資本の獲得は、成長を期する事業者が利用できる最も重要なツールのひとつです。しかし資本形態とその背後にあるトレードオフは、資本の額と同じくらい重要です。担保付き事業融資は企業が事業拡大、設備投資、運転資金を調達する一般的な方法です。世界全体で見ると担保付き事業融資の規模は 2023 年は 12.4 兆ドル でした。この融資の仕組みはわかりやすく、事業者は担保として価値のある資産を提供し資金を確保するというものです。しかしその背後にある詳細、例えば担保になり得るもの、担保がどのように融資条件を左右するか、どのようなリスクが伴うかなどは、理解しづらい場合があります。
ここでは、担保付き融資の機能、無担保クレジットとの違い、担保となり得るもの、事業者が考慮すべき利点と制限事項についてご説明します。
目次
- 担保付き事業融資とは
- 担保付き事業融資と無担保融資の違い
- 企業が融資を確保するために利用できる担保の種類
- 担保は貸し手のリスクをどのように軽減するか
- 担保付き事業融資のメリット
- 担保付借入のリスクと制約
- Stripe Capital でできること
担保付き事業融資とは
担保付き事業融資は担保による裏付けのある資金調達方法 (すなわち事業に必要な資本を獲得するために差し出す有価資産) です。融資が返済できなくなった場合、貸し手は法的権利をもってその有価資産を取得して売却し、債務に充当することができます。
担保になり得るものとしては、不動産、機材、車両、在庫、売掛金 などが挙げられます。担保の目的は、借り手が返済しない場合に貸し手が有形の代替手段を持てるということです。
ここでは、実際の機能をご説明します。
小売業が在庫を担保として借入を行う。その業者が返済できないと、貸し手は在庫を引き取って再販できる。
トラック会社がトラックを担保として新しい車両を購入するための融資を受ける。
安定した顧客を持つ企業は、売掛金を担保にできる。企業が返済できなくなると、貸し手は入金される現金に直接アクセスできるようになる。
多くの銀行や従来型の貸し手は、小規模事業者 に融資を行う場合に担保を求めます。そうすることで貸し手側のリスクが軽減され、事業者も、たとえ信用に問題がなくても、融資の承認を得やすくなります。担保があると貸し手側のリスクが低くなるため、多くの場合、融資限度額の引き上げ、金利の引き下げ、返済期間の長期化といった融資条件も良くなります。
担保付き事業融資と無担保融資の違い
担保付き融資と 無担保融資 の最大の違いは、担保の有無です。担保付き融資は資産によって保証されますが、無担保融資にはそうした保証がありません。この違いにより、融資を受けられる人、借入可能額、および費用が変わってきます。
この 2 種類の融資の違いを詳しく見てみましょう。
貸付のリスクと貸付金の回収
無担保融資の場合、貸し手の唯一の頼りは、返済の法的義務です。一部の貸し手は個人保証を要求します。その場合、事業の所有者が個人的に責任を負うことになります。
担保付き融資では、債務不履行が発生した場合に貸し手が担保を差し押さえて売却できます。担保付き融資は貸し手のセーフティネットとなるため、リスクが相対的に低いと見なされます。
承認基準
無担保融資の場合、貸し手が頼れる資産を持たないため、より強固な信用力と財務状況が求められます。
担保付き融資は、担保によって貸し手のリスクが減るため、クレジットが完璧でなくても多くの場合、比較的利用しやすくなっています。
借入額
無担保融資では通常、貸し手が無制限の無担保リスクを引き受けたくないので、借入限度額が低くなります。
担保付き融資の場合、借入可能額は担保の価値に結び付いています。資産の価値が高いほど、受けられる融資額も大きくなります。
金利と融資期間
無担保融資は、多くの場合、利息が高く、返済期間が短くなります。
担保付き事業融資の方は、金利が低く、返済期間が長くなっています。これは担保によって貸し手のリスクが下がるためです。
処理にかかる時間と手続き
無担保融資は、記録すべき担保がないため、処理が迅速化される可能性があります。
担保付き融資の場合、貸し手が担保の評価を必要とする場合があるため、処理が完了するまでかかる時間が長期化することがあります。
担保付き融資では担保を差し入れることと引き換えに、有利な条件が引き出せます。例えば、低金利、借入限度額の引き上げ、返済期間の長期化などです。無担保融資の場合、高金利で信用条件も厳格になりますが、迅速かつ柔軟に資金調達ができます。どちらが適した選択肢かは、担保として差し出せるもの、資本がいつ必要か、といったことで決まります。
企業が融資を確保するために利用できる担保の種類
担保は明確な価値がある資産で、返済できないときに貸し手が取得できるものです。一般に、担保の価値と流動性が高いほど、多くの金額を借り入れることができます。
ここでは、最も一般的な担保の種類をご紹介します。
不動産
商業用不動産は信頼性の高い担保形態です。価値があり、相対的に安定していて、再販市場が確立されています。
設備・機械
製造設備や特殊な工具などに融資している場合、貸し手は設備自体を担保として受け取ることがあります。価値は、耐用年数、状態、再販需要に左右されます。設備は減価償却されるので、貸し手は融資金額を計算する際に評価額を割り引くことがあります。
在庫
商品在庫は、特に卸売業者や小売業者の融資の裏付けとなります。ただしそれには欠点があります。すなわち 在庫 が劣化したり、陳腐化したり、売れ残ったりする可能性があるということです。貸し手は通常、在庫の価値の一定割合で融資を行い、保険や定期的な報告が必要になる場合があります。
売掛金
顧客の未払い請求書 は資産であり、貸し手はそれを担保として受け入れます。融資が返済されない場合、貸し手はそれらの請求書を直接顧客から徴収する権利を有します。売掛金が比較的最近発生したもので、信頼できる顧客のものであれば、貸し手にとってより魅力的な担保となります。
現金と投資
事業用普通預金口座の現金または市場性のある有価証券 (株式、債券など) は、強力な担保となります。ただし、退職金口座は担保として利用できません。
車両
会社の車、配送用のワゴン車、トラックは、設備と同様に担保になり得ます。その価値と状態によって、いくらの借入が可能かが決まります。
個人資産
個人資産も担保として使用されます。つまり、企業が返済しない場合、貸し手は企業所有者の家や貯蓄といった個人資産を差し押さえることができます。
すべての担保が同じように扱われるわけではありません。貸し手は、不動産や現金など、価値があってすぐに売却できる資産を好みます。利用目的が限られた設備や処分に時間がかかる在庫では、融資条件があまり良くならない可能性があります。どのような担保を差し出すにせよ、その所有権、価値、保険を文書化できるようにしておきましょう。
担保は貸し手のリスクをどのように軽減するか
返済が滞った場合、貸し手は担保を差し押さえて売却し、債務を回収できます。担保は回収の直接的な手段となるため、無担保融資の返済を督促したり訴訟を起こしたりするより容易です。
担保は、借り手の行動をも変える場合があります。借り手が有価資産を差し出すときに、もし問題が起こると失うものが多くなります。借り手と貸し手双方に利害関係がある場合、担保は、貸し手に借り手が返済するだろうというより大きな確信を与えます。
貸し手は、担保の価値が下落した場合に備えて資産の全価値より低い金額で融資を行うことで、さらに自衛します。商業用不動産を担保とする融資の場合、借入額は その不動産価値の 75% 以上になりますが、在庫の場合は 50% を上回ることはまれです。
担保は債務不履行に対する保険として機能し、借り手の返済を促すインセンティブシステムとしても機能するので、リスクが軽減されます。
担保付き事業融資のメリット
担保付き融資は貸し手にとって安全性の高いものですが、借り手である企業側にとっても高い価値があります。費用対効果が高く柔軟で、多くの場合無担保クレジットより融資を獲得しやすくなります。
ここでは、担保付き融資に関連する具体的なビジネス上のメリットをいくつか紹介します。
借入コストの削減
担保は貸し手のリスクを軽減します。それは借り手にとっても有利な金利となって還元されます。担保付き事業融資の金利は無担保融資のそれより低くなります。
獲得資金の増加
融資額は担保の価値で決まるため、事業者は高価値の資産を担保にすればそれだけ多額の融資が受けられます。したがって担保付き融資を受けられれば、事業者が不動産を購入する、事業を拡張する、設備を購入するといった比較的大きな動きが現実的なものとなります。
承認の得やすさ
比較的新しい会社や信用力が不十分な企業の場合、担保は承認と不承認の分かれ目となる可能性があります。貸し手は信用の履歴と合わせて担保とされた資産の価値を評価します。それが資金調達の可能性を高めるのです。
借入期間の長期化
担保の安全性が確保されることで、貸し手は返済期間を数カ月ではなく数年に引き延ばすことを受け入れます。返済期間が引き延ばされることで キャッシュフロー がスムースになり、予算運用の負担が軽減されます。
既存の資産の活用
不動産、設備、車両など、すでに所有している資産は、企業を成長させる資金として活用することができます。これらの資産を寝かせておかずに、資本を獲得するツールにすることで、投資家に頼ったり 株式 を手放したりすることなく資金調達ができます。
担保付借入のリスクと制約
担保付き融資により資本を獲得できますが、そこには深刻なトレードオフがあります。
事業継続のリスクとなる担保: 債務不履行に陥ると、事業運営の鍵となる不動産、車両、設備を失う可能性があります。
柔軟性の低下: 担保となった資産は、返済が完了するまで拘束されるため、それを売却または使用する自由が制限されます。
管理コスト: 評価や 保険 の要件により、より多くの事務処理と継続的な監視が必要になります。
借入限度額: 融資額は、担保の資産価値によって上限が設定されます。保有資産が少ない企業は、選択肢が限られる場合があります。
個人保証: 一部の貸し手は個人保証も要求します。事業資産で負債が賄えない場合、個人資産を差し押さえられることがあります。
担保付き融資は企業にとって強力なツールになる可能性がありますが、リスクも大きくなり得ます。資産を担保にする前に、取得できる資本のメリットと担保を失う可能性を比較検討する必要があります。
Stripe Capital でできること
Stripe Capital は、ビジネスの成長に必要な資金へのアクセスを支援する収益連動型融資ソリューションです。
Stripe Capital は以下のようなことを支援します。
- 成長資金への迅速なアクセス: 従来の銀行融資のような時間のかかる申し込みプロセスや担保要件なしに、ローンやマーチャントキャッシュアドバンスの承認を数分で受けられます。
- 収益に連動した融資: Stripe Capital の収益連動型モデルでは、毎日の売上の一定割合を支払う仕組みのため、事業の実績に応じて決済額が変動します。売上からの決済が各決済期間の最低額に満たない場合、不足分は期間終了時に Capital が自動的に銀行口座から引き落とします。
- 安心して事業を拡大: マーケティングキャンペーン、新規採用、在庫拡充などの成長施策に資金を投入できます。持分や個人資産を減らす必要はありません。
- Stripe の専門知識を活用: Stripe Capital は、Stripe の豊富な専門知識と決済データに基づいたカスタム金融ソリューションを提供します。
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この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。