SEPA ダイレクトデビット: 徹底ガイド

  1. はじめに
  2. SEPA ダイレクトデビットの利用地域
    1. 市場の背景と利用者の動向
    2. SEPA 諸国の規制状況
  3. SEPA ダイレクトデビットの利用者
  4. SEPA ダイレクトデビットの仕組み
    1. SEPA ダイレクトデビットの種類
    2. ビジネスとしての SEPA ダイレクトデビットの利用
  5. SEPA ダイレクトデビットを受け付ける企業側のメリット
  6. SEPA ダイレクトデビットのセキュリティ対策
  7. 企業が SEPA ダイレクトデビットの受け付けを開始するための要件
  8. SEPA ダイレクトデビットの代替手段

単一ユーロ決済圏 (SEPA) ダイレクトデビットとは、欧州連合域内や加盟国間における自動継続支払いの利用を促進する、通知遅延型の決済手段です。SEPA ダイレクトデビットは、国境をまたぐユーロ決済を国内での決済と同じくらい簡単に行えるようにするための広範な取り組みの一環であり、体系的な規則と保護が適用されます。

SEPA ダイレクトデビットには、コアと B2B の 2 種類があります。コアは一般的な利用者取引向けで、B2B は企業間取引向けです。SEPA ダイレクトデビット決済では、利用者が企業に支払いの回収を許可するとともに、企業の銀行による支払額の引き落としを許可するよう指示します。

SEPA ダイレクトデビットを利用すると、SEPA 域内の越境取引をはじめとして、公共料金やサブスクリプションといった継続支払いを簡単に行えるようになります。これを理由に、SEPA ダイレクトデビットは多くの人たちから選ばれています。SEPA ダイレクトデビットは一貫性のある一元的な決済管理手段で、企業は異なる国の間で複数の決済を設定する手間を軽減できます。

SEPA ダイレクトデビットは主に欧州で利用されており、承認を得ることで企業は利用者の銀行口座から支払いを回収できるようになります。SEPA (単一ユーロ決済圏) には、EU 加盟国のほか、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイス、モナコが含まれます。SEPA の取り組みは、欧州銀行業界の意思決定・調整機関である欧州決済協議会 (EPC) が立ち上げたものであり、ユーロを用いた銀行振込の効率化を目的としています。SEPA は、標準化された、高品質で効率的な欧州決済市場の構築を目指しています。SEPA ダイレクトデビットは、その壮大な取り組みの一環として 2009 年に導入されたものです。欧州決済協議会によると、導入以来、SEPA ダイレクトデビットの普及は着実に進んでいます。2022 年の下半期を見ると、ユーロ圏内での口座引き落とし件数は同上半期と比較して 107 億件に増加し、総額は 14.4% 増加して 4.4 兆ユーロでした。

ここでは、欧州内外を拠点とする企業が欧州の利用者向けの決済手段として SEPA ダイレクトデビットの利用を考える場合に、知っておくべき事項についてご説明します。

この記事の内容

  • SEPA ダイレクトデビットの利用地域
  • SEPA ダイレクトデビットの利用者
  • SEPA ダイレクトデビットの仕組み
  • SEPA ダイレクトデビットを受け付ける企業側のメリット
  • SEPA ダイレクトデビットのセキュリティ対策
  • 企業が SEPA ダイレクトデビットの受け付けを開始するための要件
  • SEPA ダイレクトデビットの代替手段

SEPA ダイレクトデビットの利用地域

SEPA ダイレクトデビットの利用地域は単一ユーロ決済圏です。これには、欧州連合の全加盟国のほか、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイス、モナコが含まれます。36 か国からなる単一ユーロ決済圏には欧州の大部分が含まれており、SEPA の統合決済システムは多種多様な経済・銀行システムに対応しています。SEPA ダイレクトデビットを利用する一番のメリットは、簡単で画一的な越境取引の実現を促進できることです。

市場の背景と利用者の動向

これらの市場で SEPA ダイレクトデビットが採用されている背景には、次のような重要な動向が存在しています。

  • 利便性を重視する利用者
    SEPA 域内の利用者は、特にサブスクリプションや請求書などの継続支払いで、効率性が高く手間のかからない決済手段を好む傾向にあります。SEPA ダイレクトデビットの委任設定では、わずかな手間で複数の継続取引を設定できるため、このような利用者の要望に応えることができます。

  • 業務効率の向上
    企業からすると、SEPA ダイレクトデビットには、システムの統合により欧州域内のクロスボーダー決済を効率化できるというメリットがあります。SEPA を導入しない場合は、各国の決済システムに対応しなければならず、多くの場合、その対応にはコストや時間がかかります。この画一的なシステムを導入することで、そのような管理上の負担が軽減され、越境取引を簡単に実現できます。

  • デジタル決済の採用
    欧州では、デジタル決済ソリューションの普及が目に見えて進んでいます。SEPA ダイレクトデビットは、合理化された安全なデジタル決済手段を提供することでキャッシュレス決済への移行に対応し、利用者や企業による電子決済の利用を促進しています。

SEPA 諸国の規制状況

SEPA ダイレクトデビットの導入と成功を目指すにあたっては、SEPA 地域における規制の枠組みが重要なカギとなっています。具体的には次のようなものが挙げられます。

  • EU の単一市場目標
    欧州連合は単一市場の創設を目標に掲げており、これが、越境取引・コマースの障壁を取り除く統合決済システムである SEPA の実現を推し進めました。

  • 消費者保護に関する規制
    SEPA ダイレクトデビットは、消費者保護を優先する厳格な規制の下で管理されています。たとえば、不正な取引が発生した場合、利用者は返金を求める権利を行使できます。そのような規制を設けることで、決済手段に対する利用者からの信頼と信用を高めています。

  • 標準化とセキュリティ
    規制措置は、決済プロセスの標準化とセキュリティの強化にも重点を置いています。これにより、複数の国にまたがる取引の効率化を実現しながら取引の安全性を確保しており、利用者や企業との信頼関係を築いています。

SEPA ダイレクトデビットの利用者

SEPA ダイレクトデビットは、SEPA 全域で広く採用されています。さまざまな業界で広く利用されていることから、SEPA ダイレクトデビットの利便性の高さ、導入の容易さ、そして欧州市場で信頼を獲得していることが分かります。SEPA ダイレクトデビットの主な利用者は次のとおりです。

  • E コマース企業
    E コマース企業は、越境取引を効率的に処理できるため、SEPA ダイレクトデビットを利用しています。特に、利用者が定期的な引き落としを承諾するサブスクリプション方式や継続請求での普及が進んでいます。これにより、手動による取引を繰り返す必要性を減らしながら、決済プロセスを効率化し、遅延のない支払いを確保することができます。

  • 公共事業・サービスプロバイダー
    公共事業会社 (電気、水道など) やサービス業者 (電気通信、インターネットなど) は、毎月の請求で SEPA ダイレクトデビットを利用しています。利用者は、支払期日をメモしたり、支払いの周期ごとに手動で支払いを行ったりすることが不要になるため、継続支払いの決済手段として口座引き落としを好む傾向にあります。

  • 非営利団体・慈善団体
    非営利団体や慈善団体は、寄付の収集で SEPA ダイレクトデビットを利用しています。SEPA ダイレクトデビットを利用することで、支援者からの定期的な寄付を通じて安定した収入源を確保できます。特に長期的な募金戦略で有用です。

  • 不動産管理企業
    不動産管理企業は、賃貸料の回収で SEPA ダイレクトデビットを利用しています。これにより、家主は期日どおりに支払いを受けることができ、入居者は賃貸料の支払期日を忘れる心配がなくなります。また、集合住宅の管理費など、繰り返し発生する他の手数料の回収にも有用です。

  • サブスクリプション型サービス
    ストリーミングプラットフォーム、雑誌、クラブ会員などのメディアサービスでは、SEPA ダイレクトデビットは利用者が使用できる利便性の高い決済手段となります。SEPA ダイレクトデビットを利用することで、サブスクリプション料金の支払いを行い、支払い忘れによるサービスの停止を防ぐことができます。

  • フィットネスクラブ・レジャークラブ
    多くのジム、スポーツクラブ、レジャーセンターでは、会費処理に SEPA ダイレクトデビットを利用しています。利用者は毎月手動で支払いを行う手間なく、継続して施設を利用できます。

  • 中小企業・大企業による B2B 取引
    大企業だけでなく、中小企業も、B2B 取引に SEPA ダイレクトデビットを利用しています。SEPA ダイレクトデビットを利用することで、日常的なサプライチェーン取引や業務委託契約などの商取引で発生する決済プロセスを効率化できます。

  • 金融業界による貸付金や信用取引の返済回収
    銀行や金融機関は、貸付金やクレジットカードの返済回収に SEPA ダイレクトデビットを利用しています。利用者は口座引き落としを設定して、借入金やクレジットカードの支払いを確実に期日どおりに行うことができます。これにより、利用者は高いクレジットスコアを維持し、支払い延滞金や追加利息の発生を防ぐことができます。

  • 公共部門の事業体
    政府機関や公共部門の事業体は、納税、免許手数料、他の公課といった各種料金の徴収に SEPA ダイレクトデビットを利用しています。

SEPA ダイレクトデビットの仕組み

SEPA ダイレクトデビットの種類

SEPA コアダイレクトデビット

  • 説明: 利用者取引向けの SEPA ダイレクトデビットです。SEPA 加盟国の銀行口座を保有している個人なら誰でも利用できます。

  • 運用: 利用者が紙またはデジタル媒体の委任状に署名して、企業による利用者の銀行口座からの引き落としを許可します。この委任状には、引き落としの頻度や金額といった詳細情報を明記します。

  • 対象: SEPA コアダイレクトデビットは、公共料金、保険料、サブスクリプション料金、ジムの会費などの継続支払いに広く利用されています。あらゆる取引に適用される 8 週間以内の簡単な返金プロセス、不正な引き落としに適用される最大 13 か月以内の簡単な返金プロセスなど、利用者に対する強力な保護措置が設けられています。

SEPA B2B ダイレクトデビット

  • 説明: 企業間取引のみを対象としており、利用には企業間のより上位の合意が必要です。B2B 取引の性質上、より厳格な委任プロセスが設けられています。

  • 運用: SEPA コアダイレクトデビットよりも厳格な委任プロセスが用いられます。利用者による承認のほか、別の検証手順が加わります。支払い側企業は銀行に委任の確認を直接行う必要があります。

  • 対象: SEPA B2B ダイレクトデビットは、サプライヤーへの支払い、サービス料、定期的な組合費など、定期的に発生する企業間の支払いに最適です。返金制度はコアダイレクトデビットよりも制限されており、商取引での相互信頼が強く重視されています。

ビジネスとしての SEPA ダイレクトデビットの利用

  • 委任管理
    最初の手順は、委任状の確保です。委任状は法的文書であり、利用者から委任状への署名を受けることで、企業は利用者の口座から指定の金額を引き落とすことが可能になります。委任状には、利用者の口座情報、支払いに関する取り決めの条件など、重要な詳細情報を明記します。このような委任状の確保では慎重な管理が求められます。利用者層が大規模な場合は特に必要です。

  • 事前通知の義務
    企業は、利用者に対し、引き落としの金額と日付について予め通知しなければなりません。通知はメールまたは郵便で行います。この通知により、透明性が確保されると同時に、十分な残額があることを利用者が確認できるようになります。

  • 決済処理の開始
    支払いの回収時、企業は自社の銀行に対し、引き落とし金額と利用者の銀行情報を記載したリクエストを送信します。銀行は受信したリクエストを処理して、SEPA ネットワークを通じてそのリクエストを利用者の銀行に送信します。

  • 取引プロセス
    利用者の銀行はリクエストの詳細を委任状と比較して確認します。すべての詳細情報が一致し、かつ十分な残額がある場合、利用者の銀行は引き落としを処理して送金を行います。通常、このプロセスには数日かかりますが、プロセスに関与する銀行や国によって少々異なる場合があります。

  • 返金・不一致の取り扱い
    コアダイレクトデビットの場合、企業は、取引から 8 週間以内の返金リクエストを処理できるようにしておかなければなりません。不正取引に伴う返金リクエストの場合は、この期間が 13 か月に延長されます。B2B 取引の場合は、契約の性質の違いを考慮して、返金期間はより制限されています。企業は、明快な不審請求の申請の解決メカニズムを設けなければなりません。

SEPA ダイレクトデビットを受け付ける企業側のメリット

SEPA ダイレクトデビットでの決済を受け付けることで、企業は、そのシステムを金融取引の手段として活用できるだけでなく、欧州市場での事業や成長を促進する戦略的資産としても活用できるようになります。ここでは、見込まれるメリットについて詳しくご紹介します。

  • 複数の国にまたがる金融業務の最適化
    SEPA ダイレクトデビットを利用することで、企業は、欧州における複数の国内決済システムに対応する必要がなくなります。この統合により、越境取引の処理に伴う運用上の複雑さやコストが大幅に削減されます。欧州に活動範囲を広げたい企業は、SEPA ダイレクトデビットを通じて、市場参入・拡大戦略を促進する統合決済モデルを利用できます。

  • 財務上の予測可能性や安定性の向上
    健全なビジネスを維持するには、定期的で予測可能な資金収入の存在がカギとなります。SEPA ダイレクトデビットにより、一貫性があり信頼性の高い収益源を実現できます。これは、サブスクリプション方式を利用している企業や定期的な請求サイクルが発生する企業にとって特に重要です。安定性が保たれていることで、より正確な予測、予算編成、長期的な財務計画の策定が可能になります。

  • 管理・運用の効率化
    決済プロセスの自動化により、請求・回収プロセスでのエラーを最小限に抑えながら、手作業を大幅に減らすことができます。企業は、空いた時間やリソースを、生産性の向上や企業の成長を実現する、価値の高い他の業務に使うことができます。

  • 顧客体験と顧客定着の向上
    今日の競争が激しい市場では、顧客体験が重要となります。SEPA ダイレクトデビットのような利便性と信頼性の高い決済手段を用意することで、顧客満足度を大幅に高めることができます。利便性は、利用者が複数の競合企業の中から選択する際の決め手となり、顧客定着や顧客ロイヤルティの向上につながります。

  • 取引コストの削減と生産性の向上
    SEPA ダイレクトデビットの取引手数料は他の決済手段よりも低額なため、大幅なコスト削減につながります。そのようなコスト削減により、企業の収益を直接向上させることができます。このことは、企業が処理する取引量が多い場合は特に当てはまります。さらに、取引あたりのコストが減少するため、SEPA ダイレクトデビットは小規模取引でも有力な選択肢となります。SEPA ダイレクトデビットを利用することで、利用者に提供できる価格設定やサービスオプションの範囲が広がります。

  • 支払いの遅滞・不払いのリスク軽減
    SEPA ダイレクトデビットを利用すると、決済プロセスの自動化により、支払いの遅延や不払いのリスクを大幅に減らすことができます。これにより、安定したキャッシュフローが促進され、特に運転資本要件の管理に役立ちます。支払いの遅延を防ぐことは健全な取引関係の維持にもつながります。これは、B2B 取引には特に当てはまります。

  • 厳格な法令遵守とセキュリティの確保
    SEPA ダイレクトデビット決済は、EU の厳正な規制の枠組みの中で運用されており、厳格なセキュリティと法令遵守が確保されています。そのような規制を遵守することにより、不正利用のリスクを最小限に抑えられるほか、企業の評判を高めることもできます。利用者やビジネスパートナーと信頼を築き、それを維持するには、EU 規制の基準に準拠することが重要です。

  • 拡張性と俊敏性への対応
    SEPA ダイレクトデビットは拡張性を備えたソリューションであり、企業の成長に合わせて拡張することが可能です。拡大を続けている企業や将来の拡大を計画している企業にとって、取引量の増加にスムーズに対応できることが重要です。さらに、支払いの額と頻度を柔軟に調整できることは、市場状況や企業戦略の変化に素早く対応できることにもつながります。

  • データに基づく洞察や意思決定の促進
    SEPA ダイレクトデビットの取引で得られるデータは、企業にとって非常に重要なものとなる可能性があります。このデータを分析することにより、利用者の支払いに関する行動、好み、傾向について洞察が得られます。この洞察からは、マーケティングやカスタマーサービスに関する戦略から、製品開発や料金体系モデルまで、戦略上の意思決定に役立つ情報を得ることができます。

SEPA ダイレクトデビットのセキュリティ対策

このプログラムは、欧州規制で義務付けられている厳格なセキュリティ基準に準拠しています。この基準は、すべての関係者を不正利用や不正取引から保護するものです。主なセキュリティ対策には次のようなものがあります。

  • 委任システム: すべての SEPA ダイレクトデビット取引は、企業による口座からの引き落としを許可する委任 (利用者から企業への正式な承認) に基づいて行われます。企業は委任状を検証し、厳重に保管しなければなりません。

  • 厳格な銀行審査: 利用者の銀行はセキュリティに関して重要な役割を果たします。銀行は各取引で委任状の詳細情報を検証し、承認を得た引き落としだけが処理されるようにします。

  • 返金メカニズム: SEPA ダイレクトデビットでは返金ポリシーを通じて強力な利用者保護を実現しています。利用者は、理由の有無にかかわらず、8 週間以内であれば口座引き落としの返金を求めることができます。不正取引に伴う返金リクエストの場合は、この期間が 13 か月に延長されます。これにより、不正利用に対する安全措置を整備しています。

  • データ保護基準: SEPA ダイレクトデビットを処理する企業と銀行は、機密性の高い利用者データの安全な取り扱い、保管、送信について定めた厳格なデータ保護法を遵守しなければなりません。

  • 強力な B2B セキュリティ: B2B 用の SEPA ダイレクトデビットの仕組みでは、追加の承認確認といったセキュリティ対策が追加されており、企業取引の安全性を高めています。

企業が SEPA ダイレクトデビットの受け付けを開始するための要件

企業の所在地が EU 域内かどうかにかかわらず、企業が Stripe を通じた SEPA ダイレクトデビット決済の受け付けを開始するには、SEPA と Stripe が定めている特別な要件を遵守しなければなりません。この要件の詳細は以下のとおりです。

  • SEPA 債権者 ID (CI) の取得
    欧州企業の場合、SEPA CI (欧州全域で支払いを回収するのに必要な一意の識別子) が必要です。欧州以外の企業の場合も、SEPA 加盟国の銀行またはサードパーティーのサービスプロバイダーを通して SEPA CI を取得しなければなりません。

  • SEPA 規則・規約の継続的な遵守
    企業は、SEPA コアダイレクトデビット規則を把握して遵守し、取引が SEPA の事前通知要件を確実に満たすようにしなければなりません。事前通知では、利用者に対し、引き落としの金額と日付について予め通知しなければなりません。

  • 銀行口座に関する要件の確認
    企業は、SEPA 決済を受け付け可能な銀行口座を保有しなければなりません。この口座は必ずしも SEPA 加盟国にある必要はありませんが、SEPA 送金を受け取れる口座でなければなりません。

  • 委任状の管理
    企業は、利用者から SEPA ダイレクトデビットの委任状を取得しなければなりません。この委任状は、今後、利用者の口座から支払いを回収することを企業に許可するもので、署名を受け、オンラインまたは紙媒体で取得します。不審請求の申請の際、証拠として委任状が必要になる場合があります。

  • Stripe との連携
    企業が決済処理を行うには、Stripe アカウントをセットアップし、Stripe のアプリケーションプログラミングインターフェイス (API) と連携させる必要があります。次に、Stripe の SEPA ダイレクトデビットシステムを自社の決済システムに実装しなければなりません。この実装では、コーディングを行うか (ソリューションをカスタム構築する場合)、Stripe の API が動作するように既存のシステムを構成する必要があります。

  • 利用者への通知
    SEPA 規約で義務付けられているように、企業は支払いごとに利用者への事前通知を行わなければなりません。Stripe を利用する場合、API を用いて事前通知プロセスを自動化できます。

  • 返金・チャージバックへの対応
    企業は、返金やチャージバックに対応できるようにしておかなければなりません。SEPA ダイレクトデビット決済では、8 週間の「理由不問」返金期間が利用者に認められます。企業は、SEPA のチャージバック規則に対応するプロセスを設けなければなりません。この規則はクレジットカードのチャージバックとは異なる場合があります。

  • データ保護とセキュリティの確保
    企業はデータ保護法を確実に遵守しなければなりません。一般データ保護規則 (GDPR) が適用される EU 域内で事業活動や利用者との取引を行っている企業の場合は、特に注意する必要があります。企業は、Stripe のセキュリティに関する要件とベストプラクティスに準拠して、利用者データ、特に銀行口座の詳細や委任状に関する情報のセキュリティを確保しなければなりません。

  • Stripe の料金体系の把握
    企業は、SEPA ダイレクトデビット取引に適用される Stripe の料金体系についてよく把握しなければなりません。料金は取引量や場所などの要因によって異なる場合があります。企業はまた、利用者に対する本人確認の実施、取引における不信な行為の監視など、マネーロンダリング防止 (AML) および本人確認 (KYC) に関する規制を常に遵守しなければなりません。

  • 複数通貨による影響の考慮
    ユーロ以外の通貨で取引を行う企業は、通貨換算による影響や関連手数料について把握しなければなりません。

  • 利用者サポートと不審請求の申請の解決に関する取り組み
    企業は、SEPA 決済に関する利用者サポートの実施および不審請求の申請や問い合わせへの対応を行う体制を整備しなければなりません。

SEPA ダイレクトデビットの代替手段

企業向けの SEPA ダイレクトデビットの代替手段をいくつかご紹介します。代替手段には次のようなものがあります。これらの手段は SEPA ダイレクトデビットと同様の機能を備えているものの、機能が独特な場合や対象地域が限定的な場合があります。

  • Bacs ダイレクトデビット (イギリス)
    Bacs は、公共料金、会費、サブスクリプション料金などの継続支払いに広く利用されている、イギリス向けの口座引き落としシステムです。SEPA ダイレクトデビットと似たシステムですが、対象地域がイギリスに限定されます。Bacs には、支払いを行うためのダイレクトクレジット決済サービスも用意されています。

  • ACH ダイレクトデビット (アメリカ)
    アメリカの自動決済機関 (ACH) ネットワークは、口座引き落としなどの電子決済を推進しています。ACH はアメリカを主な対象地域としていますが、国際取引で利用できる場合があります。SEPA とはプロセスとタイムテーブルが異なり、通常は SEPA よりも取引に時間がかかります。

  • EFT (多数の国)
    多くの国では、口座引き落とし取引向けに独自の電子資金送金 (EFT) インフラを整備しています。例えば、カナダの EFT システム、オーストラリアの BECS、南アフリカの EFT などがこれに該当します。多くの場合、それらのシステムの対象地域はそれぞれの国・地域に限定されます。

  • NACH ダイレクトデビット (インド)
    インドの全国自動決済機関 (NACH) は口座引き落としサービスを提供しており、公共料金、保険料、借入金の返済など、さまざまな種類の支払いに利用されています。NACH はインド市場を対象としており、インドの準備銀行が管理を行っています。

  • Autogiro (スウェーデン)
    Autogiro はスウェーデンの継続支払い向け口座引き落としシステムです。スウェーデンの決済システム企業である、Bankgirot が管理を行っています。

  • SDD B2B (企業間取引向け SEPA ダイレクトデビット)
    これは標準的な SEPA ダイレクトデビットの一種で、B2B 取引に特化しています。通常よりも返金のタイムラインが短縮されており、債権者の保護が強化されています。SDD B2B が利用できるのは取引者の双方が企業である場合に限定され、双方の企業がそれぞれの銀行と取り決めを締結している必要があります。

これらのシステムは SEPA ダイレクトデビットと同様の機能を備えており、利用者の銀行口座から直接引き落としを行うことができます。ただし、企業や利用者の所在地によって対象や有用性が異なる可能性があります。SEPA ダイレクトデビットは全欧州向けのシステムですが、他の多くの代替手段よりも広い範囲を対象としています。

最終的に、代替手段からどれを選ぶかは、事業活動を行っている地域、事業の性質、決済に関する利用者の嗜好によって決まります。

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