一般的に、付加価値税 (VAT) 納税義務のある事業者が顧客に製品を販売したりサービスを提供したりする場合、内税のインボイスを発行して、顧客から VAT を徴収し、申告時に税務署に納付することが義務付けられています。ただし、VAT リバースチャージという例外があります。ここでは、リバースチャージとは何か、それがどのように機能するのか、関係当事者が負う義務について知っておくべきことを説明します。
この記事の内容
- VAT リバースチャージとは何か
- VAT リバースチャージの対象者
- VAT リバースチャージの目的とそのメリット
- 輸入 VAT リバースチャージ
- 建設セクターにおける VAT リバースチャージ
VAT リバースチャージとは何か
VAT リバースチャージとは、顧客に VAT の納税義務を移転する仕組みです。この場合、VAT の申告を行い納付するのは、販売を行った事業者ではなく、顧客になります。この仕組みは、VAT の機能を逆転させるものです。販売事業者は、購入したサービスや製品について税抜きのインボイスを発行し、顧客は購入にかかる VAT を直接税務署に支払います。
VAT リバースチャージの対象者
リバースチャージは、海外に所在する企業がフランス企業と取引を行う場合に適用されます。また、建設セクターにおける VAT 納税義務のある下請け業者にも適用されます。
この仕組みは、以下の国内事業にも適用されます。
- 生鮮品の産業廃棄物に関わるサプライとサービス
- 天然ガスおよび電力の供給
- グループ内の配送
- フランスにおける課税対象者間の電子通信
VAT リバースチャージの目的とそのメリット
リバースチャージは複雑に見えるかもしれませんが、その主な目的は、フランス国外で設立された企業や建設セクターの下請け事業者の税務および行政手続きを簡素化することです。国内事業者に適用されるリバースチャージは、脱税行為を防止するためのものです。
この制度により、輸入業務を行う外国企業はフランスで登録する必要がなくなります。同様に、建設セクターの下請け事業者についても VAT が免除されます。VAT を徴収して税務署に納付するのは、元請け企業の責任となります。
輸入 VAT リバースチャージ
リバースチャージの仕組みは、EU 域内における輸入行為と EU 域外からの輸入行為の両方に適用されます。2022 年 1 月 1 日以降、輸入 VAT は (申告制ではなく) 自動的かつ強制的なリバースチャージの対象となりました。
義務と仕組み
外国の事業者には、税抜きで配送料金を請求しており、フランスの顧客が輸入 VAT を支払うことを示すため、インボイスに「autoliquidation」(「リバースチャージ」) という文言を追加することが義務付けられています。インボイスには、両事業者の EU 域内 VAT 番号を記載しなければなりません。
その後 VAT は、フランス企業が税関に VAT 申告書を提出する際に徴収され、控除されます。現金の前払いは必要ありません。輸入 VAT は、3310-CA3-SD フォーム (別称: 月次または四半期ごとの CA3) を使用して申告され、支払われます。
フランスの事業者は、セクション A の B4 行、「フランス以外に設立された課税対象者からの商品またはサービスの購入」に、税抜きのリバースチャージ取引額を記載しなければなりません。その後、税務署に支払うべき VAT の全額を支払います。
なお、VAT 免税制度の対象となる事業者がフランスに商品を輸入する場合、VAT のリバースチャージを実行するには、輸入時に EU 域内 VAT 番号を取得する必要があります。
建設セクターにおける VAT リバースチャージ
建設セクターにおける下請けの場合、最終顧客と契約を交わした建設事業者である元請け事業者が、作業の一部を下請け事業者に依頼します。
下請け事業者の VAT リバースチャージは、以下の種類の業務に適用されます。
- 異なる職種によって行われる建造物の改修または建設
- 土木エンジニアリングまたは公共事業
- 移動可能な物品 (例: 内蔵機器、配管) などの建物設備の設置
- 修理、改修、メンテナンス
- 建設後の清掃
義務と仕組み
下請け事業者と元請け企業の関係は、見積もり書、署名済みの発注書、または契約書において明確に立証されなければなりません。下請け事業者は、税抜きのサービス料金を請求し、VAT リバースチャージを請求書に記載する必要があります。VAT 申告書を提出する際、下請け事業者は、3310-CA3-SD フォームまたは 3517-S-SD (該当する税制による) の「その他の非課税業務」の行に、実施した業務の税抜き料金を記載しなければなりません。
元請け企業は税務署に対して、VAT のリバースチャージを実行する必要があります。リバースチャージは、3310-CA3-SD フォームまたは 3517-S-SD に記入することにより、VAT 申告書に適用されます。「その他の課税業務」の行には、下請け事業者が実施したサービスの税抜き料金を記入しなければなりません。
元請け企業は、最終顧客にも VAT を請求しなければなりません。リバースチャージが適用されない場合、事業者は支払うべき VAT 総額の 5% の罰金を科されることになります。ただし、下請け事業者が VAT 免除制度の対象となっている場合、事業者による税務署への VAT の支払いは免除されます。
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