日本の小売市場では、消費者がオンラインで情報収集を行い、その後で実店舗で購入するウェブルーミングと呼ばれる購入の仕方が注目されつつあります。レビューや比較サイトを通じて得た情報をもとに、店舗で実際の商品を確かめてから安心して購入に至るという流れです。
この行動パターンは、事業者にとって来店動機や購入までの過程の変化を意味し、マーケティング戦略や店舗運営に大きな影響を与えます。
本記事では、ウェブルーミングの基本的な意味や消費者がその行動をとる理由、ショールーミングとの違い、メリット・注意点や日本企業の事例について解説します。
目次
- ウェブルーミングとは
- ウェブルーミングに関する調査データ
- ウェブルーミング対策
- ウェブルーミング対策のメリット
- ウェブルーミング対策の注意点
- ウェブルーミング対策の企業事例
- Stripe Terminal でできること
ウェブルーミングとは?
ウェブルーミングとは、顧客がインターネットを利用して商品情報やレビュー、価格などを事前にリサーチし、実際の購入は実店舗で行うというショッピング行動のことです。マーケティングの世界では、これは ROPO (Research Online, Purchase Offline) とも呼ばれています。ウェブルーミングとは、消費者がオンラインで商品情報やレビュー、価格を事前にリサーチし、その後、実店舗で購入する買い物の流れを指します。英語では Webrooming、マーケティング分野では、ROPO (Research Online, Purchase Offline) としても知られています。
この行動が広がった背景には、スマートフォンの普及や EC サイトの利便性向上が大きく関わっています。特に高額商品や品質確認が重要なカテゴリーでは、オンラインの情報量と実店舗での体験価値を組み合わせることで、顧客満足度を高めやすくなります。
消費者がウェブルーミングをする理由
消費者がウェブルーミングを行う背景には、いくつかの共通した動きがあります。
無駄足を避ける
まず、価格や在庫を事前に把握することで、店舗に足を運ぶ際の無駄足を避けたいという気持ちがあります。特に大型商品や人気商品の購入では、その傾向が強くなります。あらかじめ、商品をリサーチし、在庫を確認しておけば、実店舗での買い物時間を短くすることができます。
安心感
また、オンラインのレビューや比較サイトを活用して情報収集したうえで、実際の店舗で商品を確認することで安心感を得たいという心理も働きます。
たとえば、家電製品なら操作のしやすさ、化粧品なら色合いなどは、画面上では判断しづらい部分です。ウェブサイトで確認できる情報はあらかじめ得ておき、実店舗に出向いて最終確認し、納得できる商品を選びたいと思うのは、ごく自然な行動と言えるでしょう。
対応する環境
さらに近年では、オンラインで得た情報をそのまま店舗で利用できる環境が整いつつあります。たとえば、ポイントやクーポンをオンラインと店舗の両方で使えるオムニチャネル決済
の仕組みがあれば、消費者はどのチャネルを使っても同じ買い物体験ができるため、利便性を感じやすくなります。ウェブルーミングは、効率と安心を両立させた買い物スタイルとして広がっているのです。
ショールーミングとの違い
ウェブルーミングとショールーミングは購入までの順番が真逆です。
- ウェブルーミング: ウェブサイトで商品の詳細を調べてから、実店舗に行き購入する。
- ショールーミング: 店舗で商品を手に取って見てから、ウェブサイトで購入する。
企業から見ると、ウェブルーミングは、フリーライドの可能性は否めないものの、消費者が実際に来店すれば売上につながりやすく、その後の販売拡大へ結びつけることが期待できます。一方、ショールーミングは接客しても、顧客はインターネットで最安値の店舗から購入する傾向が強いため、売上面で課題が残ると言えるでしょう。
ウェブルーミングに関する調査データ
多くの消費者は、購入前にオンラインで商品を事前に確認し、情報収集していることが明らかになっています。
KPMG ジャパンが 2023 年に行った調査によると、約 50% の日本の消費者が実際にウェブルーミングを活用した経験があると答えています。さらに、消費者の約 60% が今後ウェブルーミングを取り入れたいと回答しており、最初にウェブサイトで情報収集を行うという消費者意識が確実に広がりつつあることがわかります。
また、ウェブサイトで商品検索を行った後の購買行動は主に次の 3 つに分類されることが分かっています。
- 実店舗購入型: 情報収集はオンラインで行い、実物の確認と購入は実店舗で行う。
- 実店舗確認・オンライン購入型: 情報収集はオンラインで行い、実物の確認は実店舗、最終的な購入はオンラインで行う。
- オンライン完結型: 情報収集、実物の確認、購入すべてをオンラインで行う。
商品の購入金額が上がるほど実店舗購入型と実店舗確認・オンライン購入型での購入の割合が高くなることがわかっています。
ウェブルーミング対策
ウェブルーミングを効果的に活用するためには、EC サイトでも実店舗でも、同じように便利で安心できる購入体験を提供することが欠かせません。そのためには、オンラインとオフラインを一貫してつなぐ仕組みである OMO (Online Merges with Offline)、ユニファイドコマース、オムニチャネルと言った考え方を意識し、顧客がどのチャネルを利用しても同じ体験を得られるようにすることが重要です。
ウェブルーミング対策のメリット
ウェブルーミングの施策は、お客様にとっても事業者にとってもプラスの効果を生み出します。対策のメリットは具体的にどのようなものがあるか、詳しく見ていきましょう。
在庫情報の連動
EC サイトと実店舗の在庫をリアルタイムで同期させることで、消費者は欲しい商品があるかどうか店舗にいく前に確認することができます。正確な在庫情報は顧客満足度を高め、将来的な来店動機へとつながります。
店舗スタッフによるデータの活用
オンラインとオフラインがつながると、店舗スタッフも顧客情報を把握することができます。これにより、来店した顧客にデータに基づくカスタマイズした接客を提供することが可能になり、顧客は自分に合わせた接客をしてくれているという特別な買い物体験を得られます。
決済体験の一貫性
店舗とオンラインで支払い方法が違うと、消費者は不便さを感じやすくなります。たとえば、店舗で貯めたポイントがオンラインでは使えない、アプリに登録したカードが実店舗では使えないなどです。こうしたギャップをなくすのがオムニチャネル決済です。特典やクレジットカード、QR コード決済などを複数のチャネルで使用できるようにすれば、顧客の利便性が高まります。こうした一貫性は、安心感と信頼を生み、リピート購入を促す要因となり得ます。
ウェブルーミング対策の注意点
一方で、ウェブルーミング対策には次のような注意点も伴います。
在庫管理に追加の仕組みが必要になる
オンライン上で在庫ありと表示されているのに、来店して売り切れていたりすると、顧客満足度がを大きく下げてしまいます。制度の高い在庫管理システムの導入や、物流拠点とのスムーズな連携が求められます。
スタッフに新しいスキルが求められる
顧客データを活用した接客には、従来の接客スキルだけではなく、デジタルツールを扱う力も必要になります。社内でスタッフへの研修やサポート体制を整えることを疎かにしないようにしましょう。
チャネル間での価格・キャンペーン管理
決済やポイントなどの特典を統一する際には、オンラインとオフラインでキャンペーン内容が矛盾しないように、運用ルールを明確にすることが重要です。
ウェブルーミング対策の企業事例
ウェブルーミング対策がされている日本企業の事例をご紹介します。どのようにオンラインとオフラインを結びつけているのかを見ていきましょう。
駿河屋
中古ゲームやフィギュアを扱う駿河屋は、元々はオンラインのみでの販売でしたが、現在は日本全国に実店舗を展開しており、ウェブ上での膨大な商品情報と実店舗の在庫をうまく連動させています。消費者は公式サイトで欲しい商品の在庫や価格を確認してから来店します。消費者にとって、店舗は最終確認と購入の場として認識されています。実店舗での接客により、追加購入やリユース品の持ち込みといった相乗効果も生まれています。
ABC マート
靴の小売店である ABC マートは公式 EC サイトと全国の店舗在庫を連動させ、利用者がオンラインで在庫を確認し、店舗で受け取れる仕組みを強化しています。また、スタッフが顧客データを活用し、来店時におすすめ商品を提案するなど、デジタルと接客をつなぐ工夫も進めています。オンラインで情報収集を行い、店舗で最終決定をするという典型的なウェブルーミングの活用例です。
駿河屋や ABC マートのように、オンラインと店舗をうまく結びつける工夫は、顧客の利便性を高めるだけでなく、企業にとっても新たな成長の機会につながります。
Stripe Terminal でできること
Stripe Terminal はユニファイドコマースのためのソリューションです。対面チャネルとオンラインチャネルを統合し、収益拡大を実現させます。新しい支払い方法、シンプルなハードウェア、グローバルな対応、数百の POS とのコマース連携により、理想的な決済環境を構築できます。
Stripe は、Hertz、URBN、Lands’ End、Shopify、Lightspeed、Mindbody などのユニファイドコマースを強化しています。
Stripe Terminal の特徴
- ユニファイドコマース: オンラインと対面での決済をグローバルプラットフォームで一元管理します。
- グローバル展開: 1 つのシステムと一般的な決済手段で、24 か国への拡大が可能です。
- 自社に合った導入: 独自のカスタム POS アプリを開発するか、サードパーティの POS や EC システムを使って既存のテックスタックと連携できます。
- シンプルなハードウェア: Stripe 対応のリーダーを注文、管理、監視できます。
Stripe Terminal について詳しくは こちら をご覧ください。今すぐ開始する場合はこちら。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。