課税前価格、内税価格、VAT など事業者側で付加価値税 (VAT) を計算する場合、いくつかの重要な概念を理解しておく必要があります。この記事では、フランス政府に納付する VAT の合計額を計算する上で知っておくべき計算式 (課税前価格と内税価格) を具体例を使って説明します。フランスで使用される VAT 率や VAT 申告手続きに関する追加情報は、以下のリンクからご覧いただけます。
この記事の内容
- 課税前価格と内税価格とは?
- VAT の計算方法
- VAT の計算式 (課税前価格から計算する)
- 内税価格を計算する方法
- 内税価格から VAT を計算する方法
- 徴収済み VAT と控除対象の VAT とは?
- 納付する VAT の計算方法
課税前価格と内税価格とは?
課税前価格とは、VAT が適用される前の価格であり、事業者が商品やサービスに設定している販売価格です。内税価格とは、VAT 適用後の商品やサービスの価格であり、顧客が購入時に支払う合計金額です。
VAT の計算方法
VAT を計算するには、該当の業種に適用される税率 (20%、10%、5.5%、または 2.1%) を特定した上で、以下の情報が必要になります。
- 課税前価格 (VAT が含まれていない商品またはサービスの価格)
- 内税価格 (VAT が含まれた商品またはサービスの価格)
VAT の計算式 (課税前価格から計算する)
課税前価格から VAT の合計額を算出するには、課税前価格と該当の業種に適用される VAT 課税率の乗算を行います。この計算により、商品またはサービスの VAT を算出できます。
課税前価格 x VAT 課税率 = VAT 合計額
例えば、€400 のテレビに標準 VAT 課税率 20% が適用される場合、VAT の合計額は €80 になります。以下の計算式をご覧ください。
€400 x 0.20 = €80
同様に、€4 のオレンジジュースに 5.5% の軽減 VAT 課税率が適用される場合、VAT の合計額は €0.22 になります
€4 x 0.055 = €0.22
また、レストランで €20 の調理済み食品が提供され、中間 VAT 課税率である 10% が適用される場合、オーナーが徴収する VAT の合計額は €2 になります。
€20 x 0.10 = €2
内税価格を計算する方法
内税価格を確定するには、課税前価格と VAT の合計額が必要です。以下の計算式を使用して、先に計算した VAT 合計額に課税前価格を加算します。
課税前価格 + VAT 合計額 = 内税価格
テレビを例にとると、内税価格は €480 となります。
€400 + €80 = €480
これは販売時点で顧客が事業者に支払う金額です。€80 は当局に納付されます。
オレンジジュースのボトルと調理済み食品にも、同じ計算式が適用されます。
€4 + €0.22 = €4.22
€20 + €2 = €22
なお内税価格を課税前価格に戻すには、内税価格から VAT の合計額を差し引きます。
内税価格から VAT を計算する方法
課税前価格がわからない場合でも、VAT の合計額を計算できます。この計算では、内税価格と、商品またはサービスに適用される VAT 課税率を使用します。
内税価格を「VAT 課税率 + 1」の値で除算します。次に、この数値に再度 VAT 課税率を掛けて、VAT 合計額を算出します。以下の計算式をご覧ください。
[内税価格 / (1 + VAT 課税率)] x VAT 課税率 = VAT 合計額
この計算式をテレビの例 (支払い価格が €480、VAT 課税率 20%) に適用してみます。
[€480 / (1 + 20%)] x 20%
(€480 / 1.2) x 0.2 = €80
含まれている VAT の合計額は €80 です。
オレンジジュースの例 (VAT 5.5% 込みで €4.22) を考えてみます。
[€4.22 / (1 + 5.5%)] x 5.5%
(€4.22 / 1.055) x 0.055 = €0.22
この計算式によれば、含まれている VAT の合計額は €0.22 です。
最後に、調理済み食品の例です (VAT 10%込みで €22)。
[€22 / (1 + 10%)] x 10%
(€22 / 1.1) x 0.1 = €2
含まれている VAT は €2 です。
徴収済み VAT と控除対象の VAT とは?
徴収済みの VAT とは、事業者が顧客に商品やサービスを販売する上で請求した VAT を指します。月額または年額 (事業者が選択したシステムによる) で、当局に納付される金額です。ただし事業者は、必ずしもこの全額を当局に納付しなくともよい場合があります。事業者は、事業運営に必要な購入品や経費について VAT 控除のメリットを受けることができます。
事業者が事業運営に必要な物品を購入し、それについて支払った VAT は、控除対象の VAT と呼ばれます。この場合、基本的に事業者が顧客側の立場となります。この事業者が支払った控除対象 VAT の合計額は、当局が徴収する VAT の合計額から控除できます。
控除の適用条件
VAT 控除を受けるため、事業者は物品購入の証拠としてインボイスの原本を保管しておく必要があります。これらの購入物品またサービスは、個人の使用に供するものではなく、業務に利用するものでなければなりません。
除外事項
経営者および従業員のために費やされた宿泊費用は、VAT 控除の対象とはなりません。ただし、安全、監視、警備スタッフの宿泊費用については、控除の対象となります。従業員向けの車両コストについては、VAT 控除を適用できません。ただし、事業者が旅客輸送、自動車学校、または車両レンタルなどの事業を運営している場合は例外となります。通常の価格よりも低い価格または無料で提供された商品については、VAT 控除は適用されません。
VAT が免除される取引
輸出、欧州連合 (EU) 内での納品、教育活動、そしてほとんどの銀行、金融、医療取引は VAT の課税対象外です。
納付する VAT の計算方法
各申告対象会計期間の終了時に、事業者は徴収済み VAT の合計額と控除対象の VAT の合計額を計算する必要があります。徴収済み VAT の金額が控除対象の VAT の金額よりも大きい場合、事業者はその差額を当局に納付します。一方で、事業者側で控除可能な VAT の額が,徴収済みの VAT の額よりも大きい場合、事業者は当局から VAT の還付金を受け取ることになります。わかりやすくするため、以下に例を示します。
5 月に次の商品を販売した靴店:
- サンダル 1 足 €90 (課税前価格)
- スニーカー 1 足 €130
- ブーツ 1 足 €150
販売製品には 20% の VAT 課税率が適用されるため、徴収される VAT は €74 となります。
€90 x 0.20 = €18
€130 x 0.20 = €26
€150 x 0.20 = €30
€18 + €26 + €30 = 徴収される VAT €74
同じ事業者が 5 月に、税引き前価格で €140 の新しいレジスターを購入したとします。このレジスターには 20% の VAT 課税率が適用されており、€28 の VAT が掛かっています。
€140 x 0.20 = 控除対象の VAT €28
納付する VAT を算出するため、事業者は、徴収した VAT から控除対象の VAT を差し引く必要があります。
徴収済み VAT - 控除対象の VAT = 納付する VAT
€74 - €28 = 納付する VAT €46
徴収額が控除額を上回ったため、事業者は 5 月に €46 を当局に納付します。還付金はありません。
VAT の計算にはいくつかの計算式や微妙な差異がありますが、すべてを覚える必要はありません。オンラインの VAT 計算ツールを使用したり、本記事を参考にしたりして、確実に VAT を計算できるようにしてください。また、Stripe Tax のようなツールを利用することもできます。このツールでは、VAT の計算、徴収、申告の各機能が統合されており、すべて自動化されています。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。