マネーロンダリングとは? 日本の事例や規制を解説

  1. はじめに
  2. マネーロンダリングとは?
  3. マネーロンダリングは犯罪になる?
    1. マネーロンダリングの仕組みは?
  4. マネーロンダリングの日本での具体例は?
    1. 特殊詐欺で得た電子マネーの利用権を他人になりすまして売却した行為
    2. 氏名不詳者の暗号資産アドレスを利用して隠匿した行為
    3. 国境を越えて資金を隠匿した事例
    4. 不法収益を出資金として株式会社を設立し、株主となった事例
  5. 銀行から届く「お取引目的確認」や「お客様情報確認」とは?
    1. 銀行のお客様情報確認を無視したらどうなる?

マネーロンダリングの疑いがあるとして 2022 年の 1 年間に日本の金融機関などが報告した取引件数は、58 万 3317 件にのぼります。この数は前年から 5 万 3167 件増加し、過去最多を記録しました

マネーロンダリングは正当な取引を装って行われますが、犯罪です。疑いのある取引の増加件数をみても、金融機関のみならず、あらゆる企業や個人が知らず知らずのうちに関与してしまう可能性があります。加担してしまえば罰金などの処分が課されるだけでなく、自社の信用問題にもつながります。

この記事ではマネーロンダリングの基礎知識や日本での具体例を取り上げます。

目次

  • マネーロンダリングとは?
  • マネーロンダリングは犯罪になる?
  • マネーロンダリングの日本での具体例は?
  • 銀行から届く「お取引目的確認」や「お客様情報確認」とは?

マネーロンダリングとは?

略して「マネロン」とも呼ばれるマネーロンダリングは、日本語で「資金洗浄」を意味する言葉で、「一般に、犯罪によって得た収益を、その出所や真の所有者が分からないようにして、捜査機関等による収益の発見や検挙等を逃れようとする行為」(警察庁のホームページより) を指します。

マネーロンダリングによって「浄化」された資金は、犯罪組織の活動や維持・強化のための資金として流用され、組織的な犯罪を助長する可能性があるほか、そうした組織が一般社会の経済活動に影響を及ぼすことなどが懸念されています。

国際社会では FATF (Financial Action Task Force / 金融活動作業部会) を中心に国際的な対策強化が進められており、これに合わせて日本でも法律が制定され、金融機関向けのガイドラインが策定されています。

マネーロンダリングは犯罪になる?

マネーロンダリングにあたる行為は法律で禁止されています。日本では、「組織的犯罪処罰法」や「麻薬特例法」などの法律によって取り締まりが行われているほか、「犯罪収益移転防止法」などによって防止のための対策がとられています。

マネーロンダリング対策強化の一環として、2022 年には法定刑の引き上げも実施され、例えば、2022 年 12月に改正された「組織的犯罪処罰法」では、「事業経営支配罪 (犯罪で得た収益を使って株主などの地位に就き、役員を選任・解任するなど)」の法定刑が、「5 年以下の懲役もしくは 1,000 万円以下の罰金」から「10 年以下の懲役もしくは 1,000 万円以下の罰金」に引き上げられました。

マネーロンダリングの仕組みは?

マネーロンダリングのプロセスは非常に複雑ですが、主に 3 段階を経て資金の「浄化」が行われることが定説とされています。

  • プレイスメント…プレイスメントは、犯罪によって得た収益 (犯罪収益) 資金を金融システムに取り込む段階です。例えば、犯罪収益である現金を架空名義の銀行口座などに入金する、不動産を購入するなど、さまざまな手口があります。

  • レイヤリング…レイヤリングとは、送金を繰り返すなどして資金を次々に移動させ、犯罪収益の出所を不透明にする段階です。

  • インテグレーション…最終段階となるインテグレーションでは、出所が曖昧になった資金を、合法的なビジネスへの投資や不動産売却などを通じて、合法的に見せかけて経済活動に戻します。

マネーロンダリングの日本での具体例は?

マネーロンダリングはさまざまな形で実行されます。日本におけるマネーロンダリング事犯の検挙事例を見てみると、悪用された取引として最も多いのが内国為替取引で、これに現金取引、預金取引、クレジットカード、電子マネーが続きます。また国際社会においては、暗号資産を使用したマネーロンダリングも無視できないものとなっており、2022 年には前年比 68% 増を記録しました。

ここでは警察庁の資料をもとに日本における主な事例を見ていきましょう。

特殊詐欺で得た電子マネーの利用権を他人になりすまして売却した行為

[事例]コンサルタント業の男らが、特殊詐欺グループがだまし取った電子マネーの利用権を売却処分する際、他人が経営する合同会社の名義で電子マネー売買サイトに出品し、他人になりすまして売却した。

氏名不詳者の暗号資産アドレスを利用して隠匿した行為

[事例]会社員の男が、自己名義の銀行口座に振り込まれた犯罪収益で暗号資産を購入し、氏名不詳者が管理する暗号資産アドレスに移転した。

国境を越えて資金を隠匿した事例

[事例]会社役員の男が、詐欺で得た犯罪収益を他国の銀行に開設された口座に送金。その際、内容虚偽の請求書を日本国内の銀行に提出するなどして正当な商取引に関する資金決済を装った。

この 3 つの事例は、マネーロンダリング事犯の検挙事件数の半数以上を占める「犯罪収益等隠匿」で検挙されたものです。

一方、事例は少ないものの、犯罪収益を使って株主などの地位に就き、その法人の事業活動を支配する行為もマネーロンダリングのひとつとして挙げられます。

不法収益を出資金として株式会社を設立し、株主となった事例

[事例]会社役員の男は、無許可で社交飲食店を営業して得た不法収益を株式会社の設立に際して発行された株式の出資金として払い込むなどして、会社の発起人としての地位を取得した。その上、自己を代表取締役に選任するなどし、地方法務局に会社の設立登記をした。

銀行から届く「お取引目的確認」や「お客様情報確認」とは?

マネーロンダリングを防止するための対策は、国外はもちろんのこと、国内でも強化が進められており、そのひとつが金融機関などが行う取引内容確認や利用者確認です。

金融機関では、「犯罪収益移転防止法」や金融庁が策定したガイドラインに基づいて、「お取引目的確認」「お客様情報確認」「お届け内容確認」などの書類をサービス利用者に定期的に送付しています。
突然そうした内容の手紙が届き、驚いたことがある人もいるかもしれませんが、金融機関はこれらの書類を通じて取引や顧客情報を確認し、犯罪収益の移転などの不正取引を防ぐよう務めています。

銀行のお客様情報確認を無視したらどうなる?

犯罪防止の観点から、政府では、金融機関からの「お客様情報確認」などが届いた場合には、期限内に回答するよう呼びかけています。

「犯罪収益移転防止法」では、取引確認に応じるまでの間、取引にかかる義務の遂行を拒否できることが定められており、回答しなかった場合には、取引ができない、あるいは制限される可能性があります。

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