今日、日本では海外からの観光客が急増し、インバウンドの需要が高まっています。これにともない、訪日外国人旅行者による日本国内における消費額も増加しています。
また、近年日本を訪れる旅行者の中には、寿司やラーメンのような一般的に知名度の高い日本食や、伝統的な日本文化を求める旅行客に加え、温泉、コンビニ、そしてゲームやアニメなどのサブカルチャーなどに関心を持つ旅行客も多くいます。こうした特定のモノ・コトを目的とする訪日外国人旅行者を対象とするインバウンドビジネスは年々活性化しており、インバウンド市場は今後さらに拡大することが期待されています。
本記事では、インバウンド消費について、重要性、種類、国別・項目別のインバウンド消費額を踏まえて解説します。
目次
- インバウンド消費とは
- インバウンド消費の重要性
- インバウンド消費の種類
- 項目別のインバウンド消費額
- 国別のインバウンド消費額
- インバウンド消費活性化の施策
- インバウンドビジネスを成功に導くために
- Stripe Terminal でできること
インバウンド消費とは
インバウンド消費とは、海外から日本を訪れる外国人観光客による日本国内での消費活動を意味します。コロナ禍終息後の今日の日本では、都市部の観光名所だけでなく各地方を訪れる旅行者も珍しくはなく、日本ならではの文化体験、グルメ、ショッピングなどが多くの外国人からの関心を集めています。
インバウンド消費においては、宿泊や観光、外食などのサービス、または食品や化粧品などの商品を、旅行者の居住国ではなく日本国内で購入および消費してもらえることが特徴的です。また、訪日外国人旅行者による国内消費額が増えるほど、国内での消費と収入の直接的な循環作用が働くため、日本経済に潤いを与えると考えられています。
経済産業省によると、2020 年はコロナ禍によって訪日外国人旅行者による消費額は大きく下回ったものの、前年の 2019 年は消費額が 4.8 兆円と過去最高を記録しています。また、コロナ禍終息後についても、2023 年における消費額実績が 5.3 兆円にものぼったことが観光庁の資料で報告されており、2030 年には消費額が 15 兆円に達成することを目標として掲げています。
インバウンド消費の重要性
先ほど解説したように、インバウンド消費は日本経済の発展に寄与します。わかりやすい一例としては、訪日外国人旅行者による「爆買い」が挙げられます。電化製品をはじめとする、化粧品や食品、酒類のような消耗品や日用品、医薬品、衣類などについては、店舗によって免税対応が可能な場合もあります。したがって、ドラッグストアやアパレルショップなどの量販店でのショッピングは、インバウンドによって生み出される売上の典型例といえます。
また、深刻化している少子高齢化問題や、地方の人口減少による経済低迷を加速させないためにも、インバウンド消費は日本における新たな消費基盤として注目を集めています。これは、2003 年に政府が宣言した「観光立国」に基づく「ビジット・ジャパン・キャンペーン」における戦略の一環でもあり、訪日旅行客による国内消費を喚起していくことで、インバウンド市場をさらに成長させることを目的としています。
このように、インバウンドによる消費額の増加によって、経済をより一層活性化させるためには、各都道府県や市町村、そして各事業者レベルでの観光づくり、地域づくりの促進や、政府との連携による観光インフラの整備が欠かせません。そのためには、海外から日本を訪れる観光客のさまざまなニーズを十分に理解したうえでインバウンド集客を行うことが大切です。
インバウンド消費の種類
インバウンド消費は、大きく 2 種類に分けられます。それぞれについて 1 つずつ見ていきましょう。
モノ消費
モノ消費とは、その言葉通り物理的なモノに対して代金を支払う消費行動です。つまり、手に取ることのできる商品を購入して、その商品を所有するのがモノ消費です。モノ消費に該当する商品は数え切れませんが、たとえば、食品、日用品、衣類、電化製品、趣味に関するものやキャラクターグッズなどが挙げられます。
コト消費
一方、コト消費とは、サービス、体験などのように形として残らないものに対して価値を見出し、代金を支払う消費行動です。コト消費の場合、モノのように手に取ることはできませんが、思い出としての価値が高く、旅行の質そのものに直結するため、インバウンドではモノ消費と同様に非常に重要視されています。
インバウンドの観点からすると、旅行自体がコト消費に分類できますが、より具体的に掘り下げると以下のようなものがあります。
- 老舗の温泉旅館での滞在
- ガラス細工や陶芸などの工芸体験
- 田植えやフルーツ狩りなどの自然体験
- 郷土料理クッキング
- 酒蔵見学と日本酒の試飲
- 歌舞伎の舞台鑑賞
- 相撲や野球などのスポーツ観戦
- テーマパーク、博物館、水族館の訪問
項目別のインバウンド消費額
では、実際に外国人観光客は訪日旅行中どのようなものに代金を支払っているのでしょうか。日本政府観光局のデータ を参考に、 2024 年におけるインバウンド消費について項目別に見ていきましょう。
まず、同データによると 2024 年の「訪日外国人旅行者 1 人あたりの旅行支出額」の平均は 226,851 円です。次に、日本滞在中の支出について、項目ごとに購入単価 (1 人あたりの平均支出額) を見てみると、以下のような結果となっています。
支出区分 |
平均購入価格 |
---|---|
宿泊費 |
81,761 円 |
飲食費 |
46,456 円 |
交通費 (国内航空便・公共交通機関・タクシー・レンタカーなど) |
24,033 円 |
娯楽サービス費 (温泉・舞台鑑賞・現地ツアー・テーマパークなど) |
17,506 円 |
買い物代 (菓子類・酒類・化粧品・衣類・医薬品・民芸品など) |
67,056 円 |
このように、モノ消費に該当する買い物代が全体の消費額として大きな割合を占めてはいるものの、宿泊費、飲食費、交通費、娯楽サービス費といったコト消費すべてを合わせると、コト消費が旅行中においてはなくてはならない要素であることがわかります。
また、コト消費の場合、交通費を例に挙げると、単に旅行中の移動に際して必要不可欠だからという理由ではなく、旅行中の移動手段に対しても、旅行者はサービスの質や娯楽性を求めるケースが多々あることを理解しておく必要があります。つまり、交通費の重要性は「移動のため」であることに加え、移動手段に紐づくサービスを目的にお金をかけることがあるのです。
たとえば、交通費に該当する新幹線のように、安全、快適かつスピーディーで、駅弁を食べたり景色を楽しみながら目的地に辿り着くことのできる移動手段は、多少のコストがかかったとしても、旅の良い思い出として多くの訪日外国人旅行客が一度は体験しておきたいコト消費といえるでしょう。
このような観点から、インバウンド消費については、交通手段 1 つにしてみても外国人旅行客に満足してもらえるサービスを提供できるよう、さまざまな工夫や戦略を行うことがとても大切です。
外国人観光客に人気な買い物場所
先ほど紹介した日本政府観光局の同データによると、2024 年に外国人観光客によって最も利用された買い物場所は、コンビニエンスストア (以下、コンビニ) でした。また、上位 5 位までの具体的な消費額は以下のとおりです。
- 1位: コンビニ (5,160 億円)
- 2位: 空港の免税点 (3,566 億円)
- 3位: 百貨店・デパート (2,915 億円)
- 4位: ドラッグストア (2,312 億円)
- 5位: スーパーマーケット (1,358 億円)
コンビニが圧倒的トップとなったこの結果については、意外に思われる方もいる一方、コンビニ決済が可能で、365 日 24 時間いつでもオープンしており、リーズナブルな価格にも関わらず高品質な点を考えると、納得のいく側面があるといえるのではないでしょうか。
また、ドラッグストアやスーパーマーケットが上位にランクインしていることからもわかるように、多くの訪日旅行客にとっては、手ごろな価格で購入できるものが人気を博していることがわかります。たとえば、化粧品や健康食品・サプリメントなどが豊富に取り揃えられているドラッグストアの場合、これらのアイテムに対する価格を重視する旅行者からの人気が高いことが伺えます。
国別のインバウンド消費額
観光庁が 2025 年 4 - 6 月期の調査結果として同年 7 月に発表した「インバウンド消費動向調査」によると、国別の訪日外国人旅行者の消費額については、以下の結果となりました。
- 1位: 中国 (5,160 億円)
- 2位: 米国 (3,566 億円)
- 3位: 台湾 (2,915 億円)
- 4位: 韓国 (2,312 億円)
- 5位: 香港 (1,358 億円)
このように、国別のインバウンド消費動向については、中国や米国からの旅行者による消費が顕著であることがわかります。したがって、インバウンド消費を効果的に活性化させるには、これらの国から日本を訪れる旅行者の商習慣や、興味、関心ごとについて、十分に調査を行う必要があります。
また、同資料によると、訪日外国人による旅行消費額の総額は 2 兆 5,250 億円で、2024 年の同期と比較すると 18% 増しとなっており、四半期としては過去最高を記録しました。このように、外国人旅行客による日本国内での消費額は増加傾向となっているため、事業者側としても、各国からの訪日旅行客のニーズに応えられるよう、多角的なポテンシャルを見出しながら創造力を活かした商品やサービスの開発を行うことも、インバウンド市場の成長において必要不可欠といえるでしょう。
インバウンド消費活性化への施策
インバウンド消費の活性化に効果的な施策としては、主に以下のようなものが挙げられます。
- 多言語への対応: 訪日外国人観光客が日本で快適に過ごせるよう多言語による情報提供や接客サービスの提供
- 利便性の向上を目的とするシステムの導入: インバウンドに最適で利便性に優れた複数の キャッシュレス決済 手段の提供や無料 Wi-Fi の設置
- 観光資源の個性・多様性の見直し: 観光資源に秘められたあらゆる可能性や地域の特性を最大限に活かした、新たな観光名所、レジャー・アクティビティの開発によって、より充実度の高い、多様性に富んだ体験の提供
- 文化体験型サービス: 花道、茶道、書道、座禅、着物の着付けなど、日本のさまざまな伝統文化に親しむことのできる体験型サービスの提供
- 食習慣・食文化の紹介: 和食をはじめ、日本各地の特産品や B 級グルメを楽しむといった食にまつわる体験や文化交流、日本でしか味わえない食事や質の高いサービスの提供
インバウンドビジネスを成功に導くために
今回はインバウンド消費とはなにか、なぜ重要なのか、また、インバウンド消費を活性化させるにはどのような施策があるかについて解説しました。
訪日外国人旅行者を対象とするインバウンド消費を活性化させるためには、彼らにとって魅力的な商品やサービスを提供できることが何より大切で、いかにして日本での滞在を快適に、充実して、楽しんでもらえるかがポイントです。そのためインバウンド消費においては、本記事内でも解説したように多言語への対応をはじめ、無料 Wi-Fi の設置やインバウンドに最適な決済手段の導入など、広範囲の地域での観光インフラ構築の推進が求められます。
各事業者が訪日外国人旅行客のニーズに柔軟に対応し、今後さらなる拡大が予想されるインバウンド需要に備えておけば、ビジネスの成功と地域経済の活性化にもつながるでしょう。
Stripe Terminal でできること
Stripe Terminal はユニファイドコマースのためのソリューションです。対面チャネルとオンラインチャネルを統合し、収益拡大を実現させます。新しい支払い方法、シンプルなハードウェア、グローバルな対応、数百の POS とのコマース連携により、理想的な決済環境を構築できます。
Stripe は、Hertz、URBN、Lands’ End、Shopify、Lightspeed、Mindbody などのユニファイドコマースを強化しています。
Stripe Terminal の特徴
- ユニファイドコマース: オンラインと対面での決済をグローバルプラットフォームで一元管理します。
- グローバル展開: 1 つのシステムと一般的な決済手段で、24カ国への拡大が可能です。
- 自社に合った導入: 独自のカスタム POS アプリを開発するか、サードパーティの POS や EC システムを使って既存のテックスタックと連携できます。
- シンプルなハードウェア: Stripe 対応のリーダーを注文、管理、監視できます。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。