エージェント型コマースのガイド

このガイドでは、エージェント型コマースとは何か、AI エージェントがオンラインショッピングをどのように変革しているか、お客様の事業が備えるべきことについてご説明します。

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成長中のスタートアップからグローバル企業まで、あらゆるビジネスに対応できる決済ソリューションを利用して、オンライン決済、対面支払いなど、世界中のあらゆる場所で決済を受け付けます。

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  1. はじめに
  2. エージェント型コマースとは
  3. 知っておくべき主な概念
    1. エージェント
    2. エージェント型経済
    3. エージェントによる決済の開始
    4. Model Context Protocol (MCP)
  4. エージェント型コマースの仕組み
  5. エージェント型コマースの主なユースケース
    1. AI を活用した購買エージェント: エージェントによる送金と支出を可能にする方法
    2. Perplexity の AI ショッピングアシスタント
    3. エージェント活用の収益化
  6. エージェント型コマースの今後
  7. エージェント型コマースを始める方法
  8. エージェントの背後にいる顧客を意識した構築

AI エージェントが オンラインショッピングを根本から変化させれば、購入するのは人間だけではなくなります。このガイドではエージェント型コマースとそれが企業と購入者双方にもたらす影響についてご説明します。お客様に理解していただきたい重要な概念、実用的な事例、エージェント型コマースが今後どのように進化するかを取り上げています。このガイドでは実用的な戦略についてもご説明していますので、この新たな、そして急速に変化する環境にビジネスを適応させることができるでしょう。

エージェント型コマースとは

エージェント型コマースはオンラインショッピングの一形態で、AI エージェントが顧客のために商品を探し、比較して場合によっては購入まで行う仕組みです。顧客はエージェントに何が欲しいかを話し (「正午前に到着できる一番安い直行便を予約して」)、エージェントが検索、オプションの比較を行い、顧客に提案します。顧客が承認すると、エージェントが顧客に代わって購入を完了します。顧客は何百ものタブをクリックする必要がありません。購入完了ページすら見る必要がないのです。

この種の取引は従来の購入のあり方を覆すものです。事業者はこれまでは人間である顧客がサイトを閲覧しやすいように設計してきました。しかしこれからは顧客の代理人として AI エージェントが事業者にアプローチしてきます。そして、こうしたエージェントはクリーンで構造化されたデータ、素早いレスポンス、そして当て推量のないことを求めています。

このプロセスは「a-コマース」と呼ぶことができるでしょう。つまり、デジタルエージェントが単なる裏方ではなく、意思決定を行い、取引を開始し、実際の購入も行うようになる世界という意味です。

知っておくべき主な概念

これからエージェント型コマースを導入する場合、次のような考え方を理解しておくとよいでしょう。このセクションではすべてを網羅することとはできませんが、この新しいコマースモードの実際の機能を理解するための考え方の枠組みを与えてくれます。

エージェント

AI エージェントは自律型または半自律型のソフトウェアプログラムで、人工知能を使ってユーザーの代わりに購入を行います。AI エージェントは検索結果を表示するだけではありません。何をいつどこで買うかを決定します。AI エージェントは指示に従ってトレードオフを比較検討し、取引を行うことができます。つまり、エージェントは人の購入を助けるのではなく、エージェント自体が購入者になるのです。

エージェント型経済

エージェントが取引を行えるようになると、単なる裏方の支援役ではなく、経済のアクティブな参加者になります。そうすると、事業者が対話する相手は時には人間では大型の言語モデル (LLM) になり、導入すべきシステムも変わってきます。商品やサービスとの出会い、購入完了までのプロセス、不正取引の防止など、すべてが根本から再設計されることになります。

Stripe の AI について、現在および将来にわたってこれらのシステムをどのように機能させるべきか、当社ではあらゆる状況から検討しています。

エージェントによる決済の開始

エージェントが開始した決済は、AI エージェントがユーザーに代わって行った取引です。エージェントは購入を行うと安全で監査可能で承認された方法で送金する必要があります。Stripe の決済インフラはこの取引をサポートするように構築されています。当社の仕組みはエージェントの処理フローを妨げることなく、またチェックアウトの途中で人手を介入させることなく承認・確認・セキュリティを処理します。

Model Context Protocol (MCP)

エージェントが効果的に機能するには状況に関する情報 (コンテキスト) が必要です。MCP はLLM や AI エージェントがシステム全体のコンテキストを理解するための枠組みで、在庫、価格、決済の仕組みといった情報に、構造化され機械が読み取れる形でアクセスできるようにします。エージェントは煩雑なウェブページから情報をかき集めたりクリックのシミュレーションを行ったりせず、MCPを使って事業者のシステムと直接やり取りします。開発者は、自分のサービスを AI エージェントが理解し利用できる、収益化可能な MCP サーバーとして公開することもできます。

Stripe の MCP (Model Context Protocol) を使用すると、AI アプリケーションや一般的な AI 搭載のコードエディターで、自然言語で Stripe のサービスとやり取りができます。

エージェント型コマースの仕組み

エージェント型コマースの基本的な考え方は次の通りです。ユーザーに代わってエージェントが貴社のサイトをブラウズします。そのエージェントはユーザーが何を望んでいるか、貴社が何を提供しているかを把握しており、その取引全体を管理するように設定されています。すなわち、商品やサービスを見つけるところから決済手段の決定までを行い、購入決定前の承認だけをユーザーに求めるようになっているのです。

たとえば、顧客が次のように依頼したとします。「防水加工のハイキングシューズでサイズが 8、価格が 150 ドル以下のものを見つけて。金曜日までに配達してもらいたい」エージェントは MCP のようなプロトコルを使用して顧客の要望のパラメータ内で利用可能なオプションをスキャンし、リアルタイムに商品データをクエリします。そして返品ポリシーをチェックし、配送予定を読み取り、在庫を確認して注文を行います。

この例の事業者が Stripe Issuing を利用している場合、1 回のみ利用できる仮想のクレジットカード番号がそのエージェントのために作成されます。したがって、エージェントは実際のカードの詳細は利用しません。そして支払いは Stripe が認証済みのフローを通じて行われます。このフローはユーザーの代わりにオーソリを行うように設計されており、不正検知、領収書の発行、照合用のメタデータなど、通常備わっているあらゆる保護機能が適用されています。

エージェントは既存のサイトを閲覧することもできますが、企業もエージェント用に新たなサイトを構築するようになってきました。そのサイトではよく整理された商品カタログを提供し、人間が関与しなくてもチェックアウトフローが実行できるようにし、エージェントが読み取れる信頼シグナル情報 (返品ポリシー、フルフィルメントの保証、問い合わせ先など)を公開します。つまり、過去には検索エンジンを最適化することで検索エンジンがコンテンツを判別できるようになりましたが、それと同じように、エージェント型コマースでは、お客様の事業をエージェントが判別できるようにする必要があるということです。

お客様の事業でエージェント型コマースを受け入れる準備ができていない場合、こうした取引の機会をすべて失うことになります。つまり、エージェントが開始した決済を処理し、構造化されたメタデタを返し、エージェントが「購入」する前に実行しているすべての信頼チェックに合格できるフローを構築する必要があるということです。

エージェント型コマースの主なユースケース

ここまで仕組みについてご説明してきました。次に事業者がこのエージェント型コマースを実際にどのように利用しているか、そして今後の方向性についてご説明します。もしかするとお客様が独自のエージェントを開発していたり、自社のチェックアウトをエージェント型コマースに対応させて UI に依存しないコマース環境でもユーザーに見つけてもらえる状態にしているかもしれません。いずれにせよ、企業が先行して取り組んでいる 2 つの方法をご紹介します。

AI を活用した購買エージェント: エージェントによる送金と支出を可能にする方法

もっともわかりやすいユースケースは AI を活用したショッピングエージェントで、現在最も注目されているものでもあります。繰り返しになりますが、これまでに使われているエージェントはほとんどが商品を勧めてくれるものでしたが、これからは購入もしてくれるようになります。

Stripe のエージェント型決済フローはまさに、支払いができるけれども安全で監督可能な方法に従うように設計されています。

Perplexity の AI ショッピングアシスタント

現在、最も注目されている例の1つが、Stripe を利用した Perplexity の ショッピングアシスタント です。これは次のように機能します。すなわち、ユーザーは普通の言葉で自分が探しているもの、例えば「結婚式にゲストとして出席するときに着るサマードレスでサイズはL、120ドル以下」などと説明します。そうするとアシスタントが検索から購入手続きまでを行います。

エージェント活用の収益化

エージェントは購入手続きの終点ではなく、AI による意思決定プロセス全体で仲介役を担います。それにより、取引そのもの以外の方法でも収益化の可能性が生まれます。

例えば、自社のビジネス用に API を開発して、他のエージェントには有料でアクセスできるようにするといった方法があります。そして選択肢を素早く絞り込みたいエージェント向けに、特定のリストを優先的に表示・提供することができます。さらにエージェントの期待に特化したフルフィルメント (即日応答、在庫確認、豊富なメタデータなど) やサポートの階層を構築することもできます。

Stripe はエージェント型とのやり取りや成果を様々な価格戦略を通じて収益化できるよう支援しています。価格戦略には、クエリー単位の課金、サブスクリプション、成功報酬制などがあります。例えば、顧客サポートアプリケーションは、エージェント用にクエリー単位の請求モデルを導入できます。事業者は実際に利用したサポート分のみ支払うことができます。Stripe の 従量課金プラン (UBB) を利用すると、企業は利用実績に応じて費用が発生する柔軟な価格モデルを作ることができます。顧客は利用した分だけ支払えばよいことになります。さらに事業者は Stripe のエージェントツールキットを使ってコマースの作業フローに Stripe のサービスを容易に統合することができます。また、Stripe のMCP 決済で MCP の利用を収益化することができます。これらは決済サイクル全体にリアルタイムの洞察を得ることで、エージェントは情報に基づいた迅速な対応を行うことができます。

エージェント型コマースの今後

Stripe は Forbes AI 50 の78% を支えています。2024 年には 700 社以上の AI エージェントスタートアップ が Stripe を利用し始めました。この値は 2025 年にはさらに増加すると予想されています。

エージェント型コマースはオンラインコマースの仕組みを根本から変化させる可能性があります。Stripe の情報・データサイエンス責任者である Emily Glassberg Sands は Complex Systems ポッドキャスト で次のように述べました。「エージェントが変革させるのはチェックアウトに立ち会う人だけではありません。エージェントは検索、意思決定、信頼チェックのすべてに携わる人を変えるのです」

実際には、かつてはユーザー体験の問題とされていた商取引の部分がプロトコルの問題になったということです。例えば、エージェントが商品を見つけて表示しやすいように、商品カタログを構造化すること、チェックアウトフローも人だけでなくエージェント向けに最適化すること、チェックアウトフローも人だけでなくエージェント向けに最適化すること、スコアリングによるリスクレイヤーを作成すること、従来の指標が通用しない、エージェント主導の取引向けに設計された顧客モデルを実装することです。

エージェント型コマースを始める方法

エージェント向けのシステム、またはエージェントがやり取りできるシステムを構築する場合には、エージェントを特殊ケースではなく主要なプレイヤーとして扱うインフラから着手します。

大まかにいうと次のようになります。

  • _データを機械で読み取れるようにする _ 商品、価格、在庫、ポリシーと行ったデータを、エージェントが直接引き出せるフォーマットにしておきます。SaaS ビジネスの場合、独自の MCP を構築することでソフトウェアが検出されやすくなり、新時代の AI ツールとの相互運用も可能になります。
  • エージェントが開始する取引をサポート エージェントはユーザーに代わって安全に送金、支出できなければなりません。それを可能にするのは、プログラムによる承認、監査記録、そしてエージェントの行動を理解した不正防止ツールなどです。
  • 正しいエージェントだけを通す 当社では Stripe Radar を更新して、信頼できるエージェントと、チェックアウトに近づけたくないボットを区別できるようにする予定です。

Stripe PaymentsStripe Billing を利用することで、小売業者でもエージェントが将来的にアクセスしやすいフォーマットのカタログを作ることができます。Stripe もアクセス制御をより高度なものにして、エージェントが特定の商品にアクセスできるようにしたり、エージェントが以前閲覧した商品の在庫が補充されたという情報をブロードキャストできるようにしています。Stripe の 決済ソリューション と スピーディーな決済機能である Link でも、構造化されたエージェント対応のフローを提供しています。Link を活用すれば、小売業者は複数の AI チャネルから来た同一の顧客を特定することができます。それにより、その顧客がどのようにショッピングを楽しむかにかかわらず、その顧客との関係を維持し、購入体験をその人に合うものにすることができます。

エージェントの背後にいる顧客を意識した構築

ここで、エージェントが人に取って代わるわけではない、ということを思い出してください。エージェントは人の代理として行動するのです。つまり、お客様が最適化するものすべて、料金体系、チェックアウトフロー、信頼チェックのシグナルなどは、たとえお客様が顧客と直接対話することがなくなったとしても、引き続き最終顧客のためのものなのです。

このような環境では、互換性が非常に重要です。エージェントは互換性の高い事業者の方に引き寄せられます。すなわち、扱いやすいデータや API、透明なポリシー、リアルタイムでの対応、そしてスムースなチェックアウトができるところに自然と集まるということです。お客様がエージェントを構築したりチェックアウトをエージェントに適応するように調整したりする場合でも、Stripe はそのワークフォローを強化し、すべての取引が顧客の期待に添うものになるようサポートしています。

詳細および小売業向けの資料やユースケースにご関心をお持ちの場合は、こちらの エージェント型コマースで成長の可能性を広げる 方法についてのガイドをご覧ください。

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