イタリアでは、期間限定オンラインストアはメリットが多い選択肢となっています。期間限定オンラインストアを使用すると、永続的な E コマースサイトを設定しなくても、ビジネスアイデアを試したり、新製品を紹介したり、焦点を絞った短期的な販売を行ったりできます。本記事では期間限定オンラインストアのメリットや実店舗との違い、イタリアの法律に準拠しながらオンラインストアを開業する方法などについて解説します。

この記事の内容

• 期間限定オンラインストアとは
  
• 期間限定オンラインストアのメリット
  
• 期間限定オンラインストアと実店舗のポップアップストアの違い
  
• 期間限定オンラインストアの立ち上げ
  
• 期間限定オンラインストアを始めるに適したプラットフォームとは
  
• 期間限定オンラインストアを宣伝する
  
• 期間限定オンラインストアのパフォーマンス指標
  

期間限定オンラインストアとは

期間限定ストア (ポップアップストア) とは、通常は数週間から 6 カ月の短期間で運営される小売スペースのことです。これらのストアは、多くの場合、通常の小売チャネルでは簡単に入手できない独占的な製品やサービスを提供するために、設立されます。期間限定ストアでは、限定品や特注品を多く扱っています。

通常は実店舗であることが多いですが、オンラインストアも期間限定で運営されることがあります。期間限定オンラインストアは、E コマースサイトを運営すると完全に決める前に、市場をテストして特定のオファーの可能性を評価したい、という企業に適した方法です。

期間限定オンラインストアのメリット

イタリアで期間限定オンラインストアを立ち上げると、長期的な事業に対する通常の規制を受けずに、コンセプトを試し、ブランドの認知度を高め、販売を促進することができます。このビジネスモデルは、柔軟性、スピード、適応性がカギとなる今日の E コマースの展開に、よくフィットします。ここでは、イタリア市場で期間限定オンラインストアを始めるメリットをいくつか紹介します。

• スタートアップコストを低く抑える
  通常の E コマースとは異なり、期間限定オンラインストアの運営期間は短いため、開発、管理、マーケティングのコストを低く抑えられます。多額の先行投資は必要ありません。代わりに、すぐに使用できるプラットフォームとテンプレートを利用し、基本にのみに集中します。

• 商品を試したり、新しい市場を開拓したりする
  期間限定オンラインストアは、新製品の紹介や、新しい市場への参入を考えている場合に適しています。スケールアップする前に、顧客の反応をすばやく測定し、データを収集し、オファーを微調整できます。

• 特別感とアピールの醸成
  開店日数が少ないため、緊迫感が漂います。そのため、期間が終了する前に顧客に購入を促すことができます。この種の心理的な動機付けにより、購入完了率を大幅に高めることができます。

• ブランド認知度の向上
  期間限定オンラインストアの立ち上げは、ブランドへの関心を高め顧客ロイヤルティを強化するための、効果的なマーケティング活動となり得ます。インタラクティブなデジタル体験を作り上げて、ソーシャルメディアでのエンゲージメントを高めることもできます。

• 導入がスピーディーかつ簡単
  フル機能のオンラインストアは、わずか数日で営業可能となり、販売を始められます。すばやく設定できるため、メインの事業を全面的に見直すことなく、トレンド、季節、または特別なイベント (ブラックフライデーやクリスマスなど) を有意に活用できます。

• 有用なデータとフィードバックを収集する
  顧客とのやり取りは、好み、購買習慣、さまざまなオファーへの反応など、有用なインサイトを収集する好機になります。これらのあらゆるデータを利用して、将来のマーケティング活動に使用したり、フルタイムの E コマースサイトを今後立ち上げるかどうかを決定したりできます。

期間限定オンラインストアと実店舗のポップアップストアの違い

実店舗のポップアップストアも期間限定オンラインストも、期間限定でショッピング体験を届けることを目指していますが、運営やコスト、成長に大きな違いがあります。

実店舗のポップアップストアとは、人通りの多い場所や特別なイベントなど、一等地で一定期間営業する実際の小売スペースのことです。手に取って見られることに加え、対面でのやり取り、視覚的な魅力、驚きの要素が強調されます。ただし、期間限定オンラインストアとは異なり、物流、家賃、設営、人員配置に、高額な費用がかかります。

対照的に、期間限定オンラインストアは、柔軟な E コマースプラットフォームと焦点を絞ったデジタルマーケティングを使用することで、迅速かつ手頃な価格で立ち上げられます。ビジネスの成長に役立ち、イタリア全土または海外の顧客にリーチできます。また購買の好みや行動に関する、より詳細なデータも収集できます。ただし、実店舗のように対面で接するわけではないため、切迫感と特別感が生み出されるよう、デジタル戦略を慎重に計画する必要があります。

期間限定オンラインストアと実店舗のポップアップストアの違い

期間限定オンラインストアの立ち上げ

イタリアでは、約 20 年前から実店舗のポップアップストアは採用されていますが、オンライン版については、まだ多くの企業で広く検討されているとは言えません。実店舗のポップアップストアと同様に、期間限定オンラインストアには驚きの要素があり、強力なキャンペーンで宣伝することで、オンライン顧客の注意を自然に引き付けられます。顧客は、ソーシャルメディアの投稿を通じて期間限定オンラインストアを知り、口コミに基づいて試すことがよくあります。

オンラインストアの開設を計画しているが、最初に市場をテストしたい場合、またはすでに実店舗を持っていてオンラインストアの立ち上げを試してみたい場合は、期間限定オンラインストアが有効なソリューションになるかもしれません。しかし、イタリアで期間限定オンラインストアを始めるにはどうすればいいのか、VAT 番号の必要性も含めて、疑問が浮かぶかと思われます。以下で、詳しく説明します。

イタリアの期間限定オンラインストアに関する規制

まず、イタリアでは期間限定オンラインストアに特定の規制がないことを知っておくことが重要です。ただし、一般的な E コマース規制が適用されます。

• 政令 70/2003 は、E コマースに関する欧州指令を施行しています。

• 消費者法 (政令 206/2005) には、顧客保護に関する規制が含まれており、オンライン販売に適用されます。具体的には、撤回権、製品保証、契約前の情報、および不公正な商慣行を規定しています。

• EU 指令 2019/2161 を施行する2023 年 3 月 7 日政令第 26 号により、消費者法にさらなる変更が加えられ、E コマースにおける顧客保護が強化されました。具体的には、オンラインレビュー、プロモーション販売、価格カスタマイズの透明性に関する新しいルールが導入されました。

• 一般データ保護規則(GDPR)は、オンラインユーザーの個人データの処理を規定し、データのプライバシーとセキュリティを徹底させています。

またイタリアのすべての自治体が、E コマースでの期間限定ストアモデルの使用を許可しているわけではありません。起業を予定している自治体のワンストップビジネスアドバイザリーセンター (Sportello Único per le Attività Produttive、SUAP)に確認することをお勧めします。さらには、期間限定ストアが許可されているかどうか、また必要な手続きについて、地方自治体に確認することも可能です。

VAT 番号なしで期間限定オンラインストアを始める方法

期間限定オンラインストアは商業活動ですが、年間 30 日以内の運営の場合は、不定期と見なされます。したがって、VAT 番号を取得する必要はありません。ただし、この 30 日間に収入が 5,000 ユーロを超える場合は、自営業者向けにイタリア国立社会保障研究所 (INPS) に登録し、必要な拠出金を支払うことが義務付けられています。この登録が必要になるのは、金額がしきい値を超えた場合のみです。たとえば、収入が €7,000 の場合、余剰の €2,000 に対してのみ保険料を支払います。

VAT 番号がないと請求書を発行できず、オプションの売上領収書のみを発行します。期間限定オンラインストアでの販売による収入は雑収入と見なされ、フォーム 730 または個人所得の場合は収入 PF フォームを使用して申告しなければならないことに、注意してください。

VAT 番号が必要であるケース

期間限定オンラインストアが年間 30 日以上営業している場合、その活動は定期的かつ継続的な性質を帯びるため、不定期とは見なされなくなる可能性があります。このような状況では、イタリア歳入庁 (Agenzia delle Entrate) が VAT 番号が必要かどうかをケースバイケースで評価します。会計士に相談して、ビジネスが法的要件に準拠していることを確認してください。

期間限定のオンラインストアは、年間 30 日以上営業している場合、不定期とは見なされなくなることに注意することが重要です。たとえば、同じ年にオンラインストアを 1 つ 20 日間開いてから、もう 1 つを 20 日間開いた場合、30 日間の制限を超えています。お客様のストアは、通常のビジネスとして表示され得ます。このような場合は、イタリアで営利事業を開始するための要件を満たす必要があります。

• 経済活動分類 (ATECO) コード 47.91.10 で VAT 番号 (つまり、インターネットを介したあらゆる種類の商品の小売販売) を取得し、ビジネスに適した税制を選択します。多くの売り手は、課税所得に対して 15% の減税を適用し、事業開始から 5 年間は 5% に引き下げる定額税制を採用しています。

• SCIA を提出します。

• 事業登記簿に事業を登録します。

デジタル商品ビジネスを始めようと計画している場合、考慮すべきもう 1 つの重要な要素は、決済サービスプロバイダーの選択です。適切なプロバイダーを選択することは、決済を効率的かつ迅速に管理し、ビジネスのタイプに最も適した決済手段を提供する上で重要です。Stripe Payments などのソリューションは、最適化された決済プロダクトを通じて、世界各地でオンラインと対面の両方で決済を受け付け、購入完了率を高め、法令を遵守し、何千時間分もの技術作業を節約します。

期間限定オンラインストアを始めるのに適したプラットフォームとは

イタリアの期間限定オンラインストアに適したプラットフォームを選択することは、プロジェクトを成功させるためのカギです。考慮すべき主な要因は次のとおりです。

• 使いやすさ: プラットフォームはユーザーフレンドリーで、設定プロセスが簡単である必要があります。オンラインストアを迅速かつ効率的に構築しカスタマイズできることが必須です。

• 商品管理: 画像、説明、価格など、商品を簡単にアップロードして管理できるプラットフォームにしましょう。

• 決済手段: 購入完了率を高めるため、イタリアで最も広く使用されているオンライン決済手段をサポートするプラットフォームが必要です。

• 配送管理: 主要な荷主と連携して、簡単に配送管理できるプラットフォームが必要です。

• モバイルデバイス: 期間限定オンラインストアは、スマートフォンやタブレットに正しく表示される必要があります。

• マーケティングツール: 割引、クーポン、ソーシャルメディアの連携など、期間限定オンラインストアを売り込むためのツールが用意されているプラットフォームを探しましょう。

• コスト: 月額料金を請求するプラットフォームもあれば、販売ごとに手数料を徴収するプラットフォームもあります。また、追加機能やサードパーティアプリ連携に追加料金がかかるかどうかにも注意してください。

• カスタマーサポート: 問題が発生したときにすぐに利用できる、信頼できるカスタマーサポートが用意されているプラットフォームが推奨されます。

• 文書とチュートリアル: プラットフォームの操作と使用に役立つガイドとチュートリアルが必要です。

• 分析ツール: これらのツールは、売上を追跡し、顧客の行動を把握するのに役立ちます。

期間限定オンラインストアを宣伝する

期間限定オンラインストアを立ち上げた後の、その成功は、焦点を絞ったマーケティング戦略と徹底したパフォーマンス分析にかかっています。短期的なプロジェクトであるため、プロモーションは迅速かつインパクトがあり、有料顧客の呼び込みに重点を置いたものにするべきです。

期間限定オンラインストアの場合、切迫感を生み出すことが、強力なプロモーション戦術となります。「期間限定」、「数日間のみ」、「土曜日までの限定オファー」など、迅速なアクションを促すフレーズを使用します。ソーシャルメディア、メールマーケティング、有料オンライン広告などのデジタルチャネルの使用を検討してください。

マーケティングオートメーションツールを使用して、カゴ落ちした訪問者にリマインダーを送ったり、ストア閉店までのカウントダウンを共有したりできます。売上を伸ばすことに重点を置いた、すっきりとしたモバイルフレンドリーなランディングページを構築します。

期間限定オンラインストアのパフォーマンス指標

パフォーマンス指標を追跡して、期間限定オンラインストアの状況を確認し、全体的な成功を評価することが重要です。主な指標は次のとおりです。

• 購入完了率: 訪問者が購入する割合

• 毎日のトラフィック: 期間限定オンラインストアへの訪問者数とその参照元

• 顧客獲得コスト: 各顧客を獲得するための平均コスト

• 平均注文額: 顧客による平均支出額

• クリック率: 広告またはリンクをクリックした訪問者の比率

• 広告費用対効果 (ROAS): 総売上をキャンペーンの費用で割ることで、広告キャンペーンの効果を測定します

これらの指標を綿密に追跡することで、期間限定オンラインストアのパフォーマンスの全体像を把握し、後で常設ストアを立ち上げるかどうかを決定できます。