購入するさまざまな商品に対し、消費税を支払っています。消費者から回収した消費税については、消費者に代わって、受領した事業者が責任をもって国に納税します。

このように、消費税は日本国内において広く平等に課税される税金ですが、一方で、越境 EC で販売される商品には消費税はかかりません。
なお、越境 EC で販売される商品には、消費税は発生しませんが、日本の事業者が国内で取引を行う相手側の事業者から商品を仕入れる際には、消費税がかかる場合があります。その場合、商品の仕入れ時に支払った消費税については、消費税の還付を受けることができます。

本記事では、越境 EC で商品を販売する事業者が知っておくべき消費税の還付について解説します。

目次

  • 越境 EC とは
  • 越境 EC の商品は免税対象
  • 越境 EC で消費税還付を受けるための条件
  • 越境 EC における消費税還付に関する注意点
  • 越境 EC 事業者が知っておくべき関税と付加価値税 (VAT)
  • 越境 EC ビジネスで適切に消費税を処理するために

越境 EC とは

冒頭にて解説したように越境 EC とは、中国やアメリカ、欧州など、海外に住む消費者を対象に商品を販売する電子商取引のことです。近年の通信技術の向上や、インターネット、SNS の普及に伴い、多くの人が越境 EC を利用するようになり、中国やアメリカを筆頭に越境 EC 市場は拡大傾向にあります。

越境 EC には、日本国内という限られた市場を超えた、ビジネス拡大の可能性を秘めています。特に日本の事業者の場合、近年盛り上がりを見せているインバウンド市場の成長により、訪日外国人の商品リピーターの増加も見込むことができます。

たとえば、外国人が訪日旅行をきっかけに、日本のスキンケア商品に関心を持つようになった場合、越境 EC サイトがあれば、これまで日本でしか入手できなかったものでも自国から簡単に購入することができます。このように、越境 EC には、日本ブランドの強みを海外へと発信することで、国を越えたビジネスを展開することができるのです。

越境 EC の商品は免税対象

越境 EC のように、日本の事業者が海外の消費者をターゲットとして国外に向けて商品を販売する場合は、消費税はかかりません。その理由は、海外から購入される商品が日本国外へ輸出され、海外での消費を目的としているためです。これを輸出免税と呼びます。このように、海外の消費者からすると、消費税を負担する必要がないことは、利点といえるかもしれません。

越境 EC で販売する商品に対して消費税が発生しないということは、事業者側が消費税を納付する必要もありません。そのため、もし事業者が商品の仕入れ時に消費税を余分に払った場合は、返金 (還付) の対象になります。

なお、消費税の免税には、輸出免税を受ける方法と、消費税を払った場合に後から還付を受ける方法があります。

輸出免税

繰り返しになりますが、外国で消費される商品は消費税課税の対象外です。つまり、越境 EC で販売する商品も、輸入取引に該当するため、免税対象です。国税庁の『輸出取引の免税』では、免税が適用される輸出取引の具体的な例として、以下の取引が挙げられています。

  • 国内からの輸出として行われる資産の譲渡または貸付け
  • 国内外の間の通信や郵便もしくは信書便
  • 非居住者に対する鉱業権、工業所有権、著作権、営業権等の無体財産権の譲渡または貸付け
  • 非居住者に対する役務の提供 (飲食や宿泊など日本国内において直接受けるサービスは課税対象)

なお、課税事業者が、消費税について輸出免税の適用を受けるためには、上記の輸出取引の種類に応じて、該当する取引が輸出取引であるということを証明できる輸出許可書や、一定の事項が記載された契約書などを準備しなければなりません。また、これらの書類については、納税地などに 7 年間保存する必要があります。

消費税還付

本来支払う必要がなかった消費税を払っていた場合は、相当する金額の返金、すなわち還付を受けることができます。そのため、越境 EC で取り扱う商品の仕入れや発送、輸出業務などの経費にかかった消費税についても、還付の対象になります。消費税の還付を受けるためには、一定の条件を満たしたうえで必要書類を揃える必要があります。したがって、国税庁の『免税事業者と仕入税額の還付』に記載されている提出書類などの詳細を確認しながら、適切な還付手続きを行うようにしましょう。

越境 EC で消費税還付を受けるための条件

日本の越境 EC 事業者が消費税の還付を受けるには、以下の条件を満たしている必要があります。

消費税課税事業者である

前提として消費税の還付は、消費税の納税義務のある事業者、すなわち消費税の課税事業者が対象です。

課税事業者とは、課税売上高が 1,000 万円を超えている事業者を指します。個人事業主なら前々年、法人の場合は前々事業年度の課税売上高が 1,000 万円を超えているかどうかがポイントとなります。

したがって、新たに設立したばかりの法人の場合は、売上履歴がないため、消費税還付の条件を満たすことができず、還付の対象外となります。ただし、新設法人であったとしても、資本金が 1,000 万円を越えていたり、事業開始時点で消費税課税事業者選択届出書を提出していた場合は、課税事業者として認められ、消費税の還付を受けることができます。

なお、売上高が 1,000 万円以下の個人事業主や免税事業者については、そもそも消費税の納付が免除されている事業者であることから、還付の条件から外れますが、上述した届出書を申請し、課税事業者に変更すれば、仕入れに含まれる消費税の還付の対象となります。

原則課税方式 (本則課税) を選択している

消費税の計算方法には、「原則課税方式」と「簡易課税方式」があります。

原則課税方式とは、「課税売上高にかかる消費税額」から「仕入れ・経費にかかる消費税額」を差し引いた金額を、消費税納付額として国に納める方法です。

一方、簡易課税方式の場合、「課税売上額にかかる消費税額」と「みなし仕入れ率 (%)」を用いて納税額を算出します。この方式の場合、計算上還付額は発生しないため、還付を受ける条件を満たすことができません。そのため、消費税の還付に際しては、原則課税方式を選択している必要があるのです。

期限までに税金還付申請書類を提出する

事業者が消費税の還付を受けるためには、所要書類を管轄の税務署に提出する必要があります。企業が準備する必要のある書類は次のとおりです。

  • 消費税・地方消費税の確定申告書 (当該課税期間のもの): 消費税の還付に必要な申告書は、消費税の申告書 (第一表第二表) と同じです。税金還付申告書は法人向けの申告書と個人事業主向けの申告書に分かれているため、事業者は国税庁のウェブサイトから正しい書類をダウンロードする必要があります。

  • 還付請求に関する明細書: 事業者は、還付申請について、還付が必要な理由、購入代金の金額などを明確に記載した詳細な明細書を作成する必要があります。明細書を作成する際は、国税庁の明細書サンプルを参考にするとよいでしょう。

  • 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表: この明細書には、課税対象の売上税額や課税対象の仕入税額などの情報を記載します。

  • 輸出許可証と証明書類: 事業者は、輸出許可証に加えて、商品が越境 E コマースを通じて日本国外に発送されたことを証明する書類も用意する必要があります。

  • 納品書、請求書、領収書など、購買に関する書類: また、消費税の発生する購入を行ったことを証明する配送書類、請求書、領収書などの書類も提出する必要があります。

申請期間と締め切りは次のとおりです。

  • 法人の場合: 会計期間の末日 (決算月の末日) の翌日から起算して 2 カ月以内。たとえば、会計年度が 4 月 1 日に始まり、3 月 31 日に終了する場合、申請期限は 5 月 31 日 (3 月 31 日の 2 カ月後) になります。

  • 個人事業主の場合: 課税期間の翌年の 3 月末まで (課税期間が週末に当たる場合は翌月曜日)。

越境 EC における消費税還付に関する注意点

消費税還付の条件を満たす必要がある

消費税の還付を受けるためには、前章でご紹介した条件の各項目をクリアしている必要があります。そのため、還付申請に際しては、必須条件についてしっかりとおさえておきましょう。

申請に必要な書類は大切に保存しておく

消費税の還付に際して、申請後に税務署から連絡が入る場合があります。税務署からの確認事項について、しっかりと答えられるよう、還付に関わる書類はなくさずに、保管しておくことが大切です。

なお、越境 EC では、海外に発送する商品代金の総額が 20万円以下の場合、輸出申告が不要なため輸出許可書が発行されません。この場合、輸出許可書の代わりに運送状で代用できます。

注: 運送状とは、 貿易取引における必要書類で「送り状」または「インボイス」ともいいます。税関では、この書類に記載されている申告内容をもとに物品の検査を行います。日本のインボイス制度のもとで適格請求書発行事業者によって発行されるインボイス (適格請求書) とは別のものとなるため、ご注意ください。

還付金を受け取るまでに時間がかかる

税務署への還付申請後、実際に返金が完了するまでには、審査などに時間を要するため時間がかかります。国税庁によると、概ね 1 カ月から 1 カ月半ほどかかるとしています。還付金は、事業者にとって、越境 EC ビジネスを展開するための資金の 1 つです。そのため、早めに還付金を受け取るためにも、できるだけ時間に余裕をもって申請手続きを始めるようにしましょう。

越境 EC 事業者が知っておくべき関税と付加価値税 (VAT)

越境 EC で販売される商品が消費税の免税対象であることは既におわかりかと思いますが、一方で、越境 EC では関税や付加価値税 (VAT) がかかるということを知っておく必要があります。越境 EC で消費税がかからない背景には、関税や VAT に加えて消費税を課税することによる「二重課税」を防ぐためでもあります。

関税

関税とは、商品の輸出入に関わる税金のことで、海外から輸入する商品には、この関税が課されます。関税は、国や地域、品目によって税率が異なり、細かく種類が区分されているため、事業者は越境 EC における関税、特に進出先となる国の情報をしっかりとおさえておく必要があります。

また、関税は、基本的に消費者が負担する税金となるため、越境 EC からの商品の注文後、自国に輸入された後で知らされるといったトラブルが生じることのないよう、越境 EC 事業者側の消費者に対する配慮がとても大切です。たとえば、関税がかかることを見込んだ価格設定や、商品の購入時に関税率や関税見込額を記載するといった対応が望ましいでしょう。

関税が徴収される目的は、主に「国の収入確保」と「国内産業の保護」の 2 つが挙げられます。「国の収入確保」は、その言葉どおり、自国の財源を支えることを目的としていますが、「国内産業の保護」については、関税を課す目的として各国において特に重視されています。

「国内産業の保護」が関税の目的として重要視される理由は、安価な輸入品が海外から国内に大量に流れてきた場合、輸入品ばかりが国内市場を占める恐れがあるからです。もし、輸入品に押され、国内で生産される同等品が売れ残ってしまうと、自国の産業が衰退してしまうかもしれません。このような事態を避けるために、各国では関税制度に基づく税金が課されているのです。

付加価値税 (VAT)

付加価値税 (VAT) とは日本の消費税のようなもので、商品やサービスの提供の際に課される税金です。越境 ECにおいても、販売先の国によっては VAT が発生するため注意が必要です。

VAT は、EU 加盟国やアジア圏の国を中心に導入されており、国によって税率もさまざまとなっています。特に EU 加盟国では、標準税率の下限は 15% と定められている一方で、上限がありません。そのため、越境 EC においては、関税以外にも VAT がかかるケースがあることを理解し、進出先の VAT の税率を事前に確認しておくようにしましょう。

越境 EC ビジネスで適切に消費税を処理するために

今回は、越境 EC ビジネスを展開するにあたり、日本の事業者が知っておくべき消費税について解説しました。越境 EC において日本の消費税や海外の VAT、関税に関する知識は欠かせません。そのため、国境を越えて商品を販売する越境 EC では、これらの税金に関する知識を十分に身につけておくようにしましょう。また、ビジネスを行ううえで、消費税に関わる業務を効率化できるサポート機能の導入を検討してみるのもよいでしょう。

Stripe では、越境 EC ビジネスの成長を後押しするさまざまな機能を提供しています。たとえば、Stripe Tax は、VAT の導入国を含む 90 カ国以上の国と、アメリカのすべての州の税計算に対応し、グローバルな税務コンプライアンスの複雑さを軽減します。また、Stripe Tax なら、Stripe を用いたオンライン取引において、税金の計算と徴収を自動化し、納税申告に必要な包括的なレポートの作成も可能となっています。

この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。

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