イギリスでは、決済規制が資金の移動の仕方、決済代行業者の運営方法、企業による信頼性の高い金融商品の構築方法などを決定します。決済規制によってロンドン銀行間自動決済システム (CHAPS) などの主要な決済プロセスが決まります。2025 年に CHAPS が処理した決済数は 5,330 万件、約93.9 兆ポンドでした。規制で定められているのは、決済代行業者の認可を受けるための要件、企業が顧客の資金を保護する方法、そして金融行動監督機構 (FCA) が安全性、透明性、回復力を測る際に用いる基準です。
ここではイギリスの決済規制の柱、日々の業務の管理方法、イギリスの法令遵守要件を満たすための戦略について見てみましょう。
目次
- イギリスの決済規制の種類
- 決済代行業者を管理するイギリスの規制枠組み
- イギリスにおける法令遵守義務の仕組み
- イギリスの決済規制が事業運営に及ぼす影響
- 金融サービスのあり方を決定するイギリスの決済規制
- イギリスの決済規制に対処する際に企業が抱える課題
- イギリスの決済規制に準拠する方法
- Stripe Payments でできること
イギリスの決済規制の種類
イギリスでは、企業が決済サービスを提供するには、FCA に登録し承認を受ける必要があります。企業はストアードバリュー(例: ウォレット残高、プリペイドカード、アプリベースのアカウント) を発行する場合、電子マネー機関 (EMI) または小規模登録電子マネー機関 として認可を受ける必要があります。
イギリスの決済規制では、事業運営の認可要件、顧客資金の取扱い方法、そしてシステムに求められるセキュリティと透明性の水準を定めています。主要な規制は以下の通りです。
Payment Services Regulations 2017: イギリスの決済サービスを管理する中核的な枠組みです。これには事業の認可、顧客の権利、決済実行の期限、透明性、未承認取引に対する賠償責任などが含まれています。
Electronic Money Regulations 2011: プリペイドアカウントなどのストアードバリューを発行、管理する事業者向けのルールであり、顧客の資金保護について厳格な要件を課しています。
FCA の規則: 決済機関および電子マネー機関に対して認可の維持、行動基準の遵守、資産保護、報告義務、ガバナンスを徹底させる継続的な規制監督を定めています。
マネーロンダリング防止 (AML) 規制: 金融犯罪を防止するための顧客の本人確認、取引のモニタリング、疑わしい行動の報告に関する要件を定めています。
決済代行業者を管理するイギリスの規制枠組み
イギリスの規制では、決済代行業者 (PSP) が遵守すべき業務の遂行方法を規定しています。FCA は期待値を設定しており、企業にはそれを満たす責任があります。
主な要件としては次のようなものが挙げられます:
認可と業務範囲: 企業は決済機関または EMI として認可を取得するか、あるいは小規模登録業者として業務を行う必要があります。認可の取得にはビジネスモデルの提示、十分な自己資本、決済を確実に管理・保護できる体制が求められます。
顧客資金の保護: 企業は顧客の資金を分離口座に保持し、毎日その残高を照合する必要があります。
セキュリティと不正利用対策: PSP は強力な顧客認証 (SCA) を実装し、疑わしい行動を迅速に検知、調査できる不正利用モニタリングシステムを維持する必要があります。重大なセキュリティ上の問題が発生したら、遅滞なく FCA に報告しなければなりません。
顧客行動要件: 規制では、企業と顧客とのコミュニケーションの方法、手数料の明確化、決済の実行、不審請求の申し立てへの対応などが規定されています。これらのルールには、承認されていない取引に対する返金期限や顧客の決済完了前に必要な情報を提示すべきタイミングについて、厳格な規定が含まれています。
マネーロンダリング防止 (AML) 遵守義務: 企業は顧客の本人確認を行い、取引のリスクシグナルの監視、疑わしい行動について当局に報告しなければなりません。
ガバナンスと報告: PSP は強固な内部管理体制を随時実施し、詳細な記録を保管するとともに、FCAに対して取扱高、インシデント、資産保護状況、苦情件数などのデータを定期的に報告する必要があります。
イギリスにおける法令遵守義務の仕組み
イギリスの法令遵守要件は、企業による顧客の登録方法、活動の監視や資金保護の方法、顧客対応、そして不測の事態が発生したときの対処方法まで、事業運営のあり方を規定しています。法令遵守のために PSP が管理すべき事項は次のとおりです:
顧客の本人確認: 企業は KYC 基準に従い、個別の身元確認や法人の実質的支配者の特定などを通じて顧客の本人確認を行う必要があります。これにより、企業は高リスクの顧客の属性や取引目的を把握しやすくなります。
取引のモニタリングおよび不正利用の制御 決済行動は、不正利用や金融犯罪を示すパターンがないか、リアルタイムでスクリーニングされます。不審な兆候が見られた場合、企業は迅速に調査を行い、場合によっては不正利用防止ルールに基づいて決済を一時保留または遮断することがあります。
顧客の資金の保護と照合: 顧客の資金は企業の運転資金とは切り離され、専用のセーフガーディング口座にて分別管理されます。日次の残高照合と定期的な外部監査を実施することにより、顧客の資産が 1 ポンド単位に至るまで確実に保護されていることが実証されます。
顧客の権利と通知: 企業は顧客に対して手数料、為替レート、支払いのタイミングなどの情報を明示する必要があります。顧客が不正な決済を報告した場合、企業にはその金額を速やかに返金するよう求められます。
内部ガバナンスと監督: コンプライアンスチームはポリシーの策定、スタッフへの研修、アラートの確認、規制の変化に応じた書類の刷新などを行います。
日常の対応: 不正還付ルールの更新、SCA に求められる水準の変化、資産保護に関する指針の改定などにより、規制ルールは常に変化しています。企業はそれに応じて業務プロセスやプロダクトの設計、顧客への情報提供などを随時更新する必要があります。
イギリスの決済規制が事業運営に及ぼす影響
決済規制を遵守することにより企業は損失を減らすだけでなく、さらに持続可能な成長を実現する余地が生まれます。その方法をご紹介します。
コンバージョンと決済への影響: SCA などの規制要件はオンライン決済のプロセスを煩雑化させ、コンバージョンを低下させる可能性があります。しかし、認証ツールの高度化やカード発行会社側の機能改善により、不正利用を削減しつつ利便性との間の乖離を解消することができます。
不正利用の削減と財務の安定化: セキュリティおよびモニタリングルールを遵守することで、企業は不正利用による損失やチャージバックを回避することができます。その結果、利益率が向上し、安定的な決済の受け付けが確保されるとともに、カードネットワークからの制裁金やアカウント凍結のリスクを軽減できます。
顧客の信頼と利用の定着: FCA の監督下で事業を行う企業は、規制遵守によって裏付けられた高い信頼性という大きなメリットを享受できます。顧客の権利を明記し、不審請求の申し立てを迅速に解決し、さらに手数料を明確にすることは、顧客の信頼と利用頻度を高め、ロイヤルティの醸成につながります。
提携と事業拡大に向けた道のり: エンタープライズ企業、銀行、マーケットプレイスは多くの場合、連携に先立ち、提携企業が規制を遵守していることを証明するように求めます。強固なコンプライアンス姿勢を示すことは、収益の向上や新市場への参入に直結するのです。
金融サービスのあり方を決定するイギリスの決済規制
決済に関わる規則は市場の変化の仕方に影響を及ぼすものです。ここではイギリスの金融サービス業界を形作った規制の変化についてご説明します。
法的に整備された基盤としてのオープンバンキング:イギリスが改正決済サービス指令 (PSD2) を施行したことで、銀行に対してアプリケーションプログラミングインターフェース (API) 提供を義務化しました。それによりアカウント間 (A2A) 決済とデータ駆動型の金融サービスが実現しました。こうした規制による後押しのおかげで、2025 年 7 月にはイギリス国内のオープンバンキングの利用者数が 1500 万人を超えました。
認証基準の強化: SCA はオンライン決済の二段階認証基準を策定することで電子商取引を再編しました。これによりプロバイダーは安全性の高い決済フローを構築する必要に迫られました。
アクセスによる競争: 決済システムを監督することで、非銀行系プロバイダーによる中核的システム (Faster Payments など)へのアクセスが容易になりました。これにより新興の PSP が成長するための機会が生まれ、価格、スピード、顧客体験の質などを競い合う環境ができました。
不正利用防止に対する期待: APP 詐欺に対する新たなルールでは、金融機関に対して疑わしい送金の一時停止と被害者への返金を義務付けています。こうした義務が課されたことで、決済代行業者は検知システムと顧客教育に対する投資を増やしており、それが業界全体の水準の引き上げにつながっています。
フィンテックの成長を後押しする予見可能性の高いガードレール: 認可要件の明確化と継続的な監督により、投資家と顧客は規制対象の金融機関が安全性と信頼性に対する高い期待に応えていると確信できます。その結果、システムを損なうことなく新規参入者が迅速に成長できる市場が生まれます。
イギリスの決済規制に対処する際に企業が抱える課題
イギリスの決済規制を理解するのは難しいと感じられるかもしれません。複数の規制制度に対応する必要がある上、迅速な適応とある程度の実務的習熟度が必要になるからです。
一般的な障壁としては次のようなものが挙げられます。
複数のルールブック間に存在するニュアンスの違い: 決済はイギリスにおける複数の規制領域と密接に関わっています。マネーロンダリング防止 (AML) ルール、データ保護法、カードスキームの要件、オープンバンキング基準などすべてが適用対象となります。これら重複箇所と相違点を理解するには、継続的に注視する必要があります。
小規模金融業者のリソース上の制約: 法令遵守のためのツールの導入、監査、専門家の雇用などにはお金がかかります。スタートアップでは限られたチームで認可の取得、ポリシー、リスク評価、そしてプロダクトの開発を網羅しているため、管理に不備が出る恐れがあります。
規制要件の変化: 不正利用に対する補償、SCA の最適化、顧客資産保護の指針、そして実務上のレジリエンス基準は常に更新されており、企業は常に最新のものに適応する必要があります。イギリスとEU 双方で事業を行う場合、ブレグジット後の段階的な規制の乖離に対応しなければなりません。
提携先やインフラへの依存: 企業は PSP、銀行、カードネットワーク、ベンダーと連携して資金保護や本人確認、カード情報のセキュリティなどの法的義務を履行しています。提携先の対応が遅れたり何らかの制約が課されたりすると、パートナーとなっている企業はたとえ自社のシステムが万全であっても影響を受ける可能性があります。
専門人材と知識の不足: 社内に専門的な知見が不足していると、規制要件を誤解したり FCA の要件の水準を過小評価したりするリスクが発生します。
イギリスの決済規制に準拠する方法
イギリスの決済規制の枠内で事業を行う企業は、コンプライアンスを自社の中核的戦略の一部として有効に扱っています。その方法をご説明します。
コンプライアンスを早い段階で商品に組み込む: 初期の段階で規制上の制約を理解しているほど、アカウント登録のフロー、決済手段、データの取り扱い、顧客とのコミュニケーションについて適切な判断ができます。
経験豊富な人材や提携先に頼る: 法令の知識と経験がある人材を雇う、または専門家と早い段階から提携すると、企業は安定した基盤を手に入れられます。Stripe のような FCA 認可プロバイダーと提携することで、運用面やセキュリティ面での要件を簡素化することも可能です。
可能な限り自動化を進める: 電子的な KYC チェック、取引監視システム、認証、監査対応のデータパイプラインなどは、いずれも柔軟な法令遵守を可能にします。
研修を企業文化にする: エンジニア、サポートチーム、プロダクトマネージャーなどが既成の仕組みを理解して入れば、問題が発生した場合に早い段階で気づくことができ、それに関わる設計が可能になります。
規制の変更を先取りする: FCA や財務省による更新のモニタリング、ガイダンスの見直し、先を見越した法令遵守のロードマップを維持することはいずれも土壇場での対応を避ける上で有効です。
コンプライアンスを強みとして活用する: 情報開示、安全な認証、不審請求の申し立てへの公平な対応、協力は不正利用防止措置があることで、顧客維持率が向上します。期待に応えられる企業は多くの場合、法令遵守が取引先や新規顧客企業、または大企業のクライアントに販売する際の差別化要因の一つになると理解しています。
Stripe Payments でできること
Stripe Payments は、統合型のグローバルな決済ソリューションです。成長著しいスタートアップからグローバル企業まで、オンラインや対面など、場所を問わず世界中での決済対応を可能にします。
Stripe Payments は以下のような場面でご活用いただけます。
決済体験の最適化: 構築済みの決済 UI、125 種類以上の決済手段へのアクセス、Stripe が構築したウォレットである Link により、スムーズな顧客体験を実現し、エンジニアリング工数を何千時間も節約できます。
新市場への迅速な展開: 195 カ国、135 以上の通貨で利用可能なクロスボーダー決済オプションにより、世界中の顧客にリーチし、多通貨管理の複雑さとコストを軽減できます。
対面とオンラインの決済を統合: オンラインと対面のチャネル全体でユニファイドコマース体験を構築し、インタラクションをパーソナライズし、ロイヤルティに報い、収益を拡大できます。
決済パフォーマンスの向上: ノーコードの不正利用対策や、承認率向上のための高度な機能を含む、カスタマイズ可能で設定が簡単な決済ツールを活用して、収益を増やせます。
柔軟で信頼性の高いプラットフォームで迅速に成長: 過去の稼働率 99.999% と業界トップクラスの信頼性を備え、ビジネスの成長に合わせて拡張可能なプラットフォーム上で構築できます。
Stripe Payments がオンラインおよび対面決済をどのように強化できるかについての詳細はこちらをご覧ください。または今すぐ始める。
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