日本でも、EC 市場の拡大やキャッシュレス決済の普及を背景に、購買データの重要性が高まっています。購買データを活用すれば、売れ筋商品や顧客ごとの購入傾向を把握し、マーケティング施策や在庫管理、商品企画の改善につなげることができます。
一方で、購買データには、POS データ、ID-POS データ、EC サイトの注文データ、決済データなどの複数の種類があり、どのデータをどのように分析して活用すればいいのか分かりにくいと感じる方もいるかもしれません。
本記事では、購買データの基本的な意味や主な種類、代表的な分析方法、マーケティングや事業改善への活用方法について解説します。
この記事でわかること
- 購買データとは、顧客が商品やサービスを購入した際に記録されるデータのことで、購入日時、商品名、購入価格、数量、販売チャネル、顧客 ID、決済方法などの情報が含まれます。
- 日本でも、EC 市場の拡大やキャッシュレス決済の普及により、店舗、EC サイト、アプリ、決済など複数の接点で購買データを取得しやすくなっています。
- 購買データを分析することで、顧客インサイト、売れ筋商品、需要の変化、マーケティング施策の成果、購入体験の課題などを把握できます。
- 購買データは、RFM 分析、デシル分析、セグメンテーション分析、バスケット分析、ABC 分析、トレンド分析などで分析することができ、商品企画、品揃えの見直し、レコメンド、キャンペーン改善、需要予測、在庫管理などに活用できます。
- 購買データを活用する際は、目的を明確にし、決済データや顧客データも組み合わせて継続的に分析することが大切です。
購買データとは
購買データとは、顧客が商品やサービスを購入した際に記録されるデータのことです。具体的には、購入日時、商品名、購入価格、数量、販売チャネル、顧客 ID、決済方法などの情報が含まれます。
経済産業省の令和 6 年度電子商取引に関する市場調査によると、2024 年の日本国内の BtoC-EC 市場規模は 26.1 兆円となり、前年の 24.8 兆円から 5.1% 増加しました。また、BtoC-EC 化率は 9.8% となり、商取引の電子化が引き続き進んでいます。さらに、2025 年のキャッシュレス決済比率は 58.0% となり、決済額は 162.7 兆円に達しています。
このように、日本の EC 市場の拡大やキャッシュレス決済の普及により、購買行動がデータとして記録されやすくなっています。そのため、購買データは、顧客理解やマーケティング施策の改善、需要予測、在庫管理などに活用できる重要なデータと言えるでしょう。
購買データに含まれる主な情報
購買データは、店舗の POS システム、ID-POS、EC サイト、会員アプリ、決済システムなど、複数の接点で取得されます。取得元によって記録される情報や分析できる内容が異なるため、それぞれの特徴を理解しておくことが大切です。
POS データ
POS データとは、店舗のレジや POS システムを通じて記録される販売データのことです。商品名、販売日時、販売価格、販売数量、店舗名などの情報が含まれます。
POS データを活用することで、どの商品が、いつ、どの店舗で、どれくらい売れているのかを把握できます。売れ筋商品の確認、時間帯別、曜日別の販売傾向の分析、在庫管理、仕入れ計画の見直しなどに役立ちます。
ID-POS データ
ID-POS データとは、POS データに顧客 ID や会員 ID を紐付けたデータのことです。通常のPOS データでは「何が、いつ、いくらで売れたか」を把握できますが、ID-POS データでは「誰が購入したのか」まで分析することができます。
ID-POS データは、ポイントカード、会員カード、会員アプリなどを通じて取得されることが多く、店舗における顧客単位の購入分析に役立ちます。また、会員ランクやポイント利用状況などの顧客情報と組み合わせて分析することもできます。
EC サイトの注文データ
EC サイトの注文データとは、オンライン上で商品やサービスが購入された際に記録されるデータのことです。注文日時、商品名、購入金額、数量、配送先地域、利用クーポン、購入経路、購入デバイスなどの情報が含まれます。
つまり、EC サイトの注文データを分析すれば「どの商品がオンラインで売れているか」「どの広告やキャンペーンから購入につながっているか」「スマートフォンとパソコンのどちらから購入されやすいか」などの詳細を把握できます。
また、カート投入後に購入されなかった商品や、離脱したタイミングを分析することで、カゴ落ちの原因を把握することも可能です。
さらに、店舗の POS データと EC サイトの注文データを組み合わせることで、ウェブルーミングやショールーミングなど、オンラインとオフラインを行き来する顧客の購買行動も把握しやすくなります。
決済データ
支払いデータとは、商品やサービスの購入時に選択された決済の選択肢や、取引のステータスに関する詳細を指します。たとえばこれには、決済手段 (クレジットカード、デビットカード、電子マネー、コード決済、後払い [BNPL]、および銀行振込)、支払い日時、支払金額、支払いが成功したかどうかなどが含まれます。
決済データを分析することで、顧客がどの決済方法を利用しているのか、どの決済手段が購入完了につながりやすいのかを把握できます。日本の EC サイトでは、コンビニ決済、銀行振込、後払いなども選択肢になるため、顧客層や販売チャネルに応じて必要な決済方法を見直すことも大切です。
ただし、クレジットカード番号などの機微な決済情報を自社で直接保持したり分析したりすることは避け、決済方法や決済結果など、分析に必要な範囲のデータを適切に管理することが重要です。クレジットカード情報を扱う場合は、PCI DSS) 準拠や非保持化など、クレジットカード・セキュリティガイドラインに沿った対応が求められます。
購買データを活用するメリット
顧客データは、顧客インサイトの把握やマーケティング施策の改善に役立ちます。顧客の購買傾向を分析することで、より効果的な施策を立てやすくなります。
顧客インサイトを把握できる
購買データを分析することで、どのような顧客セグメントが、どの商品を、どのタイミングで購入しているのかを把握できます。
たとえば、年齢層や地域などのデモグラフィック情報、購入頻度、購入金額、購入チャネルなどを組み合わせることで、購入金額の高い優良顧客、リピート顧客、休眠顧客などの特徴が見えやすくなります。
こうした顧客インサイトは、顧客に合わせた商品提案やキャンペーン内容の改善にも役立ちます。
売れ筋商品や需要の変化を把握できる
購買データを活用すると、商品ごとの販売数や売上、購入されやすい時期、曜日、地域、チャネルごとの傾向を確認できます。これにより、売れ筋商品や季節ごとの需要変化を把握しやすくなります。
需要の変化を早めに捉えることで、商品企画や品ぞろえ、在庫管理、販促計画の見直しにも役立ちます。
マーケティング施策の精度を高められる
購買データを基に顧客の購入傾向を分析すれば、キャンペーン、クーポン、メール配信、広告配信、レコメンドなどの施策をより適切に設計できます。
また、施策ごとのコンバージョン率や客単価、リピート率を確認することで、どの施策が成果につながっているのかを把握できます。
課題の発見と改善につなげられる
購買データからは、売上が伸び悩んでいる商品や、特定のチャネルでコンバージョン率が低いケースなども分かります。
たとえば、EC サイトでカート投入後の購入完了率が低い場合は、送料、決済方法、入力フォーム、商品ページの情報量などに課題がある可能性があります。購買データを分析することで、商品、価格、販売チャネル、プロモーション、購入体験のどこに改善余地があるのかを見つけやすくなります。
購買データの代表的な分析方法
購買データの代表的な分析方法には、RFM 分析、デシル分析、セグメンテーション分析、バスケット分析、ABC 分析、トレンド分析などがあります。目的に応じて適切な分析方法を選ぶことで、顧客の購入傾向や商品の売れ行き、需要の変化などを把握しやすくなります。
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分析方法 |
主に見るもの |
分析でわかること |
|---|---|---|
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RFM 分析 |
最終購入日、購入頻度、購入金額 |
顧客の購入状況や休眠傾向 |
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デシル分析 |
購入金額別の売上貢献度 |
売上貢献度の高い顧客層の割合 |
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セグメンテーション分析 |
顧客属性や購買行動の違い |
セグメントごとの購買傾向 |
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バスケット分析 |
商品の組み合わせ |
一緒に購入されやすい商品 |
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ABC 分析 |
商品や顧客の重要度 |
優先的に管理すべき商品や顧客 |
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トレンド分析 |
売上や需要の推移 |
需要が高まる時期や変化の傾向 |
RFM 分析
RFM 分析は、顧客の最終購入日、購入頻度、購入金額を基に顧客を分類する分析方法です。最近購入している顧客、継続的に購入している顧客、購入金額が高い顧客などを分類することで、顧客ごとの購入傾向を把握しやすくなります。
また、以前は購入していたものの最近購入していない顧客を休眠顧客として分類するなど、顧客の状態を整理する際にも役立ちます。
デシル分析
デシル分析は、顧客を購入金額の高い順に並べ、10 のグループに分けて分析する方法です。上位の顧客グループが売上全体のどの程度を占めているのかを確認できます。
RFM 分析が最終購入日や購入頻度も含めて顧客を分類するのに対し、デシル分析は主に購入金額に注目しています。
セグメンテーション分析
セグメンテーション分析は、顧客を属性や購買行動に応じてグループ分けする分析方法です。たとえば、年齢層、地域、会員ランク、購入頻度、購入チャネル、購入カテゴリなどを基に、顧客を複数のセグメントに分類します。
顧客をセグメントごとに分けることで、それぞれの購買傾向やニーズの違いを把握しやすくなります。顧客インサイトを整理するのにも重要な分析方法です。
バスケット分析
バスケット分析は、同じ注文内で、一緒に購入されやすい商品を分析する方法です。
どの商品同士が一緒に購入されやすいのかを理解することにより、商品の組み合わせや購入傾向を確認できます。
ABC 分析
ABC 分析は、売上や販売数、利益などの指標を基に、商品や顧客を重要度別に分類する分析方法です。たとえば、売上への貢献度が高いものを A、一定の貢献があるものを B、貢献度が低いものを C のように分類します。
商品ごとの重要度を把握できるため、売れ筋商品や管理の優先度が高い商品を見つけやすくなります。
トレンド分析
トレンド分析は、一定期間の購買データを基に、売上や販売数、購入頻度などの推移を確認する分析方法です。日別、週別、月別、季節別にデータを見ることで、需要が高まる時期や売上が落ち込みやすいタイミングを把握できます。
購買データの活用方法
購買データは、分析結果を商品企画、販促、在庫管理、CRM などのマーケティング施策に利用することができます。ここでは、いくつかの活用事例を紹介します。
商品企画や品ぞろえの見直し
購買データを分析することで、売れ筋商品や、逆に伸び悩んでいる商品を把握できます。ABC 分析やトレンド分析を活用すれば、主力商品の強化や商品ラインナップの見直し、季節需要に合わせた品揃えの改善につなげられます。
レコメンドやパーソナライズ
購入履歴や顧客属性、購入カテゴリなどを基に、顧客に合った商品を提案できます。たとえば、バスケット分析で一緒に購入されやすい商品を把握すれば、関連商品のレコメンドやセット販売に活用できます。
キャンペーンや販促施策の改善
購買データから、クーポンや広告、キャンペーンが実際の購入につながっているかを確認できます。購入率や購入単価、リピート購入への影響を分析できれば、訴求内容や対象セグメント、メールやクーポンを届けるタイミングの見直しに役立ちます。
また、RFM 分析を活用すれば、最後に購入した時期や購入頻度に応じて、ステップメールやクーポンの内容を切り替えることもできます。
需要予測や在庫管理
過去の販売数や季節ごとの売れ行きを分析することで、需要が高まる時期や在庫が不足しやすい商品を把握できます。仕入れや在庫配分を調整できれば、欠品や過剰在庫の防止につなげられます。
購買データを活用する際のポイント
購買データは事業者が行うマーケティング施策に欠かせないものです。目的に合わせて分析し、施策に反映することが大切です。
目的を明確にする
購買データを分析する前に、「売上を伸ばしたい」「リピート購入を増やしたい」「在庫管理を改善したい」など何を改善したいのかを明確にしておきましょう。
目的が曖昧だと分析結果を具体的な施策につなげにくくなります。課題や KPI を整理して、必要なデータを選ぶことが大切です。
データを一元管理して分析する
購買データは、店舗の POS システム、EC サイト、会員アプリ、決済システム、CRM など、複数の場所で管理されていることがあります。データが分断されていると、顧客がどのチャネルで接点を持ち、どのように購入しているのかを正確に把握できなくなります。
購買データを活用する際には、購入履歴だけでなく、決済データや顧客データも合わせて分析することが重要です。顧客属性、決済方法、会員ランク、購入チャネルなどを紐づけることで、どの顧客層が、どの接点で、どのような方法で購入しているのかをより具体的に把握できます。
複数のデータを一元管理できれば、オンラインとオフラインを行き来する顧客の購入行動も分析しやすくなります。オムニチャネルや OMO 施策を進める上でも、複数のデータをまとめて確認できる環境を整えることが望ましいと言えるでしょう。
継続的に分析・改善を回す
購買データは、一度分析して終わりではありません。顧客のニーズや売れ筋商品、購入チャネルは時間とともに変化するため、継続的にデータを確認し、施策を見直すことが大切です。
キャンペーン実施後の購入率、リピート率、購入単価などを定期的に確認することで、施策の効果を把握しやすくなります。近年は、ダッシュボードや AI を活用した分析ツールも増えており、SQL などの専門知識がない担当者でも売上や購入傾向の変化を確認しやすくなっています。
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この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。