溶接ベンチャーの立ち上げは、他者の下につき、何年にもわたって自分の技術の研鑽に費やしてきたような場合には、大きな飛躍のように感じるかもしれません。建設、自動車修理、製造などの分野で熟練した溶接工が求められていることは否定できません。世界の溶接市場は、2024 年から 2029 年にかけて年平均成長率 6.88% のペースで成長を続けることが見込まれています。溶接の仕事の種類は、関連するものも含めて多岐にわたり、適切な計画を立てることができれば、新しい溶接事業は市場での地位を切り開き、安定した牽引力を得ることができます。
以下では、独自の溶接業務を開始する方法について解説します。
本記事の内容
- 溶接事業を始めるメリット
- 溶接事業を始めるのに必要な設備
- 溶接事業の法的要件
- 溶接サービスの価格設定方法
- 溶接事業に最適な支払いオプション
- 溶接事業における顧客の見つけ方
- 溶接事業で直面し得る課題
溶接事業を始めるメリット
今日、高品質の溶接サービスに対するニーズは高まっており、この現状を見逃さない手はありません。精巧な溶接技術は、建設、自動車、製造など、幅広い業界で評価されています。つまり、自身の技術が長けているほど、安定した需要を生み出します。
多くの場合、溶接事業は、地域の建設業者、修理工場、または重機会社がプロジェクトごとに外部の溶接工を雇っているという単純な認識から始まります。しかし、溶接工の中には、独立して自らの会社を立ち上げ、業務のスケジュールや規模を管理したいと考える人もいます。
新しい溶接事業者の多くは、小規模な事業からスタートし、リピーターを獲得するにつれて事業を拡大していきます。仕事を十分にこなせば顧客リストは自然に増えていき、フルタイムにするかどうかを自ら決められるようになります。溶接は肉体的な負担が厳しい仕事ですが、いずれはフリーランスになる自由と天秤にかける時期が来ます。
事業を始める前に、どのような分野があるか調査しておくことをお勧めします。溶接工の中には、自動車の改造や修理を専門とする人もいれば、構造用鋼を専門とする人もいます。物流ハブの近くに拠点を置く場合は、コンテナの修理の依頼が絶え間なく続く可能性があります。自分のスキルや地域市場のニーズに合った溶接サービスを検討しましょう。
溶接事業を始めるのに必要な設備
自分の仕事道具を持つことは、あらゆる溶接作業で不可欠の要件です。必要な設備の種類は専門分野によって異なりますが、複数の分野で標準となっているものもあります。以下は、溶接事業を行う上で必要なものをまとめたリストです。
溶接機
金属不活性ガス (MIG) 溶接機:自動車の車体修理や製造など、幅広い用途で利用されています。
タングステン不活性ガス (TIG) 溶接機:装飾用鉄工品や小口径配管などの精密加工に適しています。
シールドメタルアーク溶接機 / スティック溶接機:これらは軽量で持ち運びも容易なため、屋外でのプロジェクトでよく利用されています。
扱う溶接機を 1 つに絞っている事業者も珍しくありません。また事業者の中には、複数の溶接機を所有し、さまざまな要望に対応できるようにしている人もいます。
保護具
溶接用ヘルメット:信頼性の高い自動暗転ヘルメットほど、目と顔を安全に保護できます。
呼吸器 / 排煙器:これらの器具は、煙やヒュームから肺を保護します。
難燃作業服:溶接工は通常、火花に耐えるように設計されたジャケットや保護スリーブとズボンを着用します。
耐熱手袋 / 耐熱靴:火花や溶銑が地面に飛び散る可能性がある場合は、保護手袋や耐熱靴の着用が不可欠です。
基本工具
アングルグラインダー:これは、金属の下地処理、厚い材料の切断、粗いエッジの平滑化に使用します。
クランプ / 治具:これらを使用して、部品を所定の位置に固定できます。
測定工具 / マーキングツール:測定精度を高めるための巻尺、正方形、ソープストーンマーカーがこの中には含まれます。
切断トーチ / プラズマカッター:これらは、金属板や梁の成形に使用されます。
その他の工具・設備
延長コード、ポータブルライト、安全標識があれば、遠隔地の現場での作業もある程度スムーズになります。
出張で溶接を行う場合は、施錠車庫付きの車両サービスを検討してください。
溶接工になったばかりの人は、最先端の大型設備を購入しようとするかもしれませんが、駆け出しのうちは必ずしも現実的な選択肢になるとは限りません。その弊害となる初期費用は、機械をレンタルしたり、設備費をパートナーと折半したりすることである程度抑えられます。
溶接事業の法的要件
溶接には炎や溶銑の処理、そしてさまざまな安全手順が伴うため、政府機関はこの分野の資格、免許、保険に特別な注意を払っています。これらの手順を省略したり後回しにしたりすると、規制上のトラブルにつながる可能性があります。
ライセンスと許可
営業許可証:すべての都市、郡、または地域には、営業許可に関する独自の基準が設けられています。どのような要件が適用されるかについては、自治体に確認してください。
ゾーニング許可:商業施設等で店舗を運営している場合は、その施設で溶接が許可されていることを確認する必要があります。
認定資格
溶接資格および安全認証:事業を行う場合、溶接資格や安全認証が必要になる場合があります。アメリカ溶接協会 (AWS) 認証は、アメリカのゴールドスタンダード認証として位置づけられています。この認証の取得は必須ではありませんが、これを取得することで、見込み顧客や地域の検査官に、安全で法令意識の工事を徹底する事業者であることを証明できます。
特殊溶接資格:一部の地域では、構造物やパイプラインに関するプロジェクトで特殊な溶接資格が求められることがあります。
保険
総合賠償責任保険:この保険では、偶発的事故や人身傷害が補償の対象となります。
損害保険:この保険では、店舗、工具、溶接機器などが補償の対象となります。
労災補償:従業員を 1 人でも雇う予定がある場合は、保険を掛けておくに越したことはありません。地域の規制を確認しておきましょう。
保険料は、溶接の種類や事業全体のリスクプロファイルなどの要因によって変動します。保険会社に相談して、状況に適したプランを見つけるようにしてください。
安全規制
作業場が消火、換気、保護具に関するガイドラインに従っているかどうかを確認するため、自治体や国の機関による査察が行われることがあります。
店舗や現場を整備しておくことは、法令を遵守する上で重要なことです。
溶接は、予防措置を講じなければ危険な作業になりかねません。適切な認証の取得や、保険への加入を済ませておくと、安全性と品質に真剣に取り組んでいることを証明できます。
溶接サービスの価格設定方法
作業料金をどのように請求するかを考えることは、人件費、材料費、間接費などのコストと、スキルセットなどの無形価値のバランスを取ることを意味します。価格が高すぎると、見込み客は他の会社を探す可能性があります。逆に価格が低すぎると、自分自身が摩耗し、会社の売上を維持するのが困難になってしまいます。そのような事態を回避するための対策ガイドラインをここでご紹介します。
コストの把握
材料費:これには、金属、フィラーロッド、シールドガス、研磨ディスク、その他の消費材が含まれます。素材の価格は、市場の状況によって変動する可能性があります。
人件費:時間単位で請求する溶接工もいれば、プロジェクトベースで見積もりを出す溶接工もいます。どちらの報酬方法を選ぶにせよ、準備、溶接、後片付けに費やされる 1 時間あたりの単価を計算しておく必要があります。
間接費:現場出張する場合でも、家賃、設備維持費、保険、電気代、燃料費は考慮するようにしてください。
固定料金と時給の比較
時給:顧客は作業に何時間費やされたかを確認し、溶接工は仕事に費やした時間分だけ報酬を受け取ります。しかし、予算が限られている顧客にとっては、予測不可能性が懸念になる可能性があります。
固定料金:プロジェクト全体に対して価格の見積もりを絞るのは、事前に予測できる反復的な作業に適しています。この報酬方法のリスクは、もし複雑な事態が発生したり、余分な材料が必要になった場合、バッファーを用意しておかなければ赤字になる可能性があるという点です。
相場
事業を行っている地域の他の溶接工の料金を確認してください。また、専門分野や資格次第でより高い料金を要求できる可能性があることも覚えておきましょう。
信頼できるサプライヤーと良好な関係を築くと、安価に材料を仕入れられるようなる可能性があり、見積もりの立て方にも少なからず影響が出てきます。
見積書
小規模なプロジェクトでも、見積書を提示することで、ある程度見通しが立てられるようになります。また、後で紛争が発生した場合に、会社と顧客の両方を保護する機能を見積書は果たします。
見積書には、材料、作業、スケジュールの詳細を記載します。
特に立ち上げ初期は、料金が動く目標のように感じることがあります。しかし慣れてくると、会社にとっての適切な料金体系が掴めてくるはずです。顧客にコストのことを正直に話しておくと、信頼関係が築かれ、それがリピートや紹介につながる可能性があります。
溶接事業に最適な支払いオプション
料金を決定したら、支払いを回収するための実用的な方法が必要です。多くの溶接工は紙の請求書と小切手から始めますが、これらは多くの企業や個人にとって柔軟性の高い手段とは言えません。複数の決済手段を受け付けられるようにしておくと、より多くの顧客に対応できるようになります。この項目では、溶接事業で検討すべき決済手段をいくつかご紹介します。
デジタル請求書
専用の請求ソフトウェアには、自動リマインダー、簡単な記録管理、見積書の即時生成など、便利な機能がいくつか備えられています。また、支払い遅延を追跡し、効果的にフォローアップすることもできます。何カ月にもわたる未払請求書の処理を好き好んでやる人はいません。Stripe の請求処理機能を使用すれば、カスタム請求書を作成し、請求書に直接埋め込まれたリンクからオンラインで支払いを受け付けることができます。Stripe はさまざまな会計ソフトウェアと連携できるため、わざわざ複数のシステムを使いこなす必要はありません。
サブスクリプションまたはリテイナー
継続的にサービスを必要とする顧客がいる場合は、継続支払いを導入することで時間を節約できます。Stripe を利用すると、オンライン決済や長期契約の継続請求を簡単に処理できるほか、入ってくる収益をリアルタイムで追跡できます。
対面取引
移動式溶接機を使用する場合、現場で支払いを処理することがあります。Stripe は対面支払いオプションも提供しているので、現場でカード支払いを処理することも可能です。カード支払いはほぼ瞬時に承認されます。
シンプルでわかりやすい決済手段を提供し、顧客の支払いをよりスムーズにすることを目指しましょう。
溶接事業における顧客の見つけ方
工具や認定資格の取得、料金モデルが決まったら、事業について周知する必要があります。溶接事業は口コミに頼ることが多いですが、仕事を継続して引き付ける方法は他にもあります。
請負業者とのネットワーキング
地域の建設会社や製造企業に挨拶回りをしましょう。その際、1 回限りまたは継続的な溶接サービスを提供できることを知らせてください。
会社のサービス内容が短く簡潔に記載された名刺を配るのも効果的です。たとえば、会社名や屋号の下には「アルミニウムとステンレスの溶接」や「移動溶接と修理」といった紹介文を入れられます。
地域広告
会社がある町や市に商工会議所やビジネス協会があるかどうかを確認します。これらの組織は、しばしば会報を回覧したり、懇親会を開いたりしています。
(実物であれオンラインであれ) コミュニティ掲示板は、新しい事業の立ち上げを周知するのに役立ちます。
地域の金物店や用品店では、チラシを貼るスペースがあったり、名刺をレジの近くに置いたりできるかもしれません。
オンラインマーケットプレイス
請負業者や職人の求人に焦点を当てたプラットフォームは、溶接を必要とする見込み客を会社に引き合わせてくれます。プラットフォームによっては、住宅リノベーションを求める顧客に焦点を当てていたり、さまざまな業務リクエストをリストアップしていることがあります。
プロジェクトの完成像を提供します。完成後のゲート、改修後のトレーラー、金属加工の装飾などを写した高品質な写真は、見込み客の注目を集めます。
ソーシャルメディアとシンプルなウェブサイト
基本的なウェブサイトのセットアップに費用をかける必要はありません。代わりに、数枚の参考画像やサービスの説明、会社への連絡方法をサイトに含めてください。
ソーシャルメディアプラットフォームは、直近の作業を紹介するのに役立ちます。溶接作業の様子を映した短いビデオや写真も投稿できますが、仕事に関連するものだけを投稿するようにしてください。
紹介と口コミ
既存顧客は、会社にとって最高の支持者となります。彼らが仕事の出来に満足していれば、友人や知り合いの経営者に会社を紹介してくれる可能性もおのずと高くなります。
紹介の見返りとして、少額の割引やインセンティブを用意しましょう。
顧客基盤の構築には通常、時間を要します。プロジェクトの成功は、スキルと信頼性を示す良い機会になります。会社がどのように仕事をこなしているかを人々に知ってもらうことで、リピートの仕事や紹介を受けられる可能性も高まっていくことでしょう。
溶接事業で直面し得る課題
溶接事業の経営には多くのメリットがある反面、課題もあります。物理的な課題、物流面での課題、その種類はさまざまです。この項目では、その一般的な課題をいくつかご紹介します。
肉体的負担
溶接は骨の折れる作業です。頑丈なヘルメットと防護服を着たまま重い工具で長時間作業するため、その負担は大きなものになります。自分のペースを守り、適切に水分を補給し、正しい作業スタイルを貫きましょう。単調な作業、熱への曝露、工具の長時間の持ち運びは、注意しないと怪我につながります。
売上の季節的な落ち込み
冬が厳しい地域では、厳寒期に入ると屋外作業の進捗がスローダウンする可能性があります。作業の大半を屋外で行っているような場合、この問題は収益面にも影響を与えかねません。
一方で、屋内や店舗、工場で作業する場合はこういった季節の変化の影響を受けにくいです。それでも、小休止に備えておくことに越したことはないでしょう。
燃え尽き症候群
中小企業の経営者は、溶接や仕上げといった作業から請求書の発行、マーケティングまで、すべてを管理しているかもしれません。ただ、膨大な業務を一手に担ってしまうと、ストレスや疲労を引き起こしてしまう可能性があります。
現実的な労働時間を設定し、必要であればタスク (経理、スケジューリングなど) をアウトソーシングしたりすることで、負担を和らげることは可能です。
料金
金属や消耗材の価格は予告なしに上昇するため、プロジェクトの見積もりにも影響を与えることがあります。たとえば、顧客に固定料金の見積もりを提示した後で、鋼材やワイヤーのコストが上昇した場合、利益率は低下します。このような状況を考慮しつつ、価格戦略にバッファーを持たせることを検討してください。
供給上の問題
特定のプロジェクトでは特殊な合金が必要になることがあり、それらの材料の待ち時間が予想よりも長引いたりする場合があります。このような不確定要素をあらかじめ考慮しておくと、スケジュールや予算の大きなかい離も防ぐことが可能です。
競合
地域によっては溶接工の数が多いところもあります。新規の事業者など、安価な報酬で働こうとする人たちが台頭すると、競争上の不利を強いられるしれません。その場合、品質や信頼性、技術の力量に重点を置くことで、他社と一線を画すことができます。
安全上の問題
溶接作業には、火災、火傷、目の損傷、ヒュームの吸入といったリスクが常につきまといます。適切な保護具を着用し、ベストプラクティスに従うことで、これらのリスクは最小限に抑えることが可能です。店舗に危険がないか定期的に点検する意義は大いにあります。
規制要件
溶接に関する規制、地域の建築基準法、安全基準などは変更される可能性があります。事業を行う上で、認定資格や、業務に影響を与える可能性のある新しい規制についての情報は常に把握しておかなければなりません。
取引が主体となる事業を立ち上げる際は、入念に準備することが重要です。どのような障害が待ち受けているかが事前にわかれば、現実的に対処しやすくなります。
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