法人税は、営業費用、支払利息、資本投資を差し引いた後に残る所得部分 (会社の利益) に対して課税されます。法人税率が高いと税引き後の純利益が減少し、事業の拡大、新技術への投資、従業員の雇用が難しくなります。競争の激しいセクターでは、企業は価格を上げることで増税のコストを顧客に転嫁することがよくあります。
アメリカ政府は、公共サービスの提供、道路などのインフラ整備、法制度の拡充、教育支援に法人税を充てています。適切に構造化された法人税制は、研究開発、グリーンエネルギーへの取り組み、地域社会への投資などに対するインセンティブの提供を通じて、企業がより持続可能で社会的に有益な慣行を追求することを後押しします。
本記事では、アメリカの法人税率が低い州と高い州をそれぞれ紹介するとともに、企業が事業拠点を決定する際に考慮すべき点を解説します。
本記事の内容
- 州によって法人税率が異なる理由
- 税制で州を選ぶ際の注意点
- 法人税率が低い州
- 法人税率が高い州
グローバル事業に影響する 2025 年の税規制の変更点
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州によって法人税率が異なる理由
各州では、次のようなさまざまな要因で異なる法人税率が課されています。
経済発展度:州は、企業を誘致し、経済成長を刺激するためのインセンティブとして、法人税率の引き下げを実施することがよくあります。州は、企業に有利な税制環境を提供することで、企業が州内に移転したり、州内で事業を拡大したりすることを期待しています。誘致がうまくいくと、雇用が創出され、企業税収を増やすことができます。
予算の必要性:州には、人口規模、インフラ要件、社会プログラム、およびその他の支出に基づくさまざまな予算ニーズがあります。法人税率を引き上げることで、これらの取り組みに資金を提供するための歳入を増やすことができます。
政治的イデオロギー:保守的、あるいは企業寄りのスタンスをとる州は、経済的自由と投資の促進を期待して、法人税率の引き下げを支持するかもしれません。リベラルあるいは進歩的なイデオロギーを支持する州は、社会プログラムに拠出して所得格差を是正するために、高税率を打ち出す可能性があります。
租税競争:各州で、近隣の州よりも低い税率を設定して企業や投資を誘致しようとする動きがよく見られます。競争力を維持するために、各州は継続的に税率を引き下げていますが、これは「底辺への競争」につながる要因にもなります。
最適課税:州は、法人所得税、個人所得税、売上税、固定資産税など、さまざまな税金を組み合わせて歳入を生み出しています。州全体の歳入構造における各税の相対的なウェイトは、法人税率にも影響を与える可能性があります。個人所得税または売上税に大きく依存している州は、法人所得税に大きく依存している州よりも法人税率を低く設定できる余地があります。
税制で州を選ぶ際の注意点
この項目では、企業の拠点となる州の税務環境を評価する際に考慮すべき重要事項をいくつかご紹介します。
全体的な税負担
法人所得税の他にも、売上税、固定資産税、総収入税、失業保険税、業界固有の税金などを総合考慮してください。また、会社が受けられる可能性のある税制優遇措置や税額控除についても検討してください。
会社形態
会社が有限責任会社 (LLC) や S 株式会社などのパススルー企業に該当する場合、事業所得は株主にパススルーされ、株主個人の確定申告時に課税が発生します。この場合、州法人税と個人所得税の両方の税率を考慮してください。
会社が C 株式会社 に該当する場合、法人所得税率が主な考慮点になります。また、会社から配当や給与を受け取る株主は、個人所得税率も考慮する必要があります。
業界固有の考慮事項
製造業を営む企業の場合、固定資産税の減免や、製造設備の購入に係る売上税の免除など、製造企業に対する税制優遇措置を設けている州を中心に調べてください。テクノロジー企業は、研究開発費に対する税額控除やテクノロジーインフラへの投資にインセンティブを提供する州で、その恩恵を受けられる可能性があります。小売業の場合、消費税率や顧客の消費習慣が重要な考慮事項として当てはまります。
今後の成長性
企業が成長した場合でも、州の税制が有利に維持されるかどうかを検討する必要があります。増収によって税率が高くなる可能性、特定の優遇措置が受けられなくなる可能性を探ってください。また、州の租税政策の歴史を調査して政策が一貫していること、税率と規制に大幅な変更があったかどうかの確認も必要です。
その他の要因
以下の事柄も、特定の州での事業設立を判断する要因となります。
生活費:州で暮らすための生活費は、賃金や家賃などの事業費にも影響を及ぼします。
労働力の確保:業界に精通した労働者を雇えるかどうかで、収益額が増減する可能性もあります。
規制環境:一部の州では、他の州よりも負担の大きい規制が設けられていることがあり、これは事業運営にも少なからず影響します。
法人税率が低い州
企業の税負担がとりわけ軽い州では、法人所得税、個人所得税、およびその他の事業関連税が低くなっていることが多いです。抑えておくべき低税率の州をいくつかご紹介します。
法人所得税のない州
ネバダ州:ネバダ州には法人税や個人所得税はありませんが、総収入税が設けられているほか、消費税率は高く設定されています。
オハイオ州:オハイオ州に法人所得税はありませんが、代わりに総収入税が課せられます。これは、利益率が高く、総売上が少ない企業にとって有利です。
サウスダコタ州:サウスダコタ州には法人税も個人所得税もなく、固定資産税も低く抑えられており、消費税率も割安です。
テキサス州:テキサス州には法人税や個人所得税はありませんが、総収入税が課せられます。
ワシントン州:ワシントン州には個人所得税や法人所得税はありませんが、企業には総収入税が課せられます。
ワイオミング州:ワイオミング州には法人所得税も個人所得税もありません。また、固定資産税が低く、消費税率も魅力的です。
法人所得税が低い州
コロラド州:コロラド州の法人税率は 4.4% で、州の売上税率および固定資産税も低い水準にあります。
フロリダ州:フロリダ州には個人所得税がなく、法人所得税率も 5.5% に抑えられています。消費税率は標準的な水準ですが、企業にメリットのあるさまざまな免税措置が設けられています。
ミズーリ州:ミズーリ州の法人所得税率は 4% と低く、固定資産税率および消費税率も比較的低い水準にあります。
ノースカロライナ州:ノースカロライナ州の法人所得税率は 2.5% と国内で最も低く設定されています (ゼロ税率の州を除く)。
オクラホマ州:オクラホマ州の法人所得税率は 4% であり、固定資産税率および消費税率も比較的低く設定されています。
サウスカロライナ州:サウスカロライナ州の法人所得税率は 5% と低く、特定のセクターで事業を行う企業や特定の活動に従事する企業にさまざまな控除やインセンティブを提供しています。
ユタ州:ユタ州では 4.55% の低い法人所得税が設けられており、消費税率も低く抑えられています。
法人税率が高い州
法人税率が比較的高い州には、多くの場合、企業が考慮すべき追加的な規制やコスト要素が存在することがよくあります。以下は、法人税率が高水準の州を抜粋したものです。
アラスカ州:アラスカ州には、州売上税や個人所得税の免除など、いくつかの税制優遇措置がありますが、法人所得税率は事業所得に応じて 0%~9.4% で設定されています。
カリフォルニア州:複雑な規制環境で知られるカリフォルニア州では、8.84% の高い法人所得税率がほとんどの企業に適用されます。
イリノイ州:イリノイ州は、7.0% の固定法人所得税と 2.5% の動産再取得税からなる法人税 (9.5%) を企業に課しています。
ミネソタ州:ミネソタ州の法人所得税率は 9.8% であり、国内で最も高い税率になっています。州の税制は複雑で、個人所得税には税率区分が設けられていたりもします。
ニュージャージー州:ニュージャージー州の法人所得税率は、事業所得に応じて 6.5%~9.0% の範囲で決まります。
ペンシルベニア州:ペンシルベニア州の法人所得税率は 7.99% ですが、2022 年の 9.99% からは低下しています。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。