数量ベースの料金体系とは?ボリュームディスカウントの仕組み

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  1. はじめに
  2. 数量ベースの料金体系の種類
  3. 数量ベースの料金体系を採用している業種
  4. 数量ベースの料金体系のメリット
  5. 数量ベースの料金体系の予想されるデメリット
  6. 数量ベースの料金体系のベストプラクティス

数量ベースの料金体系とは料金戦略の一種で、購入数量が増えるほど商品の単価を下げる料金体系を指します。このような料金体系は、卸売市場や小売市場で一般的に使用され、顧客に対して商品の大量購入を動機づけるものです。販売者には販売数量を増やせるというメリットがあり、購入者は大量購入時に支出を抑えることができます。

たとえば、ネジの調達が必要な購入者がいるとします。100 個入りの箱を 1 箱購入する場合のネジの単価は 10 セントです。ただし、一度に 1,000 個のネジを購入する場合は、単価を 8 セントに下げるとします。購入者が数量を増やすほど得をすることになります。どのような種類の割引でも売上を向上させる効果があるため、この料金体系が効果的であることが研究により明らかになっています。2021 年のレポートによると、買い物客の 37% がクーポンや割引の宣伝があると特定のブランドから購入する気になると回答しています。

このような種類の料金体系モデルは「数量ベースの料金体系」、「ボリュームディスカウント」、「数量割引」、「大量注文価格」と呼ばれます。これらの用語間に意味の違いはありません。どの用語も購入数量に応じて単価を下げることを指しています。これは、大量購入時に割引価格を適用することで、購入者に大量購入を促すことを目的としています。

以下では、数量ベースの料金体系を採用している企業とその理由、数量ベースの料金体系のメリットと予想されるデメリット、数量ベースの料金体系モデルを戦略的に採用する方法など、数量ベースの料金体系について企業が知っておくべき事項を説明します。

この記事の内容

  • 数量ベースの料金体系の種類
  • 数量ベースの料金体系を採用している業種
  • 数量ベースの料金体系のメリット
  • 数量ベースの料金体系で予想されるデメリット
  • 数量ベースの料金体系のベストプラクティス

数量ベースの料金体系の種類

数量ベースの料金体系は販売者と購入者の双方にメリットがあります。販売者は商品の取扱量を増やして在庫を処分しやすくなり、購入者は安い単価で商品を購入できます。数量ベースの料金体系には次のような種類があります。

  • 段階制料金
    この料金体系モデルでは、所定の数量基準に達した分の単価が割り引かれます。たとえば、1 ~ 100 ユニット分の単価は 10 ドルですが、101 ~ 200 ユニット分の単価は 9 ドルに下がります。これにより、購入者は次の段階に達して割引を受けようと購入数量を増やします。

  • 数量による階層区分
    段階制料金と同様に、特定の数量範囲の数量を購入したときに所定の料金が適用されます。ただし、当てはまる階層区分に応じて注文全体の価格が決定する点が段階制とは異なります。たとえば、100 ~ 200 ユニットの階層が設けられている場合に 150 ユニットを購入すると、注文全体に安い階層料金が適用されます。

  • 累積型の数量ベースの料金体系
    この種の料金体系は、継続顧客にメリットがあります。購入者の合計購入数量に応じて、一定の期間 (例: 四半期、年間) にわたり割引を適用します。長期にわたる購入数量が一定数量に達すると、購入者は割引を受けることができます。

  • パッケージ価格、バンドル価格
    購入者が別の商品を一緒に購入した場合に割引を適用します。複数の商品を一括して購入したときに単体購入よりも得になるようにすることで、購入者の購買意欲を高めます。

  • 全ユニット適用割引
    これは単純な料金体系で、購入者の購入数量が所定の基準に達した場合に、基準を下回る分も含めてすべてのユニットに割引価格を適用します。たとえば、購入数量が 100 ユニットに達すると 8 ドルの単価が適用される場合、150 ユニットが購入されると 101 ~ 150 ユニット分の単価だけでなく、すべてのユニットの単価が 8 ドルになります。

  • 価格変動制料金
    これは柔軟性の高い戦略で、1 年の特定の時期や季節、在庫レベル、購入者の交渉力などのさまざまな要素に応じて割引率を変化させます。構成が固定されていないため、個々の状況に合わせて調整できます。

  • 組み合わせ価格
    この方法を使用すると、購入者は異なる商品を組み合わせて割引に必要な数量を満たすことができます。たとえば、小売業で一般的な例を挙げると、異なる衣料品を複数まとめて購入することで購入者は割引に必要な数量を満たすことができます。

数量ベースの料金体系を採用している業種

数量ベースの料金体系を採用している業界や企業は多岐にわたります。特に、一括購入が標準となっている業界や、大量の商品をスピーディーに販売することで明らかにメリットが得られる業界で普及しています。ここでは、その例をいくつか紹介します。

  • 卸売業者
    卸売業者は小売業者や、工業、商業、団体組織などの他の事業者顧客に大量の商品を販売します。卸売業者は数量ベースの料金体系を採用して注文の大型化を促し、在庫管理や管理コストの削減を実現しようとします。

  • 製造業者
    多くの場合、製造業者は流通業者への販売や小売業者への直売によって大量販売を行っています。ボリュームディスカウントによって、製造業者は自社商品への需要を安定させ、製造プロセスを効率化できます。

  • 小売業者
    小売業者、特にスーパーマーケットチェーンのような大規模小売業者は、数量ベースの料金体系を利用して買い物客の購入増を促しています。その例としては、「一つ購入すると、もう一つを無料で提供」の適用や、まとめ買い割引などが挙げられます。

  • ソフトウェアおよびテクノロジー企業
    ソフトウェアおよびテクノロジー企業は、製品ライセンスの販売に数量ベースの料金体系を使用することがあります。購入者によるライセンスの購入数が増えるほど、ライセンス単価が安くなります。これにより、売上を拡大するとともに、自社ソフトウェアの普及を促すことができます。

  • 農産物供給者や食料生産者
    農産物や食料品を取り扱う事業者は、生鮮食品の在庫管理や市場や代行業者への安定供給の確保のために、数量ベースの料金体系を使用することがよくあります。

  • 建設業者や建築資材のサプライヤー
    一般に建設プロジェクトでは大量の資材が必要になるため、木材、鋼、コンクリートといった資材を大量に販売する事業者にとって数量ベースの料金体系は重要な販売手法です。

  • 医薬品・医療用品の供給業者
    病院、診療所、政府の保健サービスと取引を行う事業者など、医薬品や医療用品の販売では通常、大量注文が行われるため、数量ベースの料金体系が一般に使われています。

  • 印刷・出版
    印刷・出版業の場合、発生する段取り費用を考慮すると、大量に印刷した方が費用効率が高くなるため、大量の印刷部数を発注するクライアント向けにボリュームディスカウントを提供しています。

  • 化学物質・原材料のサプライヤー
    化学物質・原材料のサプライヤーは、購入者が生産プロセスで大量の数量を必要とすることが多い場合、数量ベースの料金体系を使用して産業利用向けの大量注文を処理しています。

  • 事務用品・機器のベンダー
    多くの場合、事務用品・機器を提供する企業は、定期的に在庫確保を行う企業のニーズに応えるため、数量ベースの料金体系を使用します。

数量ベースの料金体系が有効なのは、販売者と購入者の双方にメリットにあるためです。販売者には在庫を短期間で捌くことで、保管・管理にかかるコストを削減できるというメリットがあり、購入者には商品を安く入手できるというメリットがあります。企業は得られる利益を綿密に確認して、どの販売でも赤字にならないように注意しなければなりません。

数量ベースの料金体系のメリット

数量ベースの料金体系にはさまざまなメリットがあるため、一般的な価格戦略として多様な業界で採用されています。数量ベースの料金体系は柔軟性に優れた戦略です。一定数量を超える購入に割引を適用するシンプルな大口割引にすることも、購入数量に応じて割引率を引き上げる段階的な料金体系にすることもできます。割引の具体的な構成は、商品の種類、市場状況、販売者の目的など、さまざまな要素によって異なります。ただし、どの場合も大きな経済的メリットを得られる可能性があります。

ボリュームディスカウントの採用で企業が得られるメリットには次のよう例が挙げられます。

  • 売上数量の増加
    大量に購入するほど単価が安くなる商品を販売することで、顧客の購入数量の拡大を促すことができます。売上数量が増加するため、ユニットあたりの利幅が減少したとしても、全体な収益を上昇させることができます。

  • 在庫管理の改善
    数量ベースの料金体系によって企業は在庫管理を効率化できます。商品の大量販売により、在庫保管コストを削減し、売れ残り在庫のために身動きが取れなくなるリスクを減らすことができます。このことは、生鮮食品や時間的制約のある商品を扱う企業にとって大きなメリットとなります。

  • キャッシュフローの強化
    販売数量が増加するため、多くの場合、企業のキャッシュフローが改善されます。より短期間で多くの商品を販売できるため、すぐに獲得できる収入が増加し、経営の健全性が向上します。

  • 生産および流通の費用効率
    製造業者の場合、大量販売によってスケールメリットを生むことができます。生産量が増えると、後続の各ユニットの生産コストが下がるため、全体的なコスト削減を実現できます。それと同様に、多数の少量注文に対応するよりも、大量注文を一度に捌いた方が費用効率が高くなります。

  • 集客と顧客維持
    購入数量が増えるにつれて安価な価格で提供することで、卸売業者や大手の小売業者など、大量購入を検討している購入者を引き付けることができます。さらに、一括購入価格を利用するためにすべての購入を同じサプライヤーから行おうとする意欲を高めるため、顧客維持の向上にもつながります。

  • 競争上の優位性
    効果的な数量ベースの料金体系戦略を取り入れることで、市場での競争力を獲得できます。数量ベースの料金体系は、購入者が他社の類似商品よりも自社商品を選択する決め手となる可能性があります。

  • 市場変動への柔軟な対応
    数量ベースの料金体系を導入することで、企業は市場の変化により柔軟に対応できます。たとえば、需要が高い時期は割引を極力抑えて利幅を維持し、需要が低い時期は割引を拡大して売上を伸ばすことができます。

  • 長期的な取引関係の構築
    大量購入を行う購入者に有利な条件を提供することで、企業は重要性の高いクライアントと長期的な関係を構築できます。信頼と相互利益を基盤とした関係が、安定した継続的な売上をもたらします。

  • 市場浸透と市場拡大
    新規市場への参入や既存市場の拡大を目指す企業の場合、数量ベースの料金体系が有効な販売手法となる可能性があります。幅広い顧客への商品訴求力を高めることができるため、市場シェアの拡大につながります。

  • データとインサイトの収集
    販売数量の増加によって、市場の傾向や顧客の好みに関する貴重なデータが得られます。その情報を活用することで、製品開発、マーケティング戦略、将来的な料金体系モデルに関する意思決定を情報に基づいて行うことができます。

数量ベースの料金体系の予想されるデメリット

数量ベースの料金体系には複数のメリットがありますが、予想されるデメリットもあります。数量ベースの料金体系は成長や顧客基盤の拡大を促しますが、企業は常に利益幅を鋭く観察しつづけなければなりません。リスクを最小限に抑え、長期にわたり持続可能な料金戦略を保護するには、実施方法を入念に計画し、適切に管理することが重要です。

注意すべきデメリットには次のようなものがあります。

  • 利幅の減少
    最も直接的なデメリットは利幅の減少です。低い単価で商品を販売するため、商品ごとの販売利益は減少します。慎重な管理を怠ると、販売数量の増加が利幅の減少に見合わない場合など、全体的な利益の逸失につながる場合があります。

  • 主要顧客への過剰依存のリスク
    大量購入を行う少数の顧客が売上の大部分を占めると、それらの顧客への過剰依存のリスクが生じます。そのような主要顧客からの注文が減少したり、競合他社に乗り換えたりした場合、自社のビジネスが多大な影響を受ける可能性があります。

  • 在庫やサプライチェーンへの圧迫
    ボリュームディスカウントの提供によって注文が拡大すると、在庫やサプライチェーンの負担が増す場合があります。企業の不備で大量注文を効率的に処理できない場合、遅延、受注残、顧客満足度の低下といった事態を引き起こす可能性があります。

  • 知覚価値の低下
    特に価格と品質が同一視されがちな市場では、価格が低いと商品の品質も低いと購入者から認識されるリスクがあります。

  • 不採算販売のおそれ
    数量ベースの料金体系の構成を誤ると、商品の販売によって損失が生じる可能性があります。不採算販売は、コストの算定が不正確な場合や市場状況が想定外の変化をした場合に発生しやすくなります。

  • 料金体系の複雑化
    数量ベースの料金体系戦略を導入すると、料金体系の複雑化や、料金管理や顧客請求のための高度なシステムが必要になる場合があります。また、わかりやすく情報を伝えないと購入者が戸惑う可能性もあります。

  • 市場飽和リスク
    大量購入を促すことで、意図せず市場を飽和させ、将来的な需要の低下につながる可能性があります。特に長寿命の製品や入れ替えの頻度が低い製品では、この懸念が高まります。

  • 顧客の期待と交渉力
    ボリュームディスカウントを受けた顧客は、その後の取引でも同等またはそれ以上の割引を期待する可能性があります。その場合、利益の圧迫につながるおそれがあります。また、大口の購入者は購買力を利用してさらなる割引を交渉してくる可能性もあります。

  • キャッシュフローの管理
    大量販売はキャッシュフローの改善につながりますが、大量の在庫を確保するために多額の現金が凍結されるリスクも伴います。そのため、売上が想定を下回った場合に問題が生じる可能性があります。

  • ブランドイメージへの影響
    高級ブランドなど、ブランドによっては割引を行うことでブランドの知覚価値や高級感が損なわれる可能性があります。

数量ベースの料金体系のベストプラクティス

数量ベースの料金体系を導入する際は、収益性や市場でのポジションを損なうことなくメリットを享受できるようにする、戦略的思考が必要になります。ここでは、数量ベースの料金体系の導入を検討している企業や数量ベースの料金体系を実施中の企業が実践できるベストプラクティスをご紹介します。

  • データに基づく料金体系モデル
    詳細な市場調査、コスト分析、顧客需要データに基づいて料金体系モデルを構築します。高度なアナリティクスを使用して料金の弾力性、顧客の購買行動、損益分岐点を把握します。これらのデータは料金の段階や割引を構成する際に役立つものです。

  • 料金戦略のセグメンテーション
    すべての顧客が同じ要望や価値認識を持っているわけではないことを認識し、顧客セグメントごとに料金体系モデルを調整する必要があります。顧客のセグメンテーションを行うことで、各顧客層の特性や購入パターンに応じてカスタマイズした数量ベースの料金体系を策定できます。

  • 動的な料金設定機能
    動的な料金設定メカニズムを導入して、市場の状況、在庫レベル、需要の変化にリアルタイムに対応できるようにします。これには高度なソフトウェアが必要になりますが、料金体系の設定を大幅に効率化できます。

  • 明確な情報伝達と透明性の確保
    数量ベースの料金体系の構成を顧客にわかりやすく伝えます。難しい専門用語や混乱を招きやすい用語の使用を避けてください。透明性を確保することで信頼を構築でき、長期的な顧客関係を育むことができます。

  • 料金体系の調整システムの自動化
    デジタル販売の場合、顧客の選択数量に応じて自動的に価格を更新するシステムを導入します。これによりユーザー体験が向上するとともに、手動による価格調整ミスを防ぐことができます。

  • 利益の確保対策
    割引を行っても利益を確保するための措置を設けます。たとえば、割引の最小しきい値を設定したり、売上データをモニタリングして利益を確保したりといった措置を講じます。

  • 拡張性のある在庫とサプライチェーン管理
    注文量の変化に対応できるようにサプライチェーンや在庫の管理システムを準備します。具体的な例としては、拡張性を備えた物流ソリューションへの投資や、サプライヤーとの関係強化などが挙げられます。

  • 定期的なレビューと調整
    数量ベースの料金体系戦略を定期的見直して妥当性や有効性が保たれていることを確認します。市場状況の変化、コスト構造、顧客からのフィードバックに応じて料金の段階、割引、規約を調整できるように準備します。

  • 顧客関係管理システムとの連携
    数量ベースの料金体系戦略と顧客関係管理 (CRM) システムを連携させます。それにより、顧客の購入履歴や好みに応じて商品やサービスをカスタマイズでき、全体的な顧客体験を向上させることができます。

  • 法令遵守と企業倫理のコンプライアンス
    料金体系戦略が反競争的行為や価格差別に関する法規制など、すべての関連法規制に準拠していることを確認します。料金体系の決定にあたっては企業倫理に関する事項も考慮する必要があります。

  • 影響や効果の測定
    重要業績評価指数 (KPI) を導入して数量ベースの料金体系戦略の成果を測定します。販売数量の増加、顧客獲得、維持率、全体的な収益性などの指標を測定します。

  • 営業チームやカスタマーサービスチームの教育
    営業担当者やカスタマーサービス担当者に対し、数量ベースの料金体系戦略に関する詳細なトレーニングを実施します。担当者には、顧客に対してメリットや条件を効果的に説明し、専門的な交渉対応を行う能力が求められます。

  • 短期的な利益と長期的な目標の比較検討
    数量ベースの料金体系が長期目標に適合していることを確認します。短期的な売上が伸びても、長期的にはブランドや収益性が損なわれるような大幅な割引は控えます。

  • 柔軟性と即応性
    柔軟性を維持して、新たな競合他社の出現、顧客の好みの変化、経済環境の移り変わりに応じて料金体系戦略を調整できるようにします。

上記のベストプラクティスに従うことで、売上と市場シェアを拡大すると同時に、収益性の維持と持続可能な成長の促進を可能にする数量ベースの料金体系戦略を実現できます。

この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。

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