グローバル規模での税務は、財務の面でも問題ですが、整合性も問われます。事業において関わる市場が多ければ多いほど、複数の現地税法の間で不一致が生じ、期限が重複し、小さな不整合が大きなリスクに発展する可能性が高まります。複数の管轄区域で期限までに申告を行い、すべての申告内容が一貫していなければなりません。多くの企業は、この手順をスムーズに運ぶためにグローバル税務サービスを利用します。2024 年に 6,032 億ドル だった企業向け税務サービスグローバル市場の市場規模が、2033年には 3,203 億ドルまで拡大すると予想されます。
次に、企業が整合性を維持し、法令を遵守する上で、グローバル税務サービスがどのように役立つかをご説明します。
この記事の内容
- グローバル税務サービスとは
- 国際企業向けグローバル税務サービスの守備範囲
- 企業がグローバル税務サービスを活用する理由
- グローバル税務サービスは、税務リスクに対処する上でどのように役立つか
- グローバル税務サービスプロバイダーの選択基準
グローバル税務サービスとは
グローバル税金税務サービスは、企業が事業を展開する国の税法と報告要件を遵守できるよう支援します。これらのサービスは、タックスプランニング、法令遵守、報告、リスク管理を含め、多数の管轄区域の税務ライフサイクル全体をカバーします。
グローバル税務サービスは次のようなサポートを提供します。
- 所得税、消費税、付加価値税 (VAT)、物品サービス税 (GST) の申告書作成および提出
- 経済協力開発機構 (OECD) の規則改正、現地の税制改革などの法改正に関する情報提供
- 節税と法務上および業務活動上のニーズのバランスを取ることができる企業構造の設計
多国籍企業は、たとえ小規模でも、多数の税務枠組みを一度に処理する必要があります。国 (および一部の地域や州) ごとに独自の規則、基準額、期限、文書作成基準が定められています。グローバル税務サービスプロバイダーは、分断された税務環境全体で一貫性と法令遵守を維持できるように企業を支援します。
企業に法令遵守を維持させ、VAT 還付、円滑な法人設立、事業拡大計画に伴う税負担の最小化などの機会を明らかにできるのが最高のサービスです。
国際企業向けグローバル税務サービスの守備範囲
申請形式、課税基準額、期限、監査リスクはどれも市場によって異なります。ある国で控除対象に該当する項目が、別の国では控除対象にならないといったケースもありえます。また、ある地域で非課税扱いの項目が、別の地域では課税されるということも考えられます。グローバル税務サービスは、国境を越え、多数の税制と、国によって異なる規制枠組みを網羅しつつ企業の税金対策を支援します。
それでは、グローバル税務サービスの内容についてご説明しましょう。
税務相談と税務ストラクチャリング
グローバル税務サービスは、節税と法令遵守のバランスを取りながら、事業活動、取引、法人のストラクチャリングを進めるための指針を示します。多くの場合、持株会社、知的財産 (IP) 所有権、グループ企業間契約、さらには現地の実体要件に関する助言が含まれます。
国境を越えた税務コンプライアンス
グローバル税務サービスは、現地の子会社、恒久的施設、あるいは課税プレゼンスを形成するデジタル事業のいずれを通じて生じるかを問わず、その企業が関係する各管轄区域で負う、法人税、源泉徴収税その他の直接税の納税義務を果たせるようサポートします。
間接税の処理
グローバル税務サービスは、VAT、GST、消費税税制への対応に関しても企業を支援します。これらの税制は、国、地域、セクターのほか、製品の種類によっても異なります。登録、税率の判定、申告書の作成、税務報告、還付手続きなどを取り扱います。
税務報告と開示
グローバル税務サービスは、国別 (CbC) 報告事項などの報告枠組みや、詳細な開示と財務・法務チーム間の緊密な連携を求める EU の行政協力指令 (DAC6) などの義務的開示への対応を支援します。これらの税務サービスを利用することによって、正確かつタイムリーで、グローバルな基準に則った報告を確実に行うことができます。
規制の継続的監視
グローバル税務サービスは、税率や基準額の変更から、まったく新しい申告制度まで多数の市場全体で税法改正や執行を常に監視します。サービスプロバイダーはこれらの改正を取り入れてアクションプランを立て、新たなリスクや法令遵守義務に立ち遅れることのないように企業を支援します。
紛争解決と税務調査にあたっての支援
照会か、机上税務調査か、正式評価かを問わず、税務当局から税務ポジションについて指摘があった場合は、グローバル会計法人が裏付け書類、管轄区域に即した指針、交渉戦術などを提供し、企業の対応を支援します。
グローバル税務サービスが提供する各種のサービスは互いに連携するように設計されています。ある会社のグループ企業間契約は、その会社の税務ストラクチャリングに影響を与えます。また、VAT の処理は、その事業体の機構によって異なりますが、グローバル会計法人がこれらをリンクさせるので、企業がある税務の問題を解決したことによって別の問題が生じてしまうというような事態は起きません。
企業がグローバル税務サービスを活用する理由
各管轄区域にはそれぞれ独自の規則、定義、執行順位があります。グローバル税務サービスは、一貫性、法令遵守、持続可能性を満たす方法でこれらのさまざまな体制に対処できるよう企業を支援します。
企業はこれらのサービスを利用することによって、少なくとも次のことを実現できます。
- 活動するすべての地域で法令遵守を継続: ある市場で VAT 登録の基準額が満たせなかったこと、あるいは取引を誤って報告したといったことが、監査、刑罰、風評被害につながる可能性があります。税務サービスプロバイダーは、現地の法令、期限、文書作成基準を遵守できるように企業を支援します。
- 異なる管轄区域全体で一貫性を維持: 全体の一致を図らない限り、サイロ化された申告書の寄せ集めで税務コンプライアンスを成立させなければならなくなってしまいます。グローバル税務プロバイダーは、会計処理と文書作成を統一します。したがって、ある市場と別の市場の間で不一致が生じることはありません。
- 手作業の労力を減らし、エラー発生リスクを低減: 複数の国で法令遵守を徹底させるためには、税率から現地の申告方法に至るまで、場合によっては数千ものインプットが必要です。グローバル税務サービスは、可能な限り自動化と標準化を図り、不整合や欠落のリスクを小さくします。
- 海外展開の支援: 新たな国への参入により、税務登録、現地での申告、継続的な報告義務が発生する可能性があります。税務サービスプロバイダーは、これらの要件を事前に調査し、多大なコストをもたらす誤りを防止できるよう企業を支援します。
- 節税とリスク管理のバランスを取る: 税務戦略とは、税負担の最小化と、税務調査で通用しないような攻撃的な税務ポジションの回避との間でバランスを取ることです。グローバル税務サービスは、許容範囲が異なる複数の管轄区域全体でこのバランスを調整できるよう企業を支援します。
複数の税制をまたいで事業を展開する企業の場合、小さなミスが積み重なってリスクが拡大するおそれがあります。グローバル税務サービスは、そのようなリスクを抑えるための体制、監視、現地の専門知識を提供します。
グローバル税務サービスは税務リスクに対処する上でどのように役立つか
税務リスクは、過少納付やアグレッシブなタックスプランニングとして表れることもあれば、登録漏れ、申告の不整合、不明瞭な記載、管轄区域ごとの解釈の相違など、一目瞭然ではないエラーとして表れることもあります。グローバル税務サービスは、罰金や税務調査、あるいは当局との紛争に発展する前に、企業がこれらの問題を発見し、軽減できるようにサポートします。
グローバル税務サービスが、広範囲にわたるリスク管理をどのようにサポートするかをご説明します。
プロアクティブなリスク評価
税務プロバイダーは、移転価格、恒久的施設のステータス、デジタルサービス税といった高リスクの領域を警告することによって、企業が複数の管轄区域全体でリスクエクスポージャーをマッピングできるよう支援します。曖昧な点が見られる分野を指摘し、現地税務当局の精査を受ける可能性が高い項目を警告します。
文書の標準化
一貫性に欠ける記録は、往々にして税務調査の引き金になります。グローバル税務サービスは、税法上の居住者証明、さらには消費税、VAT、GST の申告といった現地の要件を満たす、一貫性のある文書の作成をサポートします。さらに、Stripe Tax では、完了済み全取引の項目別エクスポート機能や場所別サマリービューが提供されるので標準化が容易です。
国境を越えたポリシーの整合
複数の市場でそれぞれ異なる税務戦略を適用すれば、企業が負うリスクは大きくなります。 グローバル税務プロバイダーは、管轄区域によって企業のポリシーと報告枠組みに不整合が生じないように、これらの構築を支援します。
税務調査への備え
多くの税務サービスには、税務調査に対する防御やサポートが含まれます。これは、明確な証拠書類、正当な主張、現地規則の知識に基づいて税務調査への対応を支援することを意味します。高リスクの管轄区域では、税務調査のシナリオをシミュレーションし、事前にリスクを検証することもあります。
リアルタイムのアップデート
税法はしばしば改正されます。執行にあたっての優先事項も同様に変わります。昨年は有効だった戦略が、今年は現地の法解釈に適合しなくなったということもありえます。グローバル税務サービスプロバイダーは、これらの変更を監視し、企業が速やかに対応してリスクを軽減できるよう支援します。
グローバル税務サービスは、企業が起こりうるリスクに早い段階で気付き、深刻にならないうちに対応するために必要な可視性と体制を提供します。
グローバル税務サービスプロバイダーの選択基準
自社に適したグローバル税務パートナーを選定するにあたっては、具体的なビジネスニーズを考慮する必要があります。最良のプロバイダーは、技術的な専門知識に加えて、お客様のビジネスに適した業務範囲、調整能力、背景状況を持つプロバイダーです。
以下に考慮すべき点を示します。
対応可能な管轄区域
お客様が事業を展開中の市場、あるいは進出を計画中の市場のすべてにそのプロバイダーが対応していることを必ず確認してください。中核となる管轄区域だけでなく、取り扱い量が少ない国などのエッジケースも確認しましょう。取り扱い量が少なくても法令遵守は重要です。
あらゆる種類の税に対する専門知識の深さ
間接税主体のプロバイダーもあれば、多方面のサービスを幅広く提供するプロバイダーもあります。強みとする分野が、お客様が具体的にサポートを必要とする分野とマッチするパートナーを選択してください。
その業界と経営モデルを取り扱った経験
サービスとしてのソフトウェア (SaaS) に詳しいプロバイダーが、メーカーに助言する能力を必ずしも持っているとは限りません。SaaS を販売する企業と、製造業に精通しているプロバイダーの関係も同じです。特に、お客様が分散型経営を取り入れている場合、複雑なサプライチェーンを抱えている場合、あるいはインターネットでクロスボーダー販売を行っている場合は、そのビジネスモデルを取り扱ったことのあるプロバイダーを探してください。
連携とサポート体制
複数の管轄区域間で業務をどのように連携させているかをプロバイダーに尋ねてください。1 人のグローバルリードが置かれるのでしょうか。それとも、お客様は現地のチームと個々に連携することになるのでしょうか。事業を展開する市場が多いほど、一元化された連携の重要性は高まります。
技術の統合
依然としてスプレッドシートとメールスレッドに依存しているプロバイダーもあれば、ワークフロープラットフォーム、ダッシュボード、自動申告機能を提供するプロバイダーもあります。お客様はどのようなインフラストラクチャーを使うことになるのか、そのインフラストラクチャーをお客様の社内システムにどれだけ円滑に組み込めるのかを調べてください。
拡張性と長期サポート
企業の成長に伴って税務は複雑になります。そのプロバイダーが、将来的な事業拡大に対応できるかどうかを確認してください。
優れたプロバイダーは、お客様が存在に気付いていなかったリスクを警告し、複数の申告を一貫させ、お客様のチームが国境を越えてアジャイルに活動できるよう支援します。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。