初期段階スタートアップのピッチング

投資家が知りたい詳細を交えて、あなたの会社のストーリーを洗練させましょう。

前書き

ピッチングはスタートアップが辿る成り行きを大きく左右します。それは、誰かに手短に自分の会社について伝え、関心をもたせてもっと知りたいと思わせるスキルです。従業員候補者、投資家および潜在顧客など、いつでも誰にでも会社のピッチをするのです。

創立者の多くにとってこれは自然にできることではありません。そこで、Stripe Atlas は何千ものスタートアップを支援し、多くのピッチの練り直しをサポートしてきました。このガイドは、スタートアップコミュニティのために、その数々の教訓を反映させたものです。初期段階にいる企業の視点から、投資家を対象としたピッチングをイメージして書かれています。

私たちは Y コンビネータ社と協力し、YC CEO マイケル・サイベルそして YC および Stripe Atlas で事業を始めた YC 創立者の観点から本ガイドを更に洗練させました。YC の 2019 年冬季クラスの申込期限は 10 月 2 日に迫っています。Stripe Atlas に 9 月 15 日までに加入されていたら、YC へのピッチについて個別にアドバイスします。

オーディエンスを理解する

ピッチを聞く人の視点に立ちましょう。彼らは高学歴で、スタートアップについて精通しており、ビジネスに対して鋭い感性を持っている人たちです。彼らの仕事はあなたの良い点を見つけること。これは、楽観主義者の仕事なのです。

彼らはあなたの分野についてあなたほど理解していません。あなたほど課題を把握できていません。業界用語にも業界基準にも馴染みがないかもしれません。

これらを念頭においた上で、前提条件を頭の切れる友人に話すように説明してください。どうやって点と点を繋げたのかを明確にしてください。

そして、彼らはおそらくピッチに慣れきっています。

今日 1 日で、あなたの前にもあなたの後にも他のピッチを目にするはずです。トップクラスのアクセラレーターや、初期段階のベンチャーキャピタルのレビューアーは、通常 1 件あたり 2 分という短さで、毎日数百のピッチを見ています。あなたの目的は、この 2 分ができるだけポジティブな指標となるように印象づけ、レビューアーがあなたの「コアアイディア」を必ずひとつ誰かに説明できるように覚えてもらうことです。

レビュープロセスは延々と数日間続きます。もともと疲れる作業です。しかし、多くのピッチが同じ退屈な内容を繰り返してしまっています。

あなたの会社のどこが「特別」なのか、レビューアーが簡単に理解 (そして忘れない) ようにしなければなりません。

自分とチームを売り込む

ほとんどの事業は、まだ概念の段階では洗練されていない場合が多く、それが初期段階というものです。チャンスが到来すれば会社として大きく飛躍できるかどうかは、「あなた」を通してレビューアーが判断します。

厳密に専門的なことでなくても、今までに成し遂げた最も大変であったことや、すごいことは応募書に記載すべきです。それが、ユニークで個性的な場合は特にそうです。応募者枠は、典型的な手段で典型的に成功した者で溢れています。彼らはまじめな学生として熱心に勉強し、優秀な学校を卒業したことでしょう。

彼らの多くは、スタートアップでの生活に慣れるのにとても苦労をするでしょう。そこにはカリキュラムがなく、努力に見合った成績がもらえるわけでもなく、締切を強制する教師もいません。

投資家にはこれがわかっています。何度も目にしてきたからです。

明らかに困難ですごい何かに成功したことがあるなら、それを伝えましょう。オリンピックレベルの水泳スキルでソフトウェアは売れませんが、長期にわたって厳しい努力を厭わない人であることがわかります。 ノーベル賞の受賞者である必要もありません。様々な調整が要求される複雑なプロジェクトを、障害を乗り越えて完成したことがあれば、それも対象になります。なぜなら、それこそがスタートアップの縮図であるからです。

インターネット上でお金を稼いだことがあれば、少し気恥ずかしくても、(アフィリエイトマーケティング、eBay の裁定取引など) 伝えましょう。有用な判断材料になります。

今までにつくった最もすごいものを挙げてください。スタートアップでは製品を作り、人々にそれらを使うように説得します。何かをつくるスキルは、ゼロから習得するのは難しいと考えられています。あなたに何らかの基盤となる経験がある方が望ましいのです。

印象的なプロジェクトやエンジニアリングの資格を挙げることができない場合には、具体的な証拠を示して積極的に技術力を売りましょう。「私は技術的分野の学位を持っている」などではなく、次のようにアピールます。

私は大学院の化学研究室で働いていました。8 ドルの化学薬品を購入するためには 4 ページもの書類作業が必要でした。 私はスプレッドシートと Python アプリを組合わせて工夫し、ペーパーワークをなくしました。 これは研究室であっという間に広がりました。 購買部門はそれを止めさせようとしましたが、あまりにも人気だったため、止めることができませんでした。」

このエンジニアは Google には雇われなくても、ソフトウェアを出荷するスキル、人々が欲しいものを作るプロダクトセンス、そして制約的な環境のなかで回避策を講じる能力があることを示唆しています。これらの情報は、そのアプリ制作に 1 日しかかからず、12 人しかユーザがいないという事実よりも重要です。

自分を卑下しないこと! 誰にでも疑念、不安、そして不得手な分野はあります。 ピッチを披露する時にわざわざ言う必要はありません。2 分しかないことを忘れてはいけません。失敗したこと、達成できなかったことではなく、今何をしていて何を達成したのかを説明してください。失敗談は、その結果からどのような洞察を得たのか以上の重要性がありません。

あなたはおそらくチームの一員として応募しているでしょう。チームメンバーの相互関係を説明してください。スタートアップチームにとって大きなリスクとなるのは、今後数年続く大きなストレスのなかで、チームがバラバラになることです。緊密な関係があれば、リスクを緩和することができます。チームメンバーのスキルがどのように相補的であるかを説明してください。チームが特定の方向 (例えば、全員技術者でセールススキルに欠けるなど) に大きく偏っている場合、どうやってそれが他分野の弱点の解消に繋がっているか、もしくは人材雇用の計画などについて説明してください。

さらに、「俊敏性とスピードへの認識」について伝えてください。成功するスタートアップの創立者は何年もかかるプロジェクトに取り組みますが、2 週間の間に大量の仕事をこなすこともできます。信じられないほどの短期間で難しいプロジェクトをしたことがあるなら、それは良いストーリーになるでしょう。進行中のプロジェクトについて話す時に、YC パートナー マイケル・セイベルの発言を引用し、「与えられた時間内に[達成できた驚くほどの仕事量]」についての例を挙げるべきでしょう。

具体的な詳細を伝える

何を作っているのか、そして誰が使うべきなのかについて的確な説明をしましょう。

Stripe Atlas がレビューするピッチの中で最も頻出する問題は、何を作っているのかについての明確な詳細が不足していることです。レビューアーは、現在作っているものの説明のされ方から、それが成功するかどうかを判断します。

次のようなピッチは何も言っていないのと同じです。

当社は、最先端の AI アルゴリズムと機械学習を使って、eコマースの製品販売を促進します。

これでは、機械学習に対しても eコマースに対しても理解力があることを示すのは難しく、レビューアーの、これを書いた人がこの製品を作れるだろうという確信には繋がりません。また、実際の製品についても全くわかりません。特に、エンドユーザ体験がどのようなものなのかについて具体的に明示してください。レビューアーは、アーリーアドプター層である可能性が高いです。自らが製品を使用している状態を想像したいはずです。

同じ製品をこのように説明してみましょう。

当社は Google の先行検索ボックスを Magento プラグインとして構築しました。これは、検索から購入へのコンバージョンと、平均注文額を向上させます。

このピッチには具体的で説得力のある詳細が詰まっており、投資家はすぐに使い慣れたものと比較して製品を視覚化できます。製品またはプロトタイプが存在することが分かります (「構築しました」が過去形になっているのに注目)。 テックスタック (Magento) と、その製品の市場 (Magento を使用する技術への専門性が低い中小企業) についても分かります。創立者が eコマースをビジネスモデルとして理解していることも分かります。なぜ製品を使用するべきかの 2 つの魅力的な理由も分かります。また、レビューアーの嫌がる意味のないマーケティング用語 (「最先端のテクノロジー」など) も避けています。このピッチは、レビューアーにもっと知りたいと思わせるでしょう。

ブロックチェーンや機械学習のような、最近ポピュラーなアイデアに取り組んでいるときは、特に明快さが重要です。創業者の中には指折りの専門家がいるかもしれませんが、多くは新聞記事以上の知識で議論することはできないでしょう。単に流行を追いかけるだけの創立者ではないことを手早くみせるべきです。

あなたの製品について話す際は、現状と数週間後の状況を正確に説明します。あなたの市場について話す際は、長期的なゴールを含めても構いません。

事実を述べ、その事実をより具体的にすることが悪く転ぶことはほとんどありません。あなたはその分野の専門家であること、あるいはその道を進んでいることが期待されています。数字を提示できるときは提示しましょう。抽象的になってしまうのはできるだけ避けましょう。これをすることで、あなたが実際にこの分野と市場について十分な情報を得ていること、さらに今後数年間その改善にあなたの人生を費やす覚悟があることを証明しています。

魅力的な市場をターゲットにする

投資家は楽観主義者です。投資家は事業の成功を予測し、成功例を想像しようとします。成功規模が小さすぎる企業は優れた事業であってもあまり投資対象となりません。

ベンチャー投資家は、年間最低数億ドルの収益を維持できる企業を探しています。収益の上限が数百万ドルに留まるニッチなプロダクトは、次の大きな市場に投資を広げられる場合以外関心を引きません。Altair Basic を作っている場合は、次のようにして投資家を納得させてください。「現時点では愛好家のための翻訳機にすぎませんが、将来的にはすべてのマイクロコンピューターの OS となります。その名も Windows です。」Windows 1.0 から現在までの Microsoft の歴史を述べる必要はありません。そんなことを予知できた人はいるでしょうか?

多くの投資家は、「大きな市場の成功者」でなく、「大きな市場の勝者」に投資したいと考えています。あなたの成功規模が市場の「シェア」ではなく、「独占」になるのが最も理想的なのです。そのためには、既存プレーヤーを置き換え、さらに商品や市場進出戦略で他社との差別化を図る必要があります。

分散してしまっている市場を中央集権化するようなケースは非常に興味深いです。Uber 以前のタクシー業界や Airbnb 以前のホテル業界はいずれもその最たる例です。両ケースのイノベーションのかたちとして、根底的に改善されたプロダクトに留まらず、強力なネットワーク効果があります。これによって、地理的に分散していたプレーヤー多数の市場が、単一の世界市場になり勝者がそれを独占できるようになったのです。

抗癌薬、検索エンジン、オンライン広告事業などは、説明するまでもなく 10 億ドル市場です。あなたの市場がそれほど明確に 10 億ドル市場でない場合は、それがなぜそうなり得るかを数字で示して (それか信憑性のある情報源を引用して) ください。またはニッチな市場を勝ち取ることで、どのようにより大きくより魅力的な市場を勝ち取ることにつながるのかを説得してください。

フェルミ推定は、市場規模と分析の質を簡潔に示す良い方法です。まず顧客の数を厳密に特定し、それに市場のシェア (成功すると仮定して) を掛けます。さらに 1 年あたりの利用数を掛けます。各購入あたりの収益かマージン (マージンが業界では薄い場合) を掛けます。潜在顧客基盤が大きいほうが良いと思われるかもしれませんが、堅く確実な顧客セグメントをアピールする方が良いでしょう。万人に喜ばれるように平凡な試みをするのではなく、商品やマーケティングを特定の顧客層に積極的に最適化して勝ち取っていくことを示唆しているからです。

概算を示せばよく、厳密に調整した財務計画はおそらく過剰です。好機を捉えることができる能力があるという印象をレビューアーに与えられれば十分です。

ユニークな洞察を共有する

スタートアップを行うということは、問題空間の隅々まで学ぶのに数年を費やす覚悟があることを意味します。あなたはすでにこの問題について詳しく考えていて、貪欲に資料を読み漁り、潜在顧客と話していることでしょう。

あなたがすでにこの作業を開始していることをレビューアーにはっきり示してください。

レビューアーは頭は切れますが、その分野の専門家ではない可能性が高いです。ピッチは、教養がある人でも知らないことが分かるようなものでなければいけません。顧客との会話と同様、新しい洞察を聞いた人はあなたを記憶し、好ましく受け止めるはずです。

例えば、教育管理ソフトウェアをスタートアップに販売している場合は、次のようなピッチを参考にしましょう。

従来の教育管理ソフトウェアは、長期勤続のホワイトカラー従業員を擁する病院のような組織や、ブルーカラー従業員を抱える食品サービス業などの多売形企業のニーズに合わせて最適化されています。 類似する母集団がないため、誰も急成長するスタートアップに適したソリューションをもっていません。従業員数が毎年 100% 増加するということは、エンジニアリングチーム、財務部門、および管理職の 50% が未経験であることを意味します。この事実は決して変わりません。そのため当社の製品は、ホワイトカラー従業員向けにカスタマイズされた短期集中講座に焦点を当てています。

「スタートアップの会計士とファストフードのレジ係りの勤続期間がほぼ変わらない」というのは特筆すべき事実です。ほとんどの人は、起業関係者でさえも、その事実に気づくことはありませんでした。通常の会計士のための教育を実施しても、彼らのニーズに対応するわけがありません。このようにして洞察を示した後、これがどう製品、マーケティング、および販売方法を影響するかについて話します。

ピッチでは、この分野でのプロダクトの独自性についても説明する必要があります。競合企業を明確にしてください。競合他社がいない場合は、あなたが非常に魅力のないマーケットをターゲットにしているか、この分野に関する最低限の調査もしていないということです。あなたの会社がどのように違うのか、その違いがどのような成果に結びつくのかを説明してください。

Powerpoint デッキ用に Heroku を作りました。テキスト (Markdown) をローカルで編集し、プレゼンテーションをオンラインで表示させることができます。顧客は現在、Powerpoint か Keynote を使用していますが、慎重に準備されたプレゼンテーションを自分のものでないマシンやプロジェクターで発表すると表示が壊れることがあります。Google スプレッドシートは表示の一貫性に優れていますが、オンライン編集作業はひどいものです。私達のプロダクトでは、よく慣れ親しんだ環境 (普段使うテキストエディタなど) で編集ができるのに、HTML や Javascript にコンパイルされたプレゼンテーションは、最新のブラウザとインターネット接続があればどこでも動作する、という保証がされています。

初期段階の長所に焦点を当てる

素晴らしい事業が、最初からスタートアップとして成功している必要はないのです。創業時に株式投資を行う人は、スタートアップが大企業に成長する可能性が僅かながらもあると考えているからそうするのです。

投資家は、Google や Facebook などの業界の巨人が創業時はどうであったかを覚えています。到底、有能な経営者がやるべき全てのことを満足の行くレベルで経営し、全方向でバランスが取れていた丸い企業ではありませんでした。むしろ、考えられないような人材配置で、様々な失敗を繰り返しながら自転車操業をしているような状態でした。それでも、こうした企業にはキラキラした小さな芽があったのです。

Facebook は、それといって何もできない寄せ集めのおもちゃのようなものでしたが、瞬く間に広がり多くの人を虜にしました。Google は世界に何十もある検索エンジンのひとつでしたが、他とは大きく一線を画すものでした。

多くのピッチは、企業のあらゆる側面の概要を述べた「事業計画」のような内容になっています。事業計画は慣習的に内容の幅が決まっているため、取捨選択できずに全てを盛り込んでしまうことになります。あなたが伝えることができる情報量は非常に限られています。自分が胸を張って説明できることに集中してください。

企業の最終目標は高収益を生み出すことですが、投資家は成長した木を期待しているわけではありません。どんな木も芽から成長することを理解しています。今は収益性を示す必要はありません。それにとらわれすぎているようなら、投資家が望むものを正しく把握できていないということです。一にも二にも、そのビジネスがもっている潜在力を売るのです。最近 YC に合格した企業は、応募時にはグループの半数以下しか利益はおろか、収益すらありませんでした。

あなたの事業の財政状況について話すことができるのは素晴らしいことです。魅力的な内容であればぜひ話しましょう。しかし、最も魅力的な財政状況は、あなたの事業の成長を示唆しているものです。例として、食品注文ビジネスでユニットエコノミクスの計算が可能な場合などです。オーダーごとに収益を上げているかが分かっているのは非常にプラスになるので、その計算をみせてください。特定のチャネルでの顧客獲得コストを計算でき、それを改善する方法を提示できるのであれば、申し分ありません。

一方、今月の収益が支出を 2,000 ドル上回っているということだけなら、それは興味深いものではありません。同様に、あなたのアプリをリファクタリングしたり、ホスティングを変えたりして数百ドルの予算を削減するだけの計画も、興味深いものではありません。コストを削減しただけで Google になることはできません。

成功の証拠を強調する

メトリクスの測定基準には 3 つのポイントがあります。測定すべきものは分かっていますか?実際にそれを測定できていますか?かかった時間に比べて、出た数字は桁違いに良いですか?

あなたのスタートアップの業界やビジネスモデルをもつ企業が評価される共通の指標を知っておく必要があります。A16Z は、スタートアップメトリクスについて広範囲に渡り記載しています。同様のビジネスで経験豊富な友人や同僚に尋ねることもできます。新しいメトリクスを作ろうとしなくても、もう誰もが知っている基準が存在するでしょう。

プロダクトを作ったのなら、その使用状況を完全に理解するために、付属の分析機能が必要です。製品を速いスピードで改善していけるだけでなく、ユーザの行動を把握していることを自信を持って示すことができ、投資家からの評価を勝ち得るでしょう。

この洞察を検証してみましょう。「ユーザの 60% はすぐにチームメイトを招待します。チームでの連携作業を可能にするというのがコアな価値提供だからです。そして、これがユーザが Excel から当社に移行する理由です。」

メトリクスは正確に引用しましょう。収益の測定基準は特にです。総売上高 (GMV) は収益ではありません。2 者間の取引が発生することで料金を徴収すると、総取引は GMV ですがあなたの取り分のみが収益となります。また、その月の収益の一部として長期サービスのための一時払いを含めてはいけません。例えばソフトウェアに対する年間契約は 3 月に請求され 4 月に回収されるかもしれませんが、収益はサービス期間にわたって等分されます。収益をごまかすことは、悪意や無能さの現れです。

あなたの会社はまだ未熟すぎて、指標を報告できるきちんとした仕組みがないかもしれません。これはよくあることですが、将来的にはデータを基に決定を下す能力があることを伝えるために、指標に対しての理解を示す必要があります。

トラクション、つまり継続的なデータ収集をしているなら、強調しましょう。この言葉をよく耳にするようになると思います。曖昧な専門用語ですが、今後数年間は絶えず尋ねられます。この言葉の最善定義は、「プロダクト/マーケットフィットの定量的証拠」です。ビジネスモデルは多様ですから、定義も多様なものとなります。Apple も Berkshire Hathaway もともに数十億ドルの価値がありますが、両者のウェブサイトを見ると、この 2 社が重要視している価値観が大きく異なることがわかります。

スタートアップ企業からよく、レビューアーはどのような数字を求めているのかを尋ねられます。固定的なターゲットではないため一般化するのは難しいですが、レビューアーはあなたが現在大きく進歩を遂げているという証拠と、将来的にはこれが加速するであろうという兆候を求めています。

すべての数字が素晴らしい数字である必要はありませんが、あなたの会社で何かが特別な結果を残していることの証拠を提示してください。Snapでは、ユーザがアプリを 1 日に平均 7 回開いているということでした (ほとんどのアプリが 1 日 2 回程度)。

レビューアーは、今日も文字通り何千ものデータポイントをみます。ピッチには平均 10 以上の数字が含まれていますが、誰もそれらをいちいち覚えることはできないので、「ゼロ」、「ゼロ以外」、そして「格別」という分類がされます。「格別」は見る人によりますが、それ以外の基準を具体的に紹介しましょう。初期段階にいるスタートアップのおおよそどの時点で「素晴らしい、プロダクトを完成させた」から「よくやった、彼らの顧客獲得はうまくいっているようだ」にレベルアップするかをお話します。

** Basecamp のようなロータッチモデルで販売されている B2B SaaS の場合**:10,000 ドル以上の 月毎定期収益と、100 以上のアクティブな有料アカウントがある

** Salesforce のようなハイタッチモデルで販売されている B2B SaaS の場合**: 少なくとも 1 つの、50,000 ドル以上の価値のあるソフトウェア製品の試作品 (コンサルティングエンゲージメントではないもの)があることと、いくつかのセールスパイプラインの証拠があること (1〜2 つの署名入り意向書など)

モバイルアプリの場合:何十万人もの無料ユーザまたは何千人もの有料ユーザがいて、理想的には新規顧客獲得率が少なくとも数週間の割合で増加していること

広告収益型ウェブサイト: 1 カ月あたり数百万人の訪問者と、それが理想的には少なくとも数週間の割合で持続的に増加していること

事業期間が長い会社ほど、ハードルは高くなります。先週の火曜日に立ち上げた企業が「2 万人のアクティブユーザがいる」というのは、エンジェルラウンドを突破してから 3 年経っている企業が同じことをいうよりはるかに印象的です。事業期間は、レビューアーがあなたのプロジェクトを好意的に見るきっかけとなり得ます。あなたがしばらくプロジェクトに興味はあったが、フルタイムで対応するようになった/ピボットした/本腰を入れるようになったのがつい最近なら、あなたがそれについて初めてシャワーで考えついた日付ではなく、何かを達成した最近の日付をスタートの日付とするのです。

ここれらの基準は、高く感じるかも知れません。 実際高いのです。少なくとも応募企業の一部には、これらを達成した企業がいます。あなたが達成していないなら、応募内容の数字にもっと力を入れてください。そして、将来的にはそれらの数値を迅速に達成してそこから爆発的に成長できるスキル、やる気、チャンスがあることを実証しましょう。

説得力のあるプロトタイプをつくる

できれば試作品を入れましょう。試作品があるということは、機能するソフトウェアを作れるということです。初期段階にいる企業が機能するソフトウェアを完成させることができるのは、思っているより稀です。

あなたに与えられているのは 2 分です。あなたのピッチを読んで、会社がとても興味深いと思ってもらえればそれが、5 分や 10 分になります。それでも、ソフトウェア全体を評価する時間としては不十分です。

あなたは、レビューアーへのソフトウェア紹介の最初の数分を完璧にしなければなりません。

会社に関するコメントで「おお、この会社のサインイン画面はいいなぁ。このサインイン画面に投資したい」などと書く人はいません。ダミーデータが予め用意された認証済みセッションに入れるリンクを送りましょう。

これはトレーニングセッションではありません。初回ユーザ向けの体験や、ソフトウェアの全ての機能の説明は必要ではありません。その代りに、最も印象的な使用例やそのアウトプットをまず示すべきです。一般的には、最終的なゴールから逆向きにプロセスを説明すれば良いでしょう。例えば Eメールマーケティングソフトウェアのピッチの場合、完成したかほとんど完成したメールを表示させて、ユーザにそれを編集するか送信するのを試してもらいます。

色々な機能を模造してみましょう。 ソフトウェアを利用する時に非同期のインタラクションがある場合や、他のユーザとのコンタクトが必要な場合は、模造された状態を作り出しましょう。 (それについて隠す必要はまったくありません。)

ピッチに相応しいデザインを施し洗練させてください。多くのアクセラレーターは、芸術的趣向、優れたユーザ体験を熱心に追い求める姿勢、市場の最高の製品とはどういうものかを理解している、「プロダクトセンス」を持った創立者を評価します。特に、B2C モバイルアプリなど、プロダクトセンスが企業としての成功に必須な場合は、必ずプロダクトセンスを証明してください。

満足のいくプロトタイプを提示できない種類の企業もあります。Stripe Atlas は、医療機器から下水道システムにいたるまで、あらゆるもののピッチを見てきました。物理的な製品の場合は、ビデオや写真でも良いでしょう。まだ機能するソフトウェアを用意できない段階にいる場合はモックでも、良いデザインとプロダクトセンスを持っていることを表すことができます。

ユーモアを取り入れる

多くのピッチにはユーモアがあり、楽観的で、人生を楽しんでいると感じさせます。これらがあなたにとって自然であれば、取り入れましょう。プロらしく聞こえるからと堅苦しい書き方にこだわる必要はありません。もしあまり得意でないなら、後回しでも構いません。頭の良い友達に説明するときのように、まず事実を書いてみてください。

逆にピッチを面白おかしく書きすぎるのはどうでしょうか?無意味なルールに皮肉を述べられる能力があるのはいいですが、同時にスタートアップは仕事をする場であり、投資家には常に社会の目が注がれています。著しい判断力の欠如を表すような話は避けるべきです。特に、それに対して歓声を期待するような話し方は避けましょう。

スタートアップではリスクをとるのは奨励されています。でも、愚かなリスクはその限りではありません。地位の高い人のオフィスにアポなしで訪問するのはリスクであると同時に、野心と売り込み能力の表れにもなります。一方で、自分の犯した過ちは、判断力の欠如を示すことになります。

良い紹介をうまく利用する

シリコンバレーには、他人からの紹介 (“intro” と呼ばれる) を奨励する文化が存在します。マーク・アンドリーセン氏は次のように書いています

VC を紹介してもらうことは、相手の人脈スキルを測る基本的なテストなのです。この紹介をしてもらうために人脈を築くスキルは、顧客やサプライヤー、流通パートナー企業、メディア、ヘッドハンターらとの人脈を築くスキルと同一だからです。

質の高い紹介をしてもらえる人がいる場合は、頼んでみてください。質の高い紹介には 2 つの要素が求められます。まず、意思決定者にとって信頼のある者からの紹介であること。そして、あなたが市場の平均よりも優れていることを示す具体的な証拠です。

例えば投資家が以前に資金提供した人の紹介であれば、質が高いといえます。

前に勤めていた会社で、このエンジニアと仕事をしていました。彼らのチームは、これまで会ったなかでも最も印象的な人たちです。当社の CTO は、継続的デプロイにはチームで取り組んでも 6 ヶ月かかるとふんでいましたが、彼らは単独で2 週間で達成してしまったのです。

意思決定者からあまり信頼のない人からの紹介は、どう言われようとも実質的には質の低い紹介となります。そして市場の平均以上であるという具体的な証拠のない紹介や、積極的で手間のかかるものでなければ、誰が行おうと実質的には質の低い紹介なのです。

質の低い紹介は何の効果もないか、場合によっては負の効果をもたらします。紹介が欲しいためだけに、質の低い紹介に時間を費やすのはやめましょう。

シリコンバレーの紹介に関する文化をよく知る人であれば、それに伴う社会的なコストが存在することを知っている非常に慎重になるのです。紹介は、ただのメールではありません。成功につながる紹介は、両側の関係性を強める役割を果たすことで、紹介した人にうまく動きます。逆に成功に結びつかない紹介が続くと、重要な紹介をさせてもらえなくなるのです。

YC に応募するのに紹介は不要です。実績こそが YC の成功の最大の理由です。YC は、才能がありながらもシリコンバレーで VC への質の高い紹介を得られずにいる、巨大な枠から選ぶことができるからです。ここ最近の YC クラスの企業の半分は、YC とそれまでつながりはありませんでした。いずれにせよ、質の高い紹介のチャンスがあれば、得られるものは間違いなくあります。紹介してもらいましょう。

何があってもやり通す

今では大きな成功をおさめた企業でも、投資家から相手にされないことは何回もあります。しかし、相手にされなかったからといって、それは企業や創業者の実力が足りていないからではありません。YC は次のように説明しています。投資家が一度に抱えられるスタートアップの数は限られています。そのため投資にもう少しで手が届くところまでいっても、それより少し優れた応募があれば投資家はそちらを選ばざるを得ない場合があります。

たとえ今回ピッチが成功しなくても、大丈夫です。事業計画を継続して進めていきましょう。投資家にピッチする次のチャンスはかならず訪れます。見込み顧客や会社への応募者が必ず現れるのと同じです。同じ投資家から投資を受けることもあるかもしれません。ここ最近の YC クラスに選ばれた企業のうち半数が、一度または何回か YC へ応募して落選しているのです。

あきらめないでください。投資を受けられないのが、企業が直面する最大の困難ではありません。転んだらまた立ち上がればいいのです。会社を、自分自身を、そしてピッチをさらに磨いて、次の機会を伺いましょう。

次に、晴れてアクセラレイターに選ばれた方、または投資を獲得された方へ。おめでとうございます!ですが、それが勝ちではありません。その晩は祝い、そして次の日から仕事に戻りましょう。成功すると得られるもの、それは、より大きなものを賭けた、より困難な挑戦にチャレンジする権利です。

取り組み始めたばかりの方にも、より困難な挑戦に挑む準備ができている方にも、私達は尽力したいと考えています。Stripe Atlas は、あなたに合わせたピッチングについて、喜んでアドバイスさせていただきます。 Stripe Atlas 企業の方や、9 月 15 日までに Stripe Atlas に参加いただいた方に、当社は喜んで YC への応募のお手伝いをさせていただきます。

早く始めるほうが有利です。改善のための時間がとれるだけでなく、対応できる応募企業の上限数に達する前にご参加いただける可能性が高まります。また、応募締め切り前に、Stripe Atlas の企業の皆様に YC との提携についてご質問いただく機会も設けるので参考にしてください。

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