サブスクとは、サブスクリプション (subscription) の略語で、日本では定期購読、継続購入とも呼ばれているビジネスモデルです。サブスク契約を結ぶと、一定の月額料金を支払えば継続的にサービスを受けられます。
サブスクには動画配信や電子書籍などのストリーミングサービスや、オンライン学習が受講可能なプラットフォームをはじめとするさまざまなサービスがありますが、実際にどのような企業がサブスクで成功しているのでしょうか。本記事では、サブスクの成功事例と失敗事例についていくつかをご紹介し、企業がサブスクに成功する抜本的要因をわかりやすく解説します。
目次
- B2C サブスクの成功事例 5 選
- B2B サブスクの成功事例 3 選
- サブスクの失敗事例 3 選
- サブスクサービスの成功要因
- サブスクの事例についてよくある質問
- サブスクサービスにおける決済環境を整えよう
B2C サブスクの成功事例 5 選
まず、サブスクの成功事例として B2C 向けのサブスクビジネスをご紹介します。
メルスプラン
メルスプランは、メニコンが提供するコンタクトレンズのサブスクサービスです。コンタクトレンズを購入するのではなく交換という形式でコンタクトレンズを利用できます。そのため、メルスプランは、月額の定期料金を支払うことでサービスが受けられるため、基本的にコンタクトレンズの料金はかからない仕組みとなっています。
メルスプランのメリットは、視力の変化や、不調によるコンタクトの交換、種類の変更にも柔軟に対応していることです。たとえば、使用している間に、汚れや傷が付いてしまったり、破損する場合がありますが、こうしたトラブルがあった際にも新しいコンタクトレンズが提供されるため、いつでも交換が可能です。
また、転勤などで住所が変更する場合や、中・長期の国内出張先でコンタクトレンズのトラブルがあったときにも全国のメルスプラン加盟施設にて対応してもらうことができます。
キリンホームタップ
大手ビールメーカーのキリンビールが展開するキリンホームタップは、専用のビールサーバーを無料でレンタルでき、月 2 回に分けて、サーバー用の大容量のペットボトルに入ったビールが届けられるサブスクサービスです。料金プランは、月 4 リットルコースと月 8 リットルコースがあり、配送スケジュールは、お届け予定日の 6 日前までならいつでも変更が可能で、送料も月額の定額料金に含まれます。
キリンホームタップが成功した背景には、コロナ禍による居酒屋、バーでのアルコール提供の制限に伴い、おうち時間が増えたことが挙げられます。つまり、習慣として外でお酒を飲んでいた人が自宅で手軽に生ビールを楽しめるサービスが、世間から高評価を得た結果といえるでしょう。
キリンホームタップのメリットについては、長期不在でビールが不要な場合にも 4 回連続でなければ配送をスキップすることができる、ホームパーティーで多めのビールが必要なときには追加注文に対応可能なことです (ただし、追加注文の配送料は月額料金には含まれず別途請求)。
パンスク
パンスクとは、全国にある提携パン屋のパンが定額で定期的に届けられるサブスクサービスです。パンは、冷凍処理された状態で冷凍便によって配送され、配送料は定額料金に含まれています。
パンスクは主に全国のパン好きの利用者によって支持されており、「まだ知らない全国にあるパンを食べてみたい」という利用者の心をつかむサービスとして人気を博しています。また、パンスクでは独自の冷凍技術によって焼きたてパンの美味しさをそのまま味わえるよう、徹底した品質管理と冷凍処理を実施しています。届いたパンは冷凍庫で 1 カ月以上保存できるため、好きなときに事前に自然解凍して温め直せば手軽に美味しいパンを食べられることが人気を集める理由の 1 つでもあります。
定額コースは 2 種類で、配送のタイミングは「2 週間に 1 回」「1 カ月に 1 回」「2 カ月に 1 回」から選べるようになっています。
冷凍庫のスペースに余裕がない、または旅行で数日不在になる場合は、希望出荷日の変更が可能です。このほかにも、次回の配送以降しばらくサービスをストップしたいときは休会として対応してもらえます。
World Library Personal
World Library Personal (ワールドライブラリーパーソナル) は、毎月の定額料金で子供向けの絵本を購入するサブスクサービスです。月額料金には配送料も含まれており、子供の年齢と成長に合わせた絵本が毎月 1 冊自宅に届けられる仕組みとなっています。小説や漫画の電子書籍のサブスクには、多くの出版会社が参入していますが、このように World Library は、電子書籍と一味違うサービス内容といえるでしょう。対象年齢は、1 歳 0 カ月から 7 歳 11 カ月となり、絵本は専門スタッフによって丁寧かつ注意深く選書されています。
World Library のメリットは、書店では手に入らないような世界各国の絵本を幅広く取り扱っているということです。特に、絵本は 2,000 円前後と単価が高めに設定されていることが多いため、書店で購入するより安価 (現時点での月額料金 1,300 円) で手に入れることが可能です。
そのため、子供に読み聞かせの機会を増やすために絵本を頻繁に購入している方、世界の絵本に興味はあるけど、どれを選べば良いかわからない、という方に向いています。また、既に所有している絵本が次回の配本予定になっている場合は、代わりに他の絵本または 1,000 円相当の図書券が送付されるなど、柔軟に対応してくれます。
World Library Personal は個人向けサービスですが、施設の共有スペースなどに利用可能な法人向けのレンタルサービス (World Library Rental) もあります。
トイサブ!
トイサブ! は子供の成長に合わせた知育おもちゃが定期的にレンタルできるサブスクサービスです。定額料金 (月額または 12 カ月一括) には配送料と返送料が含まれており、いつでもおもちゃの交換ができるコースと、隔月で届けられるコース、3 カ月に 1 回届けられるコースの 3 種類があります。おもちゃは 100 万件を超える年齢別データとアンケートをもとに厳選され、コースによって決められた数のおもちゃが届けられます。また、返却後のおもちゃは丁寧に手作業で清掃されています。
トイサブ! のメリットとしては、年齢が過ぎると値段の高いおもちゃでも捨てざるを得ない、おもちゃが増え過ぎて収納スペースに困る、といった心配がないことが挙げられます。また、おもちゃの汚れ、破損や紛失については原則として弁償の必要がなく (禁止事項に該当する場合は支払いが発生する場合があります)、気に入ったおもちゃは割引価格で買取することも可能です。
B2B サブスクの成功事例 3 選
次に B2B のサブスクビジネスの成功事例について、以下に説明します。
Sansan
Sansan はオンライン名刺を含む名刺データを、会社・人物単位で自動で集約することのできる営業に特化したクラウド名刺管理システムです。名刺だけでなく、企業情報や、営業履歴なども一括で管理でき、会社全体でのデータ共有が可能です。また、取引先の人事異動や、営業に役立つ最新情報を自動受信できたり、名刺に紐付く過去の商談レポートを迅速かつ簡単に閲覧できるため、取引先との無駄のない円滑なアクションを図ることができます。(最新情報を受信するには、Sansan の個人向け名刺アプリが必要です。)
Sansan の場合、名刺文化が深く根ざした日本において、コロナ禍によって紙ベースで名刺交換ができなかった時期に、顧客がオンライン名刺を用いた営業活動を行えたこと、さらに今日においては、オンライン名刺を活かして顧客情報をデータで一本化することで、紙ベースの名刺以上の付加価値を得られたことが成功に繋がったといえるでしょう。
GOOD GREEN
GOOD GREEN は、毎月の定額料金でオフィス用の観葉植物をレンタルできるサブスクサービスです。GOOD GREEN の場合、最低利用期間が設定されていないため、半年や一年契約などの縛りがなく、満足できない場合は 1 カ月で解約できることが大きなメリットです。また、観葉植物の定期的な交換やメンテナンスのほか、インテリアを考慮した配置やデザインの提案もしてもらえます。
RULO biz
パナソニックが手がける業務用ロボット掃除機「RULO Biz」は、清掃会社をはじめ、その他一般企業や小売店、飲食店で導入されている法人向けサブスクサービスです。
RULO Biz は、清掃現場の負荷を軽減することを目的として 2022 年にローンチされました。クラウドによって機器の管理や操作が一元化されているため、取り扱いが簡単となっており、システム利用料や年 1 回の定期点検およびメンテナンスなどが、月額基本料金に含まれています。また、このクラウドシステムでは清掃マップも管理可能で、複数のエリアの細かい清掃が必要なオフィス環境に対応しています。
RULO Biz の場合、掃除機の販売で関係を終わりにする売り切り型ではなく、サブスクとしてロボット掃除機を用いた継続的な清掃サービスの提供によって、清潔なオフィス空間を求める顧客との関係を維持できることが成功に繋がっているといえるでしょう。
サブスクの失敗事例 3 選
ここまでで、成功事例についていくつかご紹介しました。一方、サブスクビジネスには、失敗した事例もあります。以下に、サブスクビジネスにおける過去の失敗事例をいくつか挙げています。
SAKELIFE
日本酒の定期購入サービス「SAKELIFE」は、2013 年に創業した Clear 株式会社によって開始されました。「日本酒に興味あるが選び方がわからない」という顧客のニーズに対応したサービスで、月額 3,150 円で 4 合瓶が届く「ほろ酔いコース」と月額 5,250 円で 1 升瓶が届く「ぐい呑みコース」がありました。
しかし、結果として別の会社に事業を譲渡しています。理由としては、契約から 2 年ほどが過ぎると解約する利用者が多く、事業規模の拡大には向いていなかったためです。日本酒の楽しみ方や好みがわかってきた、選び方に自信が出てきた多くの利用者は、サービスに満足しながらも、頼る必要性がなくなったことでサブスクを退会していったことが具体例として挙げられます。
AOKI「suitsbox」
スーツメーカーとして有名な AOKI が展開していた「suitsbox」は、定額料金を支払うと、スーツ・シャツ・ネクタイのセットが毎月 1 つ届けられ、翌月に新しいボックスが届いたら前月分を返却するという仕組みのサブスクサービスです。しかし、サービス開始後半年が過ぎた 2018 年 12 月で事業を撤退しています。
原因は、ターゲット顧客層の「想定外」にあり、スーツ離れが進む 20 代から 30 代の若者世代の利用を見込んでいたところ、実際の顧客年齢層は 40 代が多かったことでした。特に、これら 40 代の利用者は、実店舗をよく利用する年齢層でもあったため、実店舗とサブスクサービスの間で売上を競い合うカニバリゼーションが生じてしまい、撤廃に至ったそうです。このほか、品揃えに利用者が満足できなかったことが背景にあったことも原因の 1 つといわれています。
牛角「食べ放題 PASS」
焼肉チェーン店「牛角」の「食べ放題 PASS」によるサブスクサービスは、2019 年 11 月に試験的に首都圏の 3 店舗限定で開始されました。月額料金 11,000 円を支払うことで獲得できるPASS では、通常 3,480 円の食べ放題コースを何度でも利用できることが注目を集めていました。ところが、この PASS の新規販売は 2020 年 1 月 7 日 に終了することとなります。
年明け以降 SNS や TV 番組でも話題になると購入者が殺到し、PASS の対象となっていた 3 店舗はいずれも PASS 所有の利用者による予約だけで満席状態が続きました。そのため、通常の顧客の入店を断らなければならなかったり、PASS があっても予約すらできない人が出てしまうという状況になったことが、原因として挙げられます。
特に飲食店のサブスクは、食材の仕入れに毎回原価がかかるだけでなく、店内スペース、席数には物理的な限りがあるため注意が必要です。牛角のケースのように、元をとりたい顧客が過度に PASS を利用しようとすると、店舗側としては利益を上げづらくなり、PASS 以外の顧客の入店による売上チャンスが失われるリスクがあります。
サブスクサービスの成功要因
成功事例と失敗事例を一通り解説したところで、ここでは、成功要因について掘り下げてみましょう。
新たな価値として顧客に提供できるものを考察
サブスクは、その場限りの商品またはサービスを提供するのではなく、商品やサービスを継続利用する機会を顧客に提供することで、利益が得られるビジネスモデルです。
すなわち、サブスクビジネスで顧客に満足してもらうためには、長期的な顧客維持を目的とする「価値の提供」ができることが大切です。そのため、品質へのこだわりを常に意識しながら、自社だからこそ提供できる新たな価値について考察し、時代の変化にも柔軟に対応できる態勢を整えておく必要があるでしょう。
収集したデータをもとにビジネスの改善・解決に努める
サブスクビジネスのメリットとして、データを集めやすい点があります。よって、収集したデータを活用することで、問題点や課題を分析し、改善策を見出すなど、顧客のユーザーエクスペリエンスの向上に努めるようにしましょう。
たとえば、突然売上が落ちたり、解約率の高い月があった場合、その月に何があったか、外的要因 (例: 競合他社が大幅なセールを実施) や、内的要因 (例: 注文が殺到したことで物流に支障が生じた) について、細かな調査を実施し、問題解決の糸口を探ることが重要です。
自社の ROI を理解した収益確保と成長を目指す
ROI (ビジネスに要した出費に対し、どれだけ利益を生み出せたかを示す指標) を意識することも大切です。
サブスクの場合は特に、コンテンツ作成や商品の開発をはじめ、宣伝、システム導入などにかかる初期の投資費用が大きく、売り切り型のビジネスとは収益までのプロセスが異なります。したがって、安定した収益を確保するには、ROI に応じた価格設定を行うようにしましょう。
これに加え、成長こそがサブスクビジネスを成功させる鍵となります。どのようなビジネスでも、現状維持に留まることなく、今後の事業拡大を見据えた広い視野と、競合他社や市場の動向を注視する必要があるといえるでしょう。
KPI を定めてパフォーマンスを適切に評価する
データに基づいて改善策を見出そうとしても、明確な目標と指標なしでは、そもそもの問題や現状を把握することは難しいかもしれません。そのため、まずは サブスクの KPI (目標達成のために、業務パフォーマンスを計測、評価する指標) を設定し、ビジネスが今どのような状況に位置しているかを把握することが必要です。
繰り返しになりますが、サブスクビジネスの成功において、成長は欠かせません。サブスクビジネスは常に変化しているため、その都度価値のある商品を提供しながら顧客を維持するには、時代に伴う柔軟性が求められます。ひいては、顧客のニーズを敏感に察知し、適宜 KPI を更新および修正するようにしましょう。
PDCA を繰り返しながら顧客満足度の向上を目指す
顧客との継続的な契約によって、利益を上げるサブスクでは、顧客との円満な関係を確立し、維持する必要があります。そのため、KPI に応じた PDCA (計画、実行、評価、改善の 4 つのステップ) を繰り返すことで、業務や事業の継続的な改善を図り、顧客満足度の向上を目指しましょう。
サブスクの事例についてよくある質問
サブスクの事例に関連するよくある質問をまとめました。
サブスク事業のリスクは何ですか?
サブスクは、一度だけの売り切りで大きな収入を得るのではなく、継続的に少しずつ一定の金額を回収するビジネスモデルとなっており、収益を上げるまでに時間がかかります。つまり、利用者がある程度増えるまでは利益が得られない状態が続くため、十分な資金がないと事業運営にマイナスな影響を与えるリスクがあります。特に初期段階で価格を低くし過ぎたことで、初期投資にかかった費用をなかなか回収できないといったサイクルに陥ると、赤字状態が続いてしまう可能性があります。
サブスクが流行っている理由は何ですか?
サブスクサービスが人気な理由の 1 つに消費者の意識が変わりつつあることが挙げられます。先ほど、業務用ロボット掃除機の成功事例について解説したように、顧客はモノを求めているのではなく、モノやサービスを通したより良い生活環境を求めています。何かを「所有する」のではなく「利用する」ことに価値を見出す方向に、人々の意識が傾いていることの結果ともいえるかもしれません。
サブスク市場の今後はどうなりますか?
サブスクサービスを導入する企業は増え続けており、サブスクの市場規模は今後も成長し続けると予測されています。しかし、前述したように、サブスクには過去に失敗するケースもあります。よって、サブスクビジネスを成功に導くには、安易にサービスを開始せず、十分な下準備や市場調査を怠らないよう注意が必要です。
サブスクサービスにおける決済環境を整えよう
サブスクについては、顧客が安心してスムーズに利用できるオンライン決済環境を整えておくことも大切です。たとえば、サブスクサービス事業の立ち上げを目指す事業者の方は、継続的な支払処理に特化した Stripe Billing を導入すると、顧客への定期的な請求や決済手段の提供、入金管理システムなど、サブスクに必要なさまざまな機能を利用することができます。また、それぞれ事業内容のニーズに合ったサブスクプランをデザインできるほか、サブスクに関わるあらゆる管理業務の効率化と最適化を実現できます。
私たちの身の回りでも、さまざまなシーンで今や当たり前となったサブスクですが、事業を通して顧客に満足のいくサービスを提供するためにも、決済業務の最適化と、効率的な運営を目指しましょう。
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