ノースカロライナ州は山々と風光明媚な海岸線で知られていますが、ビジネスに適した気候、成長企業への助成金、斬新なアイデアを受け入れる経済のおかげで、ビジネスを始めるのにうってつけの州にもなっています。2024 年、ノースカロライナ州は 新たに 16,956 人の雇用創出を発表しました。ノースカロライナ州には、高く評価されている地元の労働者やさまざまなネットワーキンググループが存在し、ほぼすべてのタイプの企業が事業を行うのに適しています。
以下では、ノースカロライナ州での事業の立ち上げ方 (会社名の選択や日々の財務管理などを含む) について解説します。
本記事の内容
- ノースカロライナ州でビジネスを始めるメリット
- ノースカロライナ州で事業を開始するための法的手順
- ノースカロライナ州で栄えている産業
ノースカロライナ州でビジネスを始めるメリット
起業家がノースカロライナ州を事業に適した場所と考える理由を以下にご紹介します。
税制上のメリットと優遇措置
州は、新興ベンチャーや事業拡大を奨励するプログラムを提供しています。たとえば、ノースカロライナ州の 2.25% の法人税率は、国内で最低水準の税率とされており、企業にとっては経営コストが管理しやすくなります。各郡の経済開発事務局は、地元の雇用を促進するために、特定の分野で助成金や専門的なトレーニングも提供しています。
優れた労働力
デューク大学、ノースカロライナ州立大学、ノースカロライナ大学チャペルヒル校などの主要大学は、世界各所から多様な学生や研究資金を引き付けています。これらの機関は、ソフトウェア開発、データ分析、ライフサイエンスなどの分野で即戦力となる卒業生を輩出している実績があります。そのため企業にとっては、エンジニアリング、ヘルスケア、その他の高度な分野の専門知識を持つ労働力を確保しやすい環境となっています。
都会と町々の混在
ローリー、シャーロット、ダーラムは州の都心部であり、それぞれ活発なテックシーンと強力な不動産市場の拠点となっています。アッシュビルとウィルミントンは、重要なリソースへのアクセスを損なうことなく、企業が事業を展開できる環境を実現しています。
バイオテクノロジー・製造をはじめとする好調な都市産業
州内ではライフサイエンスとテクノロジーが注目されているほか、繊維や自動車部品などの製造も継続的に好調な状況にあります。また、ビーチ、山、歴史的名所の近くでは、観光業も盛んです。これらの産業クラスターは、新しいビジネスを生み出し続ける環境を形成し、ネットワーキングとコラボレーションの機会を創出します。
ノースカロライナ州で事業を開始するための法的手順
事業の立ち上げには、政府への開業届出、納税者番号の取得、税務登録などが含まれます。以下は、ベンチャー企業を正式に州に設立するための手順です。
会社名の選択
会社名はブランドの印象を決める最初の情報であり、州の規制を満たす必要があります。ノースカロライナ州務長官事務所の事業者登録検索で、希望する会社名が使用されていないことを確認してください。
LLC は、名前に「LLC」または「有限責任会社」を含める必要があります。法人は、「法人」、「株式会社」、または略語 (Co.) を含める必要があります。「銀行」や「保険」という用語は特別な承認が必要なため、その業界に属さない限り使用しないでください。
届出の準備ができていない場合は、希望の名前を 120 日の間、有料で予約できます。名前の予約は、オンラインまたは郵送で申し込むことが可能です。
適切な会社形態の選択
選択した法的形態によって、税金、負債、業務内容が決まるため、どれを選択すればよいかわからない場合は、弁護士または税理士に相談することを検討してください。ノースカロライナ州では以下の会社形態を選択できます。
個人事業主:この単純な形態は事務処理をまったく、あるいはほとんど必要としませんが、個人に対する責任保護はありません。個人事業主は、非常に小規模な経営に最適です。
LLC:この形態では個人に対する責任保護が保証され、より柔軟な管理と課税が可能になります。LLC は、中小企業にとって一般的な選択肢となっています。
株式会社:この形態は、事業規模の拡大を計画している企業や外部投資を求める企業にとって理想的ですが、取締役会の招集や年次株主総会の開催など、いくつかの条件を満たす必要があります。
組合:一般組合または有限責任組合も州内で設立可能です。組合に対する責任の度合いは、組合員ごとに異なります。
ノースカロライナ州務長官事務所への登録
ノースカロライナ州で事業を行おうとしている起業は、一部を除き州務長官事務所に登録しなければなりません。申告の詳細と手数料は、会社形態によって異なります。形態ごとの必要手順は以下のとおりです。
LLC:LLC を設立する場合、定款をオンラインまたは郵送で州務長官事務所に提出する必要があります。定款には、会社名、登録代理人の詳細、主たる事業所の住所も記載する必要があります。
株式会社:定款を州務長官事務書に提出します。定款には授権株式数、発起人名、登録代理人の情報を含めてください。
個人事業主および一般組合:これらの形態は州への届出を必要としませんが、創業者の名前以外の名称で運営する場合は、郡の登記簿に「商号」(DBA) を申請する必要があります。
IRS からの EIN 取得
雇用者識別番号 (EIN) は、会社の連邦納税者番号として機能します。また、銀行口座の開設、従業員の雇用、税金の申告でも必要になります。IRS はオンラインから申請することができます。このプロセスは無料で、所要時間も 10 分ほどです。電話、FAX、郵送でも申込むことは可能ですが、手続きに時間がかかります。
従業員を持たず、個別の事業銀行口座を持たない個人事業主は、代わりに社会保障番号 (SSN) を使用できますが、EIN はプライバシーと社会的信頼の面でメリットがあります。
州税への登録
ほとんどの企業は、ノースカロライナ州歳入局 (NCDOR) に州税を登録する必要があります。商品の販売、従業員の雇用、課税対象サービスの提供を計画している場合は、州の納税者番号も必要です。NCDOR のオンライン登録を利用すると、売上税、源泉徴収税、その他の事業関連税を申告して支払えるようになります。
ノースカロライナ州の現在の売上税率は 4.75% ですが、地方税率は郡によって異なります。商品を販売する場合は、売上税を徴収して納付する義務を負います。
現地のライセンスまたは許可の取得
ビジネスライセンスと許可は、場所や業界によって大きく異なります。詳細については、郡や市町村に確認してください。
飲食:レストランとフードトラックは、健康検査に合格し、地元の保健局を通じて飲食店営業許可を取得する必要があります。アルコールの販売には、ノースカロライナ州アルコール飲料管理委員会からの個別の許可が必要です。
建設:建設業者や請負業者は、州から認可を受ける必要があり、営業するには現地の貿易許可が追加で必要になる場合もあります。
ホームベースビジネス:ローリーなどの一部の都市では、特定のホームベース事業に対してゾーニング許可が必要です。
一般的なライセンスリソース:営業許可を付与する管轄事務所では、さまざまな業界向けのガイダンスを提供しています。
事業用銀行口座の開設
小規模な事業を運営する場合でも、事業用銀行口座を開設して、個人と会社の財務を分けておくのが賢明です。口座開設を申請すると、ほとんどの銀行は次の書類の提出を要求します。
EIN (EIN のない個人事業主の場合は SSN)
州に提出した定款 または DBA 証明書
政府発行の身分証明書
手数料が安く、無料の預金制度や会計システムなど、中小企業向けの特別なサービスを提供している銀行を中心に調べてみましょう。
事業保険の検討
事業保険を掛けておくことで、潜在的な訴訟や予期せぬ損失から会社を守ることができます。必ずしもすべての補償をつけるべきというわけではありませんが、以下に挙げるオプションは検討の余地が大いにあります。
総合賠償責任保険:この保険は、物的損害、人身傷害、弁護士費用の補償も対象としています。
労働者災害補償保険:この保険は、従業員が 3 人以上いる場合に加入が義務づけられています。
法人賠償責任保険:サービス業を営む企業は、この保険により過失請求から保護されます。
企業財産保険:この保険は、特に小売店、オフィス、工業施設に最適です。
年次要件の充足
会社が公的にすべきことは、なにも登記だけというわけではありません。ノースカロライナ州には、会社形態に応じて企業が満たさなければならない継続的なコンプライアンス規則が設けられています。州務長官事務所への登録を有効に保つための年間申請料の支払いや年次報告書の提出もその規則に含まれます。報告書はオンラインまたは郵送で提出することが可能で、期限は毎年 4 月 15 日に定められています。保健免許やゾーニング許可など、特定の許認可は 1~2 年ごとに更新する必要があります。
ノースカロライナ州で栄えている産業
ノースカロライナは特定の産業に戦略的に投資してきたため、特定の分野が成長するための好条件が整っています。ノースカロライナ州で特に栄えている産業の例をいくつかご紹介します。
バイオテクノロジー / ライフサイエンス
ノースカロライナ州は、アメリカ最大のリサーチパークであるリサーチ・トライアングル・パーク (RTP) を中心とするバイオテクノロジー産業の中心地です。ローリー、ダーラム、チャペルヒルの近郊に位置する RTP には、スタートアップ企業から Biogen、Syngenta などの世界的大手企業まで、300 社以上の企業が拠点を置いています。また、RTP は有名大学にも近い位置にあるため、安定した人材供給と画期的な研究によりイノベーションが促進されます。
製薬、農業バイオテクノロジー、または医療機器事業を立ち上げる場合、ノースカロライナ州の税制優遇措置と確立されたネットワークは、事業規模を広げるのに役立ちます。ノースカロライナ州は、遺伝子治療とワクチン開発の分野でも先進的な立場にあります。
製造業
ノースカロライナ州は従来の製造業から、先端技術に特化したスリムなセクターを形成しています。繊維製造のルーツは今も健在ですが、現在、工場では航空宇宙部品、電気自動車 (EV) 部品、ロボット工学などを生産する傾向が強まっています。
ノースカロライナ州は、東海岸の主要交通拠点に位置づけられます。たとえば、シャーロットには主要な州間高速道路と鉄道路線が交差しており、国際空港もあります。この物流の優位性が、製造業、特に次の専門セクターに力を与えています。
自動車:自動車セクターは、Thomas Built Buses (Daimler の子会社) やランドルフ郡にあるトヨタの EV バッテリー工場などで成り立っています。
航空宇宙:Spirit AeroSystems と Honeywell Aerospace が州内の航空産業を支えています。
家具:ハイポイントでは年に 2 回、ハイポイントマーケットが開催され、世界中から顧客やデザイナーが集まります。
テクノロジー
ノースカロライナ州のテクノロジーセクターは、ローリーとダーラムに限定されません。シャーロットとアッシュビルは、フィンテック、環境テック、クリーンエネルギーのスタートアップが軒を連ねています。
シャーロットのフィンテック:シャーロットは、アメリカで 2 番目に大きい銀行ハブとしてフィンテック企業を引き寄せています。スタートアップは、同市の金融インフラを活用して、デジタルバンキング、決済システム、ブロックチェーンソリューションの改善に勤しんでいます。LendingTree や AvidXchange などの企業は、シャーロットを故郷とさえ呼んでいます。
アッシュビルのテックスタートアップ:この風光明媚な山間の町は、持続可能エネルギー、浄水システム、環境モニタリングツールに焦点を当てたグリーンテクノロジー企業を惹きつけています。アッシュビルは起業家支援のコミュニティを形成するだけでなく、環境志向の投資家の受け入れも積極的に行っています。
観光とホスピタリティ
ノースカロライナ州の地形は、山々、起伏のある農地、300 マイル以上の海岸線が混在しており、年間を通じて観光経済を支えています。観光客を最も惹きつけているのは以下の要素です。
アウターバンクスと海岸沿いの町々:ビーチ、灯台、史跡 (ライト兄弟ゆかりの地やロアノーク島) のあるアウターバンクスは、毎年数百万人もの人々を魅了しています。ツアーオペレーター、ブティックホテルなどの観光ビジネスで大きな成功を収めることもそう難しいものではありません。
アッシュビルとブルーリッジ山脈:アッシュビルは、醸造所、農家直営レストラン、アートギャラリーの穴場です。LEAF Global Arts Festival などのイベントや、グレートスモーキー山脈国立公園へのアクセスの良さは観光客を魅了する要素の一つになっています。ブルーリッジパークウェイもまた、自然観光をけん引する要素の一つです。
映画由来の観光:ウィルミントンは「ハリウッド・イースト」とも呼ばれ、主要な映画製作地として知られています。『ドーソンズ・クリーク』や『ワン・トゥリー・ヒル』、あるいは『アイアンマン 3』のファンがロケ地を訪れることも多く、ツアーガイドやテーマビジネスのチャンスがそこでは生み出されています。
アグリビジネス
ノースカロライナ州の農業セクターは、従来の農業をはるかに超える数十億ドル規模の産業を擁しています。農業技術の革新により、州は精密農業、屋内農業、食品技術のリーダーとして位置付けられています。
ノースカロライナ州は、サツマイモ (国内有数の生産国)、豚肉、鶏肉などの生産が盛んです。RTP を拠点とする AgBiome のような企業は、生物的防除ソリューションの開発の最前線に立っています。他にも、次のようなニッチ分野が開拓されています。
クラフト飲料:醸造所、ワイナリー、蒸留所は、ホップ、ブドウ、植物などを栽培する地元農場から多大な恩恵を得ています。その証拠に、アッシュビルだけでも数十もの醸造所があります。
特産品:ホットソース、アルチザンチーズ、古代穀物などの食品を作る企業は、地域のファーマーズマーケットや E コマースを通じて収益を上げています。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。