ユーロは、2022 年時点で、世界で 2 番目に取引量が多い通貨であり、グローバル経済に大きな影響力を持っています。多くの企業や国々にとって、アメリカドルの代わりとなる重要な通貨であり、外国為替市場での競争力と安定性を促しています。ユーロの強さは、ユーロ圏という、ユーロを公式通貨として採用している経済力の強い国々に端を発しています。
ユーロ圏の企業は、通貨が単一であることからさまざまな利点を得ています。取引をスムーズに行うことができ、通貨換算も不要です。国際企業は、ユーロを使って活動することで為替レートのリスクにさらされずに済みます。強いユーロは、欧州連合 (EU) の世界における存在感を高めています。これにより、EU は自らの経済的利益を主張して世界的な金融規制の形成を推進することが可能になっています。
こちらのガイドでは、ユーロの歴史と、この通貨が使用されている国についてご紹介します。
この記事の内容
- ユーロの歴史
- 世界経済におけるユーロの重要性
- ユーロを使用している国
ユーロの歴史
ユーロはユーロ圏の公式通貨であり、EU 加盟国 27 カ国中 20 カ国で導入されています。欧州の単一通貨形成のプロセスが始まったのは、1970 年のウェルナー報告からですが、1980 年までに通貨統合を達成するというそこでの目標は実現しませんでした。単一通貨の導入基準が正式に決定されたのは、1992 年に合意されたマーストリヒト条約においてです。その後、1994 年に、EU の各中央銀行間の協力を強化し、欧州中央銀行 (ECB) およびユーロの準備を開始するため、欧州通貨機関が設立されました。
1999 年 1 月 1 日、欧州連合によって、電子決済および電子会計向けの「見えない」通貨としてユーロが導入されました。その一方で、現金取引には引き続き各国の通貨が使用されました。2002 年 1 月 1 日に、12 の EU 加盟国で旧通貨からユーロの紙幣および硬貨への変更が行なわれ、ユーロの流通が開始します。これは史上最大の通貨変更となりました。それからまもなく、各国の旧通貨は法定通貨ではなくなりました。
しかし、2008 年の世界金融危機とその後の欧州債務危機により、ユーロ圏の経済構造の脆弱性が露呈します。EU は、財政難に陥った加盟国の金融安定化を図り、支援を行うため、欧州安定メカニズム (ESM) などさまざまな対策を講じました。
2007 年にスロベニア、2008 年にマルタ、2009 年にスロバキア、2011 年にエストニア、2014 年にラトビア、2015 年にリトアニアと、マーストリヒト条約の経済基準を満たす国々が EU に新たに加盟し、ユーロ圏は拡大していきます。現時点で最も新しい加盟国はクロアチアで、2023 年にユーロが導入されました。
世界経済におけるユーロの重要性
貿易促進: ユーロは、ユーロ圏の加盟国間、および世界の他の国々との貿易をシンプルにしています。為替リスクとコストが取り除かれたことで、価格の透明性が高まり、取引手数料を低く抑えることが可能になりました。
経済統合の促進: ユーロの導入により、加盟国間の経済政策や規制に一致する部分が増えました。経済統合は、欧州内により安定した予測可能な経済環境を生み出し、企業の計画や投資にメリットをもたらしています。
世界の準備通貨として機能: ユーロは、世界の主要な準備通貨の 1 つであり、各国の中央銀行および金融機関によって外貨準備高として保有されています。そのためユーロは、世界の為替レートおよび金融政策に対する影響力を持っています。
世界市場への影響力: ECB が管理するユーロ圏の経済政策は、世界の金融市場に大きな影響力があります。ユーロ圏における金利や量的緩和に関する決定は、世界の資本移動、投資判断、欧州を超えた経済状況に影響を与えます。
EU の連携を促進: ユーロは欧州の統合とアイデンティティのシンボルであり、その管理には加盟国間の密接な連携が欠かせません。こうした連携が、この地域の政治的統合や安定を促しています。とりわけ経済的、政治的混乱期にはそうした連携がますます重要になります。
魅力的な投資機会を生む: ユーロ圏は、投資家にとって魅力がある大きな市場です。ユーロは、広範囲に及んで統合された市場のメリットを投資家にもたらし、より小規模な個別の国内市場に存在する、通貨変動のリスクを回避することを可能にしています。
ユーロを使用している国
2024 年 5 月時点、ユーロは欧州の 20 カ国で公式通貨として導入されており、利用者数は一日あたり約 3 億 4,100 万人です。ユーロ圏には以下の国々が含まれます。
- オーストリア
- ベルギー
- クロアチア
- キプロス
- エストニア
- フィンランド
- フランス
- ドイツ
- ギリシャ
- アイルランド
- イタリア
- ラトビア
- リトアニア
- ルクセンブルク
- マルタ
- オランダ
- ポルトガル
- スロバキア
- スロベニア
- スペイン
EU には加盟していないものの、ユーロ圏諸国に近接していることからユーロを導入しているミニ国家や都市国家もあります。また、EU に加盟を申請中で、現在は加盟国ではない国々でも導入されています。以下はそうした国々です。
アンドラ: アンドラでは 2002 年からユーロが導入され、2011 年から公式通貨になりました。
コソボ: コソボでは 2002 年からユーロが公式通貨として導入されました。
モナコ: モナコでは 2002 年からユーロが公式通貨として導入されました。
モンテネグロ: モンテネグロでは 2002 年からユーロが公式通貨として導入されました。
サンマリノ: サンマリノでは 2002 年からユーロが公式通貨として導入されました。
バチカン市国: バチカン市国では 2002 年からユーロが公式通貨として導入されました。
こうした地域では、ユーロが経済取引を促し、強力かつ安定した通貨と結びつけることで地域経済を支えています。
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