サウスカロライナ州でビジネスを始めるということは、精密作業、ロジスティクス、適応性を基に経済を築いてきた州と力を合わせることを意味します。先進製造業、航空宇宙、テクノロジーなどの産業は、サウスカロライナ州に深く根を下ろし、大きな勢いを見せています。たとえば、州内の航空宇宙セクターでは 136,000 人もの人が働いており、288 億ドルの経済効果を生み出しています。

チャールストン港の効率性を活かしたい場合でも、グリーンビルのテックシーンの勢いを借りたい場合でも、企業志向の人材育成プログラムを利用したい場合でも、サウスカロライナ州には企業にとっての多くの魅力が詰まっています。以下では、サウスカロライナ州でビジネスを始めるメリット、必要な法的手続き、起業家向けリソースの利用方法について解説していきます。

本記事の内容

• サウスカロライナ州でビジネスを始めるメリット
  
• サウスカロライナ州でビジネスを始めるのに必要な法的手続き
  
• サウスカロライナ州で利用できる起業家向けリソース
  

サウスカロライナ州でビジネスを始めるメリット

サウスカロライナ州は、州内で活動する企業に明確なメリットをもたらしています。この項目では、州で起業することのメリットをいくつかご紹介します。

ビジネスに適した風土

サウスカロライナ州は、以下のような具体的なプログラムによって、企業優遇を証明しています。

• 雇用創出に対する税額控除 (農村部や経済的に恵まれない地域では特に優遇)

• 新施設の設立費用を賄う裁量補助金

• 製造業、航空宇宙業、物流業に対する優遇措置

中心的立地

チャールストン港はアメリカ最大の港のひとつであり、アトランタ、シャーロット、ジャクソンビルなどの南東部の主要市場や国際市場との交易を支える好アクセス地となっています。この利点は、東海岸の顧客をターゲットにしているビジネスや、配送ハブへの迅速なアクセスを必要とする企業にとっては重要な要素です。

手ごろな不動産価格

サウスカロライナの商業不動産市場は、ジョージア州やノースカロライナ州などの地域と比べて割安感があります。工業用地やオフィススペースを低コストで見つけられるにもかかわらず、多くのエリアではすでにユーティリティが充実しています。州には、製造工場や倉庫、小売店の開設を検討している企業を支援するための専任チームが配備されています。

ニーズに合わせた人材開発

サウスカロライナ州では、さまざまな人材開発の機会が提供されています。国営プログラムである ReadySC は、ビジネスニーズに基づいた従業員の採用およびトレーニングを無償でサポートします。先端製造業やハイテク産業の場合、会社の業務に特化したトレーニングを受講した人材を雇用できます。

州内にあるクレムソン大学とサウスカロライナ大学は、特に工学、ライフサイエンス、IT の分野で企業と研究パートナーシップを結んでいます。そのためパートナーシップ企業は、独自の社内ラボを構築することなく、比較的簡単に研究開発 (R&D) リソースを利用できます。

人材を惹きつける好条件の生活環境

会社の所在地は、人材の採用・維持にも影響を及ぼす要素です。サウスカロライナ州は、海岸沿いの都市、歴史的な町が混在し、生活費が安いことが強力なセールスポイントになります。グルメとテックシーンで若い労働者を惹きつけるチャールストン、都会型アメニティとアウトドアアクティビティ (ハイキング、サイクリング、湖畔活動など) が楽しめるグリーンビルなどもサウスカロライナ州の魅力を支えています。

このエリアの住宅は、特にアトランタなどの近隣の大都市圏の住宅に比べて手頃な価格で売り出されています。固定資産税の低さやスローペースのライフスタイルも後押しして、転居が促しやすい立地になっています。

専門産業の集積地

サウスカロライナ州は、特定の分野での専門性を発展させてきました。そのため、以下の業種に向けた州独自のネットワークやサポートを見つけることができます。

• 自動車:サウスカロライナ州はアメリカ最大のタイヤ輸出州であり、BMW などの企業と強く結びついたサプライネットワークを有しています。

• 航空宇宙:チャールストンにおける Boeing のプレゼンスは、州の航空宇宙産業において、優秀な人材の育成と業界の発展に寄与してきました。

• 先進的製造:繊維製品から精密工具まで、製造業はこの地で大きな存在感を示しています。

力強い文化と経済

チャールストンやグリーンビルなどの地域では、変化を歓迎するダイナミックなビジネス環境が形成されています。テック系スタートアップを立ち上げるにせよ、ブティックを開くにせよ、市場は常に新鮮なアイデアを受け入れています。

サウスカロライナ州でビジネスを始めるのに必要な法的手続き

この項目では、サウスカロライナ州でビジネスを始めるために必要な法的手続きを順を追って説明します。

会社形態の選択

個人事業主、組合、有限責任会社 (LLC)、株式会社のいずれであっても、会社をどのように設立するかは、税金、株主責任、事務処理の義務に影響します。多くの人が LLC を選んでいるのは、構造がシンプルでありながら、個人資産が保護され、株式会社レベルの維持管理を必要としないためです。事業を拡大する予定、または投資家を受け入れる予定がある場合は、株式会社の方が理にかなっているかもしれません。

会社名の登録

州務長官事務所のウェブサイトで検索して、希望する会社名が利用可能かどうかを確認してください。まだ正式に申告する準備ができていない場合は、名前を 120 日間保留できます。正式名称以外の名称で事業を運営する場合は、「商号」(DBA) を申請する必要があります。

適切な書類の提出

LLC、株式会社、有限責任組合を設立する場合は、州務長官事務所に登録する必要があります。LLC と株式会社は定款、有限責任組合は組合証明書をそれぞれ提出します。これらは、オンラインまたは郵送で手続き可能です。

雇用者識別番号 (EIN) の取得

EIN は、会社の社会保障番号のようなものです。銀行口座の開設、従業員への給与支払い、税金の申告などで必要になります。個人経営の企業であっても、取得しておくのが賢明な判断です。内国歳入庁 (IRS) は EIN の取得をオンラインで簡単に申請できるようにしており、費用もかかりません。

州税の登録

サウスカロライナ州のほとんどの企業は、歳入局で税務登録する必要があります。商品や課税対象サービスを販売している場合は、売上税の登録も必要です。従業員を雇用する場合は、源泉徴収税も登録してください。ホスピタリティサービス、酒造・酒販、燃料業などの特定の業種に携わっている場合は、追加の税金を登録する必要があります。

これらの登録はすべて、州のオンライン税務システムである MyDORWAY ポータルで処理できます。

必要なライセンス・許可の取得

サウスカロライナ州は、州全体では営業許可証の取得は必須とされていませんが、市や郡の多くは許可証の取得を義務づけています。また業務内容によっては、業界固有の許可が必要な場合もあります。たとえば、請負業者、会計士、医療サービスプロバイダーなどの専門サービスを提供する事業者は専門のライセンスが別で必要であったり、フードサービス業は指定の衛生許可証が必要であったりします。

事業用銀行口座の開設

税務・会計処理のために個人と会社の財務を分離して、問題から身を守りましょう。ほとんどの銀行では、EIN、事業登録書類、本人確認書類の提示を求められます。

保険による会社保護

ほとんどの企業は、事業保険に加入しておくことでその恩恵を受けられます。保険に加入しても事を起こさないに越したことはありませんが、保険に加入せず補償が受けられないことを後悔するのは避けたいところです。加入する保険については、次のものを検討してください。

• 総合賠償責任保険 (事故や法的請求に対する補償)

• 労災補償保険 (従業員が 4 人以上いる場合)

• 企業職賠償責任保険 (業務ミスによって顧客が不利益を被る可能性のあるサービスを提供している場合)

従業員雇用に関する規則の把握

従業員を雇用する場合は、以下の追加の手続きを行う必要があります。

• 州の New Hire Reporting Program への新規雇用者の報告

• 賃金・労働時間に関する法律の遵守 (最低賃金、残業代など)

• 従業員が閲覧できる場所への労働法ポスターの掲示

会社の負うべき義務が不明な場合は、公認会計士または弁護士に相談して、詳しい助言を受けることを検討してください。

サウスカロライナ州で利用できる起業家向けリソース

起業家として、成長段階や業界に特化した地域の組織やネットワークを活用することで、多くの収穫を得ることができます。サウスカロライナ州には、起業家が資金調達、人脈形成、教育リソースを確保するための手段が数多くあります。それらは以下の方法を通じて利用することが可能です。

中小企業開発センター (SBDC) から出発する

SBDC は、事業計画、資金調達、事業成長のためのマンツーマンコンサルティングやリソースを起業家向けに無料で提供しています。初めて事業計画を起草する場合でも、既存の企業を拡大する場合でも、SBDC のアドバイザーは、学術的な専門知識と実社会の経験に基づいて相談者を導きます。

彼らは、次の分野を専門に助言を行っています。

• 融資、助成金、投資による資金調達

• 許認可

• 市場調査・財務分析

SBDC は州全体に点在しているため、アクセスなどの問題を考慮した上で対面またはバーチャル面談を予約できます。

サウスカロライナ州商務省の支援を受ける

商務省は、あらゆる規模の企業にとって強力なリソースとなります。ビジネスサービス部門では、以下に関するガイダンスを提供しています。

• 事業地の選択 (物理的な場所で営業を行う場合)

• 助成金や奨励金の受給に向けた経済開発チームとの連携

• 相談企業のビジネスニーズに特化した人材をトレーニングする従業員雇用プログラム (ReadySC など)

また、SBDC は業界固有のイベントやネットワーキングイベントも開催しており、これらを通じて未来のパートナー、サプライヤー、顧客と出会うことができます。

資金提供者を探す

立ち上げられたばかりの会社にとって、資金調達の問題はしばしば大きな壁として立ちはだかります。サウスカロライナ州では、以下をはじめとする資金調達手段が複数用意されています。

• サウスカロライナ研究局 (SCRA):テクノロジー、ライフサイエンス、または先進的製造業の分野で事業を行っている場合、SCRA は助成金、メンターシップ、コワーキングスペースを提供してくれます。

• コミュニティ開発金融機関:サウスカロライナ州コミュニティローン基金などの組織は、従来の融資を受けられない起業家に手頃なローンを提供しています。

• 地方銀行・信用組合:SouthState や First Citizens などの銀行は、地元のビジネスコミュニティと強い結びつきがあり、多くの場合、中小企業庁が支援する中小企業ローンプログラムを提供しています。

資金調達プログラムを利用する場合、そのほとんどで事業計画の提出を求められるため、申請前に SBDC または SCORE のメンターに連絡してブラッシュアップの助言を受けてください。

地域の起業家ネットワークに参加する

サウスカロライナ州には、起業家に焦点を当てた団体やイベントのネットワークがあり、これを通じて他の経営者や投資家、メンターと出会うことができます。地域の商工会議所でも同様に、人脈形成とリソース共有のために設計された中小企業委員会やイベントが設けられています。また、次のイベントへの参加を検討してみることもお勧めします。

• 1 Million Cups:起業家がビジネスを発表し、参加者からフィードバックを得る定期開催のミートアップ。

• Innovate South Carolina:州内のスタートアップと投資家、研究者、サービスプロバイダーをつなぐ協業ネットワーク。

これらのグループは、サウスカロライナ州のビジネス環境におけるネットワーク、コラボレーション、インサイト共有の場を提供します。

人材開発プログラムを活用する

サウスカロライナ州の人材育成プログラムは、従業員を探している起業家にとっては宝の山と言えるでしょう。プログラムの例をいくつかご紹介します。

• ReadySC:このプログラムでは、お客様のビジネスに特化したトレーニングが実施されます。対象の企業は無料で利用可能な上、研修内容も調整されているため、製造業やその他の高技能産業に携わる企業には特に好都合です。

• Apprenticeship Carolina:熟練した技術やニッチな専門知識を必要とする産業に属している場合、このプログラムは、労働力を一から育成する実習機会を創出するのに役立ちます。

これらのプログラムを活用することで、採用コストを削減しつつ、即戦力となる人材を確保できます。

研究機関の力を借りる

サウスカロライナ州の大学は、向上心と起業家精神のバックアップに力を入れています。その例をいくつかご紹介しましょう。

• クレムソン大学:クレムソンは、先進的製造業とエンジニアリングの分野において卓越した専門性を誇ることで知られており、研究開発、試作、商品化など、各ニーズに即したパートナーシップを提供しています。

• サウスカロライナ大学:本学の研究施設や、Innovista Research District などのインキュベーターは、健康科学および IT 分野の最先端リソースを提供しています。

• 工業専門学校:工業専門学校と、製品テストやパイロットプログラム、人材育成プログラムのパートナーシップを結ぶことも可能です。

無料のオンラインツールやポータルを利用する

サウスカロライナ州は、以下のデジタルオプションを導入し、起業家のビジネスプロセスを容易にしています。

• South Carolina Business One Stop (SCBOS):事業登録、税務処理、コンプライアンス管理を一か所で行える便利なポータルです。

• MyDORWAY:MyDORWAY は州のオンライン税務システムであり、税務登録、納税申告、納税をここから処理できます。

• オンラインビジネスライセンスオフィス:多くの自治体では、営業許可証の申請と更新をオンラインで行うことができます。

地域の経済開発事務所と協力する

サウスカロライナ州の各郡には、その地域の企業の成長を重点的に支援している経済開発事務所が設置されています。たとえば、グリーンビルとチャールストンの経済開発チームは、テクノロジー、製造、観光の分野で事業を始める起業家の支援に特に力を入れています。経済開発事務所では、その他にも次の支援を実施しています。

• 地域のゾーニングと許認可への対応

• 地域固有の助成金や税額控除の案内

• オフィススペース、製造拠点、コワーキングハブなどのインフラリソースの提供

SCORE メンターとの関係を築く

SCORE のサウスカロライナ支部では、経験豊富なビジネスメンターが、事業の拡大からマーケティング戦略の改善に至るまで、あらゆるトピックについて無料のガイダンスを提供しています。セッションは、マンツーマンのミーティング形式、あるいはワークショップの一環で行われます。

業界団体と交流する

サウスカロライナ州の主要産業 (自動車、航空宇宙、アグリビジネス、テクノロジー) では、以下のような業界支援団体が活躍しています。

• SC Automotive Council:州の自動車産業におけるサプライヤー、メーカー、イノベーターのネットワーク

• SC Aerospace:航空宇宙産業の製造、サプライチェーン、改善に携わる企業を支援する組織

• Agribusiness Center for Research and Entrepreneurship:農家や食品会社と資金調達、研修、マーケティングの機会を結びつける団体