取締役会オブザーバーは、議決権を持たずに取締役会に出席し、参加できます。この役柄は通常、資金調達ラウンド中に会社と投資家間で交渉されます。2024 年の調査によると、ベンチャーファンドの 82%がポートフォリオ全体で取締役会オブザーバーを利用しています。投資家は、会社の状況を把握したいものの、取締役の肩書きに伴う受託者としてのリスクを避けたい場合に、正式な取締役の議席の代わりに、または議席と並行してオブザーバーの権利を求めます。
以下では、オブザーバーの地位が取締役の役職とどのように異なるか、スタートアップが通常どのような場合にオブザーバーの地位を付与するか、そして創業者が取締役会にオブザーバーの席を追加する前に考慮すべきトレードオフについて説明します。
この記事でわかること
取締役会オブザーバーは取締役会の議論に参加できますが、議決権も受託者責任もなく、多くの場合、補償や保険の適用もありません。
オブザーバーの権利は通常、資金調達ドキュメントに由来し、会社法で定義されるのではなく、会社と特定の投資家間で交渉されます。
適切に作成されたオブザーバーの権利契約では、会議へのアクセスおよび機密保持義務に対処し、権利が終了する場合の明確なルールを定めます。
取締役会オブザーバーとは?
取締役会オブザーバーは、議決権を持たずに取締役会に同席し、議論に参加できます。この役職は通常、資金調達ラウンドに遡り、投資家が取引の一環として、取締役の議席の代わりに、または議席と並行してオブザーバーの地位を交渉します。資金調達のドキュメント (Simple Agreement for Future Equity (SAFE)、コンバーティブルノート、またはプライシングラウンドのタームシートなど) では、特定の人物 (「[ファンド名]の担当者」など) を取締役会オブザーバーとして指名します。オブザーバーの権利およびその範囲は、会社の定款ではなく、投資ドキュメントで定義されます。
多くのベンチャー支援企業を規制するデラウェア州会社法では、オブザーバーの地位を定義したり規制したりすることはありません。これは会社と投資家間の私的な契約上の取り決めです。
取締役会オブザーバーと取締役の違い
取締役とオブザーバーは同席しますが、会社との関わり方は異なります。
両者の比較は以下のとおりです。
受託者責任: 取締役には会社に対する善管注意義務および忠実義務があり、いずれかに違反した場合、個人として責任を問われる可能性があります。オブザーバーは役員ではないため、これらの義務は負いません。
議決権: 取締役は、採用の決定から資金調達の条件まで、取締役会のあらゆる事項について議決権を行使し、その票は定足数に算入されます。オブザーバーは会議で発言できますが、議決権の行使、動議への賛成、定足数への算入はできません。
保険および補償: 通常、会社は役員賠償責任保険に加入し、各取締役と補償契約を結んで、その地位に伴う責任をカバーします。オブザーバーは、保険をかけるべき受託者責任のリスクがないため、通常、保険への加入や補償契約への署名は求められません。
事実上の取締役および影の取締役のリスク: イギリスなどの一部の司法管轄区では、正式な任命や議決権を持たなくても、取締役会レベルの意思決定に参加し始めたり、取締役会がその指示に従うことが常態化している者を事実上の取締役または影の取締役として扱う場合があります。オブザーバー契約で、オブザーバーは取締役ではなく議決権を持たないことが明確にされることが多いのはこのためです。しかし、実際のオブザーバーの行動も依然として重要です。
スタートアップが取締役会オブザーバーの権利を付与する理由
オブザーバーの枠を設けることで、取締役会に新たな議決権を追加することなく、投資家はビジネスの戦略と財務状況を把握できます。これは、より少ない取締役で機能する方が適切と思われる取締役会で有効です。
スタートアップがオブザーバーの権利を付与する可能性のある状況には、次のようなものがあります。
ジュニアパートナーの受け入れ: ジェネラルパートナーのためにすでに取締役の枠を確保しているベンチャーキャピタルが、アソシエイトやプリンシパルのためにオブザーバーの枠を要求する場合があります。これは、その担当者が将来的に自身で取引を主導する前に、取締役会レベルの業務についてのトレーニングを行う目的も含まれています。
取締役会からの退任時の移行: 前回のラウンドを主導し、新たなリード投資家にその席を譲る投資家は、取締役会での話し合いから完全に離れるのではなく、オブザーバーの枠を交渉するのが一般的です。
長期投資家または事業会社: 長期的な理由 (将来のパートナーやアクワイアラーになるためなど) で投資している企業は、オブザーバーの枠を好むことがよくあります。これにより、後日 2 つのビジネスが競合したり取引の交渉を行ったりした場合に、取締役の枠によって生じる受託者責任の対立を回避できます。
取締役会の規模に対する創業者の反発: 創業者が譲るつもりのある票数以上の発言権を投資家が求めた場合、取締役会の支配権を維持しつつ、投資家に議論に参加する権利を与えるオブザーバーの権利で妥協することがよくあります。
取締役会オブザーバーの権利契約とは?
取締役会オブザーバーの権利契約では、オブザーバーが閲覧できる情報、発言内容、実行できる事柄を正確に説明します。最も重要な条件は以下のとおりです。
通知および資料: オブザーバーは取締役と同じ会議の通知を受け取り、多くの契約では、同じ取締役会用プレゼン資料、財務情報、事前資料も受け取ります。
議決権および動議: オブザーバーは出席して発言することはできるものの、議決権の行使、動議への賛成、定足数への算入はできないことが契約に明記されます。
除外: 取締役会は、特に議論にオブザーバー自身の投資条件、潜在的な利益相反、または秘匿特権を伴う法的助言が含まれる場合、オブザーバーを会議の一部から除外する権利を留保するのが一般的です。
機密保持: オブザーバーには受託者責任がないため、機密保持条項は、未発表の収益の数値やプロダクト計画などの機密情報が会議室から漏れるのを防ぐための、会社にとって唯一の実質的な保護手段です。
解除条項: この種の契約の多くは、投資家の所有率が設定されたしきい値を下回ると、オブザーバーの権利を自動的に終了します。具体的な条件は取引によって大きく異なります。議決権のわずか 1 〜 2% の場合もあれば、投資家の元の出資比率のかなり大きな部分を占める場合もあります。また、その後の資金調達ラウンドでオブザーバーが新しい取締役会構造に置き換えられた場合に終了することもあります。
取締役会オブザーバーの権利を付与するメリットとデメリット
オブザーバーの権利により、取締役会を小規模に保ちつつ投資家を満足させたいという創業者の課題を解決できます。そのメリットとデメリットを考慮する必要があります。
オブザーバーの権利を付与することには、以下のメリットがあります。
投資家の関与: 小口の投資家に情報を提供し関与させ続けることができます。これは、フォローオンラウンドやつなぎ融資にこれらの投資家の参加が必要になった際に役立ちます。
取締役会の支配権: 取締役の枠を増やす場合とは異なり、議決権が希薄化しません。
人材パイプライン: リード投資家のジュニアパートナーなど、将来の取締役候補に、取締役会の実際の運営方法を体験させることができます。
良好な関係: 取締役会から退任する過去のリード投資家など、実質的な地位を持つ投資家との関係を、コストをかけずに維持できます。
一方で、次のような理由から、オブザーバーの権利を制限したり拒否したりする場合があります。
取締役会の力学: 議決権の有無に関わらず、参加者が増えるごとに会話が変化し、役員報酬や競合するオファーなどのデリケートなトピックについて、率直な議論の妨げになる可能性があります。
機密情報の漏えい: オブザーバーは情報漏えいが発生しても取締役のような法的責任を負わないため、オブザーバーを追加するたびにリスクが高まる可能性があります。
取締役会の過密化: 各シード投資家から要求されたという理由だけで、スタートアップがシリーズ B の資金調達を行うまでに、議決権を持つ取締役に加えて 3 ~ 4 席のオブザーバーの枠を設けることになる場合があります。
影の取締役になるリスク: オブザーバーが経営陣に指示を出したり、取締役会以外の場で意思決定に影響を与えたりするなど、実質的に取締役のように振る舞い始めた場合、会社は前述の賠償責任リスクを負う可能性があります。これでは、取締役の枠ではなくオブザーバーの枠を付与した意味が失われてしまいます。
経験豊富な創業者の多くは、定款や投資家権利契約でオブザーバーの枠数に上限を設け、それぞれにサンセット条項を付加することでこれらの問題を管理しています。これにより、将来のラウンドで保有割合が希薄化するのに伴い、オブザーバーの権利が失効するようにしています。
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取締役会オブザーバーに関するよくあるご質問
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。