住宅雑誌として創刊した Dwell、今では住宅建築も手がける

長年続く紙媒体の雑誌が、デジタルサブスクリプションへの革新的アプローチと、一人ひとりが好きな暮らし方を実現できる多様な商品で成功を収めています。

Dwell house exterior

540 平方フィートの Dwell House。価格は $389,000、自宅敷地内に配送される。

「住宅」カテゴリーのメディア企業は、広告収入の減少と住宅価格の上昇という、会社存続に関わる 2 つの課題に直面しています。特に後者の課題によって、多くの潜在読者は住宅購入が難しくなっています。

Dwell は、「より良い空間を通じてより良い暮らしを支援する」ことを使命とする会社です。手頃な価格のプレハブ住宅の建設を支援するなど、これまでもさまざまな面で工夫を凝らして先述の課題に対処してきました。

22 年前に紙媒体の雑誌として創刊して以来、Dwell はファミリー向けの戸建て住宅を基本構成としないように気をつけてきました。むしろ、キャンピングカーやファームハウス、ガーデンアパートまで、どんなタイプであっても建てた人の個性を感じさせる住宅に光を当ててきました。たとえば、革新的な建築、インテリアデザイン、テクノロジーなど、住宅をより個性的で便利に感じさせるあらゆるものです。

こうした精神に惹きつけられ、Zach Klein 氏は 2020 年に同社の CEO に就任。Vimeo の共同創設者でもあり、DIY 住宅の設計に関心を抱いていた Klein 氏は、2015 年に Cabin Porn という本を編集していましたが、Vimeo と DIY.org でオンラインコミュニティを立ち上げた経験を活かせば、広告に完全には依存しない、持続的な資金調達が可能なメディア商品を作れるはずだと確信していました。

これを実現するため、Dwell はさまざまなデジタルサブスクリプション商品の提供を開始。自宅の改善に興味がある消費者は、会員限定のホームツアーや説明動画、雑誌のアーカイブを利用できる「Dwell Plus」に参加できるようになりました。設計や建築の専門家は、業者一覧に事業名を掲載できます。また、住宅所有者はデータベースに参加することでて、Dwell コミュニティの他のメンバーに自宅を披露することができます。

「Stripe を利用して、ユーザーがクレジットカードを追加できるプロファイルシステムを構築し、デジタルサブスクリプション商品の重層化を始めました」と、Klein 氏。これらの商品は 18 カ月で同社の売上の 4 分の 1 以上を占めるまでになりました。

こうしたデジタル化の成功も投資家が注目。2022 年 9 月、Dwell は North Equity が後援するデジタルメディア企業、Recurrent Ventures に買収されました。

Recurrent 共同創業者の Andrew Perlman 氏は次のように述べています。「ここ数年でデジタルサブスクリプションを成長させた Dwell の手腕が買収の決め手の 1 つとなりました。デジタルメンバーシップ商品、購読者ベース、既存顧客維持率には目を見張るものがあります」

Dwell kitchen

Dwell House の内装には、Dwell が 20 年以上にわたって支持してきたデザイン性と居住性に対する価値が反映されています。

Dwell は事業を拡大し続けており、その強いブランド力と熱心な読者層を活かして家具やキッチン用品、さらには住宅の建築にまで進出しています。

2016 年には、インテリアとキッチン家具を取り扱う Modern by Dwell を Target と共同で立ち上げ。今年は、サーフカルチャーからインスピレーションを受けた色使いやデザインの商品を展開するカリフォルニア企業、Concrete Collaborative と提携して、新たな取扱い商品としてタイルを導入しました。また、モジュール式アウトドア家具シリーズの Chicory も展開しています。

今年、同社は住宅建築にも進出し、注文から 6 カ月以内に建築、設置 (大型クレーンを使用) が可能な 540 平方フィートの居住空間を有する Dwell House を発表。Klein 氏と Dwell の編集長である William Hanley 氏の説明によると、この商品は、新しい住居の建築にかかる多額の費用と手続きの負担を回避するやり方で「米国にはより多くの住宅が必要」という課題に対処するだけでなく、自宅で仕事をしたり、複数世代の家族との同居に対応したりするために、自宅の敷地内に居住空間を増やしたいという要望にも応えられるとのことです。

Klein 氏は次のように述べています。「今後 10 年間で、Dwell の収益のほとんどはメディアコンテンツではなく、実際の商品やサービスからもたらされると思われます。Dwell はこれらの商品を通じて、人々が素晴らしい居住空間を手に入れられるよう直接支援していきます」

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