SaaS (Software-as-a-Service) により、ユーザーはオンラインでソフトウェアにアクセスできます。日本でもデジタルトランスフォーメーション (DX) やクラウド導入が加速する中、SaaS は幅広いワークフローに活用されるようになり、サービスプロバイダーに新たなビジネスチャンスをもたらしています。
しかし、SaaS 市場への参入を検討しているビジネスの中には、まだ成長の余地があるかどうか疑問に思うところもあるかもしれません。新規事業を立ち上げる際、その分野の規模と成長の可能性を理解することは、ビジネスチャンスを見極める上で価値があります。
この記事では、日本と世界における SaaS 市場の規模、その成長の可能性、注目を集める分野、および SaaS ビジネスに適した収益モデルについて説明します。
この記事でわかること
- 日本の SaaS 市場は、企業の DX 化、クラウドプラットフォームへの移行、労働力不足への対応などの要因によって、今後も成長が続くと予想されています。
- 人工知能 (AI) SaaS、AI エージェント、バーティカル SaaS、セキュリティ SaaS、Business Process-as-a-Service (BPaaS) および関連分野は、今後さらに拡大する可能性があります。
- SaaS ビジネスにおいては、サービスに適した収益モデルの選択とともに、継続課金、プラン変更、従量課金に柔軟に対応できるインフラの構築が重要です。
日本および世界における現在の SaaS 市場規模
SaaS 市場は日本と世界で拡大しています。最新のデータから、国内外の市場規模と拡大の傾向がわかります。
世界の SaaS 市場規模
クラウドへの移行が加速する中、世界の SaaS 市場は拡大を続けています。Gartner の予測によると、SaaS に対する世界のエンドユーザーの支出は、2024 年の 2,508 億米ドルから 2025 年には 2,991 億米ドルに増加し、前年比 (YoY) 19.2% の成長を示すとされています。パブリッククラウド分野全体では 2025 年に 21.5% の成長が予測されており、SaaS を含むホステッドサービスの需要は高まり続けています。
この拡大を牽引している要因の 1 つは、AI を含む新技術の普及です。Gartner のレポートでは、企業が AI の利用を拡大するにつれて、企業活動や業績を支える上でクラウドコンピューティングの役割がますます重要になると強調されています。特定の業界や用途に合わせた生成 AI モデルの台頭により、今後のパブリッククラウドサービスへの支出は促進されるでしょう。
業界全体の傾向を考慮すると、世界の SaaS 市場は大きな規模に達しており、AI などの新技術を取り入れながら今後も拡大を続ける可能性が高いと言えます。
日本の SaaS 市場規模
富士キメラ総研の調査によると、エンタープライズソフトウェアの SaaS / Platform-as-a-Service (PaaS) 分野は、2029 年度には 2024 年比 73% 増の 3.4 兆円に達すると予測されています。
この拡大は、ソフトウェア自体の変化を反映しています。パッケージソフトウェアから SaaS や PaaS への移行が進む中、コラボレーションやマーケティングの枠を超え、バックオフィスのワークフローや基幹業務を支えるシステムのクラウド化が進んでいます。また、AI アシスタントやAI エージェントなどの新技術の導入も、今後の市場拡大を牽引すると期待されています。
SaaS 市場が成長を続ける理由
SaaS 市場の成長を後押ししている要因には、企業によるデジタルテクノロジーの導入、働き方の変化、AI などの技術の進歩などがあります。日本の企業が DX を推進し、慢性的な人手不足に対応する中で、ビジネス業務を簡素化できる SaaS ソリューションに対する需要が高まっています。
DX とクラウドへの移行が加速
企業の DX が進むにつれ、日常業務でのクラウドベースのアプリケーションの使用が定着してきました。IPA の 2025 年の DX トレンドに関するレポートによると、国内企業のうち「全社的に活用している」と回答した企業は 41.4%、「特定の事業部門で活用している」と回答した企業は 17.2% に上りました。
SaaS を利用すると、独自のサーバーやその他の IT インフラストラクチャーを構築することなく、必要な機能にインターネット経由でアクセスできます。企業の DX やクラウドサービスへの移行が進むにつれ、SaaS を導入する機会が増加しています。
人手不足に対応するための業務効率化の需要
日本では、少子高齢化などを背景とした構造的な人手不足が企業の大きな課題となっています。2025 年版小規模企業白書では、人手不足への対応策の 1 つとして、デジタル投資による業務効率と生産性の向上が挙げられています。さらに、建設、小売業、宿泊、飲食などの深刻な人手不足に直面している業界では、ソフトウェアへの投資が増加しています。
限られたスタッフで運営するためには、会計、勤怠管理、顧客管理などの日常業務の効率を向上させるシステムが必要です。このような企業の需要が、SaaS への関心をさらに高めています。
導入コストと継続的な運用コストの最小化が容易
SaaS では、社内サーバーを構築したり、ソフトウェアのアップデートやメンテナンスを管理したりする必要がありません。これにより、従来のソフトウェアと比較して、導入や運用の負担を軽減できます。
多くのサービスでは、必要な機能やユーザー数に応じてプランを選択できるため、SaaS は大企業だけでなく、事前の多額な IT 投資が困難な中小企業 (SME) にも適しています。
AI の導入による SaaS の適用範囲の拡大
AI テクノロジー、特に生成 AI の進歩は、SaaS 市場の拡大に貢献しています。従来の SaaS は主に情報管理とワークフローの簡素化に重点を置いていましたが、現在では文書作成、データ分析、顧客対応、営業支援など、AI を活用した機能を提供するサービスが増えています。
複数の機能を自動的に実行できる AI エージェントが普及するにつれて、SaaS が処理できるタスクの範囲はさらに広がると予想されます。テクノロジーの進歩により、さらなるサービスやアプリケーションが推進され、今後の SaaS 分野を支えていくと予測されています。
高い成長が見込まれる SaaS 市場の分野
企業のデジタルツールやプロセスの導入、および AI の普及が進むにつれて、SaaS の導入範囲はさらに拡大しています。日本における AI やセキュリティへの投資が増加する中、特定の業界や業務機能に特化したサービスなど、新たな SaaS 分野での成長が期待されています。
AI SaaS と AI エージェント
生成 AI の普及に伴い、このテクノロジーや、定義されたタスクを自律的に実行するエージェントを組み込んだ SaaS ソリューションへの関心が高まっています。IDC Japan によると、2024 年の国内 AI プラットフォームおよびアナリティクス市場は前年比 36.6% 増の 3,734 億円に達し、今後も急成長が続くと予測されています。
AI の適用範囲は、テキスト生成やデータ分析にとどまらず、顧客対応、営業支援、情報収集、ビジネスプロセスの自動化にまで及んでいます。AI エージェントの普及に伴い、SaaS が担う機能の範囲はさらに広がると予想されます。
バーティカル SaaS
バーティカル SaaS とは、医療、建設、不動産、小売業などの特定の業界に特化したサービスを指します。B2B SaaS 分野では、専門的なワークフロー、商慣習、規制に合わせて設計されたツールに対する需要が高まっています。汎用的な SaaS プロダクトでは対応が難しい課題を解決できる点がメリットの 1 つです。
日本では、多くの業界で人手不足とワークフローのデジタル化が大きな課題となっています。そのため、業界特有の業務に対応するよう設計されたバーティカル SaaS ソリューションの導入には、まだ成長の余地があります。AI を組み込むことで、専門性の高い業務を自動化することも可能です。
セキュリティ SaaS
クラウドサービスの利用が増加するにつれて、企業のデータやシステムを保護するセーフガードの価値も高まっています。IDC Japan は、2024 年の国内セキュリティソフトウェア市場が前年比 14.6% 成長すると予測しています\。
セキュリティ SaaS は、ID とアクセス管理、脅威の検出、データ保護、クラウドモニタリングなど、さまざまな機能を提供します。組織のクラウドプラットフォームへの依存度が高まるにつれ、より巧妙化するサイバー攻撃や、生成 AI の悪用による新たな脅威に直面しています。その結果、セキュリティ分野の需要は今後も増加し続けると予測されます。
BPaaS
BPaaS は、SaaS などのクラウドテクノロジーを使用して、会計、給与計算、カスタマーサポートなどの機能を外部サービスとして提供するアプローチです。ソフトウェアそのものを提供する SaaS とは異なり、BPaaS はシステムを提供するだけでなく、実際の処理やワークフローも担います。
日本の企業にとって、人手不足への対応と業務効率の向上は重要な課題であるため、システムの導入をサポートしつつ、ビジネスプロセス自体を簡素化して外部委託できる BPaaS は、日本のニーズに適していると考えられています。
SaaS ビジネスの収益モデルと請求インフラ
SaaS ビジネスにおいて、提供するサービスや顧客の利用方法に合わせた収益モデルを選択することは、事業の拡大に伴う柔軟な運営に役立つため重要です。利用可能な仕組みと、それに必要な請求プロセスは以下のとおりです。
SaaS ビジネスの主な収益モデル
SaaS ビジネスではさまざまな収益モデルから選択できますが、サービスの特性や顧客の利用状況によって最適なものは異なります。
収益モデルの選択は、収益の安定性、顧客生涯価値 (CLV)、チャーンレート、および年間経常収益 (ARR)に影響を与えます。そのため、顧客がサービスから得る価値と利用方法に基づいて料金体系を設計できます。
SaaS の収益化に必要な請求書発行と請求管理
収益モデルを選択したら、請求、契約変更、解約を適切に処理する必要があります。
たとえば、以下をサポートする必要があります。
- 定期的な請求書発行と自動更新
- プランのアップグレードまたはダウングレード
- 従量課金の計算
- 契約期間と請求サイクルの変更
- 解約の処理
- 複数の料金プランと通貨のサポート
海外展開、特に越境 EC を通じた展開では、複数の料金体系が重要になります。サービス自体の開発にとどまらず、柔軟な請求および請求書発行インフラを構築することが、継続的な収益のサポートに役立ちます。
Stripe Billing でできること
Stripe Billing は請求および顧客管理のためのプロダクトです。シンプルな継続請求から従量課金、商談による契約への対応まで、貴社のニーズに合わせた請求管理や顧客管理を実現します。コーディング不要で、グローバルな継続課金をわずか数分で開始できます。API を活用した独自システムの構築も可能です。
Stripe Billing の特徴
柔軟な料金体系: 従量課金、段階制料金、定額料金および超過料金など、あらゆる料金体系モデルを用意して、ユーザーのニーズにすばやく対応。クーポン、無料トライアル、日割り計算、その他の拡張機能も含まれます。
グローバル展開: 顧客が希望する決済手段に対応し、購入完了率を向上。Stripe は 100 を超える地域固有の決済手段と 130 種類以上の通貨をサポートしています。
売上を伸ばし解約を防止: Smart Retries と回収ワークフローの自動化で、支払い回収を効率化し、意図しない解約を減らします。Stripe のリカバリツールは、2024 年に 65 億ドル以上の支払い回収をサポートしました。
業務効率の向上: Stripe のモジュール型税務管理、収益レポート、データツールを活用して複数の収益管理システムを 1 カ所に統合。外部のソフトウェアとも簡単に連携できます。
SaaS 市場規模に関するよくあるご質問
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。