個人所得税は、スペインの専門家が得た所得に対する直接税です。スペインでは一般に、IRPF (「impuesto sobre la renta de las personas físicas」) として知られています。すべての市民は、所得税申告でスペイン税務庁 (AEAT) の納税義務を確実に果たす必要がありますが、企業は従業員と提携している自営業者のために IRPF の前払いを行う必要があります。

これらの IRPF の前払いは、所得税申告で支払うべき金額を減らすのに役立ちます。また、場合によっては AEAT が納税者に返金を行う必要が生じることもあります。前払いは四半期ごと、場合によっては毎月、Form 111 を使用して行われます。このガイドでは、Form 111 とは何か、誰が提出する必要があるか、提出方法、提出が遅れた場合の罰則について説明します。

この記事の内容

• Form 111 の概要と目的
  
• Form 111 の提出が必要な対象者
  
• Form 111 の提出期限
  
• Form 111 が期限内に提出されない場合に起こること
  
• Form 111 の提出方法
  

Form 111 の概要とその目的

Form 111 は、スペインの企業や自営業者が四半期中に行われた所得税の源泉徴収を精算するために提出しなければならない納税申告書です。給与所得者の場合、給与明細には個人所得税の源泉徴収が表示されますが、これは総給与、契約の種類、および個人的な状況によって異なります。この税率は、所得税申告で支払う必要のある税率に近く、通常は 19% から 47% の間となります。企業はこの申告書を使用して、従業員に代わって源泉徴収された金額を AEAT に支払います。自営業者 (スペインでは「autónomos」として知られています) がスペインの企業や他のフリーランサーに請求書を発行する場合、合計金額から一定の割合を差し引きます (通常は 15% ですが、活動の最初の 3 年間は 7% に減らすこともできます)。受取人は、サービスプロバイダーに代わってこの金額を AEAT に支払います。

要約すると、企業は Form 111 を使用して、サラリーマンであろうとフリーランサーであろうと、企業で働く専門家を対象に IRPF の前払いを行うことができます。また、Form 111 を使用して源泉徴収された IRPF を段階的に支払い、年次情報申告書 (Form 190) で補足することもできます。

Form 111 の提出が必要な対象者

スペインに住所がある課税対象の企業または自営業者は、以下の条件の少なくとも 1 つが満たされている場合、Form 111 を提出する必要があります。

• 給与または何らかの形態の仕事関連の収入を受け取る従業員が少なくとも 1 人いる。
  
• IRPF の源泉徴収で請求書を発行するフリーランサーを雇っている。
  

Form 111 の提出が必要なその他の状況は他にもありますが、これらは公有地開発、コンテストや懸賞の賞品、肖像権の支払いなど、スペインのフリーランサーや企業の中ではまれなものです。

逆に、企業または自営業者が給与支払いのある従業員を雇っていない場合、または会計年度を通じて IRPF 源泉徴収付きの請求書を受け取っていない場合は、Form 111 を提出する必要はありません。AEAT は、計算 (「Liquidación」) セクションが空白のままになっている税務書類の提出を許可していません。この状況では、Form 036 を提出して、AEAT に給与支払いのある従業員が存在しなくなったことを通知し、Form 111 の提出要件を終了する必要があります。

Form 111 の提出期限

Form 111 の提出期限は、企業または自営業者が IRPF を四半期ごとまたは毎月自己評価する必要があるかどうかによって異なります。ただし、源泉徴収を理由に支払いを延期することはできません。したがって、次のセクションで説明する日付内にプロセスを完了する必要があります。

毎月の自己評価の期限

大企業 (付加価値税規則第 71.3 条で年間売上高が 6,010,121.04 ユーロを超えると定義される「gran empresa」) を経営している場合は、毎月の自己評価期限 (IRPF の源泉徴収の対象となる期間の終了から 20 日後) を遵守する必要があります。たとえば、2025 年 8 月に従業員から IRPF を源泉徴収した場合、2025 年 9 月 1 日から 9 月 20 日の間に対応する支払いを行う必要があります。

四半期ごとの自己評価の期限

通常、自己評価の期限は四半期ごとであり、同じ 20 日間の期間が適用されます。

• 第 1 四半期: 4 月 1 日から 4 月 20 日まで
  
• 第 2 四半期: 7 月 1 日から 7 月 20 日まで
  
• 第 3 四半期: 10 月 1 日から 10 月 20 日まで
  
• 第 4 四半期: 翌年 1 月 1 日から翌年 1 月 20 日まで
  

なお、20 日目が祝日や週末にあたる場合は、翌営業日に期限が延長されます。口座引き落としでお支払いの場合は、一般締切日の 5 日前に書類を提出する必要があります。

これらの源泉徴収の年次サマリー (Form 190) は、翌年の 1 月 1 日から 1 月 31 日の間に提出する必要があります。その年の最後の月次または四半期ごとの申告書の締め切り後、この申告書を提出するまでに 11 日間の期間があります。

Form 111 が期限内に提出されない場合に起こること

自営業者や企業が上記の期限を守らなかった場合、罰金が科せられます。追加料金は遅延の種類によって異なり、未払いの IRPF の合計金額に追加されます。

• 専門家が支払い期限を過ぎてしまったことに気付き、AEAT から遅延についての通知を受け取る前に遅延した Form 111 を自発的に提出した場合、以下の追加料金が適用されます。

  • 5%: Form 111 が 3 か月後に提出された場合
    
  • 10%: Form 111 が 3 か月と 1 日後、または遅くとも 6 か月後に提出された場合
    
  • 15%: Form 111 が 6 か月と 1 日後、または遅くとも 1 年後に提出された場合
    
  • 20% と支払い遅延利息: Form 111 が 1 年以上経過後に提出された場合
    

• AEAT が遅延に気付いた場合、一般税法に概説されている重大性に基づいて罰金を科すことができます。

  • 50%: AEAT に金銭的な影響を及ぼさない、意図しないエラーなどの軽微な違反が対象
    
  • 100%: 過失が故意であるかどうかにかかわらず、従業員や自営業者の収入を減らすなどの重大な違反が対象
    
  • 150%: 税務情報を故意に隠蔽して AEAT の査察活動を妨害するなど、非常に重大な違反が対象
    

これらの罰金に加えて、この納税申告書の提出が遅れると、AEAT による検査が発生する可能性があります。税金を最新の状態に保つには、その分野の専門アドバイザーに相談するとともに、支払いシステムで税務自動化ツールを使用することが有益です。たとえば、Stripe Tax を使用すると、売上に対する VAT を自動的に計算して徴収し、徴収した金額に関するレポートを作成できます。Stripe Tax は 50 カ国以上の最新の税法の変更に合わせて頻繁に更新されるため、売上に正しい税率が適用されます (除外対象地域のリストを参照)。

Form 111 の提出方法

Form 111 はオンラインで提出することも、直接提出することもできます。1 つ目の方法は、電子証明書または Cl@ve を使用して AEAT のウェブサイトにログインすることです。対面での提出を選択した場合 (ビジネスを経営している場合、このオプションは利用できなくなりました)、Form 111 を PDF 形式でダウンロードした後、紙のコピーを印刷する必要があります。申告書に入力するプロセスは、どちらの方法でも同じです。

1. 申告者

申告者 (「Declarante」) に、納税者番号 (NIF) と氏名を入力します。ビジネスの Form 111 を提出する場合は、ビジネスの法人名を本人確認に使用する必要があります。

2. 発生期間

発生期間 (「Devengo」) に、関連する課税期間の年と月を入力します。

3. 計算

計算 (「Liquidación」) に、IRPF 源泉徴収額を入力します。これらのボックスのペアはすべて同じアイテムを参照していることに注意してください。第 1 セット (ボックス 01 から 06) は常に労働による収入に関連し、第 2 セット (ボックス 07 から 12) は経済活動による収入に関連します。

最初の 3 組のボックスは金銭的収入用です。

• ボックス 01 および 07: IRPF 課税対象額を支払った雇用者または所得配分制度下の事業体の数。支払いが労働による収入に対するものであった場合、ボックス 01 に記入します。経済活動による収入については、ボックス 07 を使用してください。
  
• ボックス 02 および 08: 従業員に支払われる金額の合計額で、これに基づいて IRPF の源泉徴収額が増減します。
  
• ボックス 03 および 09: 源泉徴収された IRPF の金額です。
  

従業員が受け取った商品やサービスなど、非免除の現物収入については、以下のボックスに記入してください。

• ボックス 04 および 10: 所得配分制度の下で雇用されている現物収入を受けた個人または法人の数。
  
• ボックス 05 および 11: 労働に対する全額または一部の支払いとして提供された商品またはサービスの価値の合計。法律35/2006 の第 43 条によると、評価額を決定するには、通常の市場価格と照合しますが、状況によっては特定の規則が適用される場合があります。
  
• ボックス 06 および 12: 前払いに対応する金額。
  

あまり一般的ではありませんが、ゲームやコンテストの賞品、公有林からのキャピタルゲイン、または肖像権の譲渡に対する支払いもこの申告書の提出が必要であり、この第 3 セクションに含める必要があります。

このセクションの最後にある最終計算 (「Total liquidación」) では、次の 3 つのボックスに入力する必要があります。

• ボックス 28: 源泉徴収された所得税の合計と会計上の所得。ボックス 03、06、09、12、15、18、21、24、27 を合計して金額を計算します。
  
• ボックス 29: 補足申告書として Form 111 に記入する場合は、以前に提出した納税申告書の合計をこのボックスに入力します (同じ項目と課税期間に関連するもの)。
  
• ボックス 30: AEAT による支払い。これは、IRPF の支払いに必要な前払いの総額です。ボックス 28 からボックス 29 を差し引いて金額を計算します。これが補足的な自己評価である場合、ボックス 30 に入力された数値がマイナスになることはありません。
  

4. AEAT に支払うべき金額

AEAT に支払うべき金額は、収入 (「Ingreso」) セクションのボックス「I」に再度記入する必要があります。次に、使用する支払い方法のボックスにチェックを付けます。銀行口座からの引き落としを利用するには、単一ユーロ決済圏 (SEPA) ゾーンの銀行の口座番号を提供する必要があります。

口座引き落としのリクエスト期限は、通常の期限より 5 日早いことに注意してください。口座引き落としをリクエストできなくなった場合は、ウェブサイトまたは銀行のオンラインポータルで完全参照番号(NRC)を使用して金額を支払うことができます。