サービスとしてのプラットフォーム (PaaS) の料金体系の説明: 事業者が知っておくべきこと

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Stripe Billing は、シンプルな継続支払いから使用量に基づく請求、商談による契約まで、請求書の発行や顧客の管理を簡単に実現します。

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  1. はじめに
  2. PaaS の料金体系とは
  3. クラウドプロバイダーが PaaS サービスに対して課金する仕組み
    1. 従量課金ベースの料金体系
    2. サブスクリプションベースの料金体系
    3. 機能ベースの料金体系
    4. 混合モデル
  4. PaaS の料金体系がややこしい理由
    1. 隠れたコストと測定の複雑さ
    2. ベンダーロックインと予期せぬ価格変更
    3. 将来の使用量を推定するのが難しい
  5. 事業者が PaaS のコストを管理・改善する方法
    1. API の使用状況を追跡して無駄をなくす
    2. ニーズに合った料金モデルを選択する
    3. データ転送コストを最小限に抑える
    4. 自動スケーリングを利用する
  6. Stripe が PaaS の料金体系に関して事業者に提供するサポート
    1. 測定と従量課金の自動化
    2. PaaS の料金体系に合った柔軟なサブスクリプションモデル
    3. PaaS の料金モデル向けに構築された収益分析

サービスとしてのプラットフォーム (PaaS) は、プロバイダーがアプリケーションの開発とホスト用のすぐに使用できる環境を提供し、事業者は基盤となるインフラストラクチャを管理する必要がないビジネスモデルです。PaaS プロバイダーは、ハードウェアとソフトウェア (サーバー、ランタイム、ストレージなど) をインターネット経由で提供します。PaaS の料金体系とは、事業者がそのプラットフォームを利用するために支払う料金を指します。

言い換えると、PaaS は、クラウドプラットフォームがサーバー自体をメンテナンスする必要がないという利便性の見返りとして利用者に課金する際に使用するビジネスモデルです。世界の PaaS 市場は、2024 年の約 6,984 万ドルから 2032 年までに約 2 億 202 万ドルに、年平均成長率 14.20% で成長すると予測されています。

PaaS の料金体系は、多くの企業にとって把握が困難です。サービスとしてのソフトウェア (SaaS) の創業者や、クラウドでプロダクトを構築しようとしているプロダクトマネージャーは、おそらく紛らわしい料金体系に遭遇したことがあるでしょう。以下では、事業者が PaaS のコストを管理・改善する方法と、Stripe が提供するサポートについて説明します。

この記事の内容

  • PaaS の料金体系とは
  • クラウドプロバイダーが PaaS サービスに対して課金する仕組み
  • PaaS の料金体系がややこしい理由
  • 事業者が PaaS のコストを管理・改善する方法
  • Stripe が PaaS の料金体系に関して事業者に提供するサポート

PaaS の料金体系とは

PaaS の料金体系は通常は従量課金モデルに従っていますが、SaaS などの他のクラウドサービスと比較するとクセがあります。

IaaS (サービスとしてのインフラストラクチャ) では、仮想マシン、ストレージ、ネットワークなどの未加工のコンピューティング能力をレンタルします。支払う料金は純粋に使用量に基づいています (たとえば、コンピューティング時間の 1 時間あたり、ストレージのギガバイトあたりなど)。これはわかりやすい設定であり、消費するリソースが多いほど、請求額は高くなります。

一方、SaaS は多くの場合、定額料金の設定です。サブスクリプションプランに加入し、設定された月額料金または年額料金を支払ってソフトウェアにアクセスします。そのため、コストが予測しやすくなります。

PaaS は、その中間に位置します。インフラや、機器やサービスが標準提供されている開発プラットフォームの利用料金を支払うのです。つまり、一般的に、料金は基本のサブスクリプション料金に従量課金ベースの料金を加算したものになります。たとえば、PaaS を利用すると、ウェブアプリケーションをデプロイして管理できますが、アカウントと開発者のシート数に対する定額の月額料金に加えて、アプリケーションが消費するリソースの数に基づいて追加料金が請求されることがあります。

料金体系は、コンピューティング能力、ストレージ、追加機能など、使用状況に応じて調整されます。これが PaaS の料金体系の特徴です。柔軟性がありますが、コストが変動しやすいのです。定額料金を支払うのが一般的な SaaS や、利用するすべてのリソースを自分で管理する IaaS とは異なり、PaaS の料金は、使用量と利用するプラットフォーム固有のサービスの両方に応じて変わります。

クラウドプロバイダーが PaaS サービスに対して課金する仕組み

PaaS プロバイダーが料金体系を構成する方法は 1 つではなく、多くのプロバイダーは複数のモデルを組み合わせて使用しています。コストを予測し、予期せぬ事態を避けるためには、これらの料金がどのように加算されるのか理解することが重要です。

従量課金ベースの料金体系

これは最も一般的なモデルです。コストは、使用量に応じて増加します。コンピューティング能力、アプリケーション・プログラミング・インターフェイス (API) コール数、ストレージ、帯域幅がすべて請求額に反映されます。アプリケーションのトラフィックが急増すると、コストが増加します。使用量が減ると、支出も減ります。これは柔軟なシステムですが、適切な追跡を行わないと、バックグラウンドプロセスや効率の悪いコードによって見えないところで使用量が増加している場合は特に、コストが予測不能になる可能性があります。

サブスクリプションベースの料金体系

一部のプロバイダーは、一定量のリソースをバンドルした定額の月次プランや年次プランを提供しています。この場合は、使用量に応じてコストが変動しないため、予算管理しやすくなりますが、必要以上の容量の料金を支払うことになりかねません。逆に、プランの上限に頻繁に達する場合は、より高額なプランにアップグレードするか、超過料金を支払う必要があります。

機能ベースの料金体系

多くの PaaS プラットフォームでは、高度なセキュリティ、分析、連携機能、アップグレードされたパフォーマンス機能など、特定の要素に対して追加料金が発生します。基本のプラットフォームは標準のホスティングとデプロイに対応していますが、コア機能に追加コストがかかるのが一般的です。プレミアム機能を利用している事業者の場合、これらのアドオンが総支出にかなりの影響を与える可能性があります。

混合モデル

多くの PaaS プロバイダーは、1 つの料金モデルだけにこだわってはいません。次のような設定もよく利用されています。

  • 一定レベルの使用量に対応する基本サブスクリプション

  • 追加のコンピューティング能力、API コール数、ストレージに対する従量課金制料金

  • プレミアムツール、連携機能、セキュリティアップグレードに対する機能ベースの料金体系

この階層化されたアプローチによって、企業は需要に応じてコストを調整できますが、あまり活用してリソースの料金を過剰に支払うことがないように、積極的なコスト監視も必要です。

PaaS の料金体系がややこしい理由

事業者が PaaS の料金モデルを理解していても、請求額が予測不可能であったり、想定以上に高く感じられたりすることがあります。それは次のような理由によるからです。

隠れたコストと測定の複雑さ

クラウドの請求書の項目の中には、必ずしも明確ではないものがあります。たとえば、次の料金は見落とされがちです。

  • リージョン間またはサービス間でデータを移動する場合のデータ転送料金

  • API リクエストのコスト (数千回の細かい API コールが積み重なる可能性がある)

  • アクティブに使用されていないときでも実行を継続するバックグラウンドプロセス

多くの企業は、驚くほど高い請求額を見て初めて、これらのコストが存在することに気づきます。クラウドプラットフォームがリソースを計測して課金する方法は複雑であるため、気づかなかったコストに驚くことがあります。

ベンダーロックインと予期せぬ価格変更

PaaS で構築した後でプロバイダーを切り替えるのは簡単ではありません。多くのプラットフォームでは自社特有のツールやワークフローを利用しているため、移行は複雑でコストがかかります。

このロックインによって、料金のリスクが生じます。

  • プロバイダーが料金体系を変更したり、割引プランをなくしたりした場合、新しい料金での支払いを余儀なくされる可能性があります。

  • クラウドプロバイダーは、需要や新しいサービスに基づいて料金を頻繁に調整するため、予期せぬコストの増加につながります。

  • 無料利用枠やプロモーション料金がなくなり、事業者がより高額なプランを利用せざるを得なくなる可能性があります。

その結果、プロバイダーの料金改定に翻弄され、不満や予算の問題につながる可能性があります。

将来の使用量を推定するのが難しい

アプリケーションのリソースニーズがどのように増加するかを予測することは困難です。使用量を少なく見積もると、超過料金が発生したり、パフォーマンスが低下したりする可能性があります。多く見積もりすぎると、全部は利用しきれない高額なプランに加入する可能性があります。

スタートアップや急成長中の企業は特に、その予測が難しいものです。予期せぬユーザー数の増加、口コミによるトラフィックの急増、新機能のロールアウトなどによって、一夜にして突然、使用パターンやコストが変わることがあります。

従来の IT 予算編成では、サーバーを前もって購入し、コストを把握できるため、比較的簡単でした。PaaS 環境では、料金がリアルタイムの使用状況によって変わり、必ず予測できるとは限らないため、翌四半期のコストを把握することは困難です。隠れた料金、ベンダーへの依存、使用量の変動などにより、PaaS の料金体系は不透明に感じられることがあります。事業者は、得られる価値と請求書に記載されているコストを結びつけるのに苦労するかもしれません。

事業者が PaaS のコストを管理・改善する方法

PaaS の料金体系は予測不可能ですが、事業者がコストを管理することはできます。目標は、使用状況を監視して適切な料金モデルを選択し、効率性を考慮して設計することで、先を見据えた対応を維持することです。その方法は次のとおりです。

API の使用状況を追跡して無駄をなくす

API コール数、アイドル状態のサービス、効率の悪いクエリによって、PaaS のコストが増加する可能性があります。使用状況を積極的に監視しないと、ちょっとした非効率な部分が積み重なって気付かぬうちに請求額が増加する可能性があります。先回りして対応するには、次のことを試してみてください。

  • 監視ツールを使用して、API コール数、コンピューティングの使用状況、データベースクエリを追跡します。

  • 使用量が異常に増加した場合にアラートを送信するように設定します。そうすると、不正なプロセスや不正なコードを早期に検出できます。

  • 冗長なサービスをなくします。使用していない環境をシャットダウンし、テストインスタンスをスケールダウンして、API リクエストの頻度を改善します。

ニーズに合った料金モデルを選択する

PaaS プロバイダーが異なれば、料金体系も異なります。適切なものを選べば、予算を調整できるか、無駄な支出が発生するかという違いにつながります。

  • 使用量が安定している場合は、月額料金が予測可能なサブスクリプションベースのプランを利用すると、費用を節約できる可能性があります。

  • 使用量が変動する場合は、使用した分だけ支払う従量課金ベースの料金体系のほうが費用対効果が高くなります。

  • 使用量が徐々に増加している場合は、プロバイダーが提供しているのであれば、確約利用割引やリザーブ容量の料金体系が最適である可能性があります。

プランを定期的に見直して、今もビジネスに合っているか確認する必要があります。

データ転送コストを最小限に抑える

多くの場合、クラウドプラットフォーム内でのデータ移動は無料ですが、リージョン間の転送や外部トラフィックによって隠れたコストが積み上がる可能性があります。不要なコストを最小限に抑えるには、次のことを行います。

  • できる限り、サービスとデータベースを同じリージョンで維持します。

  • キャッシュを使用して、同じデータに対する繰り返しのリクエストを減らします。

  • 小さなリクエストを頻繁に送信するのではなく、データ転送を圧縮してバッチ処理します。

自動スケーリングを利用する

自動スケーリングは、予測不可能なトラフィックを処理するのに適していますが、スケーリングに制限がないと、コストが高騰する可能性があります。自動スケーリングを最大限に活用するには、次のようにします。

  • コンピューティングインスタンスに上限を設定して、想定外の急増を防ぎます。

  • 負荷分散とリソースクォータを使用して、オーバープロビジョニングを防止します。

  • 使用状況の傾向を定期的に確認し、アプリケーションの成熟度に合わせてスケーリングルールを調整します。

追跡ツール、料金プラン、アーキテクチャを適切に選択することで、事業者はパフォーマンスを損なわずに、PaaS の利用コストを管理できます。

Stripe が PaaS の料金体系に関して事業者に提供するサポート

PaaS を運営している場合や、API コール数、コンピューティング時間、ストレージ、段階制サブスクリプションなど、従量課金ベースのビジネスを運営している場合は、自社固有のニーズに適した請求システムが必要です。Stripe は、支払い処理のほかにも、PaaS 企業がカスタムインフラストラクチャを構築することなく、従量課金ベースの継続的な料金モデルを追跡、請求、管理できる機能を提供しています。

測定と従量課金の自動化

PaaS ビジネスでは、一般的に、使用量に基づいて顧客に請求しますが、すべての API リクエスト、ギガバイト単位のストレージ、コンピューティングサイクルを手動で追跡するのは難しい場合があります。Stripe を利用すると、次のことができるようになります。

  • リアルタイムの使用状況データ (API コール数、ストレージ使用量、処理されたリクエスト数など) を記録し、それを請求書に自動的に反映する

  • 使用量に基づいて顧客に請求する (リクエスト単位、秒単位、ボリュームベースの段階制など)

  • 使用量の単位レベルまで正確に追跡して請求するようにして、収益漏れを防ぐ

たとえば、API コール単位で課金する開発者プラットフォームを提供しているとします。Stripe は、これらの API リクエストを測定し、請求サイクルの終了時にそれらを合計して、顧客に正しい金額を自動的に請求できるため、プラットフォーム事業者が請求書に関して作業する必要はありません。

PaaS の料金体系に合った柔軟なサブスクリプションモデル

多くの PaaS ビジネスは、1 つの料金モデルにこだわってはいません。定額制のサブスクリプション、従量課金ベースの料金、機能ベースのアドオンを組み合わせています。Stripe は次の方法でそれをサポートしています。

  • 定額料金と変動する従量課金ベースの料金を 1 つの請求書にまとめることができます。

  • 顧客が請求サイクルの途中でプランをアップグレードまたはダウングレードした際の請求額の比例配分に対応しています。

  • 段階制のプランに対応しているため、さまざまなレベルのサービスを個別の制限と超過料金を設定して提供できます。

つまり、PaaS に基本の月次サブスクリプションに加えて、追加のコンピューティング能力の超過料金が設定されている場合、Stripe は顧客がプランの上限を超えたときに自動的に計算し、それに応じて請求するため、すべてに対応できます。

PaaS の料金モデル向けに構築された収益分析

PaaS の料金体系は複雑である可能性があるため、収益の傾向、解約、顧客の行動を追跡することが重要です。Stripe の構築済みのアナリティクスを利用すると、次のことが可能です。

  • 使用状況の傾向を監視して、どの料金レベルが最も収益性が高いのか確認する

  • 実際の支払いデータに基づいて解約と顧客維持の状況を追跡する

  • 顧客の増加と過去の使用パターンに基づいて収益を予測する

PaaS ビジネスを運営している場合、従量課金制のプランを利用している顧客が定額制のサブスクリプション利用者よりも多くの収益を生み出しているかどうかを確認したり、機能アドオンが利益にどのように影響しているのか追跡したりして、それに応じて料金体系を調整できます。このすべてを、カスタムダッシュボードを構築する必要なく行えます。

この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。

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