顧客のニーズや興味がどのように進化しているかなど、スタートアップのトレンドを理解することは、大きなビジネスチャンスの発掘につながります。新しい会社の設立を検討している場合でも、現在のベンチャー事業を再考している場合でも、トレンドを常に把握しておくことで、より賢明な意思決定を行い、ビジネスを成功に導くことができます。今後起き得ることを頭に入れておくことで、臨機応変な戦略調整も可能になります。
本記事では、人工知能 (AI) の力や顧客の期待の変化などを背景に、2025 年に注目すべきスタートアップのトレンドを見ていきます。これらのトピックを抑えておくことで、会社の現状について客観的に考え、業界の発展や世界的な出来事に基づいて将来のトレンドを予測することができます。
本記事の内容
- スタートアップ分野に影響を与える 2025 年の巨大グローバルトレンド
- 生成 AI と自律テクノロジー
- 分散型金融 (DeFi) と金融テクノロジー (フィンテック)
- 物流・製造革新
- ハイパー・パーソナライゼーション
- 気候テクノロジーとサステナブル製品
- バーティカル SaaS と業界ソリューション
- 新たな Web3 ユースケース
- 就業トレンド:ハイブリッドワークからタレントマーケットプレイスへ
- オンデマンドビジネス
- コンシャス・コンシューマリズムとエシカルビジネス
スタートアップ分野に影響を与える 2025 年の巨大グローバルトレンド
過去数年間、スタートアップは新しい技術や注目のある分野に反応して立ち上げられる傾向にありました。しかし、2024 年現在では、働き方、消費手段、つながり方の大きな変化に対応するスタートアップが多く誕生しています。新しい製品の用途に可能性を見出すだけではもはや十分ではありません。スタートアップの起業家らは、現在の環境に対応するためにセクター全体を再構築する必要があることに気づいています。
急速に変化する環境により、スタートアップ企業はより機敏に未来を見据え、グローバルな課題に対応する準備を整えることを余儀なくされています。サプライチェーンの問題、地政学的な緊張、気候危機などの世界的な混乱は、予期せぬ形でイノベーションを刺激する結果となりました。スタートアップ企業は、AI 物流、製造の現地化、ブロックチェーンソリューションなど、より強力な適応型システムを構築しています。
また、これらのトレンドは、顧客の期待を変化させることにもつながっています。人々は今やリアルタイムのハイパー・パーソナライゼーション体験を求めており、消費行動において、エシカル、サステナブル、透明性の側面を重視しています。広範で画一的なソリューションの時代は終わりを迎えつつあります。スマートで、ビジネスとともに成長できるテクノロジーを備えた、特化需要に対応できるスタートアップが今日では新たなフロントランナーとして台頭してきました。持続可能性ももはやニッチな関心事ではなく、規制と購入動機の両方において重要な考慮事項となっています。
今日、スタートアップはトレンドを追いかけると同時に、トレンドを生み出しています。業界間の境界線は曖昧になりつつあり、レジリエンス、パーソナライゼーション、サステナビリティに対する世界的なニーズが発展を後押ししているのが現状です。2025 年に向けて、これらのトレンドの一つ一つがスタートアップの未来を形作る上で大きな役割を担うことでしょう。
生成 AI と自律テクノロジー
生成 AI は、マーケティングから医療まで、幅広い分野で可能性を再定義しています。スタートアップ企業は、自動化のためだけでなく、パーソナライゼーション、効率性、予測機能の向上を推進するために AI を活用しています。世界の AI 市場は、アメリカがその最大シェアを占めており、2024 年から 2030 年にかけ、市場全体で年平均成長率約 30% の水準で推移することが予想されています。AI 技術を活用するスタートアップは、どのセクターにおいても、イノベーションのその先をリードし、より速く、より効果的で、よりスマートな業務を実現することに期待が寄せられています。この項目では、このような変革が起きている理由を詳しく探っていきます。
クリエイティブ・オペレーション分野における生成 AI
コンテンツ制作、製品設計、顧客エンゲージメントの分野において、スタートアップ企業が多くのユーザーに高度にカスタマイズされた体験を提供するために、今後、プロトタイピングやパーソナライズ・マーケティングといったタスクの処理がますます AI に一任されることが予想されます。AI が生成する商品レコメンドや、個々の顧客に合わせたマーケティングアセットは、人間の力では太刀打ちできないスピードと規模で提供されます。
自律型物流
物流スタートアップは、コスト削減と配送時間の短縮を実現するために、AI 主導の車両管理、自律型倉庫、配送ドローンの導入に向けて動いています。リアルタイムのルート最適化と予測在庫管理により、スタートアップ企業は無駄を最小限に抑え、耐久力と適応性の高い運用を可能にしています。
製造業における AI とロボティクス
自律型ロボットは手作業の必要性を減らし、生産精度を高める要員として機能します。スタートアップ企業は、AI を活用してメンテナンスのタイミングを把握しつつ、品質管理を自動化し、組み立てプロセスを改善しています。この技術により、小規模メーカーは従来の数分の一のコストで高品質の製品生産が可能になり、既存の企業と競争することができます。
分散型金融 (DeFi) と金融テクノロジー (フィンテック)
分散型金融は、従来のビジネスモデルを根底から覆す分野として確立しつつあります。この現象は特に新興市場で当てはまり、金融の独立性やアクセスのしやすさが人々の資金運用の在り方を変えています。DeFi 市場は、2024 年から 2029 年にかけて年平均成長率約 11% の水準で推移すると予想されています。後払い (BNPL) の決済手段も、埋込型金融ソリューションの改良と発展に力を入れているフィンテックスタートアップの貢献もあって世界中で成長が見込まれ、今より一般的な決済手段になるものと思われます。
DeFi とフィンテックを取り入れたスタートアップは、従来の銀行業務を再構築し、個人がグローバルに送金、貸付、決済するためのまったく新しい方法を生み出しています。DeFi による従来銀行システムの破壊は、2025 年にさらに進むことが予想されており、この変革の最前線にはフィンテックスタートアップが立ちます。DeFi とフィンテックの発展が社会の在り方をどう変えたか、以下で詳しくご紹介していきます。
DeFi の拡大
昨今のスタートアップは、DeFi とブロックチェーン技術を利用し、銀行などの従来の仲介者を必要としない分散型金融システムの構築に勤しんでいます。この取り組みにより個人は、ピアツーピアの融資プラットフォームや分散型取引所を通じて、安価な手数料で資産の貸し借りや取引を行えます。従来の銀行へのアクセスが制限されている新興市場では、2025 年、この傾向が勢いを増すと予想されています。DeFi は、新たな次元の金融包摂を生み出すだけでなく、個人が自らの資金と金融プライバシーをより適切に管理することを可能にします。
ブロックチェーン融資
ブロックチェーン融資も人気が高まっている分野のひとつです。ブロックチェーン融資では、スマートコントラクトにより、安全でトラストレスな取引が保証されます。スタートアップは、借り手が信用調査や長い承認プロセスといった従来の障壁なしに融資を利用できるプラットフォームを開発しています。このようなプラットフォームは、デジタル資産を担保として認めることで顧客に新たな流動性をもたらしており、クレジット市場の再構築に寄与しています。
埋込型金融および BNPL
金融サービスを非金融プラットフォームに直接連携させる埋込型金融も成長トレンドのひとつです。後払い (BNPL) ソリューションを洗練し、ヘルスケア、旅行、教育などの分野に新しく利用を拡大させています。近年のフィンテックスタートアップは、決済ソリューションを小売業やサービス業のプラットフォームに直接組み込むようにしています。
物流・製造革新
地政学的な緊張、気候変動、パンデミックの影響による世界的なサプライチェーンの混乱により、物流および製造業界においてスタートアップは、新しいソリューションの創出を迫られています。現在は、強靭で柔軟なサプライチェーンの構築というテーマに投資家の関心が集まっているため、物流テクノロジーやサプライチェーン管理を専門とするスタートアップに多くのベンチャーキャピタルからの投資が集まることが期待されています。この項目では、以下で挙げるような問題に対し、スタートアップが 2025 年どのように対処し得るかについて考察します。
スマート・マニュファクチャリング
スタートアップは、AI、ロボティクス、IoT (モノのインターネット) ソリューションを導入して生産性を向上させるスマート・マニュファクチャリングを進めています。AI ベースのシステムは、工場のパフォーマンスに関するリアルタイムデータを監視し、メンテナンスのタイミングを予測し、品質管理プロセスを自動化してダウンタイムを最小限に抑え、生産性を向上させることができます。これらの技術を活用することにより、小規模な製造スタートアップは無駄を省きつつ生産精度を高め、既存の先進企業と競争できるようになります。
AI による在庫管理
グローバルサプライチェーンにおける大きな難問のひとつに、需要の変化の見極めづらさが挙げられます。この問題に対応するスタートアップは、需要を予測し、在庫レベルを改善し、過剰生産を抑制する AI ベースの在庫管理システムを開発しています。この AI システムは、サプライヤー、メーカー、小売業者から提供されるリアルタイムデータを用いて、製品不足や在庫過剰を極限まで回避するシナリオ予測をモデル化します。
サプライチェーンの透明性
顧客も企業も同様に、特に持続可能性や倫理的な調達に関して、サプライチェーンの透明性の向上を求めています。スタートアップは、ブロックチェーンソリューションを利用し、追跡可能で透明性の高いサプライチェーンを生産と流通の検証可能なあらゆる段階で構築しています。このテクノロジーは、食品、ファッション、電子機器など、トレーサビリティによって顧客の信頼を築き、同時に規制遵守を確保している業界にとって特に必要なものです。
ハイパー・パーソナライゼーション
2025 年には、ハイパー・パーソナライゼーションが顧客の嗜好を考えるうえでの最優先事項になると思われます。顧客は現在、特定のニーズ、習慣、嗜好にリアルタイムで合わせられる体験や商品を求めています。企業はこれに応えるために、従来のセグメンテーションモデルを超えて、マイクロセグメントや独自のプロファイリングに取り組んでいます。スタートアップはリアルタイムデータを用いて、各個人に合った製品提案、ランディングページ、価格戦略を構築しています。そのイノベーションの内容を詳しく見てみましょう。
e コマースおよび予測アルゴリズム
近年の e コマースプラットフォームは、よりスマートに進化を遂げています。スタートアップは AI と予測アルゴリズムを活用し、顧客が深層的に何を求めているかの予測に注力しています。これを応用するプラットフォームは、購買行動、閲覧パターン、過去の購入履歴を分析して、顧客の好みに合った商品を提案します。商品の在庫が少なくなると在庫の補充を促してくれるオンラインショップや、地域で流行しているものに基づいてショッピング体験をキュレーションしてくれるオンラインショップはその好例です。
データドリブンなパーソナライゼーション
スタートアップも、データドリブンなパーソナライゼーションの改善に力を入れています。AI を利用して顧客データを個人レベルで分析することにより、企業はメールマーケティングや商品レコメンドなど、あらゆるサービスを顧客一人ひとりに合った適切な方法でカスタマイズすることができます。プラットフォームは、各顧客のライフスタイルやプラットフォームでの過去の行動を反映したコンテンツやプロモーションを提供することで、顧客のエンゲージメントを高め、ブランドロイヤリティを確立しています。
気候テクノロジーとサステナブル製品
2025 年は環境問題がさらに懸念されるとの見方が強まっていますが、一方でこれは、気候テクノロジーとサステナブル製品を扱うスタートアップが大きな成長を遂げるチャンスでもあります。世界の気候テクノロジー市場は、エネルギー、廃棄物管理、サステナブル製品などの地球環境課題に対する柔軟なソリューションが牽引する形で、2023 年から 2033 年にかけて年平均成長率約 25% の水準で成長すると予測されています。この分野でもいま、大きな変化が起きています。
グリーンテックスタートアップ
クリーンエネルギーと廃棄物削減に焦点を当てるスタートアップは、多くの国の政府の支援を受けながら成長を遂げています。エネルギーテックスタートアップは、高度なソーラーパネル、エネルギー貯蔵システム、マイクログリッドなど、より効率的な再生可能エネルギーソリューションの開発に取り組んでおり、地域に根差した回復力のあるエネルギーネットワークの確立に貢献しています。廃棄物管理の分野では、AI を活用してリサイクルプロセスを改善し、埋め立て地への依存を減らしています。カーボンオフセットを掲げるスタートアップは、ブロックチェーンに裏打ちされたカーボンクレジットシステムのほか、森林再生や湿地再生などのネイチャーベースソリューションを通じて、顧客や企業による二酸化炭素排出量の相殺を支援しています。
循環型経済原則
循環型経済とは、再生利用、リサイクル、および同様のサステナビリティ活動に基づく生産モデルのことで、今や一般化しつつある概念です。スタートアップは、グリーンウォッシング (サステナビリティ活動について見せかけの印象を与えること) を克服し、真に環境に優しい代替案を生み出すことに力を入れています。垂直農法を手がける企業は、輸送時の排出量を削減しつつ、生鮮食品を手軽に購入してもらえるよう、都市部で地元の無農薬野菜を生産しています。ゼロウェイスト包装も成長分野のひとつに数えられており、食品からファッションに至るまで、あらゆる商品やサービスに向けて包装ソリューションを開発するスタートアップが誕生しています。このソリューションには、生分解処理、堆肥化処理、再利用処理の条件が可能性として求められます。これらの環境に優しい代替品を採用するブランドは、顧客と投資家の両方から注目を集めています。
バーティカル SaaS と業界ソリューション
B2B の SaaS スタートアップは、幅広いユーザーを対象とした全方向的な SaaS 製品から、法律、農業、ヘルスケアなどのニッチ市場向けに設計された業界固有のソリューションであるバーティカル SaaS へと開発の舵を切っています。各業界がより専門的なソリューションを求める中、細部まで業界に特化した製品・サービスを提供するスタートアップは、こうした市場のニーズに応え、無くてはならないパートナーとしての地位を確立しています。この分野の変遷を以下で詳しく見ていきましょう。
業界固有のカスタマイズ
バーティカル SaaS は、特定のセクターの特定のニーズに対応する、細部まで練られたカスタマイズソリューションです。このソリューションには、各業界のワークフローに合わせて特別に設計された機能や、業界の技術や設備と統合し、規制に準拠するソフトウェアなどが含まれます。たとえば、医療テクノロジーの分野では、医療データのコンプライアンス基準 (HIPAA など) を満たし、患者ケアワークフローの整ったプラットフォームがバーティカル SaaS のスタートアップによって構築されており、電子カルテ (EMR) の連携が実用化されています。法務テクノロジーの分野では、スタートアップがコンプライアンスツール、ケース管理システム、請求自動化を組み込んだプラットフォームを構築しています。アグリテックの分野では、農機との連携、作物の収量分析、土壌状態のリアルタイム監視といったソリューションが SssS 企業によって生み出されています。
専門機能と成長性
バーティカル SaaS の応用により、スタートアップは、高度に専門的な問題に対処する、ユーザーターゲットを絞った機能を構築できます。特定の市場に焦点を当てることで、スピーディーに市場展開できるだけでなく、より良い顧客サービスと深い業界知識の提供が可能になります。関連機能を開発したり、隣接する垂直分野に進出したりすることで、セクター内で事業を拡大することができます。
新たな Web3 ユースケース
Web3 がさらに成長を続ける中、分散型技術を活用するスタートアップは、当初想定していた仮想通貨の利用枠組みを広げ、デジタル本人確認から分散型マーケットプレイスまで、より実用的で現実的なユースケースにブロックチェーン技術を応用しています。Web3 スタートアップは、従来システムを破壊する一方で、分散型技術の可能性の限界を押し広げる新しいビジネスモデルを創造し、エンタメ、不動産、ゲーミングなどの分野に大きな変化をもたらしています。ここでは、Web3 が現在どのような進化をたどっているかを詳しく見ていきます。
デジタル本人確認プラットフォーム
昨今、個人が政府や大手テクノロジー企業といった中央集権的な機関に頼ることなく、自らの ID や個人情報を管理できるプラットフォームがスタートアップによって開発されています。デジタル本人確認は、パスワード利用やサードパーティー認証を介することなく、安全なログイン、検証、サービスアクセスを可能にします。これにより、ユーザーはプライバシーを保ったまま自身のデータを所有することができます。SelfKey や Civic などのプラットフォームは、個人情報管理の分散型サービスを提供する、この分野におけるパイオニア的存在です。
分散型ソーシャルネットワーク
従来のソーシャルメディアプラットフォームは、データプライバシー、コンテンツ管理、アルゴリズム操作の問題について批判されることがよくあります。Web3 スタートアップは、ユーザーが自らのコンテンツを所有し、コミュニティがプラットフォームのルールを管理できる分散型ソーシャルネットワークを開発しています。これらのプラットフォームはブロックチェーン上に構築されているため、透明性とユーザーコントロールが向上します。たとえば、Lens Protocol では、ユーザーはプラットフォームのアルゴリズムを使用することなく、自身のソーシャルグラフ (ユーザー同士の関係情報) を管理することが可能です。
NFT を利用した会員プログラム
非代替性トークン (NFT) は現在、アートやコレクター品の枠を超えてその種類を広げています。スタートアップの中には、NFT を利用した会員プログラム (会員限定のコンテンツ、イベント、コミュニティのアクセス提供) を手がける企業も現れています。これらの NFT は、購入、販売、譲渡が可能なデジタルメンバーシップとして機能し、企業の新しい収益源にもなります。たとえば、興行分野では、コンサートや映画のチケット販売に NFT を用いることで、デジタルチケットや VIP 予約を証明できるようになるため、そのような利用が一般化されつつあります。また、Tokenproof などのスタートアップは、ユーザーに個人情報の共有を求めることなく NFT でメンバーシップや所有権を確認するソフトウェアを開発しています。
不動産
不動産分野では、Web3 スタートアップによる不動産所有権のトークン化が実用化されています。各個人は、不動産株式をトークンとして購入・取引し、部分所有権投資を通じて柔軟な不動産投資を行えるようになります。Propy などのプラットフォームは、NFT を用いた不動産売買が可能な分散型不動産市場を構築しています。
ゲーミング
ゲーミング分野では、分散型プラットフォームの登場により、プレイヤーがスキンや武器などのゲーム内資産を真に所有し、ブロックチェーン技術を利用して異なるプラットフォーム間で取引または販売できるようになりました。Axie Infinity や The Sandbox はその代表的な例であり、プレイヤーは現実世界で獲得した NFT をプラットフォームで取引できます。
就業トレンド:ハイブリッドワークからタレントマーケットプレイスへ
スタートアップは、ハイブリッドワーク、タレントマーケットプレイス、フラクショナルワーク (複数の雇用主の下パートタイムで働く勤務形態) に対応する創造的なソリューションで、新たな労働力課題を解決しています。従来の 9 時から 17 時までの勤務形態が廃れつつある中、そのワークスタイルの変化に合わせられるプラットフォームやサービスを企業や労働者向けに構築しています。近年、新たに人気を集めているソリューションを一部ご紹介します。
ハイブリッドワークソリューション
ハイブリッドワークは、今後も続くことが予想される慣行です。スタートアップは、オフィスワークとリモートワークで兼務するチームを企業が適切にマネジメントできるような製品を開発しています。オフィス勤務日の設定からリモート共同作業の管理まで、あらゆる業務を処理できるプラットフォームが開発されています。Envoy や OfficeTogether などのスタートアップは、企業のハイブリッドワークの管理を支援し、Tandem などのプラットフォームは、分散型チームのリアルタイム作業を遂行させることに重点を置いています。どちらのケースも焦点は、柔軟性と、従業員がどこにいても企業が効果的に運営できるようサポートすることにあります。
タレントマーケットプレイスおよびフラクショナルワーク
また、スタートアップは、フリーランス、パートタイム、フラクショナルワーカーと専門的なスキルを必要としている企業をつなげる人材プラットフォームの勃興にも寄与しています。従来の短期契約モデルから、より戦略的でスキル重視の雇用モデルへとギグエコノミーも進化しているのです。この分野では Upwork や Turing といったプラットフォームの活躍が目立ちますが、よりニッチなマーケットプレイスでは、テクノロジー、法律、デザインなどの特定の分野に特化したエクスペリエンスが提供され始めています。
従業員ウェルネスおよび生産性ツール
ハイブリッドワークは、従業員のエンゲージメントと健康を維持するという点において新たな課題をもたらしました。近年では、Calm や Headspace などのアプリが一部の企業のウェルネスプログラムに組み入れられたり、Notion や Monday.com がチームの足並みを揃え、生産性を維持するためのプロジェクト管理ソリューションとして利用されていたりします。これらのプラットフォームは、メンタルヘルスや燃え尽き症候群をケアしつつ生産性を押し上げることを目指して発展を続けています。
オンデマンドビジネス
2025 年は、即時の満足感を求める消費者の需要により、多くの企業が従来のサービス提供モデルを見直すよう促される可能性があります。顧客はサービスにスピード感を求めており、スタートアップはそうしたニーズを満たす独創的なソリューションの提供に努めています。
顧客はよりスピーディーで、より便利な体験を望んでいるため、物流、決済、顧客サポートを即座に強化できるスタートアップは、他社との競争において大きなアドバンテージを持ちます。ここでは、この分野ですでに起きている動きをいくつかご紹介します。
ダークストア
オンデマンドエコノミー (商品やサービスを顧客がすぐに利用できる経済) における大きな変化のひとつに、ダークストアの躍進が挙げられます。ダークストアとは、オンライン注文に迅速に対応できる小規模な拠点倉庫のことをいいます。従来の小売店や大規模なフルフィルメントセンターとは異なり、ダークストアは在庫システムと AI を活用したロジスティクスで、1 時間以内に商品を梱包して配送できるよう最適化されています。Getir や Gopuff などの企業は、数日ではなく分単位で食料品や家庭用品を配達するサービスに特化しています。牛乳パックであろうと、急な夕食の材料であろうと、早急に商品を欲している顧客のニーズにこれらのスタートアップは応えます。
即時決済サービス
B2B の分野では、スタートアップが決済処理の在り方に革命を起こしています。DailyPay や Earnin などの即時決済を専門とするスタートアップは、従来利用されていた隔週払いの代わりに、リアルタイムで給与を受け取れる仕組みを整えています。ギグエコノミーにおいて、また日々の出費に困っている時間給労働者にとって、これはまさに革新的な出来事といえます。また、即時決済の需要は、スタートアップによるスムーズで迅速な決済インフラの構築を後押しし、企業からベンダー・従業員への迅速な支払いを促進しています。
オンデマンド医療
Zocdoc、Heal といったスタートアップは、患者が診療予約や往診を依頼できるオンデマンドのヘルスケアサービスを提供しています。これらのスタートアップは、予約待ちが大きな課題となっている現代において、患者がすぐに治療を受けられるようにするための仕組みづくりに貢献しています。遠隔医療の技術も急速に発展しており、診療所での長い待ち時間を省略できるようなバーチャル診察サービスを提供するスタートアップも現れてきています。
コンシャス・コンシューマリズムとエシカルビジネス
2025 年、スタートアップにとってのコンシャス・コンシューマリズムは、持続可能性、倫理的労働、透明な調達活動、フェアトレード慣行を見直すきっかけを与える、一段と強力なトレンドになる見込みが高いです。顧客は、支持するブランドに対して多角的に責任を負うことを求めており、また価値観に見合う支出を望んでいます。
コンシャス・コンシューマリズムが拡大し続ける中、倫理的慣行を優先し、収益獲得と真のソーシャルインパクトを結び付けられるスタートアップは、より大きな成功を収められる可能性があります。ここでは、スタートアップがこれらの要素をどのように組み合わせているかを詳しく見ていきます。
倫理的な労働慣行と公正な取引
倫理的な労働慣行に取り組むスタートアップは、顧客が自らの購買行動によって世界の労働者に与える影響を自覚するようになるにつれ、人気を博す可能性を秘めています。企業は特にファッション、食品、技術開発の分野において、フェアトレード認証の取得と労働者への生活賃金の支払いに重点を置いています。たとえば、Allbirds は、サステナブル素材の利用と、サプライチェーン全体にわたる労働者の公正な扱いを軸にブランドを築き上げてきました。顧客は、倫理観を重んじるブランドを積極的に求めており、公正な労働慣行へのコミットメントを表明しているスタートアップには、忠実なファンがつく傾向にあります。
透明な調達
商品の産地・出所を正確に知りたい顧客にとって、透明性は無視できないものになりつつあります。スタートアップの中には、ブロックチェーン技術やその他のデジタルツールによる追跡で、原材料の供給元からサプライヤーの労働慣行に至るまで、サプライチェーンのすべてを顧客が確認できるようにしている企業も存在します。透明性をコアバリューに据えているスタートアップは、顧客との関係強化に力を入れていることが窺えます。
ソーシャルグッド
収益性を損なわないまま、ソーシャルグッドをビジネスモデルに直接組み込むスタートアップが今では多く見られます。その企業が利益と目的の両立を実現できていることを示す B Corp 認証は、企業にとって需要の高いステータスになりつつあります。これらの企業は、労働慣行、環境配慮、企業統治など、倫理を追求する上で経済的成功の犠牲は必要ないということを実証しています。実際、倫理観を重んじるスタートアップそのものが、価値観に沿った商品への支出を厭わない顧客層を拡大する要因となっています。
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