毎月の定額料金を支払うことで継続したサービスを受けられるサブスクリプション (以下、サブスク) は、私たちの日々の生活において身近にあり、さまざまなシーンで利用されています。サブスクの市場規模は近年拡大しており、今後さらに成長し続けると予測されています。
本記事では、日本のサブスク市場について、利用者の多いサブスクサービスや今後の展望などを踏まえて解説します。
目次
- 日本の B2C サブスクサービスの市場規模
- 日本でのサブスクサービスの認知率
- 利用者の多いサブスクサービス
- 『サブスク大賞 2024』グランプリ受賞企業とノミネート企業一覧
- サブスク市場の今後の展望
- サブスクの市場規模についてよくある質問
- 「今」という時代を象徴するサブスク
日本の B2C サブスクリプションサービスの市場規模
日本のサブスク市場は、動画ストリーミングなどのコンテンツ配信業界を中心として、2010 年代中頃より拡大し始めました。代表例として、動画配信サービスの大手企業 Netflix が 2015 年に、日本国内でストリーミングのみにフォーカスしたビジネスを展開しています。コンテンツ配信以外にも、最近では食品や家電など、さまざまな分野のサブスクサービスも普及しており、各業界においてサブスク市場への関心が高まっています。
2019 年には、「サブスク」という言葉が流行語大賞にノミネートされたこともあり、サブスクビジネスがこの頃には既に一般的に周知されていることがわかります。
なお、株式会社矢野経済研究所が 2023 年に開示した、主要 7 分野を対象とする日本国内の B2C サブスクサービス市場の調査では、2022 年のサブスク市場規模は、およそ 8,965 億円でした。これは、前年度 (2021 年) の 7,875 億円と比べると 13.8% 増しで、年々市場が活発化していることを示しており、今後さらに拡大していくと考えられています。
市場規模成長の背景・理由
日本のサブスク市場が近年急速に成長してきた背景として、2020 年に始まったコロナ禍による外出自粛が挙げられます。これまでは実店舗で買い物していた人が、ソーシャルディスタンスを保つため公私ともに外出を避けるようになりました。
以降、自宅で時間を過ごす時間が増えたことで、食品のサブスクなどの定期配送サービスや、ストリーミングサービスによるコンテンツ配信など、利便性の高い室内型サービスが多岐に渡って普及したことがサブスク市場の拡大に繋がったといえます。
また、コロナ禍を経てさまざまな働き方やライフスタイルを経験し、人々の意識や価値観に変化が生じたことも、今日においてサブスク市場が拡大している理由の 1 つといえるでしょう。最近ではより多くの人々がモノの豊かさではなく、心の豊かさを重視する傾向にあります。そのため、電子書籍やスポーツジムのように、契約期間中毎月の定額料金を支払えば、商品やサービスを利用できるサブスクは、理に適った生活手段でもあるのです。
したがって、サブスクについては利便性だけでなく、事業者が「体験を提供する」役割を担うことで、「モノを増やさず、より良い生活をおくりたい」という体験重視のニーズに応えていることが、成長の背景にあります。このように、日本のサブスク市場は現在、体験型に特化したサービスの多様化が進んでおり、今後のサブスク市場の拡大が期待されています。
日本でのサブスクリプションサービスの認知率
J.D. パワー ジャパンが 2023 年 12 月に発表したサブスクに関するアンケート調査結果では、事前に同社がピックアップしたサブスクサービスのうち、1 つ以上知っていた人は 86% に達し、年齢が低い世代ほど、認知率が高いことがわかりました。
同社の調べによると、各分野ごとの認知度では、動画配信が最も高く、続いて音楽配信や電子書籍が上位にランクインしており、「サブスクサービス = ストリーミング」と考える人も少なくはないようです。このほか、男性の場合は自動車やゲーム、女性の場合はファッションや美容・コスメ、食品、ベビー用品のサブスクサービスの認知度が高いことが、同社の調べでわかりました。
利用者の多い代表的なサブスクサービス
マイボイスコム株式会社が 2024 年に約 9,600 人を対象に実施した、サブスクリプションに関するアンケート調査によると、サービス利用状況については、先ほどの認知度と同様、いずれもストリーミングサービスが上位にランクインしました (1 位: 動画配信 76.5%、2 位: 音楽配信 19.4%、3 位: 電子書籍・雑誌・コミック 11.3%)。
数に制限なく、いつでも好きなだけコンテンツを楽しむことができるストリーミングは、最も利用されているサービスとして、サブスク市場における代表格といえるでしょう。
『サブスク大賞 2024』グランプリ受賞企業とノミネート企業一覧
一般社団法人日本サブスクリプションビジネス振興会が主催する『日本サブスクリプションビジネス大賞』 (以下、サブスク大賞) は、毎年、日本国内の最も優れたサブスクサービスを表彰するアワードです。サブスク大賞では、お得、悩み解決、便利、新規性、成長性、安全性の 6 つの要素で厳正な審査が行われます。
スタートアップから大手まで、幅広い業種において多数の企業がエントリーした『サブスク大賞 2024』では、利便性だけでなく、人々の生活にポジティブな変革をもたらす可能性を秘めた 9 つの企業がノミネートされました。
『サブスク大賞 2024』ノミネート企業一覧 (順不同)
サービス名 (社名) |
概要 |
---|---|
the kindest (株式会社 MiL) |
離乳食・幼児食サブスク |
Cha Cha Cha (自立の株式会社) |
知育玩具のサブスク |
akareco (ジギョナリーカンパニー株式会社 ) |
カジュアルなデジタル終活ツール |
ZenPop (ZenGroup 株式会社) |
文房具サブスクボックス (海外向け) |
はたけビュッフェ (株式会社ノーティスト) |
収穫体験型野菜サブスク |
AI ロボットのサブスク (AZ 日本 AI ロボット株式会社) |
AI ロボットサブスク |
AI英会話スピークバディ (株式会社スピークバディ) |
AI 英会話アプリ |
ニコノリ (株式会社 MIC) |
サブスク型新車カーリース |
MedicalTalk Global (株式会社 iMedical) |
医療通訳支援 SaaS |
また、グランプリの受賞については、株式会社スピークバディのサブスクサービス、「AI 英会話スピークバディ」が選ばれたことが、一般社団法人日本サブスクリプションビジネス振興会の公式サイトにて発表されています。一般社団法人日本サブスクリプションビジネス振興会は、グランプリ受賞の同社について「AI の相手といつでも効率的にストレスフリーで英会話ができる」点や「音声認識、会話 AI、デジタル音声などの優れた技術を活用している」点のほか、「低価格で利用できる」点など、同社サービスのさまざまな優れた側面について記しています。
サブスクリプション市場の今後の展望
前章にてご紹介した、『サブスク大賞 2024』のノミネート企業一覧からもわかるように、日本国内のサブスクサービスは、消費者側の日常的な悩みごとや課題に寄り添った、革新的な発想や視点が、広く一般社会的に受け入れられていることが伺えます。ひいては、事業規模の大小や業種、提供するサービスの分野に関わらず、さまざまな形態のサービスが注目される中、想像性に富んだサブスクの可能性に挑む企業が、今後増えていくことは、大いに考えられるでしょう。
その一方で、消費者に不利益を与える「ダークパターン」という手法が、サブスクサービスにおいて懸念されています。たとえば、解約手続きを無駄に複雑化させていたり、解約方法に関する情報をあえて探しにくくするなど、消費者が気づかないうちに不都合が生じるケースがあります。そのため、サブスク業界全体で、こうした状況を重く受けとめ、各事業者は、情報のさらなる透明性と真実性に徹する必要があります。
サブスクサービスにおけるオンライン決済環境の最適化
サブスクビジネスを運営するにあたっては、顧客が安心してスムーズに利用できるオンライン決済環境を整えておくことも大切です。たとえば、サブスクサービス事業の立ち上げを目指す事業者の方は、継続的な支払処理に特化した Stripe Billing を導入すると、顧客への定期的な請求や決済手段の提供、入金管理システムなど、サブスクに必要なさまざまな機能を利用することができます。また、それぞれ事業内容のニーズに合ったサブスクプランをデザインできるほか、サブスクに関わるあらゆる管理業務の効率化と最適化を実現できます。
繰り返しになりますが、サブスクの市場規模は、今後もさらに拡大すると考えられています。よって、自社のサブスクサイトを利用する多くの顧客に、より良いサービスを提供できるようにするためにも、決済業務の最適化とともに効率的な運営を目指しましょう。
サブスクの市場規模についてよくある質問
今後、ファッション関連のサブスクの市場規模は拡大しますか?
洋服、アクセサリー、バッグなどをレンタルすることができるファッション関連のサブスクは、ストリーミングサービスなどの他の分野と比べると、概して利用率が高いというわけではありません。
しかし、モノを持たない、増やさない、という思考が一般化されつつある中、一定の月額料金で複数のアイテムを利用できるサブスクサービスは、ミニマルライフを求める人々に適しています。たとえば、クローゼットのスペースを節約できるほか、買い物をする時間のない人でも、新しいアイテムやお気に入りファッションを気軽に日常生活に取り入れることができるため、多くの利用者にとってメリットのある選択肢となっています。
そのため、ファッション業界における新たな取り組みとして、ファンション関連のサブスク市場規模についても、より拡大する可能性があるといえます。
家電のサブスクにおいて市場規模が拡大する背景は何ですか?
近年ライフスタイルの分野で注目されているのが、家電製品のサブスクです。
コロナ禍をきっかけに、実店舗での買い物を控える人が増えたことで、EC サイトの普及が進みました。しかし、一定数の消費者の間では EC サイトに懐疑的で、特に家電については、実店舗で実物を確認したうえでの購入が好まれるケースが多く見られました。
そこで、外出しづらいコロナ禍中は、気になる家電製品を購入する代わりに、定額料金でレンタルが可能なサブスクサービスに切り替える消費者が増えるようになりました。なお、コロナ禍が落ち着いた現在でも、家電製品のサブスクは一定の人気が集まっています。使ってみて気に入った製品は、買い取り可能なプランも用意されているなど、利用者のニーズに柔軟に対応していることが、サブスクとして功を奏したと考えられています。
サブスクリプションで有名な企業はどこですか?
サブスクサービスで成功している有名な企業については、やはり大手のストリーミング業界が主流です (動画配信では Amazon Prime、Netflix、Hulu、音楽配信では、Spotify、Apple Music など)。しかし、このほかにも、飲食品や子供の知育おもちゃのようなあらゆる分野においても、さまざまなサブスクの成功事例が挙げられます。
「今」という時代を象徴するサブスク
今回はサブスクの市場規模について解説しました。
サブスクサービスは、インターネットや物流の発展とともに、人々の生活環境の変化や経済状況などの影響を受けながら、市場規模を拡大してきました。
本記事の中でも何度か解説しましたが、サブスクビジネスの拡大には、「モノを所有せずに利用する」といった、人々の意識に寄り添うサービスを可能にしたことが背景の 1 つにあります。そういう意味では、サブスクは、「今」という時代のニーズを象徴するビジネスモデルともいえるでしょう。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。