2016 年 6 月 18 日、イタリア共和国官報で 2016 年イタリア法 106 号の発効が発表されました。この法律のもとでイタリア政府は第三セクターの改革に着手し、これに伴い、「1000 分の 5 の寄付制度」に関する政令 (2017 年イタリア政令 111 号)、社会的事業の改革に関する政令 (2017 年イタリア政令 112 号)、「Codice del Terzo settore」(イタリア第三セクター法) - 2017 年イタリア政令 117 号という 3 つの施行令を出しました。一般に規制上の一貫性が非常に乏しく、複雑に分岐していた第三セクターを体系的に再編し、全面的な見直しを図るという目的が委任法に明記されました。本記事では、イタリアの第三セクター組織 (TSO) とその要件、関連する税制上の優遇措置について説明します。
本記事の内容
- 第三セクター組織とは
- 第三セクター組織とみなされるための要件
- 第三セクター組織の財務諸表と会計報告
- 第三セクター組織の税制上の優遇措置
第三セクター組織とは
第三セクター組織 (TSO) について理解するには、まず第三セクターとは何かを理解する必要があります。「第三」セクターとは、政府機関 (第一セクター)、民間企業 (第二セクター) と区別されるものです。これには、公共の利益に資する活動のみ、あるいはそれを主として行い、非営利のステータスにある組織が含まれます。具体的には、以下のような組織が TSO に該当します。
- ボランティア団体
- 社会振興団体
- 慈善団体
- 社会的事業。社会的な協同組合、組合ネットワーク、共済事業、非営利団体 (承認済みか未承認かを問わない)、財団法人、その他の民間団体 (地域社会、慈善、社会に役立つ目的の遂行のために設立された事業を除く) が含まれます。
イタリア第三セクター法では、以下のカテゴリーは TSO に該当しないことに注意する必要があります。
- 政府部門
- 労働組合
- 専門的、代表的な経済取引協会
- 政治団体・協会
- 経営者団体
- 上記の法人のいずれかによる連携の対象となる法人 (第三セクター法の第 4 条第 2 項に特に規定されている場合を除く)
第三セクター組織とみなされるための要件
TSO として認められるには、主として事業活動、資産配分、RUNTS (Registro Unico Nazionale del Terzo Settore、すなわち第三セクターの単一国家登録簿) への登録に関する要件があります。それぞれの点について詳しく見ていきましょう。
事業活動
- 医療・社会サービス
- 学部・大学院教育
- 学校教育以外の訓練
- 特別な社会的利益に資する科学研究
- 教育・職業訓練
- 文化遺産・景観を保護、改善するためのプロジェクト
- 社会的利益に資する文化活動、芸術活動、娯楽活動の運営・管理
- 公営住宅
- 慈善活動とチャイルドスポンサーシップ
- 人権の推進と保護
実行される事業活動が組織の法人設立証明書で許可されており、公共の利益に資する活動に常に寄与し、付随するものであるならば、その一部が上記の活動と異なってもかまいません。
資産配分
TSO と定義されるための 2 つ目の基本要件は、非営利のステータスにあり、特別目的資産を確保することに関するものです。非営利のステータスとは、TSO が利益や余剰収益を法定活動の実行または純資産の増加に充てなければならないことを意味します。つまり、利益や余剰収益、資金、さまざまな予備金を創業者、パートナー、従業員、取締役、その他の法人メンバーに配分することはできません。
このルールの唯一の例外として、社会的事業の場合は、年間の利益と営業黒字 (過年度に発生した損失を差し引く) の 50% 未満を以下のように配分する選択肢があります。
メンバーが出資し、払い込んだ資本金の無償増資に充てることができます。ただし、その増資の比率は、利益や余剰収益が発生した会計年度に対応する期間にイタリア統計局 (ISTAT) が算定したイタリアの労働者・従業員消費者物価指数の年間家計の変動内に限られます。また、株主への配当に充てることもできます (無償増資や金融商品の発行などの方法を含む)。ただし、実際の払い込み資本に対する配当率が、利付き郵便債券の最大利率に 2.5 ポイントを上乗せした比率を超えてはなりません。
社会的事業以外の TSO (社会的事業またはその子会社の創業者、アソシエート、パートナーを除く) を支援するために制約なく支出することができます。
RUNTS への登録
TSO の重要な義務の 1 つは、そのステータスを法人名に表記する必要があるということです。TSO は、第三セクター法の第 4 条と第 11 条に従って、単一国家登録簿 (RUNTS) への登録手続きを行い、その登録の詳細を書類、通信文書、広報に記載しなければなりません。商業的事業としてのみ、あるいはそれを主な事業として運営している TSO は、商業登記も義務付けられています。社会的事業の場合は、商業登記の特別区分への登録により、RUNTS への登録の要件が満たされます。
現行の登録簿は、ボランティア団体および社会振興団体の登録簿に記録された既存の組織データを、関連する政府省庁に代わって RUNTS を管理する InfoCamere の IT プラットフォームに移行したものです。データ移行の準備は関連省庁が担当しました。
TSO という指定を受けるには、RUNTS への登録が必須だということを認識しておく必要があります。そうでない場合、登録は任意です。TSO になり、その後に RUNTS に登録すると、後述するいくつかの優遇措置を受けられます。
第三セクター組織の財務諸表と会計報告書
TSO は以下のとおり財務諸表と会計報告書を保持する義務があります。
売上が 22 万ユーロ未満の TSO は、総売上高と支出を記載したキャッシュフロー計算書の形で財務諸表を保持することが認められます。
売上、所得、受取金、その他の収入が 22 万ユーロ以上である TSO は、貸借対照表、損益計算書 (売上と支出を記載)、使命報告書 (財務諸表の項目、組織の経済・財務能力、法定の目的を遂行する方法を記載) を含む年次財務諸表を作成しなければなりません。
売上、所得、受取金、その他の収入が 100 万ユーロを上回る TSO は、ガイドラインに従った持続可能性報告書を作成しなければなりません。関係省庁が定めた TSO 持続可能性報告書を作成してそれを RUNTS に提出し、ウェブサイトで公開します。
最後に、売上、所得、受取金、その他の収入が 10 万ユーロを上回る TSO は、管理・統制機関メンバー、経営者、アソシエートに帰属する報酬、対価、または手数料が何らかの理由で生じた場合は、それを毎年公表し、自社のウェブサイトに常に最新情報を記載する必要があります。
第三セクター組織の税制上の優遇措置
第三セクター法では、公共の利益に資する活動 (2017 年イタリア政令 117 号、第 5 条) とそれに付随する活動を実行する特定の方法、ならびに組織の性質と組織モデルに応じた TSO の税制上の義務と優遇措置が定められています。
一部の措置は 2018 年 1 月 1 日から施行されました。それは、RUNTS の運用開始を待つ間に、各登録簿に登録されていた非営利組織、社会開発協会、ボランティア団体を対象としてすでに適用されていた優遇措置の規定です。具体的には、組織による物品・リソースの購入を促すための間接税の軽減措置が含まれます。
商業的な TSO と非商業的な TSO の区別
TSO の所得税に関する財務面のインセンティブの大半は、第三セクター法第 79 条に定められた商業的な TSO と非商業的な TSO との区別に基づいています。
組織は、公共の利益に資する活動の分野ごとに、当該の活動を無償で行っているか、あるいはその手数料が実際のコストを 5% 上回る水準までの許容範囲内にあるかを評価しなければなりません。また、以下のような項目は TSO の売上に計上されないことも認識しておく必要があります。
- 時々実施される募金活動から得た資金
- 公共の利益に資する活動のための政府の助成金・寄付
- メンバーが会費または拠出金として支払った金額
非商業的な TSO を対象とする一律の税率での所得税の決定
非商業的な法人の場合、所得税は以下の収益性係数に応じた一律の税率で決定されます。
サービスのパフォーマンス
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その他の活動
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最大 €130,000
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7% | 5% |
€130,001 ~ €300,000
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10% | 7% |
€300,000 超
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17% | 14% |
サービス提供と同時に他の活動も行っている組織については、収益性係数は主要な事業活動に関する売上に基づいて決まります。さまざまな収益源からの売上が明確に区別されていない場合は、サービス提供が主な事業活動とみなされます。
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TSO を対象とするその他の税制上の優遇装置
その他に、TSO には以下のような税制上の優遇措置があります。
- あらゆる種類の書類の印紙税が全額免除されます。
- 地方自治体の固定資産税については、非商業的な方法で行われる特定の活動に従事する組織にのみ免除が適用されます (従来の法律の規定どおり)。
- 直接財産税については、ボランティア団体 (認定済みであれば慈善団体を含む) および社会開発協会に免除が適用されます。
- 政府許可税 (government concession tax) が免除されます。
- 法律で義務付けられた規約変更やその他の法規変更に関する登録税は、免除されるか定額で課されます。
- その他の地方税については、地方自治体により減税や免除が規定されることがあります。
- 不動産購入に関する登録税、抵当税、地籍税は定額で課されます。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。