デジタル製品の販売は、今日 E コマースビジネスの立ち上げを検討しているすべての人にとって魅力的な選択肢となっています。ソフトウェア、音楽、ポッドキャスト、オンライン講座、電子書籍は、物理的な商品のように高額な物流コストをかけずとも収益を上げることができるデジタル製品の例です。本記事では、デジタル製品の概要をはじめ、オンラインビジネスを立ち上げるにあたり販売に適した製品の選び方、イタリアで従わなければならない規則について解説します。
この記事の内容
- デジタル製品とは?
- デジタル製品をオンラインで販売するメリット
- デジタル製品の販売デメリット
- イタリアでのデジタル製品の販売方法
- 売れ行きの良いデジタル製品
- デジタル製品の販売場所
- デジタル製品の生産者 / 販売者に対するイタリアの規制
デジタル製品とは?
デジタル製品は電子形式でのみ存在するため、顧客は通常、直接ダウンロードするか、アプリまたはメールを通じて受け取ります。継続的な生産や複雑な物流を必要とせずに高い利益を生み出し、かつ簡単に拡張できるさまざまな商品・サービスがデジタル製品として含まれます。たとえば、次のようなものがあります。
- 電子書籍
- 音楽、ポッドキャスト
- ソフトウェア、アプリケーション
- オンライン講座 / チュートリアル
- デジタルモデル / テンプレート
- デジタル写真 / イラスト
デジタル製品と物理的な製品の違い
無形の商品とは異なり、有形の商品は触れたり直に扱ったりすることができますが、配送や代引きなどが必要です。しかし、どちらの形態にも共通点はあり、たとえば EC プラットフォームやオンラインマーケットプレイスで購入することが可能です。また買い手は、物理的な製品、ダウンロード可能なデジタルファイル、特定のコンテンツに一定期間アクセスできるサブスクリプションなど、製品の種類を問わず所有権を取得できます。
デジタル製品をオンラインで販売するメリット
物理的な製品と比較して、デジタル製品には、オンラインベンチャーを始めようとしている人々にとって魅力的な要素を持ちます。
諸経費の削減
生産、保管、配送のコストを支払う必要がなく、在庫を管理する必要もありません。これらすべてが、ビジネスコストの大幅な節約になります。受動的収入
これらの製品は一度作成すれば、販売されるたびに収益を生み出し続けます。これにより、最小限の労力で、または継続的な努力なしで収入を得られます。利益率の向上
商品の処理に継続的なコストがかからないということは、売上のほとんどを利益として確保できることを意味します。拡張性
デジタル製品は、コピーするだけで費用をかけることなくほぼ無制限のユーザーと共有できます。グローバル流通
デジタル製品は物理的な生産や複雑な物流を介することなく、インターネット経由で世界中のユーザーに届けることができます。
デジタル製品の販売デメリット
デジタル製品のオンライン販売には課題も伴います。
熾烈な競争
デジタル製品を販売するオンラインビジネスを始めるのは比較的簡単で、費用も手頃なため、注目を集める工夫を別で行う必要があります。無料コンテンツとの競合
多くの場合、商品やサービスの無料版が顧客に提供されています。提供する製品が価格に見合えるだけの価値がある根拠と、製品に価値がある理由を顧客に示せるようにしましょう。そのためには、持ち得るスキルや経験をアピールし、肯定的なフィードバックを共有し、顧客の要望に合わせて製品をカスタマイズするなどの努力をする必要があります。海賊行為
有形物も偽造される可能性がありますが、通常、その方法は多分にコストがかかり、しかも複雑です。電子商品はコピーや共有が簡単なため、ファイルの暗号化などの対策を講じて不正コピーを防ぐか、アートの場合は商標登録や著作権で保護することを検討してください。
デジタル製品の販売におけるメリットとデメリットのまとめ
メリット |
デメリット |
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イタリアでのデジタル製品の販売方法
イタリアで合法的かつ効果的にデジタル製品事業を開始するには、いくつかの基本手順に従う必要があります。税務登録から電子請求書の送付に至るまで、法律や税法を理解することは、罰金を回避し、ビジネスを円滑に運営するためのカギです。
VAT 番号の取得
そもそも、デジタル商品を販売するのに付加価値税 (VAT) 番号が必要であることを疑問に呈する人もいるかもしれません。このような製品は、1 回限りまたは不定期のアクティビティで提供されるものであり、さらに企業が直接販売するのではなく、サードパーティーのプラットフォーム (マーケットプレイスなど) を介して販売されます。それでも、オンラインストアを作成した場合は、VAT 番号を取得する義務が発生します。VAT は、ATECO コード 47.91.10 (ウェブ上のすべての商品の小売販売) で登録します。登録は、イタリア歳入庁 (Agenzia delle Entrate) で直接行うか、会計士の協力を得て行うことが可能です。デジタル製品の VAT 税率の確認
イタリアでは通常、デジタル製品に 22% のVAT税率が課されます。デジタル出版商品など、一部の商品は軽減税率の対象となる場合があります。EU の VAT 規則によると、売り手は買い手の居住国に基づいて VAT を請求しなければなりません。企業登録簿への登録と SCIA の提出
電子商品を定期的に販売することは正当な商業活動と見なされるため、企業登録簿に登録し、地方自治体のワンストップビジネスアドバイザリーセンター (SUAP) に事業開始の認定通知書 (SCIA) を提出する必要があります。著作物の配信などの特定のケースでは、イタリア著作者出版者協会 (SIAE) への登録が必要になる場合があります。税制の選択
立ち上げのプロセスを進める上で、適切な税制を選択することは不可欠です。定額税制 (form forfettario) は、一律税率 15% (最初の 5 年間は 5% に引き下げ) のため、年間売上高が €85,000 未満で運営コストが少ない事業者に適しています。この上限を超えると、累進個人所得税 (IRPEF) と VAT 控除制度が適用される通常の税制に自動的に移行します。会計士と相談して、会社の状況に最も適した税制を選択するようにしましょう。
オンライン販売するデジタル製品の選び方
事業を立ち上げるために必要な書類をすべて準備したら、次はオンラインで販売するデジタル製品を決定します。考慮すべき主な要素は次のとおりです。
市場調査の実施
デジタル製品を作成・販売する前に、市場を調査します。他のウェブサイトはどのような製品を提供していますか?販売対象となるのはどのような顧客ですか?市場ではどのような料金体系が提供されていますか?調査を通じて、業界の動向、顧客の需要、業界にあるギャップを特定しましょう。経験と個人スキルの活用
過去の仕事や個人的な経験を考慮し、スキルや趣向に合ったものを販売すると、製品の作成や宣伝がしやすくなります。写真の専門家であれば、高度な撮影テクニックに関するビデオチュートリアルを作成し、グラフィックデザイナーであれば、テンプレートパックや厳選されたビジュアルアセットを提供できるかもしれません。利益率と拡張性の把握
生産コストが低いうちに、将来的なリターンと成長を評価しましょう。たとえば、質の高いオンライン講座は、定期的なアップデートが必要な製品とは異なり、余分なコストをかけずに繰り返し販売することができます。成長分野と永続製品への注力
E ラーニング、デジタルマーケティング、生産性ツール、グラフィックデザインなどの分野は今日、急速な発展を遂げています。コース、電子書籍、テンプレート、ソフトウェアなどの永続製品は、安定した需要を確保し、すぐに陳腐化するリスクを低減できます。
売れ行きの良いデジタル製品
ミラノ工科大学の Digital Innovation Observatories の調査によると、イタリアの消費者は 2024 年にデジタルコンテンツに 37 億ユーロを費やしており、前年から約 2 億ユーロ数字を伸ばしています。売上が特に高かったセグメントは次のとおりです。
- ビデオエンターテインメント: 17 億ユーロ (総消費額の約 45%)
- ゲーミング: 15 億ユーロ超 (総消費額の 39%)
- デジタルオーディオ (音楽、オーディオブック、ポッドキャスト): 3 億 8,000 万ユーロ (総消費額の 10%)
- デジタル出版 (ニュース、電子書籍): 1 億 8,000 万ユーロ超 (総消費額の約 5%)
デジタル製品の販売場所
デジタル製品の販売チャネルは主に 3 つあります。専用オンラインストア、デジタルマーケットプレイス、ソーシャルメディアです。これらのオプションについて、以下で詳しく見てみましょう。
専用オンラインストア
オンラインストアを構築すると、価格設定、ブランディング、マーケティングを完全に制御できます。オンラインストアの主な利点は、販売手数料がかからないこと (ホスティング手数料、管理コストを除く) と、強力かつ訴求力の高いブランドを構築できることです。ショップの運営を一人で行う場合、SEO、サイトセキュリティ、決済システムのセットアップなど、技術的なノウハウが通常よりも多く必要です。また、顧客を呼び込むか、どのマーケティング戦略を使用するかも、完全に運営者の裁量に委ねられます。
デジタル製品ベンチャーを立ち上げようとしている場合、決済サービスプロバイダーも検討すべき重要な要素の 1 つです。ビジネスの種類に最も適した決済手段を提供しながら、取引を迅速かつ効率的に管理するには、適切なプロバイダー選びが重要になります。Stripe Payments などのソリューションは、最適化された決済プロダクトを通じて、世界各地でオンラインと対面の両方で決済を受け付け、購入完了率を高め、コンプライアンスを確保し、何千時間分もの技術作業を節減します。
マーケットプレイス
マーケットプレイスは、上記のオプションの中で最も簡単かつ迅速な選択肢のように見えます。インフラが整っており、デジタル製品をオンラインで販売するための市場が組み込まれているからです。一方で、プラットフォームが会社の利益の一部 (金額が多額になる場合もあります) を徴収したり、サードパーティーに製品の販売を部分的に管理してもらうなどの欠点があります。それでも、EC サイトを構築し始めようとしていて、かつ経験や予算がないような場合は、賢明な選択肢となります。
ソーシャルメディア
ソーシャルメディアでは、直接 (ウェブサイトを介さず) またはオンラインストアへのリンクを通じてデジタル製品を販売することができます。このオプションの最大のメリットは、参入コストが低く、バイラルコンテンツを利用して製品の認知度を高められることです。とはいえ、売上はエンゲージメントとコミュニティの構築具合に大きく依存しており、それを十分に高めるには時間と堅実なコンテンツマーケティング戦略が必要であることを覚えておいてください。
デジタル製品の生産者 / 販売者に対するイタリアの規制
イタリアでデジタル製品を販売するということは、買い手と売り手を保護する厳密な規制を遵守しなければならないことを意味します。これらの規則は、消費者の権利、知的財産、請求処理、VAT 税管轄区域、ライセンス契約を保障するために存在します。
消費者保護と取消権
オンラインでデジタル製品を購入するイタリアの消費者は、消費者法 (政令 206/2005) および消費者の権利に関する指令 2011/83/EU によって保護されています。物理的な製品と比較して、取消権に関連する規則など、いくつかの特記があることに注意することが重要です。E コマースでは、顧客は通常 14 日間の取消権を有しており、その期間内であれば考えを変更して契約をキャンセルすることができます。非物理的な媒体を通じて提供されるデジタルコンテンツなどの契約については、消費者の明示的な同意のもとに手続きが開始されます。この場合、取消権を失うことを認めた場合に取消権が除外の対象となります。また、購入後、引き渡しまでの手続きが開始されると、返金ができなくなる可能性がある旨を購入者に通知しなければなりません。さらに、詳細な説明と明確な利用規約を提供し、デジタル製品が期待に応えるものであることを保証する必要があります。
知的財産と著作権
電子書籍、オンライン講座、ソフトウェア、テンプレート、音楽は著作権法 (法律 633/1941) の下で保護されています。つまり、デジタル製品を作成および販売する人は、権利をあらかじめ有しており、再販する事業者は、そのためのライセンスを取得しなければなりません。保護された著作物を許可なく使用すると、罰金や民事訴訟などの法的措置につながるおそれがあります。製品を保護するために、SIAE への登録、デジタル著作権管理、販売契約や使用許諾契約における使用条件の明文化などの手順を実行できます。
請求処理および VAT 税管轄区域
デジタル製品の販売は、直接的な E コマースと見なされます。買い手が特に要求しない限り、企業と消費者間 (B2C) の E コマース請求書は発行する必要はありません。同様に、売上領収書や税金領収書も提供しなくて構いません。しかし、大統領令第 24 条 633/1972 で作成を義務付けられている台帳に毎日の売上高を記録する必要があります。この記録を基に、納付すべき VAT 額が計算されます。
また、企業間 (B2B) の E コマースの場合は、常に請求書を発行しなければなりません。
E コマースでデジタルサービスを販売する場合、売り手の所在地 (EU 加盟国か非加盟国か) に関係なく、顧客の所在国の VAT が B2B および B2C 取引で課税されます。
B2B 取引と B2C 取引は、VAT の適用方法にのみ大きな違いがあります。
B2B 取引の場合、大統領令第 7 条 633/1972 に基づき取引の VAT が免除されるため、売り手は VAT 非課税の請求書を発行します。一方で顧客は、リバースチャージ制度により、VAT を会計処理して申告する責任を負います。
B2C 取引の場合、VAT は売り手 (EU または EU 域外を問わない) が直接納付します。この規制に準拠するには、専用のワンストップショップ (OSS) 制度を通じて買い手の国での VAT 登録を完了しなければなりません。
ライセンス契約
ライセンス契約は、デジタルコンテンツの利用規約を定義し、知的財産権を保護するための重要な要素です。必要な契約を結んでいない場合、再配布や改変などの不正行為を防ぐことが困難になります。
イタリアでは法律 633/1941 が著作権の法律にあたり、権利の付与とデジタルコンテンツの使用に関する規則を定めています。ライセンス契約は、無効な条項を避けるために、この法律に沿って作成されなければなりません。
中でも以下に関する条項は、具体的に定めるようにしてください。
- 許諾権利 (独占 / 非独占権)
- 権利期間
- 使用制限 (転売禁止など)
- 保証および責任
- 地理的制限および違反措置
契約を適切に作成することで売り手と買い手の両方が保護され、デジタル製品の販売に関する法的リスクを最小限に抑えられます。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。