付加価値税 (VAT) は、スウェーデンの個人事業主にとって重要な考慮事項です。いつそれを支払うか、どのように提出するか、どのようにキャッシュフローの問題を回避するか、を知っておく必要があります。正しく行えば、VAT は個人事業主のワークフローの一項目にすぎません。しかし対処を間違えると、延滞料が発生したり、利息を請求されたり、Skatteverket (スウェーデン税務庁) から呼び出しを受けたりする可能性があります。

スウェーデンの VAT システムは、体系化され、予測可能であり、法令遵守のためのツールがたくさんあります。以下では、スウェーデンで個人事業主として、ストレスなく、ビジネスに適した戦略で期限内に VAT を支払う方法について説明します。

この記事の内容

• スウェーデンの個人事業主が VAT を支払うべきケースと頻度
  
• スウェーデン VAT を支払う方法
  
• VAT 支払い期限に間に合わなかった場合について
  
• 個人事業主が VAT 支払いを最適化しキャッシュフローを改善する方法
  
• スウェーデンの個人事業主向けの VAT 支払いに関するサポート
  

スウェーデンの個人事業主が VAT を支払うべきケースと頻度

ビジネスの課税対象売上が 年間 120,000 スウェーデンクローナ (SEK) を超える場合は、VAT に登録する義務があります。このしきい値を下回っている場合は、VAT を請求したり申告したりする必要はありませんが、ビジネスにメリットがある場合は自発的に登録できます。登録したら、VAT 申告書を提出し、決められたスケジュールで VAT を支払う必要があります。その頻度は、予想される売上高と登録時の選択内容によって異なります。

• 毎年: 売上高が 100 万 SEK 以下の場合は、年に 1 回 VAT を申告して支払うことを選択できます。所得税の申告が不要な場合、または他の EU 加盟国と取引している場合は、通常、課税年度終了後 2 か月目の 26 日までに VAT を報告して支払わなければなりません。所得税申告書を提出しており、他の EU 諸国と取引がない場合は、期限は通常、課税年度の翌年の 5 月 12 日です。

• 毎四半期: 売上高が 4,000 万 SEK 以下の場合は、3 か月ごとに VAT を報告して支払うことを選択できます。期限は通常、四半期終了後 2 か月目の 12 日です (例: 第 1 四半期の VAT の期日は 5 月 12 日です)。

• 毎月: 売上高が 4,000 万 SEK を超える場合は、毎月の申告が必要です。期限は、各申告月の翌月 26 日です (12 月は 27 日)。売上高が 4,000 万 SEK 以下の企業も、毎月の申告を選択可能です。その場合、期限は通常、月次報告期間の翌々月の 12 日 (1 月と 8 月は 17 日) です。

申告頻度に関係なく、支払い期日は必ず VAT 還付と同日です。一定期間に VAT の納税義務がゼロであっても、VAT 登録済みであれば申告書は提出しなければなりません。Skatteverket は、登録時にユーザーの申告スケジュールを確認します。また、ウェブサイトに期日が掲載されており毎年更新されます。

スウェーデン VAT を支払う方法

VAT を支払うには、貴社の売上高、仕入 VAT、仮受 VAT の詳細を記載した規定の VAT 申告書を提出する必要があります。最も簡単で速い方法は、Skatteverket の VAT e-service (英語とスウェーデン語で利用可能) を使用することですが、紙のフォームも利用可能です。対象期間の VAT を計算したら、いくつかの方法で支払えます。

オンライン銀行振込

VAT の金額を銀行振込で Skatteverket の銀行振替番号 (5050-1055) に送金します。支払いが正しく入金されるように、光学式文字認識 (OCR) 参照番号を必ず含めてください。OCR 番号は、税務アカウントの明細書に記載されています。

Swish

迅速な支払いを促すため、Skatteverket e-service 経由で Swish を使用できるようになっています。送金は即時に行われるため、期限間近に支払う場合に便利なオプションですが、この方法には限度額があり、送金できるのは 1 日あたり 40,000 SEK までです。

事前入力済みの支払いフォーム

紙での支払いをご希望の場合、貴社の詳細と当局の銀行振替番号が記載された、印刷済みの支払いフォームを Skatteverket から入手可能です。銀行または郵送で支払えます。この方法は、e-service よりも処理が遅くなります。

海外からの支払い

スウェーデン国外から支払う場合は、Skatteverket の国際銀行口座番号 (IBAN) または SWIFT/BIC の詳細 (ウェブサイトに記載) を使用し、送金の備考に個人またはビジネスの ID 番号を含めてください。国際決済は時間がかかるため、期限までに余裕をもって送金してください。

VAT 支払い期限に間に合わなかった場合について

VAT 期限に間に合わないと罰金が科せられ、先延ばしにすればするほど費用が高くなります。スウェーデンで VAT の申告または支払いを怠った場合は、次のようになります。

申告が遅れた場合の罰則

VAT 申告書の提出が遅れた場合、Skatteverket は延滞料 500 ～ 1,000 SEK を請求します。これは申告書ごとに適用されるため、複数の申告漏れがあると複数の延滞料が科されます。

支払い延滞に対する利息

VAT の支払いが遅れたり、支払い不足になったりすると、残高に利息が発生します。金利は 15% にスウェーデン国立銀行の基準金利を加えたものです。つまり、基準金利が 3% の場合、金利は 18% になります。遅延が長引けば長引くほど、支払うべき金額が多くなるため、損害を最小限に抑えるためには、できるだけ早く支払うことです。

負債回収と債権行使

Skatteverket は、未払いの VAT の管理を Kronofogden (スウェーデンの執行当局) に引き渡すことができ、これにより、追加料金を科せられたり資産に抵当権が発生したりする可能性があります。支払いに苦労している場合は、Skatteverket に連絡してください。場合によっては支払いプランが提示される場合があります。

未提出申告の推定税額

VAT の申告は、遅れても必ず提出してください。提出しない場合、Skatteverket は独自の計算に基づいて推定税額請求書を発行できます。

個人事業主が VAT 支払いを最適化しキャッシュフローを改善する方法

VAT は政府のために徴収するお金ですが、いつ、どのように支払うかが、貴社のキャッシュフローに影響を与える可能性があります。ここでは、VAT の支払いを戦略的に管理し、ビジネスに支障をきたさないようにする方法をご紹介します。

適切な申告頻度を選択する

対象となる場合は、毎年または毎四半期に VAT を申告することより、徴収した VAT を納付までより長く保持できます。毎年の申告では 1 回の支払いが多額になりますので、管理できなければリスクを伴う可能性があります。毎四半期の申告では、年間を通じて VAT の支払いが分散されるため、多くの中小企業に適したバランスであると思われます。

VAT 支払いを相殺するため大口購買のタイミングを計る

売上時に徴収した VAT (仮受 VAT) から購買時に支払った VAT (仕入 VAT) を差し引くことができます。多額の出費 (機器など) を計画している場合は、VAT 納付額が高い四半期に購入することを検討してください。これにより、その期間の納税額を減らすことができます。

VAT 資金を分ける

徴収した VAT は自分のものではないため、そのように扱います。徴収した VAT を別の銀行口座に保管するか、会計システムに計上します。これにより、支払い期日に現金が不足することを防止できます。

早めに申告して支払い計画を立てる

期限前に VAT 申告書を提出しても、期限が来るまで支払いは待ってもらえます。すなわち、未払い額を明確に把握できるため、支払いの計画を立てることができます。また、還付が必要な場合は、より早く受け取ることができます。

輸入 VAT を繰り延べて初期費用を回避する

EU 域外から商品を輸入する場合、スウェーデンでは、国境で支払う代わりに VAT 申告書で申告することで、輸入 VAT を繰り延べることができます。つまり、輸入 VAT の申告と控除を同じ申告書で行うことができるため、税金の支払いに縛られることなく、現金をビジネスに残すことができます。

テクノロジーを使用して VAT コンプライアンスを自動化

オンラインで販売したり、デジタルサービスを提供したりする場合、VAT コンプライアンスは複雑になる可能性があります。Stripe Tax などのツールを使用すると、販売ごとに正しい VAT が自動的に計算され、申告用のレポートが生成されるため、予期しない税金の請求や法令遵守の問題につながる可能性のあるエラーを防止できます。

スウェーデンの個人事業主向けの VAT 支払いに関するサポート

VAT は厄介な場合がありますが、一人で解決しなければならないわけではありません。スウェーデンでは、個人事業主が VAT の規則、申告、支払いに対処するのに役立つさまざまなリソースが用意されています。

Skatteverket (スウェーデン国税庁)

これは、登録、報告、支払い、更新など、VAT に関するあらゆる情報の公式ソースです。英語のリソースは VAT 規則を詳細にカバーしており、VAT パンフレットなど、最新の期限が記載されているガイドを発行しています。また、サポートラインに電話して、英語のサポートを受けることもできます。

Verksamt.se (政府のビジネス向けポータル)

このビジネスオーナー向けのユーザーフレンドリーなサイトでは、個人事業主向けのステップバイステップの VAT に関する説明など、実用的な税務ガイダンスを提供しています。また、直接アクセスできるように、Skatteverket の公式税務プログラムにもリンクしています。

会計士と簿記係

VAT の状況に海外販売や詳細な控除が含まれる場合は、コストのかかるミスを防ぎ、VAT プロセスを精緻化するために、専門家に相談するのがよいでしょう。会計士は、VAT 申告が正確になるように、適切な記録管理の設定をサポートしてくれることもあります。

会計ソフトと税務ツール

Fortnox や Bokio などのプラットフォーム (または QuickBooks や Xero などの国際的なソフトウェア) を使用すると、VAT を簡単に計算できるようになります。多くは VAT 申告書を自動作成するか、データをエクスポートして Skatteverket で申告できます。オンラインで販売する場合、Stripe Tax は各取引の VAT を計算して追跡し、法令遵守の徹底に役立てることができます。

ビジネスと起業家のコミュニティー

オンラインフォーラムやローカルビジネスネットワークからは、他の個人事業主からの実践的なインサイトを得ることができます (ただし行動に移す前に、コミュニティーのアドバイスを公式の情報源で確認した方がよいでしょう)。スウェーデンの商工会議所やスタートアップの中心地では、VAT についてのワークショップ、専門家による質疑応答、「Starta Eget」(起業) コースが開催されることがあります。Skatteverket は定期的にセミナーやウェビナーを開催しています。

クロスボーダー VAT に関する EU のリソース

EU の「Your Europe」ポータルには、国境を越えて販売するビジネスの VAT 義務が明文化されています。EU での販売に One Stop Shop (OSS) を使用する場合は、Skatteverket のガイド に詳細が記載されています。