このガイドは、エラッドの著書High Growth Handbook* (Stripe Press 刊) からの抜粋です。新興企業が直面する最も複雑な課題に対処するための実践ガイドを紹介しています。*
初めて幹部を雇うことは、創業者にとって難しい課題です。しかし、経験豊富な幹部を初めて雇い、それがうまくいけば、その存在に感謝することになるでしょう。あらゆることが魔法のようにスムーズに進みます。人が採用され、取引が成立し、プロセスが引き締まります。それは驚くほど素晴らしい体験です。そして、もっと早く経験豊富で能力の高い幹部を雇わなかったことをきっと後悔するでしょう。
残念なことに、物事が悪い方向に進むこともあります。例えば、その幹部が企業文化に合っていなかったり、役職に対して経験が過剰で空回りしてしまったりした場合です。合わない人のために時間が浪費され、進歩が失われたり、さらに悪いことに、うまくいかない人に管理されたチームの優秀な人材が辞めてしまったりすることもあります。
優秀な経営幹部を見つけるのは難しいことですが、努力する価値は十分にあります。また、成功の可能性を最大化するために、いくつかのステップを踏むことができます。
今後 12〜18 ヵ月を見据えて採用する
10 人のエンジニアリングチームがあり、12 ヵ月後に 30 人へ拡大する予定であれば、1,500 人のチームを管理している Salesforce の SVP を採用する必要はありません。そうした人材は、与えられた小規模な仕事に退屈し、ただ空回りしてしまうかもしれません。その役割には経験が過剰すぎるのです。
エグゼクティブを採用する場合は、今後 12〜18 ヵ月間に適した経験や経歴を持つ人を探すことが大切です。それより短いと、採用に要する時間に対して十分に成果を拡大できません。逆にそれ以上長いと、過剰な人材を採用してしまい、結果としてその仕事に適さない人を雇うことになります。
エグゼクティブに求められる特性
どのような役割であれ、エグゼクティブに発揮してもらいたい重要なスキルや特性がいくつかあります:
1. 機能領域に関する専門知識: その機能に関する主要な問題や一般的な失敗のポイントを理解していますか?彼らの組織の人々は、その意見を尊重し、学ぶことができると感じていますか?現在の会社の規模や成長段階に合っていますか?会社のフェーズによっては、過剰採用にも過小採用にもなり得ます。例えば、アルファベットの CFO であるルース・ポラットを、収益前の 10 人規模の会社の財務を管理するために本当に雇う必要があるのでしょうか?
2. 機能領域でチームを構築し、管理する能力: 優れた人材を採用できますか?チーム内に採用文化を築けますか?その領域で働く人々のモチベーションを高める方法を理解していますか?営業担当者のインセンティブがプロダクトマネージャーのものと異なるように、各職種の人材を効果的に管理できることが求められます。例えば、デザイナーの管理にはカスタマーサポートチームとは異なるアプローチが必要です。必要に応じて複数階層の組織を構築する方法を理解していますか?過去にどの程度の規模の組織を管理してきたか、そしてそれが現在のニーズに合っているか(ここでも 12〜18 か月を目安に考えてください)。
3. 協調性: 他の幹部と円滑に協力できるか?自分の職務だけでなく、会社全体のために、互いに支え合う環境を整えることができるか?自分の利益にならなくても、会社にとって正しい行動を取ろうとしますか?その人はあなたの企業文化に合っていますか?それぞれの文化は独自のものであり、他の従業員と同様に、文化に合う人もいれば、そうでない人もいます。
4. 高いコミュニケーション能力: 会社全体でのコミュニケーションに優れているか?チームの変更、昇進、ロードマップ、目標などについて、他の幹部や CEO、創業者をうまく巻き込むことができるか? (役員から創業者へのコミュニケーションは、創業者の性格や意見の強さによっては、それ自体が魔法のような芸術かもしれません) 根本的な問題を理解し、チーム内で共有できるか?取締役会、社外パートナー、顧客、その他の主要なステークホルダーに効果的に伝えることができるか?また、密接に関わる他部門と協働し、円滑に意思疎通を図るための「部門を越えた共感力」を持っていますか?
5. オーナー意識: 自分の職務に主体的に責任を持ち、円滑かつ効果的に運営されていますか?問題を自分の課題として捉え、解決していますか?CEO が日常的に細部まで関与しなくても済むよう、職務を適切に仕組み化できていますか?会社の幹部として、オーナーのように考え行動すべきことを理解していますか?
6. 知的能力と戦略的思考力: 自らの職務を戦略的かつ全体的な視点で考えていますか? 多くの人は、ほとんどすべての職能が戦略的に行動できることに気づいていません。CEO として「戦略的な X 組織 (X には人事、オペレーション、プロダクトなど) とはどのようなものか」と自問するのは良い練習です。彼らは、自らの職務が会社の競争優位性となる方法を考えていますか?多くの企業は 1〜2 分野しか得意ではありませんが、複数の分野をうまくこなす企業は他を圧倒します (たとえば、ハードウェア設計・サプライチェーン・マーケティングを得意とする Apple など)。彼らは第一原理に基づいて物事を考えることができますか? 自らの専門知識を、あなたの会社・チーム・製品の文脈に合わせて応用できますか? それとも、前職でのやり方をそのまま実行しようとしていませんか?
初めて経験豊富な重役を雇えば、その存在に感謝することでしょう。あらゆることが魔法のようにうまく進みます。人が採用され、取引が成立し、プロセスが引き締まります。まさに驚くほど素晴らしい体験です。
役割を明確にし、それをうまくこなせる人と会うこと
たいていの場合、創業者は会社の特定の機能を運営する人材を採用する際、何を基準にすればよいのか分からないものです。CFO や法務顧問、営業担当副社長は、実際には日々どのような業務を行っているのでしょうか。それぞれの役割で卓越した人材を見抜くにはどうすればよいのでしょうか。副社長の職種ごとに求められる特性にはどのような違いがあるのでしょうか。たとえば、エンジニアリング担当副社長と営業担当副社長、あるいは CFO はどのように異なるのでしょうか。
優秀な CFO やエンジニアリング担当副社長の仕事についてもっと知りたい場合は、その役職で活躍している人に直接連絡を取り、アドバイスを求めるのが最善です。投資家やメンターであれば、それぞれの職務に最適な人材を抱える企業を教えてくれるかもしれません。たとえば CFO を採用するのであれば、あなたの会社より数年先を行く企業や、Google や Netflix のような優秀な大手上場企業の CFO に 3〜4 人会ってみてください。彼らは CFO にどんな資質を求めているでしょうか?候補者を見極める際に、どのような面接質問や業務課題、テスト、推薦確認、または他の評価手法を用いるのでしょうか?あなたの会社の規模と 1 年半の成長計画に照らして、何を探すべきでしょうか?
財務、営業、エンジニアリングなどの優れたリーダーと接触するには、投資家やアドバイザーに紹介を頼みましょう。あるいは、数年先を行く他社の創業者に頼んで、CFO や製品担当副社長を紹介してもらい、アドバイスや候補者を提案してもらうこともできます。
職務に何を求めるかが明確になったら、それを書き出して、幹部候補者の面接を担当するチーム全員と共有することが重要です。何を見るべきか、何を基準に選ぶべきかについて共通の理解を持つようにします。この機会を利用して、候補者が備えるべき文化的特性を改めて強調することもできます。採用目的を明確にしておくことで、チーム内での候補者に対するフィードバックや議論に大きな違いが生まれます。また、何を求めているのかが共有されていないために、採用がうまくいかない、あるいは優秀な候補者を逃してしまうといった事態も防げます。
一度や二度は失敗するものだと心得る
一部の企業では、最初の (そして 2 番目の) 経営陣が時間の経過とともに全員入れ替わったことで知られています。例えば Facebook は、最初の経営陣を早い段階で交代させ、シェリル・サンドバーグらが加わるまで、経営陣の入れ替わりがかなり激しく続きました。
高い採用成功率を確保するためのプロセスを整える一方で、ミスをすることもあると認識しておく必要があります。失敗から学び、採用プロセスを改善していく限り、それは問題ではありません。採用ミスを恐れるあまり、採用に時間をかけすぎる創業者をこれまで多く見てきました。創業者としては、迅速に修正できる限り、採用の失敗を自分に許すことが大切です。もちろん、あまりに多くのミスは避けるべきですが、小さなミスが時に起きても、それは修正可能であり、率直に言えば当然のことです。
このようなヒントに興味がおありですか? High-Growth Handbook をご覧ください。