EC サイトにおける決済フローの現状 アジア太平洋地域 2022 年版

このレポートでは、アジア太平洋地域における最も一般的な決済の問題、決済のベストプラクティス、決済フローの改善方法について取り上げます。

  1. はじめに
  2. コンバージョン率に関する戦略
    1. 決済フォームに関する上位 5 つの問題点
  3. 好まれる決済手段
  4. モバイルにおける決済フローの最適化
    1. モバイル決済の最適化に関する主な問題点
  5. サブスクリプションのベストプラクティス
    1. グローバルなサブスクリプション体験で特に改善が可能な項目
  6. Stripe によるサポート
    1. シームレスな決済体験を提供する
    2. グローバル展開と各地域に合わせた体験を可能にする
    3. モバイルやユニファイドコマース (統合された商取引) 向けに最適化する
    4. サブスクリプションをすぐに立ち上げ、1 回限りの購入を経常収益に移行させる
  7. 調査方法

インフレと金利上昇を背景に、消費者は支出に対して慎重な姿勢を示しています。商品に関心を持つサイト利用者を購入完了へと導くためには、一層の努力が必要です。その鍵となるのは、スピーディーでわかりやすい決済フローを提供し、カート放棄につながりかねない買い物客への負担を減らすことです。このことは、ただでさえ買い物客が財布のひもを締めがちな厳しい経済情勢下において、当然のことといえるでしょう。

Stripe は Edgar, Dunn & Company と提携し、アジア太平洋地域 (APAC) の 5 カ国における大手 E-コマースとサブスクリプションビジネスの決済フローを分析しました。その結果、注目に値する事実が判明しました。アジア太平洋地域のウェブサイトの 99% は、その決済プロセスにおいて、少なくとも 5 つの根本的な問題点があるということです。たとえば、広く普及している決済手段に対応していない、次回の使用に備えた支払い情報の保存ができない、といった問題が挙げられます。こうした決済フロー上の不備は最終的に、多大な利益の取り逃がしにつながります。

また、大半の企業は、収益を生む重要な要素を決済フローに導入することを軽視していました。たとえば、アジア太平洋地域の 54% のウェブサイトが、支払いページでクロスセル (関連商品を提案し、追加購入を促す取り組み) を行っておらず、89% がアップセル (より高価な商品を提案し、単価を向上させる取り組み) の機能を設けていないことが私たちの調査でわかりました。これらの手法は、平均注文金額を増やせることが証明されていますが、見過ごされているのです。

Stripe では、企業が決済フローを改善してよりスムーズな購入体験を提供できるよう、調査から得られた知見をまとめました。このレポートでは、主として決済フローのベストプラクティスを解説するとともに、Stripe を利用してそれらを実践している企業をご紹介します。

このレポートは次の 4 つのセクションに分かれています。

1.コンバージョン率に関する戦略
2.好まれる決済手段
3.モバイルにおける決済フローの最適化
4.サブスクリプションのベストプラクティス

コンバージョン率に関する戦略

優れた決済フローとは、スピード、安全性、利便性を最適化して成り立つものです。

決済処理のスピードの重要性は、どれだけ強調しても足りません。決済処理に 3 分以上を要すると、買い物客の 49% は途中で購入をやめてしまいます。言い換えると、企業は購入意思のある買い物客の半分近くを取り逃がしていることになります。また、オンライン購入を毎回完了させている買い物客はわずか 10% にすぎません。そのため、企業は購入完了に至らない 90% の買い物客を獲得できる大きな機会があると考えることもできます。

安全性も重要な要因です。買い物客は訪れたサイトに対してネガティブな印象を抱くこともあり、その原因のトップは、「その企業のウェブサイトが安全と感じられない場合、あるいは信頼できると感じられない場合」であることがわかりました。ブランドに対する消費者の信頼を高めるには、安全な決済フローを提供するだけでなく、「Verified by Visa」や「Mastercard SecureCode」といったロゴや認証サービス情報を表示することが重要です。

さらに、次回に備えて支払い情報を保存するかどうかを顧客が選択できるようにする、アップセルとクロスセルを通じてお勧めの商品を表示する、買い物客がカート放棄に至った場合には購入完了を促す、といった対策で決済フローを最適化できます。

決済フォームに関する上位 5 つの問題点

アジア太平洋地域のウェブサイトの 99% が、その決済プロセスにおいて、少なくとも 5 つの根本的な問題を抱えています。特に一般的な問題点は以下のとおりです。

  • 79% が、決済ページにセキュリティーロゴを表示せず、買い物客の信頼を損ねている。
  • 82% が、カート放棄に至った買い物客へのフォローアップをしていない。
  • 89% が、アップセル (より高価なバージョンの商品やサービスの提案) を行っていない。
  • 54% が、クロスセル (関連製品やサービスの提案) を行っていない。
  • 45% のアジア太平洋地域のウェブサイトが、有効期限切れのクレジットカードで支払いを試行できるようにしている。

また、クレジットカードの取引処理に関して、多くのウェブサイトには次のような不備があります。

チェックリスト:決済体験を最適化する方法

  • エラーメッセージの表示: 無効なクレジットカード番号、有効期限、不正確な個人情報など、支払い情報の誤りをリアルタイムで強調して表示します。
  • 支払い情報の保存: 顧客が支払い情報を保存して、次回購入時にワンクリックで支払いを完了できるようにします。
  • アップセルとクロスセル: 関連商品やおすすめの商品をパーソナライズして表示することで、平均注文額を増やします。
  • フォローアップ: カートを放棄した利用客に、その当日か翌日にメールを送信します。
  • セキュリティーに関する視覚的要素の表示: 信頼性のあるセキュリティー対策が取られていることを示すロゴや認証サービス情報を表示して、ページの安全性を強調します。

好まれる決済手段

どの決済手段を利用するかは人によってさまざまであり、地域によっても異なります。企業がグローバルに展開するには、顧客に好まれる決済手段や支払いのタイミングを十分に把握しておく必要があります。たとえば、ワンクリック決済の提供、Paynow などのような地域固有の決済手段の提供、あるいは後払いが人気の地域では分割払いの提供を、市場に応じて導入することも考えられます。

また、決済方法の選択肢を単に増やすだけではなく、適切な決済手段を表示できるようにすることも大切です。買い物客にとって、利用するウェブサイトが自国で普及している決済手段に対応していることは重要で (97%) 、自分の望む決済手段が利用できない場合、カートを放棄することが頻繁にあると回答した人は 84% にのぼります。

地域固有の決済手段だけでなく、平均注文額が高い顧客に対しては、分割払いを選択可能にすることも検討すべきです。オーストラリアの Afterpay のような後払いの支払い方法が広く利用されるようになってきており、71% の買い物客が、もし後払い決済を利用できるのであれば購入を完了する可能性が高くなると回答しています。しかしながら、こうした方法に対応しているアジア太平洋地域の E コマースサイトはわずか 40% です。Stripe の調査によると、Afterpay に対応したビジネスは、売上が 27% 増加しています。

アジア太平洋地域では、顧客の 60% が、デスクトップやノートパソコンよりも携帯電話を使ってオンラインショッピングを行う傾向にあります。そのため、Apple Pay や Google Pay、WeChat Pay、AliPay を利用できるようにすることで、決済時に買い物客にかかる負担を減らし、素早く支払いを完了することができます。Stripe が実施した別の調査からは、中国で広く使用されている Alipay に対応したビジネスは、中国での売上が 2 倍増加していることが明らかになっています。

チェックリスト:決済体験を地域に合わせ最適化する方法

  • 言語と通貨: 販売先として優先度の高い国を特定し、決済ページをその国の言語に翻訳して現地通貨を表示することにより、決済体験を地域に合わせて最適化します。
  • 地域固有の決済手段: 利用者の所在地や使用デバイスに適した決済手段を動的に表示します。
  • 動的フィールド: 国に応じて決済のフィールドを変更し、適切な情報を取得できるようにします。たとえば、使用されているカードがオーストラリアのクレジットカードであることを決済フォームが認識した場合は、郵便番号のフィールドを動的に削除する必要があります。
  • 分割払い: 後払いサービスが顧客の地域で一般的に使用されていて、平均注文額が高い場合は、後払いサービスの導入を検討します。

モバイルにおける決済フローの最適化

調査対象となった買い物客のおよそ半数が、パソコンよりもスマートフォンを使用し、オンラインでの商品閲覧やショッピングを行っています。また、ソーシャルメディアを通じて買い物を行っている人も多く、アンケート回答者の 80% が、Facebook、Instagram、YouTube などのプラットフォームを利用して商品を購入していると答えています。

こうした動向に対応するため、企業はモバイル決済体験を向上させる必要があります。調査した企業の 98% が携帯電話の画面に決済フローを適合させていましたが、その一方で、半数以上の企業は、モバイル対応の決済手段であるウォレットをサポートしていませんでした。ウォレットは、デビットカードやクレジットカードなどの支払い情報を携帯電話に保存できる便利な決済手段です。

買い物客の 4 分の 3 以上 (84%) は、サイトが Apple Pay や Google Pay などのワンクリック決済オプションに対応している場合、購入を完了する可能性が高くなります。また、決済手段を保存できるようにすることで、顧客は次回の購入時にワンクリックで支払えるようになります。しかし、分析したウェブサイトのうち、この機能を提供していたのはわずか 3 分の 1 でした。

モバイル決済の最適化に関する主な問題点

  • 66% のモバイル決済が、次回の購入に備えて支払い情報を保存できる機能を備えていない。
  • 89% が、Apple Pay または Google Pay に対応していない。
  • 60% が、Afterpay のような後払いサービスに対応していない。
  • 54% が、クロスセル (関連製品やサービスの提案) を行っていない。
  • 26% が、クレジットカード情報を入力する際にテンキーを表示できない。

チェックリスト:モバイルやユニファイドコマース (統合された商取引) 向けに最適化する方法

  • レスポンシブ (応答力): 端末の画面サイズに合わせてフォームが自動的に変更される完全なレスポンシブデザインにより、モバイルデバイスでのコンバージョン率を最適化します。
  • キーパッド: カード情報の入力を求める際にテンキーを表示します。
  • ウォレット: モバイルウォレット (Apple Pay、Google Pay など) に対応します。
  • ワンクリック決済: ワンクリックの支払いオプションでコンバージョン率を高め、利用者への負担を減らします。

サブスクリプションのベストプラクティス

サブスクリプションは価値の高いリピート顧客を得るための効果的な手段になり得ますが、その決済プロセスに不備があると、経常収益に悪影響をもたらします。

私たちの調査において、アジア太平洋地域の 79% の顧客がサブスクリプションで嫌な経験をしたことがあると答えています。その内容のトップは、「サブスクリプションのキャンセルに必要な手順が多すぎる」ことです。世界中の上位 217 のサブスクリプションサイトのうち、 5 分の 1 では、クレジットカードの種類を確認していない (35%)、クレジットカード番号の自動認証を実行していない (30%) など、その取引プロセスに少なくとも 3 つの根本的な問題がありました。この数字は、41% のサブスクリプションビジネスがこの種の不備を抱えていた昨年と比較すると改善されています。

決済フローの改善が見られる中、サブスクリプションビジネスが競争力を強化するには、完全にシームレスな顧客体験を提供する必要があります。企業としては、顧客が支払い情報を更新する際に、サブスクリプションの新規購入の妨げや、既存の顧客の解約につながり得る要因に注意を払う必要があります。

グローバルなサブスクリプション体験で特に改善が可能な項目

  • 57% のサブスクリプションサイトが、購入前に試用できる無料トライアルを提供していない。
  • 51% のサイトが、クーポンやプロモーションコードの入力フィールドを設けていない。
  • 58% のサイトが、ソーシャルメディアのプロフィール (Facebook、Google など) と連携したアカウント作成オプションを提供していない。
  • 39% のサイトが、自動入力機能を提供することなく、顧客に手動での住所入力を求めている。
  • 25% の顧客が、サブスクリプションの変更やキャンセル (自己管理) をオンラインで実行できない場合、サブスクリプションの購入を「思いとどまる」と回答している。

チェックリスト:サブスクリプションビジネスのためのベストプラクティス

  • 割引と無料トライアル:商品やサービスを一定期間無料で試用できるようにすることで、新規顧客を獲得します。
  • 次回も使える決済手段:ウォレットや口座引き落としなど、繰り返し使える決済手段を利用できるようにして、支払い情報の入力を一度で済ませられるようにします。
  • セルフサービス:顧客がサブスクリプションをオンラインで簡単に管理できるようにして、サポート担当に相談したり、多くの手順を経たりする必要をなくします。
  • ソーシャルメディア:顧客がソーシャルメディアでのプロフィールからアカウントの作成やログインをできるようにして、サインインの方法を簡略化します。
  • 住所のオートコンプリート機能:住所のオートコンプリート機能で顧客が請求先や配送先の住所を簡単に入力できるようにします。

Stripe によるサポート

今後の不透明な経済情勢をうまく乗り切るには、すべての利用者にとってスムーズな決済体験を確実に提供する必要があります。このためには、お勧めの商品を表示して必要なものを顧客が自分で探す手間を省き、負担のない決済フローが求められます。

しかし、時間とエンジニアリングリソースを費やして独自にソリューションを構築する必要はありません。Stripe のシームレスな金融プラットフォームを導入することで、業界最高レベルの顧客体験を提供し、コンバージョン率をグローバルに向上させることができます。Stripe の製品ラインナップを活用することで、以下のことが実現可能となります。

シームレスな決済体験を提供する

  • Stripe Checkout の事前構築済みのオンライン決済ページ を使用して、最小限の開発時間でコンバージョンを最適化するサービスを立ち上げます。
  • Payment Element の埋め込み可能な UI コンポーネント を使用すると、貴社のサイトに最もふさわしい安全な支払い体験を設計できます。25 種類以上の適切な決済手段を動的に表示し、コンバージョンを最適化します。
  • 決済ページ全体を Payment Links で作成して、そのリンクを共有できます。コーディングは不要です。
  • 顧客が支払い情報を保存し、Link によるワンクリック決済 でスピーディーに決済できるようになります。

グローバル展開と各地域に合わせた体験を可能にする

  • 195 カ国以上で発行されたカードに対応し、世界中の顧客からの支払いを受け付けます。
  • 顧客が地域固有の決済手段で支払えるようにします。たとえば、オーストラリアの顧客の場合は Afterpay や BECS、日本ではコンビニ決済や銀行振込、シンガポールでは PayNow、マレーシアでは FPX、そのほか、GrabPay、Alipay、WeChat Pay といった広く利用されているウォレットなどを選択できます。
  • IP アドレス、ブラウザのロケール (言語や国・地域の設定)、Cookie、その他のシグナルをもとに、適切な決済手段を動的に表示することができます。
  • 複数のフォームに入力したり 1 回限りのアカウント登録プロセスを実行したりせずに、ウォレットや後払いなどの決済手段を簡単に追加して拡張できます。

モバイルやユニファイドコマース (統合された商取引) 向けに最適化する

  • どのデバイスでも機能する、完全なレスポンシブデザインの決済フォームを使用します。
  • Apple Pay と Google Pay をすぐに使用でき、追加の登録やドメイン検証は不要です。
  • オンラインでもオフラインでも、チャネルを超えたシームレスな体験 (例: オンラインで予約して実店舗で受け取る) を提供できます。

サブスクリプションをすぐに立ち上げ、1 回限りの購入を経常収益に移行させる

  • クレジットカード、口座引き落とし (オーストラリアの BECS)、銀行振込など、広く利用されている決済手段ですぐに継続支払いを回収できます。
  • ユーザー数に基づく料金体系から従量課金まで、あらゆるタイプの請求に対応できる柔軟な請求ロジックを駆使して料金体系をテストできます。
  • ポータルサイトでのセルフサービスを通じて、顧客がサブスクリプションのアップグレード、ダウングレード、一時停止、再開を簡単に実行できるようにします。
  • Smart Retries、支払い失敗を知らせるメールの自動送信、自動カード更新機能により解約を減らします。

決済フローを最適化し、ビジネスを拡大させる方法については、Stripe の専門家チームにご相談ください

調査方法

Stripe は Edgar, Dunn & Company と提携し、Statista のオンライン販売額に基づいて、アジア太平洋地域の 5 カ国 (日本、オーストラリア、シンガポール、マレーシア、ニュージーランド) それぞれにおける上位 100 の EC サイトを分析しました。ウェブサイト数が十分でない場合は、Similarweb によるオンライントラフィックで上位のサイトを組み入れてサンプルを補強しました。

商品をショッピングカートに入れてオンライン購入のシミュレーションを行い、場合によっては VPN を使用して決済プロセスを完了し、さまざまな国に所在する顧客を再現することで、各サイトに不備がないかをテストしました。決済フローの分析は、決済フォームのデザイン、モバイルの最適化、地域化、買い手の信用とセキュリティーに関連する 26 の基準のリストに照らして実施されました。

また、Crunchbase のウェブサイトトラフィックに基づき、デジタルコンテンツと有形商品を提供する世界中の B2C サブスクリプションの上位 217 のサイトを分析しました。このサンプルは、メディアとストリーミング、ファイル共有、フィットネスアプリ、フードデリバリー、E-ラーニング、およびニュースの各カテゴリーのサブスクリプションサイトを含むものです。個々のクライアントに応じて料金設定が調整されることの多い B2B サブスクリプションサイトや、成人向けエンターテインメントのプラットフォーム、オンラインギャンブルのサイトは対象外としました。

さらに、アジア太平洋地域の 542 人の消費者を調査して、現在の購買行動と傾向、決済動向、決済体験に影響を与える要因に関するインサイトを獲得しました。

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