消費者が商品を借りて利用できるサービスについては、現在さまざまなものが生み出されています。レンタルやリースによる物理的なものだけでなく、最近ではコンテンツ配信などのサブスクリプション (サブスク) サービスについても、以前に比べると私たちの日常生活に浸透し、多くの人によって利用されています。
サブスク、レンタル、リースのいずれも、一定の期間に継続的に物やサービスを利用できるという点では同じですが、具体的にはどのような違いがあるのでしょうか。
本記事では、サブスク、レンタル、リースの違いとそれぞれのメリット・デメリットを、実際のビジネス例を交えてご紹介します。
目次
- サブスク、レンタル、リースの違い
- サブスクのメリット・デメリット
- レンタルのメリット・デメリット
- リースのメリット・デメリット
- 各ビジネスモデルを理解したうえで利用することが大切
サブスク、レンタル、リースの違い
ものを借りるサービスとして、これまではレンタルやリースが主流でした。しかし、ここ数年、日本でも「サブスク」という言葉が多くの消費者によって知られるようになり、市場規模が広がっています。
特に近年は、できるだけものを増やさず、購入を必要最低限におさえて生活する考え方のミニマリズムが普及する中で、「あえてものを持たず、一時的に借りる」サービスがさまざまなジャンルにおいて一般的になっています。
「ものを借りる」方法として、サブスクやレンタル、リースがありますが、それぞれの違いは十分に理解されていないかもしれません。
そこで、この 3 つの具体的な違いを理解するために、まずそれぞれのサービスの料金体系や契約期間などについて、以下の表で見てみましょう。

なお、いずれの場合も所有者は事業者となります。上記の表をもとにさらに細かく見ていきましょう。
サブスクとは?
サブスクとは、サブスクリプション (Subscription) のことで、一定の料金を支払うことによって継続的なサービスを受けるビジネスモデルです。一般的には月額、年額などの定額料金が設定されており、料金を支払ったサブスクの登録期間中は、商品やサービスを自由に利用することができます。日本語では定期購読、継続購入ともいいます。
サブスクビジネスの代表例
サブスクが向いているサービスには、例として以下のようなものが挙げられます。
ストリーミングサービス (コンテンツ配信)
ストリーミングサービス (コンテンツ配信) は、月額定額制で毎月料金を支払えば、数に制限なくコンテンツを楽しむことができるサービスです。たとえば、映画・TV 番組のサブスクサービスの場合、コンテンツを 1 つだけ購入するのではなく、決まった月額料金を支払うことで、好きな映画や TV 番組をいくつでも視聴できます。
例: 映画・TV 番組、自主制作動画、音楽、電子書籍・オーディオブック
事例: Netflix、Hulu、Amazon Prime
ソフトウェアやデジタルツール (SaaS)
一定の月額料金を支払うことで、ソフトウェア、オンラインツールの使用権利が与えられるサービスです。
例: デザインツール、情報管理ソフト、クラウドストレージ
事例: Photoshop、Dropbox
オンライン学習プラットフォーム
オンライン学習も、サブスクに向いているビジネスの 1 つです。ビジネススキルや語学力の向上を目指すためのオンライン学習のサブスクでは、月額、年額の一定料金を支払うことで、スキルアップに繋がるさまざまなサービスを利用することができます。
例: プログラミング、マーケティング、英会話
事例: オンスク.JP (株式会社オンラインスクール) 、JapanWonderGuide (JWG)
オンラインショップや実店舗で販売する商品の定期配送
こちらも月額料金を支払うことで、自宅や職場などに定期的に商品が届けられるサブスクサービスです。主に、日常的に消費するコーヒー豆やお米などの食品、化粧品のような消耗品を補充する目的として定期配送のサブスクが利用されます。
例: 食品、化粧品・パーソナルケア、日用品などの消耗品
事例: 坂ノ途中 (有機野菜・無農薬野菜の宅配サービス)、スミフル (フルーツ定期便)
このようにサブスクで取り扱われている商品やサービスにはさまざまなものがあります。
特に、契約期間中にいつでも自由にコンテンツを視聴できるストリーミングサービスについては利便性が高く、多くの企業が事業に参入しています。
レンタルとは?
レンタルとは基本的に、短期間ものを借りることのできるサービスです。 利用可能な期間は、 1 日単位から 1 週間、取り扱う商材によっては 1 カ月などさまざまです。
レンタル会社が貸し出す商材は通常、もともとレンタル会社が保有する使用済みの中古品で、これらを不特定多数の顧客に貸し出しする仕組みです。また、顧客は貸し出しの際に設けられる返却期間までに商品を返却するか、必要に応じて返却期間を延長する必要があります。
レンタルビジネスの代表例
衣料
卒業式や成人式、結婚式などの式典に出席するため、当日必要な衣服を貸し出すサービスです。
例: 着物、タキシード、パーティードレス
事例: キモノハーツ、おしゃれコンシャス
旅行の際の一時使用品
旅行など遠出の際に利用されるレンタカーも、1 日のみから数日の単位で借りることのできるレンタルサービスです。また、旅行先のホテルなどで提供される自転車のレンタサイクルサービスなどもあります。
例:: レンタカー、レンタサイクル、ポケット Wi-Fi
事例: トヨタレンタカー、ニッポンレンタカー
DVD・Blu-ray・CD
現在はストリーミングサービスが主流ではあるものの、DVD などの貸し出しもレンタルサービスとしては代表的な商材です。
事例: Tsutaya、Geo Online
リースとは?
リースとは数カ月から数年と、長期間のサイクルでものを貸し出すサービスです。リース会社が貸し出す商材については、比較的高額なものが多く、特に B2B 向けの機材や大型設備が主流という特徴があります。
リースビジネスの代表例
以下のように、リースで取り扱われる商材は重量のある大型設備が多く、一旦リース契約が結ばれ設備が導入されると、数年規模のように長期間の使用目的となるものが一般的となっています。
カーリース
レンタカーと異なる点としては、貸出期間になります。レンタカーなら 1 日単位から借りることが可能ですが、カーリースの場合は数カ月から年単位の契約となります。そのため、私用・公用を問わず、長期で車を借りる必要がある際には、レンタカーではなくカーリースを選ぶ必要があります。
事例: KINTO、コスモ My カーリース
複合機・コピー機などのオフィス用品
オフィススペースで複合機やコピー機が必要な際は、オフィス用品のリースを利用することもできます。このほか、オフィス内のキャビネットやロッカー、デスクや椅子などについて、貸し出しを行っているリース会社もあります。
事例: コピー機本舗、オフィスサポートドットコム
ここまでで、サブスク、レンタル、リースの大枠の違いと、各サービスの代表例についてひととおり解説しました。次にそれぞれのメリット・デメリットについて解説していきます。
サブスクのメリット・デメリット
以下、事業者側と利用者側、それぞれのサブスクに関するメリット・デメリットをご紹介します。
サブスクのメリット
事業者のメリット
定期的に顧客から利用料金を回収するため、継続的に安定した収入を見込むことができる
顧客の利用状況や人気コンテンツなどの詳細データを収集し、ビジネスの向上に活用できる
初期費用を低く設定できるため、新規顧客を獲得するハードルが低く集客しやすい
利用者のメリット
都度購入の手間が省けるなど、利便性の高いサービスとして顧客の選択肢が増える
月額費用があるものの、登録手数料などの初期費用がかからず、定額料金の支払いだけでサービスを受けることができる
単品で購入するよりもサブスクを活用することでより安価になる__ (商品の定期配送サービスの場合、1 回のみの購入に比べ「定期便なら 〇〇% オフ」のように割引価格になる場合もあります。)
ものが増えない__ (ストリーミングサービスを利用すれば、DVD や CD を所有することなく、より多くのコンテンツを一定の月額料金だけで楽しむことができます。)
登録・解約がしやすい
サブスクのデメリット
事業者のデメリット
事業開始の初期は、ある程度の顧客を獲得するまでなかなか収益が出ない
サブスクの導入までに、事業運営にかかるノウハウや、システム・ツールに関する専門知識が必要となるほか、ある程度のコンテンツや商品を準備する必要がある
特に他社との競争が激しい業種の場合、常に新しいコンテンツや商品を追加したり、追加サービスを検討する必要がある
すぐに解約される場合がある
利用者のデメリット
利用しない時でも定額料金が発生する
気に入った商品やサービスが一箇所で見つからず、複数のサブスクに登録することで逆に費用がかさむ可能性がある
解約すると手元にはものが残らない (ストリーミングサービスの場合、解約するとお気に入りのコンテンツの視聴などができなくなります。)
レンタルのメリット・デメリット
レンタルサービスのメリット・デメリットについては、サブスクと共通する点がいくつかあります。
レンタルのメリット
事業者のメリット
継続的な収入を得られる
レンタルビジネスでは、商品レンタルの回転率が上がれば上がるほど、継続的な収入を見込むことができます。
環境問題に貢献
レンタルで済ますことができれば、ものの新たな購入が減り、家庭ごみの減少も期待できます。また、環境問題に取り組む企業としても良いアピールに繋がるでしょう。
顧客を獲得しやすい
レンタルであれば、一度も利用したことのない商品であったとしても、ものを購入する場合と比べ、顧客に安心して気軽に利用してもらいやすくなります。また、貸し出した後で、商品を気に入ってもらえれば、潜在的な利用促進にも効果的です。
新規参入へのハードルが低め
レンタルビジネスの場合、店舗を構える必要がないため、最小限の人員でも運営することができ、大量の在庫を準備することなく始めることが可能です。
利用者のメリット
希望する商品やサービスを見つけやすい・選びやすい
ストリーミングサービスのように、膨大なコンテンツから選ぶのではなく、ある程度選択肢が限定されていることで、自分が利用したいコンテンツやサービスを選びやすくなります。
継続的となる余計な出費がない
必要な時だけ利用するレンタルの場合、自分が好きなものだけを選択できるため、興味のないものに対して余計な料金を支払わずに済みます。
中途解約が可能
レンタルの場合は、レンタル会社がもとから所有する商材を顧客に貸し出しをするため、特に問題なく中途解約をすることが可能です。 (ただし、手数料がかかる場合があります)。
サブスクと同様にものが増えない
レンタルのデメリット
事業者のデメリット
初期投資費用の回収ができない可能性
サブスクと同様に、収益を得るまでには時間がかかり、商材によってはなかなか初期費用の回収が難しい場合があります。
商品の修理や管理にかかる負担
レンタルビジネスでは、商品の返却後から次の貸し出しまでに、クリーニングや品質確認などを実施します。よって、すぐに貸し出しができるわけではないため、各商材については回転率を見越したうえで、管理業務を徹底する必要があります。
競合他社との価格競争に陥る可能性
先ほどの解説のように、レンタルビジネスは新規参入がしやすいため、競合他社が増えることで、価格競争に直面する可能性があります。
利用者のデメリット
場合によってサブスクの方がお得になる
レンタル DVD や CD に比べると、ストリーミングサービスが提供するコンテンツの量は非常に多いため、多数のコンテンツを視聴したいのであれば、サブスクの方が全体的にお得な場合があります。
同じものを繰り返しレンタルするより購入した方が合理的で安い場合がある
レンタルの場合の貸出期間は基本的に短期であり、すぐに返却日が来てしまうため、同じものに繰り返し料金を支払って使用する必要がある場合は、購入した方が手間もかからず合理的で安くなることがあります。
レンタルと返却の手間・時間がかかる
レンタルの場合、借りる手間のほか商品を返却するためにレンタルショップなどに足を運ぶ必要があるなど、手間がかかります。ただし、商材によっては自宅での引き取りや郵便ポストへの投函、最寄りのコンビニへの返却などのサービスを提供するレンタル会社もあります。
また、何らかの事情で、返却期限までに商品を返却しそびれると延滞料金が発生します。
リースのメリット・デメリット
リースのメリット
事業者のメリット
顧客との長期的な関係を築くことができる
リースビジネスは、基本的に長期契約が原則となっているため、顧客との長期的な関係を維持することができます。また、リース契約の満了時には、新しい機種・機材を提案できるため、さらに継続してサービスを利用してもらえる傾向にあります。
計画的な販売活動が可能
リース契約では、利用可能な期間が事前に定められているため、契約更新や商品の買い換え時期を明確に把握することが可能です。したがって、契約期間の満了時期に合わせて、効率的かつ計画的な販売活動が可能です。
利用者のメリット
初期費用を抑えることができる
高額な設備を購入する場合、頭金などの相当な金額を準備する必要がありますが、リースであれば初期費用を抑えることができます。そのため、節約できた初期費用を宣伝・広告などにあてることができます。
利便性の高い設備を利用できる
耐用可能年数に応じた、リース期間を設定すれば、古いモデルの設備を使い続けるといった問題を防ぐことができ、常に時代に応じたより利便性の高い、最新の設備を導入することができ、事業の生産性の向上にも繋がります。また、リース期間終了後は古くなった設備の回収および破棄も、リース会社が行います。
事務処理・会計を簡素化できる
設備を直接購入した場合、経費として計上できるのは、設備の内容に応じた減価償却分のみとなります。一方、リースの場合、毎月の定額リース料を経費として計上することが可能なため、経費を平準化させることができ、事務処理や会計がシンプルになります。
リースのデメリット
事業者のデメリット
商材にかかった負担金額を回収できないリスク
通常、リースビジネスで取り扱われている商材は、高額なものがほとんどです。そのため、リース会社の負担となる商材にかかった金額を顧客から回収できなければ、事業運営において非常に大きなリスクとなり得ます (商材を貸し出した取引先の企業が不況のために倒産した場合など)。
利用者のデメリット
契約期間中は中途解約できない
長期間でサービスを利用できるという点についてはサブスクと似ています。ただし、リース契約では中途解約ができなかったり、中途解約をする場合は違約金の支払い義務が発生するなど、いつでも解約可能なサブスクとは大きく異なるため注意が必要です。
また、中途解約ができない主な理由としては、リースの場合、リース会社が顧客に代わって、顧客が選定する設備を購入しているためです。
つまり、設備の取得代金や固定資産税などをリース会社が負担している中で、顧客が中途解約をするとリース会社に損害が発生するため、原則として中途解約が不可となっているのです。レンタルのように、もともと所有しているものを借りるサービスと大きく異なる点でもあります。
手数料などによって支払総額が割高となるケースがある
リースの場合、リース会社に支払う事務手数料や利息、損害保険料などが加算されます。そのため、出費額が購入するよりも割高になる場合があります。
長期間利用したとしても所有権はない
リース契約を終えた後は、長年使い慣れた設備や機器であったとしても、所有権がなくなります。したがって、リース契約の終了後も使用を続けたい場合、再リースの料金を負担する必要があるため、結果として当初から購入した方がよかったと感じることもあります。
各ビジネスモデルを理解したうえで利用することが大切
以上、本記事にてサブスク、レンタル、リースについてどのような違いがあるのか、また、それぞれのメリットやデメリットついてご紹介しました。
ものをできるだけ減らす考え方が広まる中、「所有する」のではなく「借りる」形態のサービスが今後もますます増えていくと予想されます。
サブスク、レンタル、リースは、取引形態などがそれぞれに異なるため、サービスの利用を検討する際は、メリット・デメリットを理解したうえで、予算に合うサービスを選ぶようにしましょう。
なお、サブスクサービス事業の立ち上げを目指す事業者の方は、継続的な支払い処理に特化した Stripe Billing を導入すると、顧客への定期的な請求や決済手段の提供、入金管理システムなど、サブスクに必要なさまざまな機能を利用することができます。また、それぞれ事業内容のニーズに合ったサブスクプランをデザインできるほか、サブスクに関わるあらゆる管理業務の効率化と最適化を実現できます。
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