企業・メイドインイタリー省、Unioncamere、InfoCamere の報告によると、イタリアでは近年、革新的な起業家精神が育ってきているとのことです。2021 年 10 月に実施された調査でも、革新的なスタートアップは着実に数を増しているとの結果が出ており、調査対象期間で新規に商業登記を行ったのは 14,032 社と、前四半期の数字を 3.3% 上回っていました。
しかし、イタリアのスタートアップはさまざまな課題にも直面しており、その 1 つは、とりわけ起業初期のプレシードおよびシードラウンドで資金調達に悩まされることです。そのため、起業家が起業家のために創設したイタリア初のベンチャーキャピタルリザーブファンドである Italian Founders Fund は、スタートアップの初期フェーズに充てられる資金の不足に対処するために設立されました。
本記事では、Italian Founders Fund とは何なのか、誰のためのものなのか、その目的は何なのかについて解説します。
本記事の内容
- Italian Founders Fund とは?
- Italian Founders Fund は誰のためのものか?
- Italian Founders Fund の目的とは?
- 最初の資金供給プロジェクト
- Italian Founders Fund の運営者
Italian Founders Fund とは?
2023 年、起業家が起業家のために設立したイタリア初のベンチャーキャピタルファンド、Italian Founders Fund (IFF) が設立されました。この投資ファンドは、延べ 100 のデジタル起業家、ファミリーオフィス、分野専門家によって支援されており、多様な経験、スキル、世代が集結しています。出資者は、スタートアップが直面する典型的な課題を解決するために、イタリアの起業家たちへ資金を供給し、支援しようという考えを持つイタリアの起業家たちです。
このファンドは、プライベートエクイティを専門に扱う独立系資産運用会社 (SGR) である Koinos Capital によって運営されており、現在は投資対象をベンチャーキャピタルにも拡大しています。IFF はすでに民間資本のみで 5,000 万ユーロを超える資金を調達しており、最終目標の 6,000 万ユーロまで目前に迫っています。
Italian Founders Fund のコンセプトは、他のヨーロッパ諸国で見られる同様の成功モデルを模倣することにあります。Koinos Capital の Marco Morgese 最高経営責任者 (CEO) は、ファンドについて次のように述べています。「創業者によって運用されるこの種のファンドは、イノベーションが産業政策の要となっている市場ではすでに確立されています。20 年近く前からあるアメリカの Founders Fund をはじめ、ドイツの 10x Founders、フランスの Galion.exe、スカンジナビアの byFounders、オランダのDutch Founders Fund などがこの例にあたります」
Italian Founders Fund は誰のためのものか?
Italian Founders Fund は、イタリア国内または海外に拠点を置くイタリア人起業家によって設立されたスタートアップや、イタリア市場への進出を目指す外国のスタートアップを支援対象としています。ファンドの狙いは、プレシードラウンドで革新的なプロジェクトを支援したり、シードラウンドで追加の支援を必要とする既存プロジェクトの成長を支援することにあります。
Italian Founders Fund の目的とは?
Italian Founders Fund は、期間中 25 件の案件への資金供給を計画しています。1 社あたりの投資額は 50 万ユーロから 150 万ユーロで、その後の資金調達ラウンドではさらに 250 万ユーロを追加する見込みです。
ファンドは、スタートアップ企業のプレシード / シードラウンドでリード投資家として行動することを目標に掲げています。IFF の強みは、その協力的で参加型のアプローチにあります。IFF は専門知識、経験、時間、そして優秀な投資家ネットワークを提供し、投資案件の調査と選定に積極的に参加しています。こうした関与により IFF チームは、資金供給の対象となる企業が直面している見通しと課題について、詳細かつ直接的な情報を得ることができます。さらに、IFF はイタリアへの投資に関心のある国際ファンドにも積極的に協力しています。
最初の資金供給プロジェクト
Jet HR
Italian Founders Fund は、すでに 2 つのプロジェクトの支援に着手しています。IFF の最初のプロジェクトは、 Exor Ventures と共同で行われました。資金供給先は、煩雑な事務処理を最小限に抑えながら人材管理の最適化を促すよう設計されたプラットフォームである Jet HR です。ミラノを拠点として 2022 年後半に設立されたこのスタートアップは、イタリア史上最高額のプレシードラウンド調達額である 470 万ユーロを調達しました。立ち上げからわずか数カ月で、同社はすでに経常収益が 100 万ユーロに達し、世界で最も急成長している SaaS スタートアップの上位10% に食い込んでいます。
Jet HR は、人事雇用から給与計算まで、従業員のライフサイクル全体を管理し、企業のすべての管理ニーズに対応する包括的なソリューションを提供することを目的としています。さらに Jet HR は、休暇の申請や経費報告書の提出など、従業員のワークライフのさまざまな側面を管理できる専用アプリを通じて、雇用主と従業員の両方にサービスを提供しています。その狙いは「過剰なリソースと貴重な時間を消費するタスクを自動化し、企業がより戦略的な活動に力を入れられるようにすることにある」と、このスタートアップの創業者の一人である Francesco Scalambrino 氏は語っています。
Glaut
Italian Founders Fund が資金提供する 2 つ目のプロジェクトは、人工知能を利用して市場調査とアンケートを行う Glaut を対象としたプロジェクトです。2023 年後半に設立されたこの若い会社は、140 万ユーロのプレシードラウンドを見事完了させました。このラウンドには、Brainstorm Ventures、Alecla7、Ithaca、B Heroes、Club degli Investitori、Eden Ventures、Delirus Capital などのエンジェル投資家が参加しました。
立ち上げからわずか数カ月で、Gluot はすでに Altum Insights、Marketagent、Eumetra などの調査機関や、AutoScout24 やMondadori Group といった有名国際ブランドと提携しています。これらの業界大手は、ブランディング、広告テスト、アイデア試案、顧客体験に焦点を当てた顧客調査プロジェクトで、Glaut の協力を得て何千ものインタビューを実施しています。
現在 Italian Founders Fund では、3 つの新規案件が最終調整に入っているところです。
Italian Founders Fund の運営者
Global Founders Capital (ヨーロッパの大手デジタル企業グループ「Rocket Internet」のベンチャーキャピタルファンド) の元パートナーである Lorenzo Franzi 氏が現在、Italian Founders Fund の運営を務めています。Lorenzo 氏は、投資銀行業務で長年の専門的な経験を持ち、デジタルスタートアップを設立した実績もあります。
Lorenzo Franzi 氏によると、Italian Founders Fund の強みは、起業とイノベーションの分野で活躍した創業者や著名人 100 人を投資家として迎えていることと、創業者コミュニティのメンバーや経験豊富な投資家で構成される投資委員会を設けていることだといいます。これらの要素を通じて、IFF は経済の未来を再構築することを目指す戦略的セクターを促進・支援することができます。
Italian Founders Fund に関与する 100 人以上の創業者の中には、Daniele Ratti 氏 (Fatture in Cloud)、Marco Trombetti 氏 (Translated)、Andrea Giannangelo 氏 (iubenda)、Simone Mancini 氏 (Scalapay)、Giuseppe Amitrano 氏 (Dils)、Gabriele Antonelli 氏 (SpazioDati)、Marcello Ascani 氏 (Flatmates Agency) など、イタリアを代表するデジタル界および起業家界の主要人物も含まれています。
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