課題
Brian Halligan 氏と Dharmesh Shah 氏は 2006 年にマサチューセッツ州ケンブリッジで HubSpot を設立。HubSpot は、リードジェネレーション、ウェブサイト分析、ソーシャルメディアモニタリングなどの機能に特化したインバウンドマーケティングプラットフォームです。このプラットフォームを基盤として、Marketing Hub、Sales Hub、Service Hub、Content Hub、Operations Hub といった顧客関係管理 (CRM) ツール群を構築し、サービス向上を図りました。
このプラットフォームに導入する機能が増えるにつれ、顧客からサポートを求める声が届き始めます。請求管理や決済の機能を追加することで自社の技術スタックを統合したいという要望です。そこで HubSpot は 2021 年、請求管理、収益追跡、販売・CRM 戦略強化のためのツールを備えた Commerce Hub を開発しました。
HubSpot はシームレスな顧客体験をより早く、より少ないリスクで提供するために、決済処理に関する主要な企業を比較検討しました。最も優先したのは、HubSpot と同様にユーザーの利便性に重点を置きながら、高度なテクノロジーを提供するパートナーを見つけることです。ただし、カスタマイズに際して堅牢かつ開発者が簡単に使える API と、事前に構築されたユーザーインターフェイスコンポーネントの両方を提供できるパートナーでなければなりません。同時に、柔軟なテクノロジーも重要な要件でした。一部の顧客を対象としたホワイトラベルの決済ソリューションの開発をサポートする一方で、すでにオンラインで決済を受け付けている顧客がそのアカウントを Commerce Hub に統合できる柔軟さが必要でした。
HubSpot はサービスのアップグレードを定期的に行っています。そのため、複数の決済手段や継続支払いへの対応など、追加機能を簡単に開発できる柔軟で機能豊富なソリューションも必須の要件になります。それらを踏まえた理想的なパートナーの条件は、分析を強化し、意思決定を促進する高度なレポートツールを提供できることでした。
ソリューション
HubSpot は、イノベーションと顧客体験に対する考え方や取り組みが一致する Stripe をパートナーとして選択し、Commerce Hub を開発しました。HubSpot のユーザー体験担当バイスプレジデント、Libby Maurer 氏は次のように述べています。「パートナーシップの決定に際して特に重視したのは、Stripe が決済業界のパイオニアとして重要な役割を果たしているという点でした」。HubSpot が導入した Stripe Connect はシステム統合の基盤となりました。Stripe Connect は、支払いの回収や入金など、複数の当事者間での資金移動を可能にするソリューションです。これにより、HubSpot 特有のユースケースに基づいて資金の流れをコントロールできるようになりました。
HubSpot の社内チームは、Stripe の API と豊富なドキュメントを活用し、Connect の決済機能と資金ルーティング機能を Commerce Hub に実装します。マニュアルが充実しているため、Stripe の各種機能の最適な使用方法も確認できます。社内チームは Stripe のコマンドラインインターフェイス (CLI) と Stripe ワークベンチの開発者ツールを使用することで、Stripe API を自分たちでテストするとともに、Connect プラットフォーム内のオブジェクトを調べることができました。
Connect はまた、顧客に 2 つの決済オプションを提供するという HubSpot の目標にも貢献しました。具体的には、アメリカ内のプレミアムアカウントが利用できるホワイトラベルの HubSpot Payments と、無料およびプレミアムのすべての HubSpot アカウントが利用できる「Bring-your-own-Stripe (自分の Stripe アカウントを使用)」という 2 つの決済オプションです。Bring-your-own-Stripe の場合、顧客は自分の Stripe アカウントを使用して支払いを処理できます。HubSpot はまた、Stripe アカウントを新規登録する顧客向けに、Stripe の API を使用して独自のアカウント登録フローを実装。Commerce Hub 内でより一貫性のあるアカウント登録を実現しました。
Commerce Hub では当初、Stripe Payments をオンライン販売用の HubSpot の見積もり・決済リンクツールに導入することで、1 回限りのカード取引に対応していました。その後、Stripe の他のプロダクトを活用し、継続支払い、複数の決済手段、Commerce Hub 請求書などの機能を追加しました。これにより、複雑なニーズを持つ HubSpot ユーザーに対応しながら、より多くの請求処理をプラットフォームに移行できるようになりました。
HubSpot は 2023 年に Stripe の最適化された決済プロダクトを導入。決済体験をさらに向上させました。このプロダクトには、埋め込み可能な各種の UI コンポーネント Stripe Elements が含まれています。HubSpot は Payment Element を実装し、ユーザーがさらに多くのグローバルな決済手段を利用できるようにしました。同社はまた、決済を高速化する Stripe のソリューション Link を導入。Link は顧客の支払い情報を保存し、次回以降の購入時にその情報を自動入力します。Payment Element は HubSpot のグローバルな事業拡大計画にも貢献しています。Payment Element により、ヨーロッパでは SEPA ダイレクトデビット、カナダでは PAD (プレオーソリデビット)、オーストラリアでは BECS ダイレクトデビットなど、各地域の銀行振込オプションを簡単に追加できるようになりました。さらに、Payment Element と Stripe Financial Connections との連携を簡単に構築。銀行口座を即座に確認し、ACH 不正利用のリスクを軽減できました。
HubSpot は Stripe プロフェッショナルサービスチームとの連携を継続・発展させています。プロフェッショナルサービスチームは Connect の初期導入サポートを提供。また、HubSpot の決済アドバイザーとして HubSpot のチームと密に連携しながら、誠実で協力的なパートナーシップの中で、専門知識などの重要なリソースを提供しています。
また、HubSpot は Stripe と提携し、市場参入戦略を加速。Stripe のマーケティング専門家と協力して、連携ソリューション向けの共同バリュープロポジションとセールスイネーブルメント資料を作成しました。これを基盤として、Stripe の市場参入チームと協力し、新規リードの創出・獲得と、最大の決済案件での共同販売を行いました。
「Stripe のサポートのおかげで、当社のポジショニングとメッセージングを素早く策定できました。顧客対応チームはそれに基づき、当社のソリューションを裏打ちする、他社とは一線を画したストーリーを伝えることができました」(Maurer 氏)
結果
16,000 以上の加盟店が Commerce Hub を日常的に利用
Commerce Hub は現在、16,000 以上の加盟店にサービスを提供しています。請求と決済の管理に Commerce Hub を導入した加盟店から、収益アップと業務の効率化を実現できたという声が寄せられています。Commerce Hub を追加したことで、HubSpot はさらに強力なフルサービス型のソリューションとなっています。
「フロントオフィスチームは、顧客とのあらゆる接点について可能な限り多くの分析情報を得たいと考えています。一方で、経営者や幹部は、データの統合機能とツールの一元化機能を求めています」。Maurer 氏は続けます。「Commerce Hub は中小規模企業のこうしたニーズをすべて満たし、事業拡大を容易にするソリューションです」
複数のアカウント登録方法により、HubSpot ユーザーの選択肢が拡大
Stripe の API は柔軟性に優れているため、Commerce Hub アカウントの登録方法を簡単に追加できます。すでに Stripe のアカウントを持っているユーザーは、数回クリックするだけで簡単に利用を開始できます。アカウントを持っていないユーザーは、HubSpot Payments に登録するか、導入用の Stripe アカウントを新規に作成できます。「両方の登録方法を提供することで、お客様は柔軟に登録できるようになりました。Stripe アカウントをすでにお持ちの場合も、そうでない場合も、ニーズに合ったソリューションが用意されています」(Maurer 氏)
最適化された決済プロダクトが HubSpot ユーザーを支援し、顧客ニーズへの対応が容易に
Payment Element を導入すると、口座引き落としなど、クレジットカード以外の世界中でよく使われているさまざまな決済手段をスピーディーかつ簡単に追加できます。それにより、HubSpot と加盟店の両方が決済の受け付けコストを削減できました。HubSpot 加盟店のアメリカの顧客にとって、ACH ダイレクトデビットはカードに次いで人気の高い決済手段であり、決済額の 29% を占めています。ヨーロッパの顧客にとっては、Apple Pay がカードの代替手段として最も人気があり、決済額の 13% を占めています。また、決済を高速化する Stripe のソリューションである Link は、すでに HubSpot ユーザーの 26% が導入しています。
それぞれの国や地域に特化した決済手段に対応することは、HubSpot のグローバルな事業拡大の原動力となっています。「SEPA、PADS、BECS など、現地の口座引き落とし決済手段を追加できることは、海外ユーザーのニーズに応える上で非常に重要な要素となっています」(Maurer 氏)
Stripe と連携したことで、複数の決済処理オプションを提供できるようになり、加盟店と顧客の全体的なユーザー体験が向上しました。