ご存知のように、顧客との取引は商品の販売で終わりではありません。過剰請求や返品など、会計上の調整が必要な問題が頻繁に発生します。貸方票と借方票は、顧客による正しい金額の支払いを確保するために企業が使用するシンプルなツールです。
貸方票は証明書のようなもので、企業が顧客に支払うべき金額を通知するために用いられます。たとえば、顧客への過剰請求や顧客による商品の返品が発生した場合などに使用します。借方票とは通常、過少請求や追加サービスの提供などの発生時に、顧客の支払い金額が不足していることを伝えるものです。
この記事では、貸方票と借方票の詳細に加えて、それらが財務の健全性の維持にどのように役立つのかをご説明します。また、企業が使用できるテンプレートもご紹介します。貸方票や借方票の発行が必要かどうかにかかわらず、企業はこれを適切かつ効率的に取り扱う方法を知っておく必要があります。
この記事の内容
- 貸方票とは
- 借方票とは
- 企業にとって貸方票と借方票が重要である理由
- 貸方票を発行する状況
- 借方票を発行する状況
- 貸方票と借方票の比較: 主な相違点
- 貸方票と借方票の管理に関するベストプラクティス
- 企業向け貸方票テンプレート
- 企業向け借方票テンプレート
貸方票とは
貸方票は、売り手から買い手に発行される文書です。貸方票は、誤りの修正や返金を目的として、以前に発行された請求書の訂正や調整を行うために発行されます。
貸方票は通常、企業間 (B2B) 取引で使用されます。貸方票の用途は複数あります。また、さまざまな機能を備えており、会計やカスタマーサービスのプロセスで用いられます。事業運営、財務、会計に携わる場合は、それらの機能を理解しておく必要があります。貸方票の主な機能と目的を以下にご説明します。
請求上の誤りの修正
貸方票は主に、過剰請求や未提供の商品・サービスへの請求など、請求上の誤りを修正する目的で用いられます。誤りを発見した企業は、貸方票を発行して元の請求書の金額を調整します。これにより、実際の取引額を財務記録に反映し、会計記録との整合性を維持できます。返品・返金への対応
欠陥、不満、誤発送などを理由に顧客が商品を返品した場合、企業は貸方票を発行します。貸方票を用いて、企業が顧客に支払うべき金額に基づいて売掛金を調整します。企業はこの支払い額を将来の購入に利用できる割引券として発行することもできます。割引・控除の文書化
貸方票は、取引の実施後にその後の取引に適用される割引や金額調整を売り手が買い手に付与する場合に、それを文書化する目的でも使用されます。このような調整は、大量購入割引、プロモーションオファー、返品保証対象外の軽微な問題に対する補償などが理由で発生することがあります。顧客関係の維持
問題の発生を受けて貸方票を発行することで善意を示します。売り手が過ちを認め、その是正に取り組む姿勢を顧客に示します。このような取り組みは顧客満足度と公正さに対する売り手の取り組みを実証するものであるため、顧客関係の維持と強化につながります。在庫調整
貸方票は返品時の在庫管理に役立ちます。返品物を追跡し、それに応じて在庫水準を調整できるため、在庫水準と財務報告との整合性を保つことができます。規制遵守と記録保持
貸方票は規制遵守や会計監査に使用されます。監査人や税務当局が財務諸表の正確性を検証するための証跡となります。貸方票の詳細な記録を残すことで、企業は透明性の確保と財務報告基準への準拠を実証できます。柔軟な会計上の調整
顧客がサービスにわずかな不満を抱えている場合、全額調整ではなく、一部調整を適用できます。
借方票とは
借方票は貸方票と逆の目的で使われます。支払うべき金額が増加することを発行相手に伝え、その処理を行います。借方票の機能と働きについて概要を以下にご説明します。
過少請求の調整
価格、数量、計算の間違いによって商品・サービスの過少請求が発生した場合、新しい請求書を発行しなくても、借方票を発行して処理できます。借方票を用いることで、売り手の勘定に支払うべき金額を追加し、請求の不一致を是正できます。違約金・追加料金
企業は、料金や違約金を適用するために借方票を使用することがあります。たとえば、B2B 取引の売り手が引き渡しの遅延や仕様の不遵守によって契約条件を満たせなかった場合、買い手が違約金の借方票を発行することがあります。また、支払い延滞や未払いなどが発生した場合、支払いに関する契約上の義務や合意した条件を強制するため、借方票を用いて追加料金や違約金を適用することもあります。記録保持と法令遵守
借方票は、正確な財務記録を維持するために重要な役割を果たします。借方票は会計監査で用いる文書足跡となり、会計基準への準拠を確保します。正確な記録保持と財務報告を行うには、借方票を適切に管理することが重要です。明確な情報伝達の促進
借方票を用いることで、買い手と売り手の間で会計上の調整に関する情報を明確に伝達できます。借方票は会計上の調整の要請や処理を行う正式な方法の 1 つです。借方票による調整は明確なため、誤解を防ぐことができます。
借方票を用いることで企業は買掛金を正確に管理して、法令遵守を確保し、健全な顧客関係を維持できます。借方票は企業による金額調整の体系的かつ専門的な処理を可能にします。
企業にとって貸方票と借方票が重要である理由
貸方票と借方票は、企業が金銭取引や顧客関係を管理するために使用する重要なツールです。どちらも、社内の会計の正確性、規制遵守、顧客との効果的なコミュニケーションに大きな影響を与えます。貸方票と借方票は会計監査に使用する明確な文書足跡であり、企業による正確な勘定管理に役立ちます。
貸方票を発行する状況
貸方票を用いることで、正確な財務記録を維持したり、強力な顧客関係を育んだりできます。企業が貸方票を発行する一般的な状況を以下にご説明します。
請求上の誤り
価格の間違いや数量の事務的なミスに起因するクライアントへの過剰請求など、請求書に誤りがあった場合に貸方票を発行します。ミスを認め、請求額を修正するためのプロセスを開始します。これにより、会計の正確性を保ちながら、公正な請求業務に取り組む姿勢をクライアントに示すことができます。たとえば、単価 10 ドルの商品を 100 ユニット販売したものの、110 ユニット分の請求書を買い手に発行したとします。誤りに気付いた企業は、余分に請求した 10 ユニット分の貸方票を発行して、買い手への請求額を減らすか、買い手の口座に入金します。返品
欠陥、不満、注文ミスのためにクライアントが商品を返品した場合、貸方票によって請求額を調整し、クライアントの支払い残高を減らします。この場合、貸方票によって売上と在庫の記録が管理されるため、売上に対する利益を正確に追跡できます。たとえば、クライアントから不具合のために 200 ドルの商品が返品されたとします。企業は返品される商品の貸方票を発行し、将来の購入を相殺できます。サービスの不一致
提供したサービスがクライアントの期待や契約上の合意事項を満たしていないことがあります。そのような場合、貸方票を使ってサービスの請求額を調整できます。貸方票によって請求書を修正して、クライアントとの良好な関係を維持し、クライアントの懸念に素早く対応する姿勢を示すことができます。たとえば、サービス料金として 1,000 ドルを顧客に請求したものの、そのサービスが合意済みの基準に達していなかったとします。企業はその事実を認めたうえで、不一致を補償するための部分減額として 200 ドルの貸方票を発行します。販売後の価格調整
販売後に価格の調整が必要になる場合があります。たとえば、事後割引の提供や、得意顧客への特別な心遣いなどが挙げられます。貸方票を発行して、そのような価格調整を遡及的に適用します。そのため、最新の価格判断に応じてクライアントへの請求を公正に行うことができます。たとえば、商品の販売後、プロモーション割引を受ける資格があったものの適用されなかった旨を顧客から伝えられたとします。企業は貸方票を発行して割引を遡及的に適用し、顧客のアカウント残高を調整します。善意の調整
企業が善意の印として値引きや調整を提供することがあります。そのような場合に貸方票を発行することで、調整を正式に承認できます。たとえば、長年取引のある顧客から最近の購入品に対してわずかな不満を伝えられたとします。良好な関係を維持するため、善意の印として少額の貸方票を発行し、引き続きの利用を促します。
上記のシナリオからわかるとおり、会計の正確さから顧客関係の管理まで、貸方票は事業運営のさまざまな状況で重要な役割を果たします。貸方票はさらに、企業による倫理的慣行や顧客満足度への取り組みを実証するうえでも重要な役割を果たします。
借方票を発行する状況
借方票は財務勘定を調整するために使われます。借方票を発行する具体的な状況について以下にご説明します。
過少請求の修正
クライアントへの請求額が過少であると気付いた場合、借方票を使って誤りを修正できます。過少請求の原因としては、価格設定の誤り、計算ミス、一部サービスの請求漏れなどが考えられます。借方票を使って、クライアントに対して、請求金額が不足していたことを丁寧に伝えます。たとえば、計算ミスが原因でサービスに対するクライアントへの請求額が過少であったことに気付いたとします。1,200 ドルとすべきところ、元の請求書には 1,000 ドルと記載していました。その場合、借方票を発行して 200 ドルを追加し、請求額を訂正します。追加サービス・費用への請求
最初の請求後に想定外の費用が発生する場合があります。クライアントから追加の業務を求められたり、企業の側で予期せぬコストが発生したりといった場合です。借方票を発行することで、それらをクライアントのアカウントに請求できます。それにより、会計を適正かつ最新の状態に保てます。たとえば、サービスの実施後、当初の契約にはない追加業務をクライアントから依頼されたとします。そのために 300 ドルの追加コストが発生した場合、300 ドルの借方票を発行してクライアントの現在の請求書に追加します。販売後の価格調整
取引の成立後に請求額を変更できます。当初の合意よりも料金を値上げする必要がある場合、借方票を使って料金の値上げをクライアントに通知します。たとえば、契約書に、市場状況に応じて料金を調整できる旨の規定があるとします。市場状況によって料金を値上げする場合、新しい料金体系に基づく追加料金の借方票をクライアントに発行します。契約上の変更・違約金
契約書に、年間料金の値上げなど、後から請求額の調整を求める条項が記載されていることがあります。そのような請求額の変更を適用する場合、契約に基づく新しい料金について借方票を使って顧客に通知します。たとえば、合意済みの期限までにクライアントから支払いがなかったとします。契約の規定に従って 50 ドルの延滞手数料を課します。50 ドルの延滞手数料の借方票を発行して、クライアントの未払い残高に追加します。
借方票を発行することで、財務記録の正確性を確保しながら、クライアントが受けたサービス・商品への請求を訂正できます。
貸方票と借方票の比較: 主な相違点
貸方票と借方票はそれぞれ企業会計上の使用目的が異なります。両者の主な違いを以下にご説明します。
調整の方向
顧客による支払い金額を減らす必要がある場合、貸方票を発行します。通常は、過剰請求、返品、サービスの問題が原因で発生します。顧客による支払い金額を増やす必要がある場合、借方票を発行します。過少請求、追加料金、販売後の価格調整が原因で発生する可能性があります。発行理由
貸方票の場合は主に、過剰請求の修正、返品処理、不十分なサービスに対する調整を目的として発行されます。貸方票は将来の購入に対する減額の形で、「企業が顧客に借りがある」ことを伝える手段です。借方票の場合、過少請求の修正、取引後の料金追加、契約条件や料金変更による請求書の上方修正を目的として発行されます。財務諸表への影響
貸方票を発行した場合、企業から顧客への支払い義務が発生するか、顧客の未払い残高が減少するため、企業の売掛金勘定が減少します。貸方票により、顧客からの受取額が予定よりも減少します。一方で、借方票を発行した場合は売掛金が増加します。借方票は、顧客が支払うべき金額が当初予定した金額よりも増えることを示すものです。顧客関係の力学
貸方票の発行は多くの場合、過剰請求や不満への対応など、企業によるカスタマーサービスや公正さへの取り組みを反映しています。借方票の発行は標準的なビジネス慣行の 1 つですが、支払い金額が追加される理由を顧客が理解できるよう、明確に伝えることが求められます。社内の業務プロセス
返品やサービスの問題での発行など、貸方票の発行プロセスには多くの場合、カスタマーサービス部門や品質管理部門が関与します。一方、借方票の発行に際しては、特に過少請求や契約に関係する価格調整を処理する場合などには、営業部門や契約管理部門が多く関与します。
貸方票と借方票はどちらも請求額を調整するものですが、調整の方向や理由が異なります。それらの違いを理解することで、正確に会計を管理し、健全な顧客関係を維持できます。
貸方票と借方票の管理に関するベストプラクティス
貸方票と借方票を効果的に管理するには、正確な財務記録と健全な顧客関係を維持することが重要です。企業が考慮すべきベストプラクティスを以下にご紹介します。
明確な記録と正当な理由
どの貸方票と借方票にも文書による裏付けが必要です。すなわち、元の取引、調整理由、調整に関する顧客とのやり取りを詳しく記録することが求められます。貸方票・借方票の正当な理由を裏付けることで、不審請求の申請や監査の際に簡単に参照できます。適時な発行と処理
貸方票・借方票の発行と処理を適切なタイミングで行います。発行が遅れると混乱を招いたり、財務報告に影響を与えたりする可能性があります。良好な顧客関係を維持するには貸方票を速やかに処理することが求められます。特に返品に関する場合は重要です。借方票の場合、速やかに発行することで追加料金を素早く回収できます。正確な帳簿記入
貸方票は収入や売掛金勘定の減少を反映したもので、借方票はそれらの増加を反映したものです。正確な帳簿記入を行うには、企業の正確な財務状態を財務諸表に記録する必要があります。顧客との効果的なコミュニケーション
貸方票・借方票の発行理由、顧客のアカウントが受ける影響、顧客が行う必要がある作業について説明します。適切なコミュニケーションを行うことで誤解を防ぎ、信頼を保つことができます。会計システムとの連携
貸方票・借方票を自社の会計システムで処理できるようにすると、管理の効率化に役立ちます。自動システムを利用すると、発行や処理のお知らせを送付したり、貸方票・借方票による調整を財務諸表に反映したりできます。定期的な監査とレビュー
貸方票・借方票の取引のレビューと監査を定期的に行います。誤りの発見、顧客の懸念の理解、会計基準やポリシーへの準拠に役立ちます。担当者向けのトレーニングとガイドライン
担当者には、貸方票・借方票の処理に関する十分なトレーニングを実施する必要があります。貸方票・借方票を発行するタイミングや方法についての明確なガイドラインを作成するとともに、顧客とのコミュニケーションや記録保持に関するトレーニングを実施することで、ミスを減らし、効率を向上させることができます。秘密保持
機密性の高い顧客情報を取り扱うときは秘密保持が重要となります。企業と顧客を保護するため、貸方票・借方票とそれらに記載されるデータを適切なセキュリティの下で処理します。
企業向け貸方票テンプレート
貸方票のテンプレートを以下にご紹介します。明確で実践的な書式となっており、顧客に対して、すべての必要な情報を効果的に伝えられます。企業固有の情報や個々の状況に合わせてカスタマイズできます。
[会社名]
[会社の住所]
[郵便番号 / 都道府県 / 市区町村]
[電話番号] | [メールアドレス]
貸方票
日付: [発行日]
貸方票番号: [一意の貸方票 ID]
発行先:
[顧客名]
[顧客の住所]
[郵便番号 / 都道府県 / 市区町村]
リファレンス:
元の請求書番号: [元の請求書 ID]
元の請求書の日付: [元の請求書の日付]
貸方票の詳細:
アイテムの説明
|
数量
|
単価
|
合計額
|
---|---|---|---|
[アイテムまたはサービス] | [数量] | ¥[単価] | ¥[合計額] |
[追加のアイテム] | [数量] | ¥[単価] | ¥[合計額] |
貸方総額: | ¥[合計] |
貸方の発生理由:
[過剰請求、商品の返品、不十分なサービスなど、貸方票の詳しい説明を入力してください。]
補足説明:
[貸方の適用方法 (例: 将来の購入での減額) や事後措置など、他に関連情報や説明がある場合は記載してください。]
承認者: [承認者の氏名と役職]
問い合わせ先情報:
[貸方票に関する顧客の問い合わせを受け付ける連絡先情報を記載してください。]
[会社名]
企業向け借方票テンプレート
借方票のテンプレートを以下にご紹介します。このテンプレートを使うことで、顧客に対して、追加の料金や調整について効果的に伝えることができます。企業の詳細や固有の情報に応じてカスタマイズできます。
[会社名]
[会社の住所]
[郵便番号 / 都道府県 / 市区町村]
[電話番号] | [メールアドレス]
借方票
日付: [発行日]
借方票番号: [一意の借方票 ID]
発行先:
[顧客名]
[顧客の住所]
[郵便番号 / 都道府県 / 市区町村]
リファレンス:
元の請求書番号: [元の請求書 ID]
元の請求書の日付: [元の請求書の日付]
借方票の詳細:
アイテムの説明
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数量
|
単価
|
合計額
|
---|---|---|---|
[アイテムまたはサービス] | [数量] | ¥[単価] | ¥[合計額] |
[追加のアイテム] | [数量] | ¥[単価] | ¥[合計額] |
借方総額: | ¥[合計] |
借方の発生理由:
[過少請求、別サービス・商品の追加料金、販売後の価格調整など、借方票の詳しい説明を入力してください。]
補足説明:
[支払い期日、追加金額の決済方法、事後措置など、他に関連情報や説明がある場合は記載してください。]
承認者: [承認者の氏名と役職]
問い合わせ先情報:
[借方票に関する顧客の問い合わせを受け付ける連絡先情報を記載してください。]
[会社名]
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。